精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

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第054話 豪族さん無双の結末

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 オーシャンビュー……。

 違う。

 湖ビューでの生活を楽しめる絶景の村に村人達が満足してくれたのを見送り、私達は旅に出る。

 いや、そろそろ引っ越し関係で時間を取られて、行商に行けていなかったので。

 きっと、皆さんカンカンだと思うのですよ。

 という訳で、ヤクと一緒にごろごろ出発です。

 道に関して、ローマ街道化したお陰で上下の振動はかなり減りました。

 人間の手が作る道具なので、車輪の歪みとかもあってそもそも乗り心地なんての世界ですが。

 それでも、大きい上下の動きが無くなったのは快適です。

 ヤクも轍に沿って動かないで良いと引くのも楽なようで。

 すいすいと進んでいきます。

 試験走行では等倍の日数で進めていましたが。

 もしかすると道が整った今の方が町までは早く着くかもです。

 そんな事を考えながら、精霊さん達謹製の野営場に入ります。

 旧道だと、誰が通るか分からなかったので建物を作るのも難しかったですが。

 森深い今の道を見つけられる人間はほぼ存在しないと考えますので、大胆に仮眠用の建物を作っちゃいました。

 これで冬の野営でもぬくぬくです。

 リサさんも言葉には出さないですが、寒空の下での野営はちょっと辛そうでしたので。

 そんな感じの余裕をもった旅程で、辿り着きました。

 町。

 状況が一変しても他の場所は変わらないなと感慨にふけっていると、何だか門の辺りが騒がしい。

 はて、と思っていると。

 何人かが町の奥に走っていくのが見えます。

 捕りものでもやっているのかなと思いながら、のんきにてちてちしていたら。

 ダリーヌさんが現れた。

 どうする?

 いや、どうせ店に顔を出すのに。

 態々出迎えに……。

 とか考えていると、強制的に引っ張られて店まで辿り着く羽目に。

「何やってんさね。あんたらの村が野盗に襲われて全滅したって噂さ」

 ダリーヌさんの言葉に、私とリサさん、くてんと首を傾げました。

 どうも話によると。

 豪族さんの村の人。

 やっぱり、あの後に軍を率いて村へ侵攻してきたようで。

 辿り着いてみたら、一面の荒野。

 訳が分からないなりにも、村の人間がいなくなった事と、収入が当てに出来なくなった事は理解したと。

 困った豪族さん。

 どうも領主に泣きついたようで。

 テーマは。

『財産の限りをあの村に融資していたが、野盗に襲われて壊滅した。生き残りもいない。あの村の財産に関しては引き継ぐし、業務があれば回して欲しい』

 らしいです。

 うん。

 清々しい屑っぷり。

 財産に関してはいつもニコニコ現金払いなので、全然問題は無いのですが。

 燻製やら、積み木やら、ハンドクリームやら。

 そもそもその他の交易品を用意出来る訳もなく。

 前金を払った相手が騒ぎ出しているのが、まさに今という事で。

 うん、何か全然関係のないところから、変化球がビーンボールで来ましたよ。

「前金ですか? そんな取引、今までした事が無いですが」

 ダリーヌさんに聞いてみたのですが。

 どうも燻製とかをいつもの酒場以外にも卸す契約を結んで、原材料費を徴収したようなのです。

 ふむ。

 まぁ、豪族さんの名前で契約したみたいですし。

 無視で問題無さそうです。

 ダリーヌさん曰く、領主さんに関しては。

 あれだけ旨い事儲けを出している人間が、備えをしていない訳が無いと確信しているご様子で。

 これを機に、豪族さんを平定して周辺の村々を組み込む算段を立てているようです。

 そもそも辺境の村なんて治めても持ち出しの方が多いので、損ばっかりなのですが。

 流石に治安の悪化の恐れの方が心配らしく。

 大きく動くつもりらしいです。

 その準備中なので、私達が訪れても特に何もするなという話を頂いているそうなので。

 動くつもりはありません。

 という訳で、新しい村の情報をダリーヌさんとやり取り後は、酒場に移動です。

「ご迷惑をおかけしまして」

「構わんよ。あの辺境の奥で生活してんだぜ? 野盗如きにどうこうされるなんざ、はなっから思ってねぇよ」

 マスターさんに挨拶をしにいったら、大爆笑されました。

 いや、豪族さんの件です。

 前からずっと信用、信頼という話が出ていますが。

 やっぱりこういう時代なので。

 場末のお肉屋さんとかに行くと分かるのですが。

 屑肉とか、何の肉が混じっているのかも分からない。

 製造年月日、何それ美味しいの状態なのです。

 なので、お店側としてはきちんと原材料を扱う卸先を求める訳で。

 燻製の製法を持っているのがうちだけなので、そもそも悪い事をするとばればれなのです。

 それに、使っている材料も、個性的なお肉ばかりなので、食べれば分かります。

 そういう意味で、いい意味でも悪い意味でも信用、信頼しやすい環境なのです。

 で、ここの酒場にしか卸さないのは品質管理を兼ねていまして。

 消費した分を卸す流れになっているのです。

 なので、他のお店に流出する事もないので、管理が楽なのです。

 問題は、他のお店。

 看板メニューに臍を嚙む事しか出来ない状況に一筋の光明。

 豪族さんの手練手管に騙されて、物も無いのに契約をしちゃったと。

「元から、何の材料を使っているかも分からなかった店ばっかりだからな。いい気味だ」

 まともなお店は取り合わなかったようですが、手を出したのはどこも札付きばっかりだったようで。

 マスター的にはオルオッケーなようです。

 しかしまぁ。

 村の移動にかかった極僅かな時間で。

 これだけの問題を引き起こせる豪族さんの無駄なアグレッシブさにほとほと頭が下がる思いでしたとさ。
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