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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-39「結婚式翌日」
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「結婚式翌日」
結婚式の翌日、ひどい頭痛で三朗は目が覚めた。急な吐き気と腹痛が同時にやってきた。人前式で大変なトラブルがあった後の披露宴は大いに盛り上がり、三朗は飲まされまくった。特に悪乗りした夏子と陽菜からは、パイ・ヒール粋華をまねて、「私たちのこの酒が飲めなきゃ、稀世姉さんとの結婚は認めへん!」とやかられ、一升以上の酒を一気飲みさせられた。
それ以外でも、商店街の仲間からも「飲め飲め攻撃」を受け、披露宴の最初のニコニコプロレスの社長の乾杯のあいさつと酒屋の武藤、まりあのあいさつまではしっかりと覚えているのだが、その後の広義の歌や夏子と陽菜のコントぐらいから記憶が怪しい。
稀世のお色直しは完全に記憶が飛んでしまっている。「全く覚えていない。」とは稀世には言えないので、稀世が起きてくるまでに一階のトイレでこっそりと徹三が取ってくれたビデオを早送りで見て復習した。ベロベロになりながらも、締めでお礼のあいさつをして、それなりに参列者を感動させている自分の姿を見て、少し安心した。しかし、その記憶は、ほとんどが深い闇の中だ。とりあえず、胃酸ブロック系の胃腸薬を通常量の二倍飲んだ。
今日一日は、店は「休業」の案内を張り出しているので、稀世と大正区役所で稀世の転出届と、門真市役所への婚姻届けを提出した後は、ふたりでゆっくりしようと考えている。
(ところで、昨晩のいわゆる「初夜」はどうだったんやろか?)恐ろしくて稀世に聞く勇気がないが、こればかりは確認のしようがない。きちんと寝巻のスウェットに着替えていたことと、稀世と寝室でふたりで布団を並べて寝ていたことを考えるとやるべきことをやった可能性はあると考えた。(念のため、寝室のくずかごは確認しとくか。)しかし、それらしいゴミは見つからなかった。
横向きにふとんの中で寝ている稀世の顔を見てると、ようやく正式に夫婦になる喜びの気持ちがが沸いてきた。稀世の枕元には、昨日、みんなの前で書いた婚姻届けが額に入れられ、置いてある。(稀世さん、起きてくるまでに、お味噌汁の準備でもしておこう。)
午前七時。三朗がテレビをつけて、ニュースをかけると稀世が寝室から出てきた。
「おはよう、サブちゃん。あー、よう寝たわ。ところでサブちゃん…。」
「稀世さん、おはようございます。なんですか?あらたまって。」
「い、いや、別にええねん。なんもない。先にシャワーさせてもらうわな。」
稀世は、一階へ降りて行った。(稀世さん、何言いたかったんやろか?やっぱり、昨日のことで、なんかあんねやろか。機会をうかがって、早めに謝っておこう。)三朗は、気を取り直し、大きなおにぎりを握った。
ふたりでおにぎりを頬張りながら、三朗が切り出した。
「稀世さん、あの・・・。」
「なに、サブちゃん?」
「あ、あの、昨日・・・。き、昨日は楽しかったですね。(あっ、僕、何言うてんねん。きちんと謝らなあかんのに。)人前式の時に、あの「おっぱいの人」が乱入してきた時は、どないなるかと思いましたけど。(あー、無意識に逃げてしもた。)」
「粋華はあほやからね。でも、直さんとまりあさんのおかげで助かったなぁ。直さんが、あのあほ止めてくれてなくて、サブちゃんがあのまま変なことされとったら、私、ドレスで取っ組み合いしてるとこやったわ。まあ、その前にまりあさんに止められてたけど。「粋華のおっぱいでサブちゃんが反応したらどうしよう。」って変なとこ、心配してしもてたわ。」
「いや、そこは大丈夫ですよ。稀世さんにしてもろた「夢の七つの技体験」と比べたら、「月とスッポン」、「釣鐘と提灯」、「特上握りとコンビニおにぎり」ですよ。」
