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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-12「泊めてあげて」
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「泊めてあげて」
あまりに大量な不幸の情報で意識が上の空になっている稀世の腕を取り、三朗は医師に一礼して廊下に出た。待合席には、もう誰もいなかった。非常灯ととびとびに点灯している照明を頼りに、総合受付前のベンチソファーにふたりで座った。ふたりの間に何の会話もない。時計を見ると午後十時三十分を示している。
「稀世さん、ちょっと待っててくださいね。まりあさんに連絡入れてきます。」
と言い残して、三朗は総合受付のロビーのはずれの電話スペースに移動した。
まりあの携帯に電話をかけたが、コール七回で留守番電話に切り替わってしまった。手短に経緯を伝え、時間が空いたら、連絡をもらえるようにメッセージを残した。念のため、ショートメッセージにも入れておいた。
三朗は、自動販売機で、お茶を買い、総合受付のロビー席で待つ、稀世に手渡した。
「ありがとう。サブちゃん。」
稀世はペットボトルのキャップを開けようとするが、右手が小刻みに震え、うまくキャップが回せない。三朗が、手を重ねてキャップを開けてやると、稀世は、一気にボトル半分を飲み干した。三朗は、かける言葉が見つからず、沈黙の時間がゆっくりと流れた。
「プルルルルル」、三朗の携帯が鳴った。無人のロビーに呼び出し音が響いた。画面を見ると「まりあさん」と表示されていた。あわてて電話を取り、電話スペースへ小走りで移動した。
「もしもし。」
「あっ、サブちゃん?それとも稀世?まりあやけど。」
「僕です。三朗です。」
「ごめんね、本来なら私が行かなあかん状況なのに、サブちゃんにみんな任せちゃってて。ところで、メッセージもメールも確認したんやけど、本当なの?稀世の余命が半年って。」
「はい。僕もいまだに信じらへんのですけど、医師からは、そのように伝えられました。門真では大きい総合病院の一つで、ベテランの先生やったんで、間違いはないかと…。」
「そうか、研修医の若ボンの誤診であることを期待したけど…。ところで、稀世の状態はどうなの?」
「脱臼は三角巾で腕を吊っていますが、変に動かさなければ痛みはないようです。事故によるめまいやふらつきは無いようですが、なんせ、心の部分が…。僕ではどうしたらええのか…。一応、退院扱いなんですが、どこに送っていったらいいんでしょうか?」
「稀世の家、大正区のアパートやねんけど、送っていっても、稀世ひとりで置いていくわけにもいけへんしなぁ。稀世とちょっとしゃべらせてもらえる状況なん?」
「まりあさんの電話やったら、出はると思うんですけど…。」
「ちょっと、替わってもらえる?」
「ちょっと待ってくださいね。」
三朗は、ロビーに戻り、稀世に携帯を渡した。
「まりあさんからです。」
稀世は、力なく右手で携帯を受け取り、右耳に寄せた。
「もしもし、稀世です。まりあさんすいません。迷惑かけちゃって。私のスマホ、着替えの方のバッグに入ってるんで私から連絡できないんで、みんなにも「大丈夫やったよ。」ってニコニコのグループラインに入れておいてもらえますか。」
「こっちこそごめんね。ほったらかしにしちゃって。サブちゃんから聞いたよ。大変やったなぁ。ショックやったよなぁ。今すぐにでも飛んで行ってやりたいねんけど、どうしてもまだ席外されへんねん。ほんま薄情なリーダーでごめんな。」
「いや、まりあさん、気にせんとってください。今日の共催の意味は、私もわかってますから。私のせいで、ニコニコのみんなに迷惑かけられへんし。」
「こんな時まで、気遣わしてしもて悪いなぁ。今回の大会で相手さんの方のスポンサーがうちらの事えらい気に入ってくれてな。もちろん、「稀世の試合もすごかった。」言うて評価高かったで!「今後は共催の交流戦をシリーズ化したい。」言うて、うちの社長もノリノリやねん。だから、今晩は、ごめんやで、ほんまに。
ところで、サブちゃんから、稀世どこに送っていったらええんか聞かれたんやけど、大正のアパートに送ってもろたらええんか?」
「まりあさん、私のバッグってどうなってんのかな。リュックはサブちゃんからもらってんけど。私のバッグ、ニコニコの道具といっしょになってんねんやったら、部屋の鍵あれへんねん。スマホと鍵の入ったポーチ、バッグの中やから。」
「そっか…、ちょっとサブちゃんに電話、替わってもろてええか?」
「はい。ちょっと待ってください。」
