半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ

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ルイ様から子供達と一緒に夕食を食べたいと言われた。

ロリーナと手を繋いで入ってきたロイスは少し元気がないままだった。


「ロイス、俺の横に座らないか?いや、俺の横に座ってほしい」

「いいの?」

「ああ、ロイスの隣で夕食を食べたい。駄目か?」

「ううん」

「なら来い」


ルイ様はルイ様が座る隣の椅子をポンポンと叩いた。ロイスは笑顔で走って行った。ロイスが椅子に座るとルイ様はロイスの頭を撫でた。ロイスの喜ぶ顔。

私はロリーナを膝の上に座らせてルイ様の前に座った。

食事が運ばれてきて、ロリーナに食べさせながら私も食べる。ルイ様とロイスは仲良く話しながら食べている。

ロリーナはお腹がいっぱいになったのかごそごそと動きだした。


「ロリーナもう少し待ちなさい」

「リリー、ロリーナを見ているから食事をしたらどうだ?まだそんなに食べてないだろ」

「ですが」

「ロリーナおいで」


ルイ様は手を広げている。ロリーナは私の膝から下りルイ様の方へ歩いていきルイ様の膝に座った。


「だっこ」

「抱っこか?良いぞ」


ロリーナはルイ様の膝の上に立ちルイ様に抱きついた。ルイ様もロリーナを抱きしめた。嬉しそうな幸せそうな顔をするロリーナ。ルイ様も嬉しそうな幸せそうな顔をしている。


「ロリーナばっかりずるい」

「ロイスも俺に抱っこしてほしいのか?」

「……うん…」


ロイスが顔を俯けて頷いた。


「よし、なら母様が食べ終わったらな?」

「かあさま…」

「俺が呼んだら駄目だったか?」

「ううん、だめじゃない」


ロイスは顔をあげ顔を横に振った。

目の前の光景に涙が出そうになる。ロリーナを抱っこしロイスと話しロイスの頭を撫でる。

ルイ様の子供達を見つめる瞳。子供達がルイ様を見つめる瞳。笑いあい優しい顔を嬉しい顔を喜ぶ顔をお互いに向け、愛しい顔を愛しい目を子供達に向ける。親子の一齣。

その光景を私は見つめる。


「かあさまわらってる」


ロイスの声に3人が私を見る。


「だって仲が良いなって思って」

「ああ、俺はロイスともロリーナとも仲が良いぞ。な?」

「うん」


ロイスの嬉しそうな声。ロリーナもコクリと頷いた。二人の頭を撫でるルイ様。


「リリー食べ終わったらロリーナを頼めるか?」

「はい」


私はルイ様の隣に立ちロリーナを受け取る。


「ロイスおいで」


手を広げてロイスを待つルイ様。ロイスは恥ずかしそうにルイ様の膝の上に座り抱きついた。ルイ様もロイスを抱きしめる。


「……とう、さま…」


ロイスのか細い声が聞こえた。


「ロイス…」


ルイ様の囁くような声が聞こえた。

ルイ様はロイスをギュッと抱きしめた。


「ロイス、ロイス、ロイス…」

「……とうさま…、とうさま……うわぁぁん」

「ロイスごめんな、父様忘れてごめんな…」


ルイ様はロイスを抱きしめながら背中を優しくトントンと叩いた。

ロリーナが庭で車椅子に座るルイ様の膝の上に座り抱っこをせがむ時は今までもあった。それでもロイスは『ぼくはいい』といつも言っていた。

本当はロイスもルイ様の膝の上に座り抱っこをしてほしかったのかもしれない。

ルイ様は今、車椅子ではなく椅子に座っている。それでも今までも何度と同じ場面はあった。ルイ様の隣に座り食事をする。話し笑い頭を撫でる。

ただ最近変わった事といえばロリーナも一緒に食事をするようになった事。

まだ幼いロリーナは食事が終わるまでじっとしていられないし、食事を嫌がる時もある。お腹がいっぱいになれば遊びたい。だから今まで先に食べさせて私達が食事中は部屋の片隅でメイドと遊んでいた。

ロリーナはルイ様を父様と思って甘えているのか、おじさんと思って甘えているのかは分からない。きっと庭の時のように膝に座り抱っこをせがんだ。ただそれだけ。

ロイスも今までは隣に座り食事をしてもルイ様の膝に座る事はなかった。それでもロイスにとって食事中はルイ様を一人占めしていた場所だった。

ロイスも本当はずっとルイ様に甘えたかった。膝に座り抱っこをしてほしかった。

『とうたま、かえってきたらまただっこちてね?』

『ああ、約束だ』

約束が果たされる事はなかった。それが今日果たされた。

あの時とは違う。あの時は自分の子供だと分かっていた。今は私の連れ子で自分の子供ではないけど可愛い子供達、それでもロイスにとっては父様は父様。毎日『はじめまして』をしないといけないけど、今この瞬間だけはあの日の父様。

包み込むように抱きしめる抱きしめ方、父様の温もり、父様の声、父様の優しい手、ロイスを見つめる優しい瞳、愛しい可愛い俺のロイス、その気持ちがロイスに伝わった。だからおもわず『とうさま』と言ってしまった。

3歳だったロイスがあの日を覚えているのかは分からない。それでも父様との最後の思い出を忘れたくないとずっと思っていたのかもしれない。

いつもルイ様とはどこかよそよそしいロイスが甘えている。あの日に見たロイスの顔を今見せている。


貴方が明日忘れても私は今の光景を忘れない。今このときだけは父と子、それを私は忘れない。


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