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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-14「いなり寿司」
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「いなり寿司」
十一時半前に稀世が風呂から上がってきた。稀世が言っていたように、メイクを落とすと、高校生に勘違いされてもおかしくないほど童顔の稀世がいた。湯上りで濡れた髪とバスタオルで頭をわしわししてる姿が、三朗にはたまらなく「キュン」ときた。いつもの稀世と雰囲気が全く違うが、それはそれで、三朗には変化球でのストライクゾーンど真ん中だった。ぼーっと稀世の顔に見入っていると、
「あー、サブちゃん、また変なこと想像してんのとちゃうやろなぁ。サブちゃん、エッチなん、ようわかったし。」
「か、かわいい。す、すっぴんも、ど、「どストライク」です。うん、めちゃくちゃかわいいです。想像の百倍以上です。」
と真顔で三朗が言うもので、逆に稀世の方が照れてしまい、
「もう、サブちゃんのあほ。」
と言って、真っ赤になった。三朗も真っ赤になりながら、目を合わさずに言った
「リクエストのおいなりさん、できてますんで。店で食べるにはさみしいから、狭くて汚い所やけど、二階に上がってください。」
男の一人暮らしにしては、こ綺麗に片付いているリビングキッチンにふたりで上がり、四人掛けのテーブルに向かい合って座った。
「念のため、まりあさんにメール送っときますか?」
「うん、私から打つわ。サブちゃんのスマホ貸して。」
携帯を受け取り、「サブちゃんの家に着きました。これから、おいなりさんいただきます。まりあさんもお疲れ様です。お休みなさい。」と三朗に文書を確認させたのち、送信した。ふたりして、一緒に「いただきます」をして、食べ始めた。
「美味しーい。やっぱ、サブちゃんの作るたけのこご飯のおいなりさんは世界最強やわ!」
ひょいパク、ひょいパクと稀世がどんどん食べていく。
「ごめんなさい。店にある魚は全部使って、今日の差し入れ作ってしもたから、魚は全く残って無いんですよ。
明日の朝、仕入れますから、まりあさん来たら、お昼はきちんとしたうちの「握り」食べていってくださいね。」
「ごめんってなによ。何べんも言うけど、サブちゃんは、何も悪いことしてへんやろ。悪いのは、みんな私やねんから、なんでも、謝んのサブちゃんのあかんとこやで。それにしても、美味しいわ。あかん、お腹すいてたから、なんぼでもいけてしまうわ。」
「うん、ありがとうございます。なんぼでも食べてください。」
稀世ひとりで二十個以上は食べただろうか、三十個用意したおいなりさんの残りは一つになっていた。
「あー、お腹膨れた!サブちゃん、ありがと!」
(稀世さんもお腹膨れて、ちょっと元気出てきてくれたかな?)と三朗が思ったとき、「ピロリ―ン」と携帯に着信音が入った。
「あっ、まりあさんからや。先に読ませてな。」
と、稀世が携帯を先に取り、読み始めると同時に、みるみる真っ赤に顔が染まっていった。
「えっ、なに?なんやったんですか?」
三朗が携帯を取ろうとすると、
「サブちゃん、読んだらあかん!」
と抵抗するが、三朗は液晶画面に目をやった。「稀世へ。サブちゃんの変なおいなりさん食べたりしないように。お腹大きくなっても知らんで。サブちゃんも男やから気を付けて。明日、七時にね。まりあより」とあった。
「へ、変なおいなりさんって何?お腹大きくなっても知らんって?」
「私にそれ聞かんといてよ!サブちゃんのあほ!」
「あっ、ご、ごめんなさい。」
会話が途切れてしまった。一分、二分と無言の時間が過ぎる。沈黙に耐えられず、三朗が立ち上がると稀世がビクッと身構える。(えっ、そこまで警戒されてるの。僕。)
「大丈夫、大丈夫。安心してくださいね。何もしませんから。」