稀世は、まりあに言われるがままに三朗に携帯を返した。稀世の手が震えているのに三朗は気づいた。(精一杯、普通を装ってはるんやろな…。)三朗は直感的に感じた。電話を受け取り耳に当てると、思いもよらない言葉がまりあの口から出た。
「サブちゃん、ここまで迷惑をかけて、さらに申し訳ないねんけど、今晩、稀世、サブちゃんの家に泊めたってもらわれへんかな?」
「えっ?えええええ。」
「稀世、アパートの鍵とスマホ、着替えのバッグに入れてたみたいで、アパート帰っても入られへんし、着替えもない状態やねん。サブちゃんやったら信用できるし、今晩一晩、面倒見たってもらわれへんかな?」
「そ、そんなん、き、急に言われても。ぼ、僕はええですけど、稀世さんがなんて言うか?」
「そこは私が稀世に話するから…。ちなみに、サブちゃんの明日の仕事は何時からなん?明日、朝一に私が車でサブちゃんの店に稀世を迎えに行くし、それまでお願いしたいねん。それとも、サブちゃんは、今の稀世をひとりでホテルに置き去りにするような薄情者なんか?」
「いや、ぼ、僕はええんですよ。け、けど、稀世さんがいやかもしれないやないですか。」
「そこは、私が説得するから。ほんまやったら、私がついていてやらなあかんねんけど、これからのニコニコプロレスの将来が左右されてまう状況で、私もつらいねん。
稀世は、サブちゃんの事悪いようには思ってないから、なんも話さんでも、一晩、一緒に居ってやってほしいねん。ところで、明日、何時や?」
と強引に話を進めてくる。三朗も稀世を一人ホテルに送るのはどうかと思い、言葉に窮してしまった。
「仕込みは七時から九時くらいです。十時半から開店準備で十一時開店予定です。」
「そしたら、七時にサブちゃんの店行くわ。仕込みの間、稀世と話させて。一生のお願いや。」
「な、何度も言いますけど、ぼ、僕はええんですけど、稀世さんが何て言うか?」
「まあ、稀世にかわってんか。」
三朗は、困った顔をして稀世に携帯を渡した。その時、総合案内の照明が点灯し、
「安さん、安さーん。」
と声がかかった。
三朗は、稀世を残し、窓口に向かった。処方箋を受け取り、この時間でもやっている調剤薬局の入っているドラッグストアを教えてもらった。紹介状を使った地元病院のアポの取り方と、脳神経外科と循環器外科、消化器系外科の専門科のある病院と、そこのドクターの名前を記したリストを受け取り、今後の流れの説明を受けた。
今晩、「頭痛」や「吐き気」が出た場合は、再度、来院することと、入浴はいいが、この三日間は激しい運動は厳禁の旨、医師からの伝言を受けた。今日の支払いを済ませて、ロビーへ向き直した。
あまりに大量な不幸の情報で意識が上の空になっている稀世の腕を取り、三朗は医師に一礼して廊下に出た。待合席には、もう誰もいなかった。非常灯ととびとびに点灯している照明を頼りに、総合受付前のベンチソファーにふたりで座った。ふたりの間に何の会話もない。時計を見ると午後十時三十分を示している。
「稀世さん、ちょっと待っててくださいね。まりあさんに連絡入れてきます。」
と言い残して、三朗は総合受付のロビーのはずれの電話スペースに移動した。
まりあの携帯に電話をかけたが、コール七回で留守番電話に切り替わってしまった。手短に経緯を伝え、時間が空いたら、連絡をもらえるようにメッセージを残した。念のため、ショートメッセージにも入れておいた。
三朗は、自動販売機で、お茶を買い、総合受付のロビー席で待つ、稀世に手渡した。
「ありがとう。サブちゃん。」
稀世はペットボトルのキャップを開けようとするが、右手が小刻みに震え、うまくキャップが回せない。三朗が、手を重ねてキャップを開けてやると、稀世は、一気にボトル半分を飲み干した。三朗は、かける言葉が見つからず、沈黙の時間がゆっくりと流れた。
「プルルルルル」、三朗の携帯が鳴った。無人のロビーに呼び出し音が響いた。画面を見ると「まりあさん」と表示されていた。あわてて電話を取り、電話スペースへ小走りで移動した。
「もしもし。」
「あっ、サブちゃん?それとも稀世?まりあやけど。」
「僕です。三朗です。」
「ごめんね、本来なら私が行かなあかん状況なのに、サブちゃんにみんな任せちゃってて。ところで、メッセージもメールも確認したんやけど、本当なの?稀世の余命が半年って。」
「はい。僕もいまだに信じらへんのですけど、医師からは、そのように伝えられました。門真では大きい総合病院の一つで、ベテランの先生やったんで、間違いはないかと…。」
「そうか、研修医の若ボンの誤診であることを期待したけど…。ところで、稀世の状態はどうなの?」
「脱臼は三角巾で腕を吊っていますが、変に動かさなければ痛みはないようです。事故によるめまいやふらつきは無いようですが、なんせ、心の部分が…。僕ではどうしたらええのか…。一応、退院扱いなんですが、どこに送っていったらいいんでしょうか?」
