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彼の思惑3
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「ありがとう。色々言ってくれたんだってね。でもね私、一旦本部へ戻ることになったの。向こうで無理なら、半年後支社へ戻してくれるってさ」
「本当か?よし、半年と言わず、とっとと行って、とっとと戻ってこい。お前に本部へ行かれると俺も困るんだよ。とりあえず、今日はこのプレゼン資料頼むよ。あと、これを入れたいんだ」
彼がパソコンの中を見せた。
「お任せあれ。坂本君が出世できるようにアシストするね」
すると、彼は周りをキョロキョロと見て、私の横に来て小声で話した。
「おい、それホントなのか?支社長からもチラッと言われたが……」
私は彼の顔を見てにっこりうなずいた。彼は勢いよく立ち上がって両手を上げてガッツポーズをする。
「今回の結果次第らしいから頑張ってね」
「おう、頑張るわ」
午前中は坂本君のプレゼン資料を作ることに専念した。
昼休みになって、崇さんは支社長と昼に出て行った。私は坂本君に資料を渡してとりあえず社食へ。
すると、携帯に電話が入った。辰巳さんだ。急いで出た。
「香月。今、いいか?」
「はい」
「驚いただろ?」
「それはもう驚きました。辰巳さん、まさか本当に外れるわけじゃないですよね」
「外れた方が彼のためだと思う。それに、後任がお前なら俺に聞きやすいだろうし、お前を通して彼に接触しているようなものだから俺はそれでも構わない」
「辰巳さん、今何をなさっているんです?」
「総帥秘書の新藤さんの手伝い。というか、新藤さんが辞めるかもしれないんだ」
「ええ!?」
「奥様がご病気で結構重篤なんだ。今も早く帰ったり、遅く出たりしている。本当は斉藤が新藤さんの後につくと立候補していたが、新藤さんが俺の方が総帥の仕事を知っているからと言って、結局俺が全てやっている。だが、総帥はいずれ時期を見て俺を崇さんに戻す気だろうな」
「それはそうでしょう。みんなそう思ってます。私なんて無理ですから……」
「総帥は俺を使って崇さんを支配したいし、女のお前を警戒してる。縁談の話を聞いたか?」
「聞きました。何考えてんでしょうね、御曹司」
「お前を側に置くことから全てを始めたいんだろ。ただ、継承するだけじゃなくて自分の世界を作りたいんだ。さすが専務の教え子だよ」
「私はそういう対象じゃありませんってお伝え下さったそうですので、黒沢さんも喜んだんじゃないですか?」
「馬鹿だな、香月。仕事は出来るくせに相変わらず鈍い。まあ、とにかく斉藤と別れて本当に良かった。お前は大切な俺の後輩だし、あんなチャラい奴にもったいない。とっととお前から振ってやればよかったのに……あいつのことは戻ってきても心配ないぞ。何かしたら俺がぶん殴って押さえてやるからな」
「……ありがとうございます」
私が本部秘書課に戻りたくない本当の理由をわかってくれている。
「とにかく、崇さんを頼んだぞ」
「頼まれません。きちんと引き継ぎと今後もフォローをお願いしますね」
「わかってるよ。とにかく、佐々木部長の件は本当に助かった。ありがとう。さっき崇さんからも連絡が来ていた。お前のこと褒めてたぞ。俺はまた怒られたよ。全部仕事をお前に振って逃げたからな」
「自業自得です」
「いいんだ。支社にお前をやって、結果辞めさせずにすんだ。とにかく早く戻ってこい。御曹司は忙しいからな」
「……わかりました」
「ああ、じゃあな」
昼休みがなくなりそうで、急いでご飯を食べる。難波さんがこちらをチロチロと見てる。立ち上がって、私の横に座った。
「香月さん、本部へ戻るって本当です?」
「誰から聞いたの?」
「支社長です」
「え?みんな知ってるってこと?」
「そうじゃないですか?というか、私、これから支社長の秘書やれって言われたんです。いやなんですけど……」
私は彼女の耳元で囁いた。
「坂本君のはどう?」
びっくりしたように私を見る。
「もしかすると、空席のところに彼が入るかもしれないよ。難波さん、坂本君のことまんざらじゃないでしょ?」
真っ赤になった彼女が目の前にいる。やっぱりね。そうじゃないかとずっと思ってた。
「どうして……?」
「まあ、いいじゃない。とにかく、彼が今回のプロジェクト後に昇格したら、元々部長の秘書だったんだからやればいいんじゃない?支社長には私から言っておく。今まで難波さんに助けてもらったお礼よ」
すると、難波さんが私に抱きついた。
「うれしいです。でも、坂本課長は香月さんの事……」
「私、坂本君とは仲がいいけどタダの同期よ。それに、本部へこのまま戻ると恋愛なんてしてる時間は皆無になる」
「香月さん、もしかして御曹司の秘書になるんですか?前は専務理事の秘書だったって噂が……」
「そうね。みんな気を遣って何も言わないでくれたけど、色々あってね」
「でも支社長の秘書は?」
「元は佳奈美さんだったのに、私が来てから、無理矢理私にされたの。絶対佳奈美さんに戻してもらう」
私が言い切ったら、難波さんが拍手してる。
「すごい、香月さん。私、坂本課長のことがなかったらもっと香月さんと仲良くなれました。残念です」
「これからよろしくね。何かあれば連絡するとき難波さんにするかもしれない」
「はい、おまかせください。あと、戻られる前に出来たらコーヒーを美味しく入れるこつを教えて下さい。支社長がいつも褒めてました」
