永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

honyarara

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第十八章 問いの行路

問いの行路

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出雲の山間に立つ鹿之介の姿は、かつての剣士というよりも、“語る者”の面影を帯びていた。矛盾に揺れる義軍を前に、彼が選んだのは武ではなく「問い」の道――それは、理念を再び根に戻すための旅だった。

鹿之介は、信頼する若き兵・吉晴とともに、かつて尼子領であった村々を巡ることを決めた。訪れる先々で、彼は「そなたらは、我らの旗をどう見ておるか」と問うた。民は驚きながらも、口々に語った。

ある老女は、畑の傍で答えた。
「旗はありがたかったよ。毛利の代官は米を持っていくが、義軍は水桶を運んでくれた。でも、わしらは誰に従ったのかよく分からんのじゃ。ただ、優しゅうしてくれた者に手を合わせただけでな」

鹿之介は深く頷き、吉晴に言った。「それだ。民は旗を見ておらぬ。心を見ておったのだ。ならば、我らはその旗に心を宿しておらねばならぬ」

旅の途上、鹿之介は出雲の寺院に立ち寄った。そこには、義軍の勝利の歌が子どもたちの間で流行していた。だが、その歌詞には「誇り」「勝ち名乗り」「敵への裁き」といった言葉が連なっていた。
「我らは、これを唱えて何を伝えてしまったのか」と、鹿之介は口を引き結んだ。

彼は寺の僧と対話した。僧は言った。
「言葉は、人の意志を継ぐもの。だが、誰の意志かは常に変わる。若者に伝えたいものが誓いであれば、歌にもその重みを残さねばなるまい」

その夜、鹿之介は拠点に戻り、軍の会議の場でこう語った。
「義軍よ。我らは再び立ち止まるべき時にある。旗は誇りであるが、民にとっては命でもある。その旗が曲がるとき、誰かの暮らしが折れる。ならば、我らこそ旗の守人として、“問いを抱え続ける軍”でありたい」

この発言に、一部の兵は沈黙し、またある者は拳を握り直した。理念は強さではない。揺れること、問うこと――その繰り返しのなかに、真の“志”が宿るのだと。
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