永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

honyarara

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第五章 再興の烽火

再興の烽火

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山間に咲く初秋の薄紅の花が、静かに揺れていた。戦が去り、安寧を取り戻しつつある西国の片隅で、歴史に終止符を打たれたはずの一族の名が、再び風に乗って囁かれ始める。尼子――その名は、敗者として語られる運命にあったが、ある男の静かな誓いが、再びその火を灯そうとしていた。

山中鹿之介。月山富田城の落城を経験し、血に染まる戦場をくぐり抜けた若き剣士。その瞳には、敗北の痛みと、誓いの炎が同居していた。「七難八苦を与え給え、我に尼子再興の志を貫く力を」との祈りは、彼の命そのものであり、過去に縛られるものではなく、未来へ託す槍となった。

かつて尼子家に仕えた者たちは、敗戦後、山野に潜み、名を隠して暮らす日々を強いられていた。だが、鹿之介の元に届く密書や手紙は、いずれも一つの意志を共有していた。「誇りは消えていない。我らはただ、再び集う時を待っている」と。

伯耆、出雲、石見の山間に点在する旧臣たちが、静かに集結を始める。民草の中に紛れ、機を窺い、鍬の代わりに刀を研ぐ者たち。鹿之介は彼ら一人一人と語り、尼子の過去ではなく、未来のために歩むことを誓わせた。

一方、毛利元就はその動きを完全には看過していなかった。情報網は彼に報せていた。「鹿之介、再び志を集めつつあり」と。元就は静かに笑む。「よい。容易には消えぬ火こそ、誇り高きもの。だが、政とは情念だけでは動かぬ。鹿之介よ、我が威光の真価を見よ」

そうして、西国の空にまた一筋、遠くかすかにだが、赤き烽火が立ち上がる。再び始まるものは復讐ではなく、誇りの再生であり、歴史への挑戦であった。
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