と両手を前にして、稀世と距離を取りながら三朗はテーブルを横に移動する。稀世の警戒心は解けることなく、常に三朗に正対するように、体を回転させていく。一定の距離を保ちながら、稀世の後ろに回る時には、稀世も立ち上がり、ファイティングポーズをとっている。(もう、まりあさん、なんちゅうメール送ってくれてんねん。めちゃくちゃ雰囲気悪くなってしもたやんか。)と思いながら、稀世の後ろにある冷蔵庫の中から、瓶ビールを二本とふたつのタッパー出した。
シンクの横の食器棚からフロスト加工されたビアグラスをふたつ取り出し、テーブルに置いた。
「ごめんなさい、気がきけへんかったですね。おいなりさん食べる前に出すべきやったのに。」
と元の向かいの席に座りなおすと、ビールの栓を抜き、グラスに注いだ。フロスト加工の効果もあり、グラスの上部にきれいな泡が立ち上がった。三朗は、ブラウマイスター張りに、上手につぎ足しては、泡が引くのを待ち、きれいな7対3の泡比率のグラスを稀世の前に差し出して、タッパーを開けた。
「こっちは、マグロの切れ端のオリーブ油と醤油の漬け、こっちは、サーモンの切れ端の塩昆布とごま油の漬け。どっちもビールに合う思いますから、試してください。直箸でいいですから、遠慮なしにいってください。寿司屋の賄いです。」
稀世が、まずは、まぐろの漬けを一口、続いて、サーモンの漬けを一口。続いて、ビアグラスを一気に空けきった。
「プハーっ!サブちゃん、これ反則やなあ!超反則!一気に反則負けやわ!ビール、お替りええ?」
(あー、機嫌治ったみたい。よかった。まりあさんのせいでどうなるかと思った。)
「ええですよ、ええですよ。ビールは売るほどあるから、じゃんじゃん飲んでください。」
と稀世のグラスに注ぎ直した。稀世が三朗のグラスにも返杯した。あっという間に、テーブルの上に五本のビール瓶が並んだ。二階のキッチンの冷蔵庫のビールは空になった。
稀世の機嫌も上々で、酔いが結構回ってきているようだったが、「まだ飲みたい。」というので、三朗が下の店の冷蔵庫にビールを取りに降りようとすると、下の階から「ポッポー、ポッポー、ポッポー」と鳩時計の時報が聞こえた。
十一時半前に稀世が風呂から上がってきた。稀世が言っていたように、メイクを落とすと、高校生に勘違いされてもおかしくないほど童顔の稀世がいた。湯上りで濡れた髪とバスタオルで頭をわしわししてる姿が、三朗にはたまらなく「キュン」ときた。いつもの稀世と雰囲気が全く違うが、それはそれで、三朗には変化球でのストライクゾーンど真ん中だった。ぼーっと稀世の顔に見入っていると、
「あー、サブちゃん、また変なこと想像してんのとちゃうやろなぁ。サブちゃん、エッチなん、ようわかったし。」
「か、かわいい。す、すっぴんも、ど、「どストライク」です。うん、めちゃくちゃかわいいです。想像の百倍以上です。」
と真顔で三朗が言うもので、逆に稀世の方が照れてしまい、
「もう、サブちゃんのあほ。」
と言って、真っ赤になった。三朗も真っ赤になりながら、目を合わさずに言った
「リクエストのおいなりさん、できてますんで。店で食べるにはさみしいから、狭くて汚い所やけど、二階に上がってください。」
男の一人暮らしにしては、こ綺麗に片付いているリビングキッチンにふたりで上がり、四人掛けのテーブルに向かい合って座った。
「念のため、まりあさんにメール送っときますか?」
「うん、私から打つわ。サブちゃんのスマホ貸して。」
携帯を受け取り、「サブちゃんの家に着きました。これから、おいなりさんいただきます。まりあさんもお疲れ様です。お休みなさい。」と三朗に文書を確認させたのち、送信した。ふたりして、一緒に「いただきます」をして、食べ始めた。
「美味しーい。やっぱ、サブちゃんの作るたけのこご飯のおいなりさんは世界最強やわ!」
ひょいパク、ひょいパクと稀世がどんどん食べていく。
「ごめんなさい。店にある魚は全部使って、今日の差し入れ作ってしもたから、魚は全く残って無いんですよ。
