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Case48教授の遺した暗号②
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「私、宮崎教授が殺されるところを見たんです」
私も東さんも、驚きを隠しきれなかった。少女は震える両肩を抱きながら、ゆっくりと言葉を続ける。
「事件当日、宮崎教授と話していたので服装で分かりましたーー」
少女の発言の真偽を問うのは早かった。ただ、この発言を聞いた以上、聞くべきことは明らかだった。
「犯人の顔は見えなかったんですか?」
被害者の側にいた犯人。顔が分かればすぐにでも逮捕に踏み込める。認めずとも、証拠を探せばいい。
しかし、少女は首を横に振った。見えなかった、と、同じ言葉を繰り返して。
ーカイリ『教授の遺した暗号』第2章ー
※
「お久しぶりです」
優しげに微笑む小夜に、海里は驚きを隠せなかった。
「小夜さん・・・! いつからこの大学に?」
「事件の1ヶ月ほど後です。教務課の職員として勤務しています。教員免許は持っているんですが、いきなり教師として就職するのは難しかったので。まあ、泉龍寺家に教師や教授の方が多いおかげで、水嶋大学を紹介してもらったんですけどね。
苗字が変わったのは、真人のご両親に許可を頂いて養子になったからです。申し訳ない気持ちもありましたけど、あの子たちにずっと天宮の姓を背負わせるのも気が引けてしまって」
小夜は水嶋に後は引き受けると伝えて退室を促した。水嶋は頷き、足早に講義室を後にする。足音が遠ざかると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私の話はここまでにしましょう。事件の話が優先です」
「ええ。水嶋学長に聞いても要領を得ません。あなたから聞いた方が早い」
「ふふっ。頼りにしてくださって何よりです」
海里の言葉に、小夜は満足そうな笑顔を浮かべた。彼女は2人に向き直ってから、淡々と述べる。
「被害者は宮前太一、40歳。水嶋大学の音楽教授です。死因は絞殺。死亡推定時刻は昨夜の18時~22時です」
「殺害場所は?」
龍が素早く尋ねた。小夜は動じる様子なく、淡々と答える。
「音楽室です。ご案内しますので、こちらへ」
小夜はすぐに身を翻して講義室を出た。2人は黙ってそれに続く。
先ほど長い廊下を歩いた後、小夜はなぜか校舎の裏口を開けた。海里は不思議に思って尋ねる。
「ちょっと待ってください。なぜ外へ? 渡り廊下を使わないのですか?」
「生徒の目に触れるな、という学長のご指示なんです。面倒かもしれませんが、校舎間の移動は1階の裏口からお願いします」
小夜の言葉に頷きつつも、龍は頭を掻いた。
「それは配慮するが・・・生徒たちは本当に何も気がつかないのか? 目の前にパトカーが止まっているんだぞ?」
「さあ? 一職員の私には何とも」
小夜はとぼけたが、生徒が事件を知ることは時間の問題だと考えているようだった。海里も龍も同じように思っていたので、彼女の言葉に何も言うことはなかった。
隣の校舎に到着すると、小夜はどうぞ、と言いながら裏口を開けた。裏口付近はかなり埃っぽく、半ば物置と化していた。
「2階に音楽室があります。現場は保存してありますから、自由に見ましょう」
「・・・・手伝う気満々ですね」
海里は意外、とばかりに呟いた。天宮家で会った日、小夜は事件の解決を警察に任せようとしなかった。あの時の彼女を思い浮かべれば、海里の反応は当然だった。
小夜は海里の心中を知ってか知らずか、顔色を変えずに言った。
「今回はあの時と違いますから。それに、人手が多いことに越したことはないでしょう? 早めに解決して頂きたいですし、遺体を見るくらい何とも思いませんよ」
少し引っかかる発言だったが、天宮家で会った頃とは違う、心なしか明るい声音に2人は安堵した。家という呪縛から解放され、新たな姓を得て第二の人生を歩み始めた彼女は、過去とは違うのだと分かった。
小夜は先頭に立って階段を上がり、音楽室と書かれた講義室の扉を開けた。同時に海里と龍の視線が上へ移動し、“それ”を目に留めた海里が呟く。