「稀世の家、大正区のアパートやねんけど、送っていっても、稀世ひとりで置いていくわけにもいけへんしなぁ。稀世とちょっとしゃべらせてもらえる状況なん?」
「まりあさんの電話やったら、出はると思うんですけど…。」
「ちょっと、替わってもらえる?」
「ちょっと待ってくださいね。」
三朗は、ロビーに戻り、稀世に携帯を渡した。
「まりあさんからです。」
稀世は、力なく右手で携帯を受け取り、右耳に寄せた。
「もしもし、稀世です。まりあさんすいません。迷惑かけちゃって。私のスマホ、着替えの方のバッグに入ってるんで私から連絡できないんで、みんなにも「大丈夫やったよ。」ってニコニコのグループラインに入れておいてもらえますか。」
「こっちこそごめんね。ほったらかしにしちゃって。サブちゃんから聞いたよ。大変やったなぁ。ショックやったよなぁ。今すぐにでも飛んで行ってやりたいねんけど、どうしてもまだ席外されへんねん。ほんま薄情なリーダーでごめんな。」
「いや、まりあさん、気にせんとってください。今日の共催の意味は、私もわかってますから。私のせいで、ニコニコのみんなに迷惑かけられへんし。」
「こんな時まで、気遣わしてしもて悪いなぁ。今回の大会で相手さんの方のスポンサーがうちらの事えらい気に入ってくれてな。もちろん、「稀世の試合もすごかった。」言うて評価高かったで!「今後は共催の交流戦をシリーズ化したい。」言うて、うちの社長もノリノリやねん。だから、今晩は、ごめんやで、ほんまに。
ところで、サブちゃんから、稀世どこに送っていったらええんか聞かれたんやけど、大正のアパートに送ってもろたらええんか?」
「まりあさん、私のバッグってどうなってんのかな。リュックはサブちゃんからもらってんけど。私のバッグ、ニコニコの道具といっしょになってんねんやったら、部屋の鍵あれへんねん。スマホと鍵の入ったポーチ、バッグの中やから。」
「そっか…、ちょっとサブちゃんに電話、替わってもろてええか?」
「はい。ちょっと待ってください。」
稀世は、まりあに言われるがままに三朗に携帯を返した。稀世の手が震えているのに三朗は気づいた。(精一杯、普通を装ってはるんやろな…。)三朗は直感的に感じた。電話を受け取り耳に当てると、思いもよらない言葉がまりあの口から出た。
「サブちゃん、ここまで迷惑をかけて、さらに申し訳ないねんけど、今晩、稀世、サブちゃんの家に泊めたってもらわれへんかな?」
「えっ?えええええ。」
「稀世、アパートの鍵とスマホ、着替えのバッグに入れてたみたいで、アパート帰っても入られへんし、着替えもない状態やねん。サブちゃんやったら信用できるし、今晩一晩、面倒見たってもらわれへんかな?」
「そ、そんなん、き、急に言われても。ぼ、僕はええですけど、稀世さんがなんて言うか?」
「そこは私が稀世に話するから…。ちなみに、サブちゃんの明日の仕事は何時からなん?明日、朝一に私が車でサブちゃんの店に稀世を迎えに行くし、それまでお願いしたいねん。それとも、サブちゃんは、今の稀世をひとりでホテルに置き去りにするような薄情者なんか?」
「いや、ぼ、僕はええんですよ。け、けど、稀世さんがいやかもしれないやないですか。」
「そこは、私が説得するから。ほんまやったら、私がついていてやらなあかんねんけど、これからのニコニコプロレスの将来が左右されてまう状況で、私もつらいねん。
稀世は、サブちゃんの事悪いようには思ってないから、なんも話さんでも、一晩、一緒に居ってやってほしいねん。ところで、明日、何時や?」
と強引に話を進めてくる。三朗も稀世を一人ホテルに送るのはどうかと思い、言葉に窮してしまった。
「仕込みは七時から九時くらいです。十時半から開店準備で十一時開店予定です。」
「そしたら、七時にサブちゃんの店行くわ。仕込みの間、稀世と話させて。一生のお願いや。」
「な、何度も言いますけど、ぼ、僕はええんですけど、稀世さんが何て言うか?」
「まあ、稀世にかわってんか。」
三朗は、困った顔をして稀世に携帯を渡した。その時、総合案内の照明が点灯し、
「安さん、安さーん。」
と声がかかった。
三朗は、稀世を残し、窓口に向かった。処方箋を受け取り、この時間でもやっている調剤薬局の入っているドラッグストアを教えてもらった。紹介状を使った地元病院のアポの取り方と、脳神経外科と循環器外科、消化器系外科の専門科のある病院と、そこのドクターの名前を記したリストを受け取り、今後の流れの説明を受けた。
今晩、「頭痛」や「吐き気」が出た場合は、再度、来院することと、入浴はいいが、この三日間は激しい運動は厳禁の旨、医師からの伝言を受けた。今日の支払いを済ませて、ロビーへ向き直した。
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