美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

花里 美佐

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第五章

恋人

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 約束の日。

 久しぶりに会えた嬉しさで、自分から彼の手をつかみに行った。彼は驚いたんだろう、一瞬目を見開きびくっとしたが、すぐに私の手を強く引いてたくましい腕の中へ迎え入れてくれた。

「そうか、同じ気持ちだったんだな、会いたかったよ、さくら」

 私も彼の香りに包まれながら、顔をあげて答えた。

「私も会いたかったです、蓮さん」

 人目もあり、彼は私のおでこに軽く唇を乗せて腕の中から解放した。

「さてと、さくら姫」

 彼は上から下へと私を見て、にっこりする。まぶしすぎる。

「今日は希望通りスカートで来てくれたようだな。可愛いぞ」

 膝より少し短いふわりとしたスカート。夏らしさを意識した水色に花柄だ。

「ええ。蓮王子のご希望とあらばお応えしないといけません。王子は今日も素敵ですね」

 彼は恥ずかしそうにしている。なんか、嬉しい。

 今日の彼は半そでのブランド綿シャツ。同じブランドの少し短めのパンツ。デッキシューズ。夏らしい装いだ。でも彼は何を着ても似合う。本当にカッコいい。こんな素敵な人とお付き合いなんてまだ信じられない。

 花火の前に日が沈むのを一緒に海から見ようというので予定より早めに海へ出た。今日は快晴。きっと素晴らしい夕日が見られるだろうと思った。

 甲板は暑いので夕方になるまで下で少し休憩。軽くつまみながら話した。

「さくら。叔父さんはどう?手術するんだろ」

「ええ。来週の予定です」

「何かあれば言ってくれ。力になるよ。お金のことも含めてだぞ」

 私の顔を見て言う。もう、嫌になる。

「……それはだめ」

「さくら、治療にお金かかるだろ」

「大丈夫、それは心配しないでください。それより、店のほうの利益を……芹那さんにも言われちゃった。きちんとお支払いしますね」

「芹那って?」

「新しく本部から派遣されて店に入ってくれた人です。フラワーアーティストとして名取の名前も出しながら活躍している人なんです。正直、私より有名人。彼女のお陰でセレブリティのお客様が何人かつきました」

「芹那……名取の推薦だったよな。苗字はなんだ」

「林さんです。林芹那さん。以前こちらに住んでいたこともあるそうです」

 彼は少し黙って考えている。なんだろう。

「さくら、叔父さんのことが落ち着いたら色々相談しよう。早めに決めたほうがよさそうだ」

「え?」

「まあ、いい。君はふたつのことをいっぺんにはできないタイプだな。結構目の前のことを一生懸命になってやる。恋愛もそうだろ?僕一筋だ」

「何それ?どういう意味です……」

「ごめん、悪い意味じゃない。とにかく、叔父さんのこともあって叔母さんを支えないといけないだろ。店のことはそのあとだ。そして、それが決まったら両親に会ってもらいたい」

「蓮さん。それは……」

「だから、ひとつずつクリアにしていくから焦らなくていい。目の前のことからやろう。実は僕も色々あって少し忙しくなりそうなんだ」

「蓮さんの忙しいのなんて今にはじまったことじゃないですよね」

「あ、言うなあ。確かにそうだけど、ちょっとね」

「……何かありました?」

 彼の表情に含むものがあった。私は嫌な予感がした。

「いや。もうこの話はおしまいだ」

 そう言うと、彼は私の手を引いて甲板に出た。日が沈んできていた。海に日の光が映えて綺麗だ。

 彼は私を抱き寄せ、私は彼の肩に頭を乗せながらその夕日が落ちていくのを見守った。

「日が落ちる瞬間に願い事をひとつしようか」

「……なにを?」

「俺の願い事はさくらと一緒にいられること。それだけだ」

「それなら私も蓮さんと一緒にいられることをお願いする」

「それならってなんだ?ほかにもあるのか?」

「叔父さんの手術がうまくいきますように……」

 彼は私の顔を見てうなずいた。

「それは大丈夫だろ。担当医が名医らしいじゃないか」

「私が蓮さんと一緒にいられることのほうが神様にお願いしないと難しいことなのかな?」

「……さくら。君は僕の一部だ。もう離さない」

 私は彼の身体にしがみついた。日が落ちる。

「大丈夫です。私、どんな揺れがきてもこうやってしがみついているから。でも何かあって万が一船から落ちたり、店ごと転覆することがあったら泳いで助けにきてね」

 彼は私に覆いかぶさりつぶやいた。

「もちろんだ。さっき言っただろ。君は僕の一部。さくらの救命ロープは僕に繋がってる。すぐに泳いで助けに行く」

 そう言うと、キスをして離れられなくなった。彼が私の身体を触り始めた。

「だめだ、君が先に欲しい。今日は最後までもらうよ、いいね」

「あ、蓮……さ……」

 船の寝室へ運ばれて上から丁寧にほぐし、愛された。服を取り祓われた。彼が私をじっと見た。

「ああ、綺麗だ、さくら……夢にまで見た……やっとだ」

「ああ!」

 彼に私はついていくので精一杯だった。しばらくはお互いしか見えなかった。

 ちょうど、バスローブ姿で彼は水を飲んでいたところだった。

 バン、パーン!バン、バン、パーン!

 外から音がしだした。花火が上がったのだろう、対岸のほうから人の声もする。

「さくらもこれを着て」

 私にもバスローブを羽織らせる。そしてふたりで甲板へ出た。すごく綺麗に花火が見える。私達が独り占めしているみたい。

 おそらく、今頃ホテルの最上階からロマンチックにここを眺めている人もいる。また、海岸沿いの公園にも人がいっぱいだろう。

「最高だな。これならいい商売になる」

「もう、蓮さんったら、こんなときに……」

 彼は私を抱き寄せ、軽く口づける。

「もちろん、初回は姫とふたりきりで満喫させてもらったよ……愛してる、さくら……もう、全部僕がもらった。誰にも渡さないからな」

 花火が上がり、彼の顔が見えた。色っぽい彼の顔。初めて見た。男らしいたくましい身体に寄り添った。

「蓮さん、私もあなたが大好き」

「可愛いことを言う。花火よりさくらがまた欲しくなる」

 花火の音を聞きながら数回のキス。彼は私のローブの間から手を入れて広げてしまった。お互いに身体の熱が戻り、そのまま抱かれて彼にベッドへ戻された。

「……さくら、かわいい……もっと啼かせてやる。どこにも聞こえない……二人だけだ」

 彼の動きが激しくなり、私は彼しか見えなくなった。

 結局、ほとんど花火を見ることはできず、その音をバックに私達の音は綺麗にかき消された。

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