「最後の例え、初めて聞いたわ。サブちゃんのオリジナル?変なの。」
正式な夫婦初日の朝の食卓は、三朗が本題を避けたため、おだやかにスタートした。
「ところで、大正の区役所、九時でええんですよね。」
「うん、京橋からメトロでドーム前行って、そこからバスやから。七時五十分になったら出よか。転出届だしたら、こっち戻って門真市役所やね。なんか緊張するわ。」
「僕もです。書類だしたら、正式に稀世さん、「長井稀世」になってくれはるんですもんね。なんか、照れくさいです。先週の日曜日の門真大会から、あっという間の八日間でしたよね。その集大成ですから。」
「うん、改めて、これからずっといっしょにいてね、サブちゃん。」
「モチのロンです。これからずっと一緒ですよ。おっぱいの人に捕まっても何もできなかった、頼りにならない夫ですが、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、有効期限半年のポンコツの妻ですが、よろしくお願いします。」
自虐的なネタだが、ふたりして自然に笑えた。(それでええねや。三朗、がんばれよ。)三朗は、父と母の声が聞こえたような気がした。
京阪電車で門真市駅から京橋へ。大阪メトロに乗り換え、ドーム前千代崎で降りた。地上に出て、稀世がふと立ち止まった。視線の先に大阪ドームが見える。今年は、プロ野球でオリックスバファローズが破竹の快進撃を見せ、たくさんの応援ののぼりや横断幕が飾られ盛り上がりが感じられる。
「あー、いっぺんここでやってみたかったなぁ。」
「野球ですか?」
「あほ、なんでやねん。もちろん、プロレスよ。男の人は、総合格闘技でドーム決戦ってあんねんけど、女子はせいぜい後楽園ホール。昔、まりあさんと「女子プロレスでドームがいっぱいになる時代がきたらええのにな。」って話したことがあってん。まあ、夢のまた夢の話やけどね。まりあさんとタイトルマッチして、ドームのオーロラビジョンに大写しになるのを想像して、楽しんでてん。」
「そりゃ、ビッグな夢ですね。あっ、稀世さん、もうバスが来る時間ですよ。」
「ほんまや、サブちゃん、走るで。」
稀世は三郎の手を取り、バス停に走り出した。
朝一の区役所は、人出も少なく、スムーズに転出の手続きは済んだ。門真市役所には10時半に戻ってきた。ふたりで戸籍課に婚姻届けを出し、手をつないで市役所を出た。
「サブちゃん、お昼どうする?」
「ちょっと早いけど、がんちゃんとこでお好み焼き食べよか。」
「ええね、それ。私、お好み焼き大好きやねん。ミックスモダンの大でも食べよかな。」
十時五十分、「お好み焼きがんちゃん」は、まだ暖簾が出ていなかったが、入り口が開いてたので、勝手に入っていった。
「がんちゃん、さとみさん、おはようございまーす。ふたりで食べによらせてもらいました。」
さとみがエプロン姿で出てきた。
「昨日はお疲れさまでした。ふたりとも大丈夫やった?めちゃくちゃ飲まされてたもんなぁ。女子プロレスってバリバリの体育会やねんなぁ。まあ、うちの商店街のおっちゃんらも大概やけどな。」
「いろいろ面倒おかけしました。あと、がんちゃん撮ってくれたビデオ、よお映ってました。ありがとうございました。」
「もお、見たん?早いなぁ。稀世ちゃんも一緒に見はったん?」
「いえ、サブちゃん、ビデオいつ見たん。もう、声かけてよ。一緒に見たかったのに。」
「ご、ごめんなさい。け、今朝、早よ起きてしもたから。き、稀世さん、よお寝てたから。」
「何どもってんのよ。なんか、やましいことあるん?」
「い、いや、べ、別に。い、稀世さんのドレス姿、ゆっくり見たかったから」
(あー、やばいとこやった。昨日の事、覚えてへんから、復習やとは言われへんもんなぁ。)
「サブちゃん、ビデオの最後で武藤さん倒れたん見た?私とてっちゃんは、サブちゃんと稀世ちゃん送って行ったから、武藤さんの方のお世話は、かずみさんと広君に任せたんやけど。」
「えっ、倒れたって。なんで?ごめんなさい。そこ、覚えてないんですけど。大丈夫やったんですか?」
