【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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24】売り切れたロコモコ丼

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24】売り切れたロコモコ丼

 今日も定時に仕事を終え、俺の足はまっすぐに海野食堂へ。
繁盛している様子の店の中で、気配を消しつつ買えなくては困ると弁当を眺める。今日もどれも美味しそうだと思っていると、先客の人が海野さんに話しかけている声が聞こえた。(決して盗み聞きなんかじゃない)

会話の途中に海野さんが「僕」と話しているのが、何だか新鮮に感じる。俺だって、最初来た時は「僕」と聞いていたのに、友達になって欲しいと言われてからは二人の時は「俺」と気さくに話をしていたから、何だか僕と話す海野さんは新鮮だ。それから、他のお客さんと俺は違うんだと嬉しいと思ってしまった。だがどうして俺は嬉しいと思った? と考えようとした時。

「じゃあ、コレ! このロコモコ丼にします!」

聞こえた「ロコモコ丼」に、頭が一杯になる。
何故? という気持ちより、食欲が優先。ハッ! とした時には、先ほどのお客さんがロコモコ丼を買って出て行った。思わず顔を上げてチラリと見えたロコモコ丼も美味しそうで、思わずどこにロコモコ丼があった? と探すため、再び視線を弁当へと戻した。

「あははっ。水野さん、ロコモコ丼探してるの?」

聞こえた声がさっきまでと違って明るく、子供っぽい。この様子だと、店には俺と二人だけなんだと顔を上げて、俺も答えた。

「うん。ハンバーグに目玉焼きだろ? 俺の味覚では好きしかないじゃん」

「だろうね。水野さんが好きかなって作って、今日試しに作ってみたんだけど」

「みたんだけど?」

「さっきので完売したよ」

ガーン! と俺の目が見開く。小さく「俺のロコモコ丼」と呟いてしまったが、待て。今、俺が好きそうだからで作ってくれたのか? 俺目線で? 良いの? そんなことを思っていると、笑い終えた海野さんがまたカウンター腰に俺の方へ顔を寄せて言った。

「水野さんて、本当に表情豊かだね。可愛い」

「は?」

今俺、可愛いって言われた? え? 俺、可愛いのか??
何だ? と理解が遅れてくる俺をよそに、海野さんはまたニコリと笑う。またその顔が良くて、くぅ~! と胸がなんとも言えない気持ちになる。さっきの何故? だとか、ドキンとするのとも違う。多分、俺はこの海野さんの顔が好きなんだと思う。

(くそぅ、イケメンめ。この笑顔と可愛いの一言で、今まで何人虜にしてきたんだ……!)


「う゛っ……イケメン゛っ……!」

「水野さんにそう見えるなら、良いか」

(うん??)

また何で俺からイケメンに見えたら良いんだ? と思ったが、変わらず顔が良い海野さんの笑顔で考えるのを止めた。あと、また機会があれば次こそロコモコ丼が食べたい。

*******
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