「うん。いいよ。あ、時間だ。戻ろう」
ふたりでフロアへ戻った。
「本当か?よし、半年と言わず、とっとと行って、とっとと戻ってこい。お前に本部へ行かれると俺も困るんだよ。とりあえず、今日はこのプレゼン資料頼むよ。あと、これを入れたいんだ」
彼がパソコンの中を見せた。
「お任せあれ。坂本君が出世できるようにアシストするね」
すると、彼は周りをキョロキョロと見て、私の横に来て小声で話した。
「おい、それホントなのか?支社長からもチラッと言われたが……」
私は彼の顔を見てにっこりうなずいた。彼は勢いよく立ち上がって両手を上げてガッツポーズをする。
「今回の結果次第らしいから頑張ってね」
「おう、頑張るわ」
午前中は坂本君のプレゼン資料を作ることに専念した。
昼休みになって、崇さんは支社長と昼に出て行った。私は坂本君に資料を渡してとりあえず社食へ。
すると、携帯に電話が入った。辰巳さんだ。急いで出た。
「香月。今、いいか?」
「はい」
「驚いただろ?」
「それはもう驚きました。辰巳さん、まさか本当に外れるわけじゃないですよね」
「外れた方が彼のためだと思う。それに、後任がお前なら俺に聞きやすいだろうし、お前を通して彼に接触しているようなものだから俺はそれでも構わない」
「辰巳さん、今何をなさっているんです?」
「総帥秘書の新藤さんの手伝い。というか、新藤さんが辞めるかもしれないんだ」
「ええ!?」
「奥様がご病気で結構重篤なんだ。今も早く帰ったり、遅く出たりしている。本当は斉藤が新藤さんの後につくと立候補していたが、新藤さんが俺の方が総帥の仕事を知っているからと言って、結局俺が全てやっている。だが、総帥はいずれ時期を見て俺を崇さんに戻す気だろうな」
「それはそうでしょう。みんなそう思ってます。私なんて無理ですから……」
「総帥は俺を使って崇さんを支配したいし、女のお前を警戒してる。縁談の話を聞いたか?」
「聞きました。何考えてんでしょうね、御曹司」
「お前を側に置くことから全てを始めたいんだろ。ただ、継承するだけじゃなくて自分の世界を作りたいんだ。さすが専務の教え子だよ」
「私はそういう対象じゃありませんってお伝え下さったそうですので、黒沢さんも喜んだんじゃないですか?」
「馬鹿だな、香月。仕事は出来るくせに相変わらず鈍い。まあ、とにかく斉藤と別れて本当に良かった。お前は大切な俺の後輩だし、あんなチャラい奴にもったいない。とっととお前から振ってやればよかったのに……あいつのことは戻ってきても心配ないぞ。何かしたら俺がぶん殴って押さえてやるからな」
「……ありがとうございます」
私が本部秘書課に戻りたくない本当の理由をわかってくれている。
「とにかく、崇さんを頼んだぞ」
「頼まれません。きちんと引き継ぎと今後もフォローをお願いしますね」
「わかってるよ。とにかく、佐々木部長の件は本当に助かった。ありがとう。さっき崇さんからも連絡が来ていた。お前のこと褒めてたぞ。俺はまた怒られたよ。全部仕事をお前に振って逃げたからな」
「自業自得です」
「いいんだ。支社にお前をやって、結果辞めさせずにすんだ。とにかく早く戻ってこい。御曹司は忙しいからな」
「……わかりました」
「ああ、じゃあな」
昼休みがなくなりそうで、急いでご飯を食べる。難波さんがこちらをチロチロと見てる。立ち上がって、私の横に座った。
「香月さん、本部へ戻るって本当です?」
「誰から聞いたの?」
「支社長です」
「え?みんな知ってるってこと?」
「そうじゃないですか?というか、私、これから支社長の秘書やれって言われたんです。いやなんですけど……」
私は彼女の耳元で囁いた。
「坂本君のはどう?」
びっくりしたように私を見る。
「もしかすると、空席のところに彼が入るかもしれないよ。難波さん、坂本君のことまんざらじゃないでしょ?」
真っ赤になった彼女が目の前にいる。やっぱりね。そうじゃないかとずっと思ってた。
「どうして……?」
「まあ、いいじゃない。とにかく、彼が今回のプロジェクト後に昇格したら、元々部長の秘書だったんだからやればいいんじゃない?支社長には私から言っておく。今まで難波さんに助けてもらったお礼よ」
すると、難波さんが私に抱きついた。
「うれしいです。でも、坂本課長は香月さんの事……」
「私、坂本君とは仲がいいけどタダの同期よ。それに、本部へこのまま戻ると恋愛なんてしてる時間は皆無になる」
「香月さん、もしかして御曹司の秘書になるんですか?前は専務理事の秘書だったって噂が……」
「そうね。みんな気を遣って何も言わないでくれたけど、色々あってね」
「でも支社長の秘書は?」
「元は佳奈美さんだったのに、私が来てから、無理矢理私にされたの。絶対佳奈美さんに戻してもらう」
私が言い切ったら、難波さんが拍手してる。
「すごい、香月さん。私、坂本課長のことがなかったらもっと香月さんと仲良くなれました。残念です」
「これからよろしくね。何かあれば連絡するとき難波さんにするかもしれない」
「はい、おまかせください。あと、戻られる前に出来たらコーヒーを美味しく入れるこつを教えて下さい。支社長がいつも褒めてました」
「うん。いいよ。あ、時間だ。戻ろう」
ふたりでフロアへ戻った。
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