「うん、披露宴の最後に、みんなでサブちゃん胴上げしてるときに、腰をグキッっとやっちゃったみたいで。広君がおんぶしてタクシーで送って行ったんやけど、武藤さんひとり暮らしやから大変やろうって、さっき、てっちゃんもお昼ご飯の差し入れの出前に行ってんねん。」
そこに、徹三が帰ってきた。さとみが心配そうに聞いた。
「武藤さん、どうやった。大丈夫そう?」
「うん、典型的なぎっくり腰やな。何回かやってるから癖になってんねやろな。武藤さんも昨日へべれけで胴上げ参加して中央で、はしゃいでたもんなぁ。昼、食べたら、接骨院行くって言うてはったわ。
ちなみに昨晩はあの後、サブちゃん、稀世ちゃんは大丈夫やったか?ふたりとも、最後ぐでぐでやったもんなぁ。サブちゃん家戻るなり、ゲロゲロで大変やってんで。稀世ちゃんは、サブちゃん二階につれて上がったら、もうガーガー寝てたし、ほんま、お疲れやったなぁ。まあ、酔い覚ましに、今日はオリバーやなくて超辛口のカープソースで焼いたるわな。」
(じゃぁ、やっぱりやってなかったんや。あー、稀世さんに直接聞かんでよかった。がんちゃん、ナイス情報!そんで、昨日はいろいろとありがとう。)
ふたりで辛口のお好み焼きを楽しんで、武藤酒店にお見舞いに行った。整骨院に行っているのか、店は閉まっていた。配達用のスーパーカブがカギが付いたまま、店の前に無造作に置かれていた。
「まあ、後で電話でお見舞いしよか。」
仕方なく武藤への見舞いは後回しにして、直と檜と笹井に昨日までの礼と婚姻届けを提出した報告をした。檜と笹井はふたりとも酷い二日酔いだった。雅子が、金曜日に取った写真のアルバムをくれた。どの写真も稀世をかわいく、そしてきれいに撮ってくれていた。スタジオの写真もよかったが、グリーンバックで撮った写真が世界の観光スポットとの合成写真にしていてくれたのが、新婚旅行の予定が無いふたりにはうれしかった。アルバムを見るだけで、世界を回った気になれた。笹井夫婦に「いろいろとありがとうございました。今度、うちに来てください。ごちそうしますんで。」と三朗と稀世は、深々とお礼をして店に戻った。
結婚式の翌日、ひどい頭痛で三朗は目が覚めた。急な吐き気と腹痛が同時にやってきた。人前式で大変なトラブルがあった後の披露宴は大いに盛り上がり、三朗は飲まされまくった。特に悪乗りした夏子と陽菜からは、パイ・ヒール粋華をまねて、「私たちのこの酒が飲めなきゃ、稀世姉さんとの結婚は認めへん!」とやかられ、一升以上の酒を一気飲みさせられた。
それ以外でも、商店街の仲間からも「飲め飲め攻撃」を受け、披露宴の最初のニコニコプロレスの社長の乾杯のあいさつと酒屋の武藤、まりあのあいさつまではしっかりと覚えているのだが、その後の広義の歌や夏子と陽菜のコントぐらいから記憶が怪しい。
稀世のお色直しは完全に記憶が飛んでしまっている。「全く覚えていない。」とは稀世には言えないので、稀世が起きてくるまでに一階のトイレでこっそりと徹三が取ってくれたビデオを早送りで見て復習した。ベロベロになりながらも、締めでお礼のあいさつをして、それなりに参列者を感動させている自分の姿を見て、少し安心した。しかし、その記憶は、ほとんどが深い闇の中だ。とりあえず、胃酸ブロック系の胃腸薬を通常量の二倍飲んだ。
今日一日は、店は「休業」の案内を張り出しているので、稀世と大正区役所で稀世の転出届と、門真市役所への婚姻届けを提出した後は、ふたりでゆっくりしようと考えている。
(ところで、昨晩のいわゆる「初夜」はどうだったんやろか?)恐ろしくて稀世に聞く勇気がないが、こればかりは確認のしようがない。きちんと寝巻のスウェットに着替えていたことと、稀世と寝室でふたりで布団を並べて寝ていたことを考えるとやるべきことをやった可能性はあると考えた。(念のため、寝室のくずかごは確認しとくか。)しかし、それらしいゴミは見つからなかった。
