あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

M‐赤井翼

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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』

1-38「パイヒール粋華」

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「パイヒール粋華」
 三朗は直に対し、必死でかぶりを振った。青いジャージの女は、がやがやと騒がしくなった会場にずかずかと入ってきて、檜のマイクを奪った。中央の稀世と三朗に右手の人差し指を指し叫んだ。
「おいコラ、稀世!お前、何、勝手に引退しとんねん!私との来月のマッチ、勝手にキャンセルしやがって。おまけに大阪ニコニコプロレスに問い合わせたら、結婚するやと!寿引退って舐めてんのか!永遠のライバル「Hカップの悪の華、パイ・ヒール粋華すいか」様がそんなもん絶対認めへんぞ。」
会場の騒めきが大きくなる。夏子と陽菜が飛び出してきて、粋華に掴みかかる。
「稀世姉さんの大事な結婚式に何邪魔しに来とんじゃ、このボケが。」
「姉さんにかわって、私がお前なんか排除したらぁ。」
勢いは良かったが、夏子は頭頂部へのエルボー、陽菜はみぞおちへの正面蹴り一発でふたりともその場で瞬殺された。会場に悲鳴が上がった。
「稀世さん、あの人なんなんですか?」
「難波女子プロレスの「パイ・ヒール粋華」。私の同期レスラー。交流戦での対戦成績は、私の13勝0敗。難波女子プロレスで、私と同時期にデビューやねん。
 百均グッズを配りながらの入場。漫才師「ハイヒールリンゴ・モモコ」をモチーフにリングパフォーマンスをすんねん。私がやってる「やすしきよし師匠」に対して、申し訳ないけど「ハイヒール」さん、タレントとしてはめちゃくちゃええねんけど、漫才の笑いでの「眼鏡眼鏡」のような必殺技が無いのよ。粋華の芸の稚拙さもあって、ほぼ滑りまくり。
 それを逆恨みして、私に「お前、私の真似すんなや。」って勝手にライバル宣言してきた、おっぱいがスイカ並みにでかいだけのあほレスラーなんや。」
「そんな人がなんでここに?」
「さっき、粋華が言ってたように、来月の交流戦で14回目の対決の予定やってん。一応、ニコニコプロレス的には、私の病気の事隠して、寿引退ってことになってるから、それで逆上してんねやと思う。」
「そんな…。」

 「おいコラ、あほ稀世!なにごちゃごちゃ言うてんねん。私は、こんな結婚は絶対に認めへんからな。三朗いうたな、お前。ちょっとこっち来い。」
と三朗の襟をつかみ、三朗を引き寄せた。
「サブちゃんに何すんねん。」
粋華に飛びかかろうとする稀世をまりあが背後から羽交い絞めにして止めた。
「稀世、あんたドレス来てんねんで。あほな真似しなや!」
「でも、サブちゃんが!」
粋華は、三朗を右手でネックブリーカーの体勢で固める。三朗はバタバタと暴れるが、粋華は微動だにしない。
「今から、お前の旦那、お前と結婚でけへんようにしたるさかいな。稀世、よお見とけよ。」
と青いジャージを脱ぎ去った。ジャージの下は、粋華がいつも試合で使用している、胸を強調した色気満々のシャネルをパクったデザインのユニフォームだった。三朗を粋華に向き合うように180度回転させ、いきなり三郎の唇を奪った。
「ほれ、お前の旦那の浮気証拠の第一弾の出来上がりや!」
間髪空けず、三朗の顔を粋華の胸に埋め、三朗の股間をまさぐる。
「さぁ、三朗、稀世のGカップに対し、私はHカップ。あんな女の乳より私の乳の方がええやろ。ほら、私の乳で勃てたとこ、稀世に見せたれや!」
「僕は、稀世さんのおっぱいまだ触ったこと無いから、比べる事なんかでけへん。それに、僕の童貞は稀世さんに捧げるんや、お前なんかで勃つもんか!」
「なに?お前、童貞なんか。じゃあ、稀世より先に私がいかしたるわ!」
と三朗のスラックスのベルトを緩め、左手を三朗のパンツの中に差し込んだ。
「サブちゃん!」
稀世の悲鳴が会場に響いたとき、直が粋華の前に立ちはだかった。
「粋華とやら、おイタはそこまでじゃ。あほボン三朗も稀世ちゃんもわしの大事な孫みたいなもんじゃ。これ以上の狼藉はわしが許さん。」
三朗の首に回した右腕の肘関節を親指と人差し指で軽くつまんだように見えた。
「ぐあっ!痛っ!」
粋華は、突然苦悶の表情を見せ、右手をだらりと下げた。三朗は必死に逃げ出した。スラックスが膝まで下がり、足を取られ、稀世の足元に転がった。赤い勝負トランクスが丸見えだ。
「サブちゃん、大丈夫やった?勃ってへん?」
「大丈夫、勃ってません。僕のおちんちんは稀世さんだけのものですから。」
その声をマイクが拾い、会場に苦笑が漏れた。

