ヴァンパイア皇子の最愛

花宵

文字の大きさ
49 / 73
第五章 蒼と紅の力を合わせて頑張ろう!

44、さぁ、今こそ蒼と紅の力を合わせる時です!

しおりを挟む
 真剣な面持ちで、お姉ちゃんは口を開いた。

「蒼の吸血鬼女帝パメラとして、貴方に言っておきたい事があるの。私はアリシアが教えてくれた、両国で真の和平を結びたいという貴方の夢を叶える事に協力したいと思っているわ」
「ありがたきお言葉、誠に感謝致します」
「そこで尋ねたいのだけど、そちらに攻撃に特化した魔法道具はあるかしら? 会場を一気に破壊できるような、出来れば強力なものだとありがたいわ」

 お姉ちゃんの質問にフォルネウス様は思考を巡らせた後、言葉を選んでお答えになった。

「……危険なので現状はありませんが、作る事は可能だと思います」
「こちらは強さが全ての世界。トップなんてコロコロ入れ替わるし、私もいつこの首を獲られるか分からない。だから私が女帝として居られるうちに、貴方にお願いがあるの」
「こちらで叶えられるものならば、何でもご助力致します」
「始祖の血を一番色濃く受け継ぐ蒼の吸血鬼には、蒼の血が流れる全ての吸血鬼を一時的に支配できる力を持っているわ。私はそれを使って、この世に存在している全ての蒼の吸血鬼を一か所に呼び集める。だからまとめて始末して欲しいのよ。それで、全てを終わらせましょう」

 蒼の吸血鬼を一ヶ所に集めて攻撃する?
 そんな事をしたらお姉ちゃんが……

「まさかレイラ、君もそのまま死ぬつもりなのか?!」

 静かに話を見守っていたお兄ちゃんが、驚いた様子で尋ねた。

「蒼の吸血鬼が存在する限り、人々は安心して暮らせないでしょう。元々私は目的を達成したら、生き続けるつもりなんてなかった。でも今は守りたい者が出来た。貴方達が安心して暮らせる世界を作りたいのよ」
「お姉ちゃん、そんなのは絶対にダメ!」
「申し訳ありませんが、私もその意見には賛同しかねます」
「ダメだ、僕もそんな事は認めない!」

 皆に否定されても、お姉ちゃんは譲ろうとしなかった。

「どうしてよ! 第二のアザゼルのような男が再びトップになれば、リグレット王国はまた甚大な被害を受けるわ。もう私のように、大切な人を冷酷な吸血鬼に奪われるような、そんな悲しい思いをしてほしくないわ」

 復讐を誓って生きてきた頃のお姉ちゃんを、私は知らない。想像を絶するほどの苦痛の中で、必死に耐えて頑張ってきたお姉ちゃんの言葉には、すごく重みがあった。

「レイラさん。貴方に出会ってこの問題は、血筋が全てではないと分かりました。貴方は誰よりも冷酷と言われる蒼の吸血鬼の血を強く引きついでいるにも関わらず、こんなにも温かい心をお持ちです。蒼の吸血鬼を冷酷な存在へと変えてしまった要因は、環境が少なからず影響していると私は考えています。なので彼等が安心して暮らせる環境を作り、別の楽しみを見出だしていければ、そこに突破口があるのではないかと思います」
「フォルネウス君の言う通りだ、レイラ。自分を犠牲にするんじゃなくて、君の持つ力を有効に活用して変えていく方法を考えよう」
「そうだよ、お姉ちゃん! もし失敗してしまっても、私が回帰魔法で元に戻すよ。だから、良い方法をこれから一緒に考えていこう。独りで抱え込む必要はないんだよ!」
「みんな……ありがとう……っ」

 お姉ちゃんの瞳からは、感極まったように涙が流れ出した。そんな姿を見ていたら、私も思わずもらい泣きしてしまって、結局お姉ちゃんに慰められてしまった。

「そこで提案があります。蒼の吸血鬼をハイグランド帝国に受け入れて行けるよう、環境を整えるつもりです。衣食住を安定させ、自我を保っていけるよう正しい知識を身に付けさせ、少しずつ更生させていければと思っているのですが……」
「そうね。それが出来ればいいのだけれど、良くも悪くも生き残っている蒼の吸血鬼は一筋縄ではいかない面倒な奴等ばっかりなのよ。力を持たない吸血鬼は奴隷のように操られて、搾取され続けるしかない。優しい吸血鬼は生き残れない狂った世界だったから」

 そう言ってお姉ちゃんは深くため息をついた。

「それだったら、私の回帰魔法で失っていった感情を少しずつ取り戻してあげるのはどうかな? 望むなら繰り返し何度もかけてあげれば、いつかは人間に戻してあげれる日も来るかもしれない」

 環境が彼等をそのように狂暴な姿へ変えてしまったのなら、そうなる前まで回帰させてあげればいい。
 そしてハイグランド帝国で正しいマナーや知識を教えて、自立を手助けしてあげたら全うな生活を送れるようになるはずだ。

「確かに、蒼の吸血鬼は元を正せば皆が無理やり人間から吸血鬼にされた者達です。人間に戻れるなら戻りたいと思っている者が居てもおかしくありません。アリシアさんの力を使えば、少しずつ彼等を更正していけると思います。問題はどうやって彼等を見つけ出し、ハイグランド帝国へ連れていくか、ですね」
「それならレイラの力で蒼の吸血鬼を呼び出して、連れていけばいいんじゃないかな? その時に一人一人希望を聞いていったらどうだい?」
「確かに、それは良い考えですね。一人一人の思いを受け入れて、一番良い方向へ導いていける素晴らしい案だと思います!」

 お兄ちゃんの意見に、フォルネウス様も喜んで同意された。

「方向性が見えてきたね。レイラ、これは君の力がなければ実行できない作戦だ。バカな真似をするより、僕はこっちの作戦の方がいいと思うよ」
「そうだよ、お姉ちゃん。皆で力を合わせて頑張ろう!」
「こちらも出来る限りの協力は惜しみません。蒼も紅も、元を正せば始祖ネクロード様の子孫です。再び手を取り合って、共に歩む事も出来るはずです」
「そうね。私もその案に乗ったわ!」

 こうして、蒼の吸血鬼救出作戦が始まった。ハイグランド帝国側で受け入れ態勢が整ってから、実行に移していく事で話はまとまり、定期的に連絡を取り合って協力していく事を約束した。

「アリシア、フォルネウス、気を付けて帰るのよ」
「二人とも、またいつでも遊びにおいで」
「うん、お姉ちゃんとお兄ちゃんも元気でね! あんまり喧嘩しちゃだめだからね!」
「レイラさん、フレデリックさん、色々ありがとうございました。準備が出来たら、またご連絡します」

 お姉ちゃんとお兄ちゃんに見送られ、私とフォルネウス様は次の目的地に向かう事にした。次の目的地、それはお母さんの所だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」  王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。  それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。  だけど、私の答えは……  皆さんに知ってほしい。  今代の聖女がどんな人物なのか。  それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢の責務

ごろごろみかん。
恋愛
見てしまった。聞いてしまった。 婚約者が、王女に愛を囁くところを。 だけど、彼は私との婚約を解消するつもりは無いみたい。 貴族の責務だから政略結婚に甘んじるのですって。 それなら、私は私で貴族令嬢としての責務を果たすまで。

処理中です...