ヴァンパイア皇子の最愛

花宵

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第五章 蒼と紅の力を合わせて頑張ろう!

43、改めてご挨拶

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 お姉ちゃんがフォルネウス様にかけていた幻覚を解いた。すると目の前で突然私の偽物が消えたものだから、驚いたフォルネウス様は、この世の終わりといわんばかりの絶望的な顔で私を探し回っておられる。

「なによ、偽物とは気付いてないのね」

 そんなフォルネウス様を見てお姉ちゃんは笑いだしてしまった。

「私、今度こそ迎えに行くからね!」
「ああ、行っておいで」

 お兄ちゃんに後押しされ、私はフォルネウス様の元へ向かった。

『アリシアです。フォルネウス様、聞こえますか?』
『アリシア! どこいにいるのだ?! 目の前で突然消えてしまったぞ?!』

 よかった、今度はちゃんと繋がった。ポータブルゴールで話しかけながら、ひたすら走る。

『すみません、フォルネウス様。それはお姉ちゃんが幻覚で作った偽物なんです』
『そうだったのか?!』

 角を曲がったちょうどその時、フォルネウス様の後ろ姿を目前に捉えた。

『本物は、ここに居ます』

 思わずフォルネウス様の背中に、ぎゅっと抱きついた。ふわっと香る落ち着いた甘いホワイトムスクの香り。フォルネウス様が近くに居るんだと実感して嬉しくなった。

「お会いしたかったです、フォルネウス様!」

 フォルネウス様は私の手に、上から優しく自身の手を重ねて下さった。

「俺もだよ、アリシア。遅くなってすまない。今度こそきちんと、君のご家族に挨拶をさせて欲しいんだ。案内してもらえるかい?」
「はい、勿論です!」
「ありがとう」

 それから私はフォルネウス様を、お姉ちゃんの元へ案内した。

「いらっしゃい。遠い所をよく来てくれたね。僕はアリシアの義兄のフレデリックだよ。よろしくね」
「フォルネウス・ハイグランドと申します。本日は突然お邪魔してしまい、申し訳ありません」
「気にしなくていいんだよ。フォルネウス君。ここで立ち話もなんだし、中でゆっくり話そう」
「お気遣い頂きありがとうございます」

 フレディお兄ちゃんがフォルネウス様の緊張を解くように、優しく声をかけて応接間に案内してくれた。

「僕はお茶を淹れてくるよ。ささ、二人とも遠慮なく座っててね」
「はい、ありがとうございます」

 席に座る前に、フォルネウス様はお姉ちゃんに向かって深く頭をお下げになった。

「先日は失礼な態度をとってしまい誠に申し訳ありませんでした。私はフォルネウス・ハイグランドと申します」
「アリシアの義姉のレイラよ。立ってたら疲れるでしょ。とりあえず座って話しましょう」

 失礼致しますと、フォルネウス様は会釈して席につかれた。

「レイラさん。まずは最初にお詫びをさせて下さい。貴方の大切な妹さんを守りきれず吸血鬼にしてしまった事、誠に申し訳ありませんでした」
「結果的にアリシアの命はそれで助かった。だからお礼を言うのはこちらの方よ。妹を助けてくれて感謝するわ。ありがとう」

 お礼を言われるとは思われてなかったようで、フォルネウス様は瞠目されていた。
 ちょうどその時お兄ちゃんが皆にお茶を出してくれて、席に着いた。

「私は以前、アリシアさんに命を助けて頂きました。その時からずっとお慕いしており、現在は結婚を前提に真剣にお付き合いさせて頂いております。彼女の何事にも真面目に取り組む努力家な姿勢も、誰にでも分け隔てなく優しく接する清らかな心も、何よりも美しい可憐な容姿も、彼女の全てが私は愛おしくて堪りません」

 フォルネウス様……少し誉めすぎじゃないだろうか。恥ずかしくて顔から火がでそう。

「これからもずっと、アリシアさんと共に過ごしていきたいと強く思っております。私の一生涯を懸けて、アリシアさんを深く愛し、必ず守り抜くと誓います。なのでどうか、私との結婚を認めて頂けないでしょうか? よろしくお願い致します」

