221 / 237
Case213.オークションの罠②
しおりを挟む
「・・・凄い人ですね。」
「大掛かりなオークションはこんなものよ。でも・・少し妙ね。」
「妙?」
「ええ。参加名簿を見た時から不思議だったの。豪華とは言え、あまりに参加者がーーー」
「小夜様?」
小夜に話しかけたのは、豪華なスーツを着た男性数人だった。小夜は一瞬面倒臭そうな顔をした直後、作り笑いを浮かべる。
「お久しぶりです。お元気そうですね。」
「小夜様こそ。オークションに来られるとはお珍しい。絵画にご興味があられましたか?」
「興味・・・というより、今日はある絵を探しに来ましたの。出品されているか分かりませんけど。」
「ほう。ところで、隣の殿方は?新しい婚約者殿ですかな?」
海里は驚いた。小夜は口元に手を当て、笑う。
「いいえ、友人ですよ。オークションに来てみたいと言うので、一緒に。私が探しに来た絵も、彼からの依頼ですから。」
「そうなのですか?しかし随分と嫌いな顔立ちをなさっている。ハーフですか?」
「いえ、クウォーターです。彼の祖母が、外国人だそうですよ。」
談笑を終えて男たちが去って行くと、小夜は疲れた表情を見せた。
「今の方々は?」
「全員、財閥の長よ。元は父の下についていたのだけど、天宮財閥の崩壊で図式が変わったわ。ただ、彼らは私が父の財産を放棄していないことを知っているから、簡単に蔑んだりしないのよ。以前、金庫を見たでしょう?」
「はい。あれが全財産、ですか?」
「いいえ。あれは本家に貯蓄されている分よ。父の銀行号座も全部私が受け継いだから、実際はまだまだあるわ。」
その後、何人もの財閥関係者や官僚が小夜に話しかけ、徐々に話は隣にいる海里にまで及んだ。しかし、あまり名前を明かさない方がいいという彼女の助言に従い、海里は名前を名乗らなかった。
「ごめんなさいね。大変でしょう?」
「いいえ。無理を言ったのは私ですから。あ、そろそろ始まりますかね?」
2人は会場の席に着いた。布に包まれたキャンバスが次々と運ばれてくる。小夜は会場を見渡し、眉を顰める。
「何か気にかかることが?」
「ええ。オークションだとは分かっているとけど、何だか目の色がおかしいわ。気のせいかしら?」
「どうぞ、天宮様。」
スタッフが小夜に入札する絵画の一覧が記された紙を渡した。彼女は礼を言いながらそれを受け取る。
「ん?小夜さん、その紙・・・.」
「あら?汚れてる?」
「いえ、そうではなく・・・紙の厚さが何だかーーーー」
その時、開催者の声が会場に響いた。オークションが始まる時間になったらしい。海里は何でもありませんと言い、目先にある絵画に向き直った。
※
警視庁。
「磯貝、何調べてる?報告書は終わったのか?」
「東堂警部。あ・・報告書は終わりました。何だか気になる記事があって・・・。」
龍は不思議に思い、撫子のパソコンを覗き込んだ。そこには、
『オークションの裏に潜む罠!突然消えた、盗作画家の絵画の行方は⁉︎』
「オークション?」
「はい。以前、都内で絵画オークションが行われて、多くの著名人が様々な絵画を落札したらしいんです。でも、後日オークションのスタッフが落札されたはずの絵を美術館で見て、どういうことだと交番に飛び込んできたらしいんです。」
「なるほどな。都内の交番とはいえ、著名人のことに踏み込めない。こっちに話が回って来ず、週刊誌で公になったのか。」
「はい。ただ、ほとんどの著名人はこの件に関して黙秘しています。当然と言えば当然ですけど・・・。」
龍は考えた。もしこの記事に書かれている内容が真実なら、かなり大きな問題になる。
「この“盗作画家”って誰だ?俺は美術界に疎いから分からないんだが。」
「うーん・・・私も曖昧なので・・・・。」
「三木良家、だと思うよ。」
話を聞いていた玲央が、書類から顔を上げて答えた。
「10年前くらいに、盗作疑惑がかけられて引退を余儀なくされた画家さ。真実かは分からないけど、業界から追い出されたことは事実だよ。」
「・・・・じゃあ三木良家は自分の絵を所有していない?それどころか、どこにあるかすら理解していない可能性があるってことか?」
「可能性はあるよ。無断で誰かが彼の絵を持ち出してオークションにかけ、著名人たちに落札させる・・・。別の絵画に隠して、さ。」
玲央は言いながら納得できない様子だった。彼も絵画のことには詳しくないので、情報が曖昧なのだ。
