【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ

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【高校編】分岐・山ノ内瑛

おめでとう

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 結局のところ、私はただのコムスメなんだよなぁ……と実感したのは、校則の改革の件で。

「敦子さんの鶴の一声なんだもんなぁ」

 家のリビングでぶうぶう言ってると、シュリちゃんに小突かれた。

「いたっ」
「目的が達成できたんだから御の字じゃないの。何か文句あんの?」
「……ないです」

 おでこを両手でおさえながら、私はそう答えた。
 校則の改革、OG会の強烈な反対を押し切ったのは「時代です」っていう敦子さんのひとこと、だった。

「さすがにあのBBA共も常盤コンツェルン総帥には逆らえなかったみたいねぇ」
「権力う」

 まぁそれに助けられてるっていうか、権力傘にきてるのは私なんだけれど。

(悪役令嬢感、はんぱない)

 そんな感じの11月半ば、学校へ行って、私はこっそりバスケ部の朝練を眺める。

(まさか生徒会室がこんなに眺めが良かったなんて)

 ふふふ、と役得役得、と呟いた。
 生徒会室の窓からは、グラウンドが見渡せる。
 さすがに体育館は無理だけど、こうやって外練してるのをこっそり見るのは可能なのでした!

(あー、走ってる)

 アキラくんはめっきり寒いのに、暑いのか上ジャージ脱いで友達と騒ぎながら走ってるみたいだった。グラウンド何周くらいするのかなぁ。

「ぼ、望遠鏡買おうかな」
「星でも見るのか?」

 背後からのツッコミに振り返ると、そこには樹くんが苦笑して立っていた。

「あ、えへへ、おはよー」
「山ノ内か」
「うん」

 あー、なんかアレだな、ストーカーチックだとか思われてそうですよ?

「樹くんはどうしたの」

 ごまかすようにそう聞くと、生徒会長の机からノートを取り出す。

「少し議題をまとめておこうかと」
「……忙しいよね?」

 樹くんはかたをすくめる。

「大したことはないさ」
「そうかなぁ」

 部活に勉強に、生徒会。

「それはそうとして、例の校則の件。良かったな」
「あ、うん」

 私は頷いた。

「おかげさまで、だよ」
「? 俺はなにも」
「静子さんも加勢してくれたみたいだから」

 静子さんは、樹くんのおばあちゃん。やっぱり青百合ここの卒業生で、発言力は相当強かった。
 そう言うと、樹くんは苦笑した。

「あの人はそもそも縛られるのが嫌いなんだ」
「ぽいよね」
「それも含めて、おめでとう、だな、華」
「?」

 聞き返そうとしたとき、予鈴が鳴る。私たちは並んで生徒会室を出た。
 クラスに着くと、同じクラスの大村さんにも「おめでとー」と朝から言われる。

「? ありがとう?」

 校則の件、もう広まってるのかな? 委員会からの公式発表はまだなんだけれど。

「あれ、なにその反応。別件だと思ってるねこれ」
「別件ん?」
「職員室前行ってみな~」

 言われるがままに、というか半ば引きずられるように来た、そこには。

「あ」
「実力テスト、ついに1番とったね~」

 目の下にクマつくった甲斐あったじゃん、と頬を(なぜだか)つねられた。

(うわぁ)

 思わず立ちすくむ。うわー、そうか、学年……っていっても理系で一位。うわぁ。

「う、嬉しい……」
「古典は相変わらず酷いねー」
「う」
「でもそれ補って総合一位か」

 おめでとう、と言われてやっと私はゆっくり頷く。死ぬほど勉強したかいがあったよー……。
 と、二人で廊下を離れようとしたとき。

「よくもまぁ、恥ずかしくないわね設楽華ッ!」
「あ、出た」

 横で大村さんが舌打ちしながら呟く。視線の先には(当たり前のように)桜澤青花。

「あたし慣れてきたわ、コイツが現れるの」
「いや、慣れないでよ~」

 こっそりとそんな会話をする。
 仁王立ちしている青花はふん! と鼻息荒く私を睨みつける。

「こうも毎回毎回、不正で上位をとって! しかも今回は恥知らずにも一位にしてもらったの!?」

 騒ぐ青花を横目に、私はため息をついて大村さんにこっそり言う。

「実はさ」
「なに?」
「最近気がついたんだけど」
「うん」
「やっぱりさ、無視がいちばんいいのかも」

 大村さんはきょとん、としてそれから笑った。

「そだね」

 私たちは踵を返して、廊下を反対側に走り出した。

「あ、待ちなさいっ、正々堂々とっ」

 青花の叫び声が聞こえるけど、もー知らない!
 あそこにはたくさん生徒がいたし、もしかしたらまた変な噂とかになっちゃうかもだけど、もう気にしたりなんかしない。

(だって忙しいんだもん)

 あんな変な子、構ってる暇なんかないんだ。
 だから、私は知らなかった。
 青花がどんな顔で私をみていたか。
 なにをしようとしていたのか。
 何も、気がつかなかったんだ。
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