「彼が・・・宮前太一さんですか」
宮前太一の首には、細い縄のようなものが何重にも巻き付いていた。天井に吊るされたシャンデリアに先が括られ、遺体はわずかに揺れている。遺体の奥には真新しいグランドピアノがあり、鍵盤蓋は開きっぱなしになっていた。
「取り敢えず遺体を降ろしましょう。東堂さん、できますか?」
「少し遠いな・・・・。泉龍寺、長い梯子はないか? それと、紐を切る鋏」
「別室にあると思います。江本さん、少し手伝って頂けますか?」
「ええ」
一時音楽室を出た数分後、海里が脚立を、小夜が鋏を持って戻って来た。龍は立てかけられた脚立に重量を確かめながら登り、海里は下の方を支えた。
「泉龍寺、鋏くれ」
「どうぞ」
鋏を受け取った龍は、宮前の体を支えながら紐を切った。手袋をした手で彼の体を支え、ゆっくりと脚立から降りる。床には、小夜が気を利かせて持って来たブルーシートが引いてあった。
「首に巻き付いている紐は・・・ピアノ線だな」
「そのようですね。そしてこの吉川線・・・殺人と考えて間違い無いでしょう」
海里は縦に何本も伸びた赤い線を見つめて呟いた。所々に血が滲んでおり、かなり抵抗したことが窺える。
「・・・・でも・・・不思議ね」
小夜の言葉に、2人は首を傾げた。彼女は続ける。
「あのシャンデリア、軽い素材でできていると聞いたことがあるんです。要するに、そこまで高価な物ではないということですね。ですから、いくら宮前先生が痩せ型とはいえ、成人男性を一晩支えるなんてこと、到底可能とは思えない」
「なるほど。つまり重要なのは、初め遺体が吊るされていた場所が、シャンデリアではなかったかもしれないってことか」
「確かに、その可能性も捨てきれませんね。天井を見る限り、縄をかけられる場所は多い」
そう言いながら、海里は天井を仰いだ。天井には長い木の柱が斜めに交差しており、シャンデリアよりも丈夫に見えた。
「しかし、なぜ宮前さんが殺されたのでしょう。小夜さん、何か心当たりは?」
海里が尋ねると、小夜は少し顔色を暗くした。
「・・・・無いと言えば嘘になります。宮前教授は、学生たちにはとても人気で、休み時間にピアノを聴きにくる生徒が多数いるんです。その様子を見たこともあります」
「学生には?」
海里が反問した。小夜は頷く。
「ええ。理由は分かりませんけど、教職員に対しては、高慢で、生徒の見えない所で私たちを見下していたと思います。学生がそれに気がついていたかは、分かりませんけど」
「つまり、教職員に殺された可能性の方が高いのか?」
龍の言葉に、小夜は躊躇いなく頷いた。自分も容疑者に含む問いであるのに、ここまで躊躇なく頷けるのは、自分はやっていないと言う強い意志から来ているのだろうと思った。
「なるほど。まあどの道、生徒たちには内密に・・とのことですし、教職員に聞き込みをした方が早いでしょう。授業が終わるのはいつ頃ですか?」
海里の質問に小夜はすぐに答えた。
「教員によって違いますけど、事件がありましたから17時頃には終わってくださるそうです。職員も同時に仕事を終えます。
1人1人に話を聞きますか? 全員が状況を把握しているかは分かりませんから、一からの説明は必要になってしまいますが」
「こちらで話すから構わない。江本、お前は先に学長に話を聞いて来てくれ。俺は聞き込みを早く済ませるために、部下たちを呼んでくる」
「分かりました」
「昨夜、大学に残っていらっしゃったのですね? どこで何をされていましたか?」
「宮前教授が殺害される理由に、心当たりは?」
「怨恨の線を考えているのですが、そのような話を宮前教授からお聞きしたことは?」
「生徒たちから好かれていると聞きましたが、あなたはどうですか?」
龍の部下が到着し、授業が終わると同時に、本格的な聞き込みが始まった。
聞き込みは1時間ほどで落ち着き、刑事たちは疲弊しながらも結果を龍に報告していた。彼は頷きながらノートに内容をまとめ、海里に声をかける。
「ざっと目を通したが、気になるところはない。お前はどうだ?」