すると、撫子がそう言えば、と言って口を開いた。
「今日、都内で絵画オークションが開かれるって話があったような気がするんですが・・・。」
※
「ではこちらは700万で土田財閥様に。」
海里は次々に出される桁違いの値段に唖然としていた。小夜は目当ての絵がないか海里にしきりに聞いている。
「依頼の絵画は人物画なのよね?今日のオークションに人物画はほとんどないわ。あっても青年の絵画なんて見当たらない。第一、そんな少ない情報じゃ見つけ出すのは不可能に近いわ。1度電話して特徴を聞けないの?」
「それができたらいいんですが、三木さんも昔に描かれた絵画らしく、記憶がおぼろげだそうなんです。加えて、電話も繋がらなくて。」
「繋がらない?」
「はい。多分、公衆電話からかけられていたんだと思います。先日の名簿をスタッフの方に見せて頂いたんですが、三木さんの名前がなくてーーーー」
「それは当然じゃないかしら。三木良家はペンネームなんだから。」
海里は驚いた。てっきり本名だと思っていたのだ。
「知らなかったのね。知った上でそう呼んでいると思ってたわ。」
「全く知りませんでした。三木さんの本名って?」
「乃木家良よ。まあ入館の際の氏名記入は自由だし、名前がない可能性もあるけれど。」
「そうですか・・・。」
その時だった。奥の倉庫から、甲高い悲鳴が聞こえてきたのだ。海里と小夜は思わず立ち上がり、海里は躊躇うことなく駆け出した。
「どうされたんですか⁉︎」
倉庫の前には、腰を抜かしたスタッフが尻餅をついていた。ガタガタと震え、倉庫の中を指し示す。海里は中を見て、愕然とした。
そこには、先日話をしたばかりの、三木良家・・乃木家良が、首を吊って死んでいたのだ。
「三木さん・・・⁉︎そんな・・一体どうして⁉︎」
「江本さん!何があったの⁉︎」
「警察を呼んでください!倉庫の中で三木さんが亡くなっています!」
小夜は驚き、遺体を見て息を飲んだ。海里は拳を握り締める。
(なぜこんなことに⁉︎
三木さん・・・あなたが探している絵は、きっとあなたにとって大切な物だったはず・・・。それを私に託す理由は分かりませんが、絶対にこのままにはしておけない!この事件は、必ず私が解き明かします!)
「大掛かりなオークションはこんなものよ。でも・・少し妙ね。」
「妙?」
「ええ。参加名簿を見た時から不思議だったの。豪華とは言え、あまりに参加者がーーー」
「小夜様?」
小夜に話しかけたのは、豪華なスーツを着た男性数人だった。小夜は一瞬面倒臭そうな顔をした直後、作り笑いを浮かべる。
「お久しぶりです。お元気そうですね。」
「小夜様こそ。オークションに来られるとはお珍しい。絵画にご興味があられましたか?」
「興味・・・というより、今日はある絵を探しに来ましたの。出品されているか分かりませんけど。」
「ほう。ところで、隣の殿方は?新しい婚約者殿ですかな?」
海里は驚いた。小夜は口元に手を当て、笑う。
「いいえ、友人ですよ。オークションに来てみたいと言うので、一緒に。私が探しに来た絵も、彼からの依頼ですから。」
「そうなのですか?しかし随分と嫌いな顔立ちをなさっている。ハーフですか?」
「いえ、クウォーターです。彼の祖母が、外国人だそうですよ。」
談笑を終えて男たちが去って行くと、小夜は疲れた表情を見せた。
「今の方々は?」
「全員、財閥の長よ。元は父の下についていたのだけど、天宮財閥の崩壊で図式が変わったわ。ただ、彼らは私が父の財産を放棄していないことを知っているから、簡単に蔑んだりしないのよ。以前、金庫を見たでしょう?」
「はい。あれが全財産、ですか?」
「いいえ。あれは本家に貯蓄されている分よ。父の銀行号座も全部私が受け継いだから、実際はまだまだあるわ。」
その後、何人もの財閥関係者や官僚が小夜に話しかけ、徐々に話は隣にいる海里にまで及んだ。しかし、あまり名前を明かさない方がいいという彼女の助言に従い、海里は名前を名乗らなかった。
「ごめんなさいね。大変でしょう?」
「いいえ。無理を言ったのは私ですから。あ、そろそろ始まりますかね?」
2人は会場の席に着いた。布に包まれたキャンバスが次々と運ばれてくる。小夜は会場を見渡し、眉を顰める。
「何か気にかかることが?」
「ええ。オークションだとは分かっているとけど、何だか目の色がおかしいわ。気のせいかしら?」
「どうぞ、天宮様。」
スタッフが小夜に入札する絵画の一覧が記された紙を渡した。彼女は礼を言いながらそれを受け取る。