横向きにふとんの中で寝ている稀世の顔を見てると、ようやく正式に夫婦になる喜びの気持ちがが沸いてきた。稀世の枕元には、昨日、みんなの前で書いた婚姻届けが額に入れられ、置いてある。(稀世さん、起きてくるまでに、お味噌汁の準備でもしておこう。)
午前七時。三朗がテレビをつけて、ニュースをかけると稀世が寝室から出てきた。
「おはよう、サブちゃん。あー、よう寝たわ。ところでサブちゃん…。」
「稀世さん、おはようございます。なんですか?あらたまって。」
「い、いや、別にええねん。なんもない。先にシャワーさせてもらうわな。」
稀世は、一階へ降りて行った。(稀世さん、何言いたかったんやろか?やっぱり、昨日のことで、なんかあんねやろか。機会をうかがって、早めに謝っておこう。)三朗は、気を取り直し、大きなおにぎりを握った。
ふたりでおにぎりを頬張りながら、三朗が切り出した。
「稀世さん、あの・・・。」
「なに、サブちゃん?」
「あ、あの、昨日・・・。き、昨日は楽しかったですね。(あっ、僕、何言うてんねん。きちんと謝らなあかんのに。)人前式の時に、あの「おっぱいの人」が乱入してきた時は、どないなるかと思いましたけど。(あー、無意識に逃げてしもた。)」
「粋華はあほやからね。でも、直さんとまりあさんのおかげで助かったなぁ。直さんが、あのあほ止めてくれてなくて、サブちゃんがあのまま変なことされとったら、私、ドレスで取っ組み合いしてるとこやったわ。まあ、その前にまりあさんに止められてたけど。「粋華のおっぱいでサブちゃんが反応したらどうしよう。」って変なとこ、心配してしもてたわ。」
「いや、そこは大丈夫ですよ。稀世さんにしてもろた「夢の七つの技体験」と比べたら、「月とスッポン」、「釣鐘と提灯」、「特上握りとコンビニおにぎり」ですよ。」
「最後の例え、初めて聞いたわ。サブちゃんのオリジナル?変なの。」
正式な夫婦初日の朝の食卓は、三朗が本題を避けたため、おだやかにスタートした。
「ところで、大正の区役所、九時でええんですよね。」
「うん、京橋からメトロでドーム前行って、そこからバスやから。七時五十分になったら出よか。転出届だしたら、こっち戻って門真市役所やね。なんか緊張するわ。」
「僕もです。書類だしたら、正式に稀世さん、「長井稀世」になってくれはるんですもんね。なんか、照れくさいです。先週の日曜日の門真大会から、あっという間の八日間でしたよね。その集大成ですから。」
「うん、改めて、これからずっといっしょにいてね、サブちゃん。」
「モチのロンです。これからずっと一緒ですよ。おっぱいの人に捕まっても何もできなかった、頼りにならない夫ですが、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、有効期限半年のポンコツの妻ですが、よろしくお願いします。」
自虐的なネタだが、ふたりして自然に笑えた。(それでええねや。三朗、がんばれよ。)三朗は、父と母の声が聞こえたような気がした。
京阪電車で門真市駅から京橋へ。大阪メトロに乗り換え、ドーム前千代崎で降りた。地上に出て、稀世がふと立ち止まった。視線の先に大阪ドームが見える。今年は、プロ野球でオリックスバファローズが破竹の快進撃を見せ、たくさんの応援ののぼりや横断幕が飾られ盛り上がりが感じられる。
「あー、いっぺんここでやってみたかったなぁ。」
「野球ですか?」
「あほ、なんでやねん。もちろん、プロレスよ。男の人は、総合格闘技でドーム決戦ってあんねんけど、女子はせいぜい後楽園ホール。昔、まりあさんと「女子プロレスでドームがいっぱいになる時代がきたらええのにな。」って話したことがあってん。まあ、夢のまた夢の話やけどね。まりあさんとタイトルマッチして、ドームのオーロラビジョンに大写しになるのを想像して、楽しんでてん。」
「そりゃ、ビッグな夢ですね。あっ、稀世さん、もうバスが来る時間ですよ。」
「ほんまや、サブちゃん、走るで。」
稀世は三郎の手を取り、バス停に走り出した。