 深く頭を下げたフォルネウス様に習って、私も「お願いします」と頭を下げた。

「僕は賛成するよ。彼以上にアリシアを幸せにしてくれる者はきっと居ないだろうし。レイラ、君はどうだい?」

 お姉ちゃんは私達に顔を上げるよう促して、フォルネウス様に確認を取るよう話しかけた。

「アリシアは、自分を犠牲にして我慢してしまう所かあるの。回りに迷惑をかけないように心に蓋をして、本当は寂しいのに素直に言えずに抱え込んでしまう。そんな思いをさせないって、約束してくれる?」
「勿論です。どんな時でも彼女の心に寄り添い、本音をきちんと話して頂けるよう努めます」
「夜、怖い夢を見るとそこから眠れなくなってしまう事もあるわ」
「それなら最初から怖い夢など見ないよう、毎晩私の腕の中で眠ってもらいましょう」
「お願い事がある時……」

 そこからの二人のやり取りは、恥ずかしすぎてまともに聞いていられなかった。二人とも真剣に話しているから余計に達が悪くて、「アリシア、愛されてるね」とお兄ちゃんにはからかわれるし。

「貴方達の結婚を、認めましょう。アリシアをよろしく頼むわ」

 長い長い質疑応答の末、納得してくれたようでようやくお姉ちゃんが認めてくれた。

「ありがとうございます! レイラさん、フレデリックさん。よかったらお近づきの印にこちらを受け取って下さい」

 フォルネウス様は内ポケットから小さなキューブを取り出して起動させる。出てきたのは一本の剣と小さなアクセサリーケース、綺麗に包装された二つの箱。

「こちらはフレデリックさんへご用意したものです。我が国で名工と名高い鍛冶師に作らせた魔法剣とハイグランド特産限定ワインです」
「これは立派な剣だね。ワインも美味しそうだ。僕が頂いてもいいのかい?」
「はい、勿論です。アリシアさんから自警団に所属されていると伺っていたもので、役に立つものをと思いご用意しました」
「とても嬉しいよ、ありがとう」
「気に入って頂けたようで良かったです」

 お兄ちゃんは魔法剣を手に取り、その使用感を確かめている。これはすごいと、とても満足そうだった。

「こちらはレイラさんにご用意したものです。アリシアさんの持つものと対になるようデザインして作った魔道具『ポータブルコール』と、我が国で人気のブラッドボトル詰め合わせです」
「ポータブルコール?」
「魔力を通して、遠く離れた場所にいても通信が出来る魔法道具となっております。これがあればいつでもアリシアさんと連絡が取れるので、レイラさんの不安も少しは癒えるかなと思いまして」
「すごいわね、そんな道具があるなんて。それにこんな携帯食もあるのね。便利だわ」
「お姉ちゃん、ハイグランド帝国には他にもたくさん便利な魔道具があるんだよ」
「もし他にもお望みのものがあれば、何でもご用意致しますので、ご遠慮なくお申し付け下さい」
「ええ、ありがとう。気に入ったわ」
「喜んで頂けて光栄です」

 それからフォルネウス様はお兄ちゃんに魔法剣の使い方を教え、私はお姉ちゃんにポータブルコールの使い方を教えてあげた。

 真空波を飛ばす事のできる魔法剣にお兄ちゃんは楽しそうで、離れていてもお話が出来るポータブルコールの便利さにお姉ちゃんは感動していた。

「ああ、そうでした。よろしければこちらもお受け取り下さい。この紀章はハイグランド帝国への無期限の通行許可証となっております。よろしければ今度は是非、我が国へ遊びに来て頂けると嬉しいです」
「一度行ってみたかったんだよね、ありがとう」
「こんなものを渡したら、ずっと押し掛けるかもしれないわよ? いいの?」
「ええ、いつでも大歓迎です」

 最初はどうなることかと思ったけど、二人ともフォルネウス様の事を気に入ってくれたようで本当に良かった。

「フォルネウス……いや、紅の皇太子としての貴方に、少し話があるわ。いいかしら?」
「はい、勿論です」
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