 「このばばあ、何しやがった!」
正気を失った粋華が直に掴みかかる。その瞬間、くるりと粋華の身体がきれいな円弧を描き、背中から床にたたきつけられた。「ちきしょう!」怒りの形相で、粋華は起き上がり、直に挑むが、何度も円を描き床にたたきつけられるだけだった。会場の皆が直の「合気術」に見惚れた。「ぐあっ」、「ぎゃあ」、「へげぇ」と十数回、直に投げ飛ばされ、粋華は大の字に仰向けになり動かなくなった。
「どうじゃ、おイタはもう終わりかえ?お前さん、力の使い方がなってないのう。地力はあるから鍛えりゃそこそこのもんにはなりそうじゃがのう。」
と踵を返した。その瞬間、粋華がブリッジの反動を使って、さっと振り返り直の背後に立った。「危ない!」みんなが思うと同時に、粋華は直の後ろで土下座した。
「まっこと、失礼しました。師匠、どうか、不肖「パイ・ヒール粋華」を弟子にしてください。お願いいたします。」
と頭を床にこすりつけた。

 「まあ、今日のこの席をこれ以上邪魔せんと約束するなら、面倒見てやろう。末席で、三朗と稀世ちゃんの結婚を祝福してやってくれるか?」
「はい、ありがとうございます。お師匠様。」
粋華は、さっと立ち上がり、稀世と三朗に一礼し、
「会場の皆さまお騒がせして誠に申し訳ございませんでした。難波女子プロレス「パイ・ヒール粋華」のお祝いの座興を終わらせていただきます。」
と言い、会場入り口側のテーブルに補助いすを持って座り込んだ。会場はあっけにとられた。

 檜が正気を取り戻し、マイクを握った。
「鬼気迫る、パフォーマンスありがとうございました。では、永らく中断いたしましたが、会場の皆さんによります三朗君と稀世さんの結婚承認に進みたいと思います。若いふたりの結婚をご承認いただける方は、大きな拍手で持ってご承認ください。」
その日一番の、大きな拍手で会場が揺らいだ。一番奥の席で粋華も拍手をしていた。
「では、おふたりによる、婚姻届け署名の儀に移ります。三朗君、稀世さん、お願いします。」
ふたりは一度見つめあい、頷いた。三朗が先に署名し、稀世が続いた。檜が婚姻届けを皆に見せると再び大きな拍手が沸いた。
「では、人前式最後の儀、誓いの口づけを行います。カメラをお持ちの皆様はどうぞ、前の方までどうぞ。」
大阪ニコニコプロレスと商店街の女性陣がどっと三郎と稀世の前に押し寄せた。
「さて、誓いの口づけをどうぞ!」
三朗は稀世のあご下に指を添え、そっと唇を重ねた。稀世の頬に涙がつたった。フラッシュの嵐は、しばらくの間収まることは無かった。高砂の席では、直とまりあがハンカチで目じりを押さえていた




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