ノートを見た海里は種々の発言に眉を顰めたが、やがてゆっくりと首を横に振った。
「・・・・確かに、気になるところはありませんね。小夜さん。学生に聞き込みはできないのですか?」
「私の一存では難しいです。もう1度、学長に掛け合いましょうか?」
「お願いします。教職員と学生の発言が違う可能性は非常に高い。何かの助けになるかもしれません」
「分かりました」
小夜が部屋を出て行くと、海里は深い溜息をついた。資料を見返していた龍が尋ねる。
「今回の事件、どう思う? 生徒に好かれ、教職員に嫌われていた被害者ーー自殺の線は既に捨てられ、殺人と断定されている。だが、明確な情報は何もない」
「ええ。だからこそ、小夜さんと出会ったのは幸運だと思っていました。しかし、彼女も何も知らないとなると・・・こちらも身動きが取れない。水嶋学長も頑なとして口を開いてくださいませんから、困ったものです」
海里は苦笑した。すると、講義室の扉が開き、小夜が戻って来た。彼女の背後には、1人の女子生徒がいる。2人は思わず立ち上がった。
「学長は仕事中で会えなかったわ。でも、彼女・・・・」
「村上琴子です。水嶋大学音楽科の2回生です」
「村上さんですね。小夜さんと共に来られたということは、何かご存知なんですね?」
「・・・・はい」
村上琴子は少し俯きながら、小夜を一瞥した。小夜が頷くと、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私・・・宮前教授が殺されるところを見たんです」
「なっ・・・⁉︎」
海里と龍は唖然とした。村上琴子は震える両肩を抱きながら続ける。
「事件当日、宮前教授と話しをして、服装を覚えていたんです。だから、首を締められているのが宮前教授だと気づきました。でも・・・犯人の顔は見えませんでした」
「見えなかった? 絞殺となると被害者と犯人は側にいるはずですから、顔は見えるのでは?」
海里は尋ねたが、村上琴子は強く首を横に振った。
「いいえ。見えなかったんです。ごめんなさい」
嘘ではなかった。海里は軽く頷き、落ち着いた口調で話す。
「・・・謝らなくて構いませんよ。その話、詳しく、お聞かせ願えませんか?」
私も東さんも、驚きを隠しきれなかった。少女は震える両肩を抱きながら、ゆっくりと言葉を続ける。
「事件当日、宮崎教授と話していたので服装で分かりましたーー」
少女の発言の真偽を問うのは早かった。ただ、この発言を聞いた以上、聞くべきことは明らかだった。
「犯人の顔は見えなかったんですか?」
被害者の側にいた犯人。顔が分かればすぐにでも逮捕に踏み込める。認めずとも、証拠を探せばいい。
しかし、少女は首を横に振った。見えなかった、と、同じ言葉を繰り返して。
ーカイリ『教授の遺した暗号』第2章ー
※
「お久しぶりです」
優しげに微笑む小夜に、海里は驚きを隠せなかった。
「小夜さん・・・! いつからこの大学に?」
「事件の1ヶ月ほど後です。教務課の職員として勤務しています。教員免許は持っているんですが、いきなり教師として就職するのは難しかったので。まあ、泉龍寺家に教師や教授の方が多いおかげで、水嶋大学を紹介してもらったんですけどね。
苗字が変わったのは、真人のご両親に許可を頂いて養子になったからです。申し訳ない気持ちもありましたけど、あの子たちにずっと天宮の姓を背負わせるのも気が引けてしまって」
小夜は水嶋に後は引き受けると伝えて退室を促した。水嶋は頷き、足早に講義室を後にする。足音が遠ざかると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私の話はここまでにしましょう。事件の話が優先です」
「ええ。水嶋学長に聞いても要領を得ません。あなたから聞いた方が早い」
「ふふっ。頼りにしてくださって何よりです」
海里の言葉に、小夜は満足そうな笑顔を浮かべた。彼女は2人に向き直ってから、淡々と述べる。
「被害者は宮前太一、40歳。水嶋大学の音楽教授です。死因は絞殺。死亡推定時刻は昨夜の18時~22時です」
「殺害場所は?」
龍が素早く尋ねた。小夜は動じる様子なく、淡々と答える。