朝一の区役所は、人出も少なく、スムーズに転出の手続きは済んだ。門真市役所には10時半に戻ってきた。ふたりで戸籍課に婚姻届けを出し、手をつないで市役所を出た。
「サブちゃん、お昼どうする?」
「ちょっと早いけど、がんちゃんとこでお好み焼き食べよか。」
「ええね、それ。私、お好み焼き大好きやねん。ミックスモダンの大でも食べよかな。」
十時五十分、「お好み焼きがんちゃん」は、まだ暖簾が出ていなかったが、入り口が開いてたので、勝手に入っていった。
「がんちゃん、さとみさん、おはようございまーす。ふたりで食べによらせてもらいました。」
さとみがエプロン姿で出てきた。
「昨日はお疲れさまでした。ふたりとも大丈夫やった?めちゃくちゃ飲まされてたもんなぁ。女子プロレスってバリバリの体育会やねんなぁ。まあ、うちの商店街のおっちゃんらも大概やけどな。」
「いろいろ面倒おかけしました。あと、がんちゃん撮ってくれたビデオ、よお映ってました。ありがとうございました。」
「もお、見たん?早いなぁ。稀世ちゃんも一緒に見はったん?」
「いえ、サブちゃん、ビデオいつ見たん。もう、声かけてよ。一緒に見たかったのに。」
「ご、ごめんなさい。け、今朝、早よ起きてしもたから。き、稀世さん、よお寝てたから。」
「何どもってんのよ。なんか、やましいことあるん?」
「い、いや、べ、別に。い、稀世さんのドレス姿、ゆっくり見たかったから」
(あー、やばいとこやった。昨日の事、覚えてへんから、復習やとは言われへんもんなぁ。)
「サブちゃん、ビデオの最後で武藤さん倒れたん見た?私とてっちゃんは、サブちゃんと稀世ちゃん送って行ったから、武藤さんの方のお世話は、かずみさんと広君に任せたんやけど。」
「えっ、倒れたって。なんで?ごめんなさい。そこ、覚えてないんですけど。大丈夫やったんですか?」
「うん、披露宴の最後に、みんなでサブちゃん胴上げしてるときに、腰をグキッっとやっちゃったみたいで。広君がおんぶしてタクシーで送って行ったんやけど、武藤さんひとり暮らしやから大変やろうって、さっき、てっちゃんもお昼ご飯の差し入れの出前に行ってんねん。」
そこに、徹三が帰ってきた。さとみが心配そうに聞いた。
「武藤さん、どうやった。大丈夫そう?」
「うん、典型的なぎっくり腰やな。何回かやってるから癖になってんねやろな。武藤さんも昨日へべれけで胴上げ参加して中央で、はしゃいでたもんなぁ。昼、食べたら、接骨院行くって言うてはったわ。
ちなみに昨晩はあの後、サブちゃん、稀世ちゃんは大丈夫やったか?ふたりとも、最後ぐでぐでやったもんなぁ。サブちゃん家戻るなり、ゲロゲロで大変やってんで。稀世ちゃんは、サブちゃん二階につれて上がったら、もうガーガー寝てたし、ほんま、お疲れやったなぁ。まあ、酔い覚ましに、今日はオリバーやなくて超辛口のカープソースで焼いたるわな。」
(じゃぁ、やっぱりやってなかったんや。あー、稀世さんに直接聞かんでよかった。がんちゃん、ナイス情報!そんで、昨日はいろいろとありがとう。)
ふたりで辛口のお好み焼きを楽しんで、武藤酒店にお見舞いに行った。整骨院に行っているのか、店は閉まっていた。配達用のスーパーカブがカギが付いたまま、店の前に無造作に置かれていた。
「まあ、後で電話でお見舞いしよか。」
仕方なく武藤への見舞いは後回しにして、直と檜と笹井に昨日までの礼と婚姻届けを提出した報告をした。檜と笹井はふたりとも酷い二日酔いだった。雅子が、金曜日に取った写真のアルバムをくれた。どの写真も稀世をかわいく、そしてきれいに撮ってくれていた。スタジオの写真もよかったが、グリーンバックで撮った写真が世界の観光スポットとの合成写真にしていてくれたのが、新婚旅行の予定が無いふたりにはうれしかった。アルバムを見るだけで、世界を回った気になれた。笹井夫婦に「いろいろとありがとうございました。今度、うちに来てください。ごちそうしますんで。」と三朗と稀世は、深々とお礼をして店に戻った。
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