明日の朝、仕入れますから、まりあさん来たら、お昼はきちんとしたうちの「握り」食べていってくださいね。」
「ごめんってなによ。何べんも言うけど、サブちゃんは、何も悪いことしてへんやろ。悪いのは、みんな私やねんから、なんでも、謝んのサブちゃんのあかんとこやで。それにしても、美味しいわ。あかん、お腹すいてたから、なんぼでもいけてしまうわ。」
「うん、ありがとうございます。なんぼでも食べてください。」
稀世ひとりで二十個以上は食べただろうか、三十個用意したおいなりさんの残りは一つになっていた。
「あー、お腹膨れた!サブちゃん、ありがと!」
(稀世さんもお腹膨れて、ちょっと元気出てきてくれたかな?)と三朗が思ったとき、「ピロリ―ン」と携帯に着信音が入った。
「あっ、まりあさんからや。先に読ませてな。」
と、稀世が携帯を先に取り、読み始めると同時に、みるみる真っ赤に顔が染まっていった。
「えっ、なに?なんやったんですか?」
三朗が携帯を取ろうとすると、
「サブちゃん、読んだらあかん!」
と抵抗するが、三朗は液晶画面に目をやった。「稀世へ。サブちゃんの変なおいなりさん食べたりしないように。お腹大きくなっても知らんで。サブちゃんも男やから気を付けて。明日、七時にね。まりあより」とあった。
「へ、変なおいなりさんって何?お腹大きくなっても知らんって?」
「私にそれ聞かんといてよ!サブちゃんのあほ!」
「あっ、ご、ごめんなさい。」
会話が途切れてしまった。一分、二分と無言の時間が過ぎる。沈黙に耐えられず、三朗が立ち上がると稀世がビクッと身構える。(えっ、そこまで警戒されてるの。僕。)
「大丈夫、大丈夫。安心してくださいね。何もしませんから。」
と両手を前にして、稀世と距離を取りながら三朗はテーブルを横に移動する。稀世の警戒心は解けることなく、常に三朗に正対するように、体を回転させていく。一定の距離を保ちながら、稀世の後ろに回る時には、稀世も立ち上がり、ファイティングポーズをとっている。(もう、まりあさん、なんちゅうメール送ってくれてんねん。めちゃくちゃ雰囲気悪くなってしもたやんか。)と思いながら、稀世の後ろにある冷蔵庫の中から、瓶ビールを二本とふたつのタッパー出した。
シンクの横の食器棚からフロスト加工されたビアグラスをふたつ取り出し、テーブルに置いた。
「ごめんなさい、気がきけへんかったですね。おいなりさん食べる前に出すべきやったのに。」
と元の向かいの席に座りなおすと、ビールの栓を抜き、グラスに注いだ。フロスト加工の効果もあり、グラスの上部にきれいな泡が立ち上がった。三朗は、ブラウマイスター張りに、上手につぎ足しては、泡が引くのを待ち、きれいな7対3の泡比率のグラスを稀世の前に差し出して、タッパーを開けた。
「こっちは、マグロの切れ端のオリーブ油と醤油の漬け、こっちは、サーモンの切れ端の塩昆布とごま油の漬け。どっちもビールに合う思いますから、試してください。直箸でいいですから、遠慮なしにいってください。寿司屋の賄いです。」
稀世が、まずは、まぐろの漬けを一口、続いて、サーモンの漬けを一口。続いて、ビアグラスを一気に空けきった。
「プハーっ!サブちゃん、これ反則やなあ!超反則!一気に反則負けやわ!ビール、お替りええ?」
(あー、機嫌治ったみたい。よかった。まりあさんのせいでどうなるかと思った。)
「ええですよ、ええですよ。ビールは売るほどあるから、じゃんじゃん飲んでください。」
と稀世のグラスに注ぎ直した。稀世が三朗のグラスにも返杯した。あっという間に、テーブルの上に五本のビール瓶が並んだ。二階のキッチンの冷蔵庫のビールは空になった。
稀世の機嫌も上々で、酔いが結構回ってきているようだったが、「まだ飲みたい。」というので、三朗が下の店の冷蔵庫にビールを取りに降りようとすると、下の階から「ポッポー、ポッポー、ポッポー」と鳩時計の時報が聞こえた。
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