「音楽室です。ご案内しますので、こちらへ」
小夜はすぐに身を翻して講義室を出た。2人は黙ってそれに続く。
先ほど長い廊下を歩いた後、小夜はなぜか校舎の裏口を開けた。海里は不思議に思って尋ねる。
「ちょっと待ってください。なぜ外へ? 渡り廊下を使わないのですか?」
「生徒の目に触れるな、という学長のご指示なんです。面倒かもしれませんが、校舎間の移動は1階の裏口からお願いします」
小夜の言葉に頷きつつも、龍は頭を掻いた。
「それは配慮するが・・・生徒たちは本当に何も気がつかないのか? 目の前にパトカーが止まっているんだぞ?」
「さあ? 一職員の私には何とも」
小夜はとぼけたが、生徒が事件を知ることは時間の問題だと考えているようだった。海里も龍も同じように思っていたので、彼女の言葉に何も言うことはなかった。
隣の校舎に到着すると、小夜はどうぞ、と言いながら裏口を開けた。裏口付近はかなり埃っぽく、半ば物置と化していた。
「2階に音楽室があります。現場は保存してありますから、自由に見ましょう」
「・・・・手伝う気満々ですね」
海里は意外、とばかりに呟いた。天宮家で会った日、小夜は事件の解決を警察に任せようとしなかった。あの時の彼女を思い浮かべれば、海里の反応は当然だった。
小夜は海里の心中を知ってか知らずか、顔色を変えずに言った。
「今回はあの時と違いますから。それに、人手が多いことに越したことはないでしょう? 早めに解決して頂きたいですし、遺体を見るくらい何とも思いませんよ」
少し引っかかる発言だったが、天宮家で会った頃とは違う、心なしか明るい声音に2人は安堵した。家という呪縛から解放され、新たな姓を得て第二の人生を歩み始めた彼女は、過去とは違うのだと分かった。
小夜は先頭に立って階段を上がり、音楽室と書かれた講義室の扉を開けた。同時に海里と龍の視線が上へ移動し、“それ”を目に留めた海里が呟く。
「彼が・・・宮前太一さんですか」
宮前太一の首には、細い縄のようなものが何重にも巻き付いていた。天井に吊るされたシャンデリアに先が括られ、遺体はわずかに揺れている。遺体の奥には真新しいグランドピアノがあり、鍵盤蓋は開きっぱなしになっていた。
「取り敢えず遺体を降ろしましょう。東堂さん、できますか?」
「少し遠いな・・・・。泉龍寺、長い梯子はないか? それと、紐を切る鋏」
「別室にあると思います。江本さん、少し手伝って頂けますか?」
「ええ」
一時音楽室を出た数分後、海里が脚立を、小夜が鋏を持って戻って来た。龍は立てかけられた脚立に重量を確かめながら登り、海里は下の方を支えた。
「泉龍寺、鋏くれ」
「どうぞ」
鋏を受け取った龍は、宮前の体を支えながら紐を切った。手袋をした手で彼の体を支え、ゆっくりと脚立から降りる。床には、小夜が気を利かせて持って来たブルーシートが引いてあった。
「首に巻き付いている紐は・・・ピアノ線だな」
「そのようですね。そしてこの吉川線・・・殺人と考えて間違い無いでしょう」
海里は縦に何本も伸びた赤い線を見つめて呟いた。所々に血が滲んでおり、かなり抵抗したことが窺える。
「・・・・でも・・・不思議ね」
小夜の言葉に、2人は首を傾げた。彼女は続ける。
「あのシャンデリア、軽い素材でできていると聞いたことがあるんです。要するに、そこまで高価な物ではないということですね。ですから、いくら宮前先生が痩せ型とはいえ、成人男性を一晩支えるなんてこと、到底可能とは思えない」
「なるほど。つまり重要なのは、初め遺体が吊るされていた場所が、シャンデリアではなかったかもしれないってことか」
「確かに、その可能性も捨てきれませんね。天井を見る限り、縄をかけられる場所は多い」
そう言いながら、海里は天井を仰いだ。天井には長い木の柱が斜めに交差しており、シャンデリアよりも丈夫に見えた。
「しかし、なぜ宮前さんが殺されたのでしょう。小夜さん、何か心当たりは?」
海里が尋ねると、小夜は少し顔色を暗くした。
「・・・・無いと言えば嘘になります。宮前教授は、学生たちにはとても人気で、休み時間にピアノを聴きにくる生徒が多数いるんです。その様子を見たこともあります」
「学生には?」
海里が反問した。小夜は頷く。
「ええ。理由は分かりませんけど、教職員に対しては、高慢で、生徒の見えない所で私たちを見下していたと思います。学生がそれに気がついていたかは、分かりませんけど」
「つまり、教職員に殺された可能性の方が高いのか?」
龍の言葉に、小夜は躊躇いなく頷いた。自分も容疑者に含む問いであるのに、ここまで躊躇なく頷けるのは、自分はやっていないと言う強い意志から来ているのだろうと思った。
「なるほど。まあどの道、生徒たちには内密に・・とのことですし、教職員に聞き込みをした方が早いでしょう。授業が終わるのはいつ頃ですか?」
海里の質問に小夜はすぐに答えた。
「教員によって違いますけど、事件がありましたから17時頃には終わってくださるそうです。職員も同時に仕事を終えます。
1人1人に話を聞きますか? 全員が状況を把握しているかは分かりませんから、一からの説明は必要になってしまいますが」
「こちらで話すから構わない。江本、お前は先に学長に話を聞いて来てくれ。俺は聞き込みを早く済ませるために、部下たちを呼んでくる」
「分かりました」
「昨夜、大学に残っていらっしゃったのですね? どこで何をされていましたか?」
「宮前教授が殺害される理由に、心当たりは?」
「怨恨の線を考えているのですが、そのような話を宮前教授からお聞きしたことは?」
「生徒たちから好かれていると聞きましたが、あなたはどうですか?」
龍の部下が到着し、授業が終わると同時に、本格的な聞き込みが始まった。
聞き込みは1時間ほどで落ち着き、刑事たちは疲弊しながらも結果を龍に報告していた。彼は頷きながらノートに内容をまとめ、海里に声をかける。
「ざっと目を通したが、気になるところはない。お前はどうだ?」
ノートを見た海里は種々の発言に眉を顰めたが、やがてゆっくりと首を横に振った。
「・・・・確かに、気になるところはありませんね。小夜さん。学生に聞き込みはできないのですか?」
「私の一存では難しいです。もう1度、学長に掛け合いましょうか?」
「お願いします。教職員と学生の発言が違う可能性は非常に高い。何かの助けになるかもしれません」
「分かりました」
小夜が部屋を出て行くと、海里は深い溜息をついた。資料を見返していた龍が尋ねる。
「今回の事件、どう思う? 生徒に好かれ、教職員に嫌われていた被害者ーー自殺の線は既に捨てられ、殺人と断定されている。だが、明確な情報は何もない」
「ええ。だからこそ、小夜さんと出会ったのは幸運だと思っていました。しかし、彼女も何も知らないとなると・・・こちらも身動きが取れない。水嶋学長も頑なとして口を開いてくださいませんから、困ったものです」
海里は苦笑した。すると、講義室の扉が開き、小夜が戻って来た。彼女の背後には、1人の女子生徒がいる。2人は思わず立ち上がった。
「学長は仕事中で会えなかったわ。でも、彼女・・・・」
「村上琴子です。水嶋大学音楽科の2回生です」
「村上さんですね。小夜さんと共に来られたということは、何かご存知なんですね?」
「・・・・はい」
村上琴子は少し俯きながら、小夜を一瞥した。小夜が頷くと、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私・・・宮前教授が殺されるところを見たんです」
「なっ・・・⁉︎」
海里と龍は唖然とした。村上琴子は震える両肩を抱きながら続ける。
「事件当日、宮前教授と話しをして、服装を覚えていたんです。だから、首を締められているのが宮前教授だと気づきました。でも・・・犯人の顔は見えませんでした」
「見えなかった? 絞殺となると被害者と犯人は側にいるはずですから、顔は見えるのでは?」
海里は尋ねたが、村上琴子は強く首を横に振った。
「いいえ。見えなかったんです。ごめんなさい」
嘘ではなかった。海里は軽く頷き、落ち着いた口調で話す。
「・・・謝らなくて構いませんよ。その話、詳しく、お聞かせ願えませんか?」
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