「ん?小夜さん、その紙・・・.」
「あら?汚れてる?」
「いえ、そうではなく・・・紙の厚さが何だかーーーー」
その時、開催者の声が会場に響いた。オークションが始まる時間になったらしい。海里は何でもありませんと言い、目先にある絵画に向き直った。
※
警視庁。
「磯貝、何調べてる?報告書は終わったのか?」
「東堂警部。あ・・報告書は終わりました。何だか気になる記事があって・・・。」
龍は不思議に思い、撫子のパソコンを覗き込んだ。そこには、
『オークションの裏に潜む罠!突然消えた、盗作画家の絵画の行方は⁉︎』
「オークション?」
「はい。以前、都内で絵画オークションが行われて、多くの著名人が様々な絵画を落札したらしいんです。でも、後日オークションのスタッフが落札されたはずの絵を美術館で見て、どういうことだと交番に飛び込んできたらしいんです。」
「なるほどな。都内の交番とはいえ、著名人のことに踏み込めない。こっちに話が回って来ず、週刊誌で公になったのか。」
「はい。ただ、ほとんどの著名人はこの件に関して黙秘しています。当然と言えば当然ですけど・・・。」
龍は考えた。もしこの記事に書かれている内容が真実なら、かなり大きな問題になる。
「この“盗作画家”って誰だ?俺は美術界に疎いから分からないんだが。」
「うーん・・・私も曖昧なので・・・・。」
「三木良家、だと思うよ。」
話を聞いていた玲央が、書類から顔を上げて答えた。
「10年前くらいに、盗作疑惑がかけられて引退を余儀なくされた画家さ。真実かは分からないけど、業界から追い出されたことは事実だよ。」
「・・・・じゃあ三木良家は自分の絵を所有していない?それどころか、どこにあるかすら理解していない可能性があるってことか?」
「可能性はあるよ。無断で誰かが彼の絵を持ち出してオークションにかけ、著名人たちに落札させる・・・。別の絵画に隠して、さ。」
玲央は言いながら納得できない様子だった。彼も絵画のことには詳しくないので、情報が曖昧なのだ。
すると、撫子がそう言えば、と言って口を開いた。
「今日、都内で絵画オークションが開かれるって話があったような気がするんですが・・・。」
※
「ではこちらは700万で土田財閥様に。」
海里は次々に出される桁違いの値段に唖然としていた。小夜は目当ての絵がないか海里にしきりに聞いている。
「依頼の絵画は人物画なのよね?今日のオークションに人物画はほとんどないわ。あっても青年の絵画なんて見当たらない。第一、そんな少ない情報じゃ見つけ出すのは不可能に近いわ。1度電話して特徴を聞けないの?」
「それができたらいいんですが、三木さんも昔に描かれた絵画らしく、記憶がおぼろげだそうなんです。加えて、電話も繋がらなくて。」
「繋がらない?」
「はい。多分、公衆電話からかけられていたんだと思います。先日の名簿をスタッフの方に見せて頂いたんですが、三木さんの名前がなくてーーーー」
「それは当然じゃないかしら。三木良家はペンネームなんだから。」
海里は驚いた。てっきり本名だと思っていたのだ。
「知らなかったのね。知った上でそう呼んでいると思ってたわ。」
「全く知りませんでした。三木さんの本名って?」
「乃木家良よ。まあ入館の際の氏名記入は自由だし、名前がない可能性もあるけれど。」
「そうですか・・・。」
その時だった。奥の倉庫から、甲高い悲鳴が聞こえてきたのだ。海里と小夜は思わず立ち上がり、海里は躊躇うことなく駆け出した。
「どうされたんですか⁉︎」
倉庫の前には、腰を抜かしたスタッフが尻餅をついていた。ガタガタと震え、倉庫の中を指し示す。海里は中を見て、愕然とした。
そこには、先日話をしたばかりの、三木良家・・乃木家良が、首を吊って死んでいたのだ。
「三木さん・・・⁉︎そんな・・一体どうして⁉︎」
「江本さん!何があったの⁉︎」
「警察を呼んでください!倉庫の中で三木さんが亡くなっています!」
小夜は驚き、遺体を見て息を飲んだ。海里は拳を握り締める。
(なぜこんなことに⁉︎
三木さん・・・あなたが探している絵は、きっとあなたにとって大切な物だったはず・・・。それを私に託す理由は分かりませんが、絶対にこのままにはしておけない!この事件は、必ず私が解き明かします!)
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる