レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

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カップラーメン大戦争(未完)

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「では、全員合格ということで。来週の頭から働いていただきたいと思います」
 太った髪の毛の薄い面接官の軽い声が、白塗りの小さな会議室に響いた。緊張感がどっと抜け、ようやく仕事にありつけたという安堵の気持ちで一杯になった。横目で僕以外の面接に来た人たちを見る。同じように少し顔がほころんでいるように見えた。三十代ぐらいの真面目そうな男と、同い年ぐらいの女性、そして若いスーツを着た男、そして僕。真面目そうな男と女性は夫婦だろうか。夫婦やカップルで面接を受けに来る人は何人も見てきた。それだけ何回も面接をし、何回も転職しているわけだが……。

 二十三歳となった夏、それが当たり前だといったように、僕は無職だった。実家暮らしならまだやっていけるだろうが、一人暮らしをしているためそうはいかない。家賃は六万。そこに光熱費などがかかってくるため、実質七万円。それだけは最低限稼がないと、流行りのネットカフェ難民になってしまう。親との関係は良くないため、実家に帰ることもできない。だからこそ余計に仕事が決まったことに対しての嬉しさがあった。

 その仕事は夜勤のカップラーメンを製造している工場だ。僕たちが入る前に八人入って八人辞めた、と面接官に言われた。それほど大変な仕事なのだろうか、と不安になったが、余裕が言える状況では無いため、そんな気持ちを無理やり静める。
 ライン作業だった。八列に並んだカップラーメンが、大量に流れてくる。僕は同時に入社した同い年の男と、ラインに並びラーメンに適量の具が入っているかを目視で検査する仕事をやることになった。その男は元自衛官で、自分の事を「自分」と呼ぶ、堅苦しい男だった。それでも同い年の男が一緒だという安心感で、僕たちは徐々に仲良くなっていった。仕事はやはりハードだったが、周りの人たちも良い人ばかりで――八割が女性なのが大変なところだが――悪くは無いと思った。
 二三日勤務して、同期に入った女性が来ていないことに気づき、なんとは無しに会社の人に聞いたが、どうも男性恐怖症で仕事に来ることができなくなったという。女性が多い職場だと求人に書いていたのに、数人男性が――しかも上司に当たるため、いやがおうでも接しなければならない――いるのが我慢できなくなったらしい。僕は僕でハードな仕事とその後の麦酒、そして一人暮らしのための家事全般で大変だったので、特に何を思うことも無かった。

 慌しく一週間が過ぎ、人一倍人見知りをする僕でさえも、職場の人たちの一部と世間話をするような仲になっていた。辛いのは休憩時間だった。八時間労働の九時間拘束なのだが、二時間ごとの十分程度の一服休憩が無い。これまでの工場なら大抵あったんだけれど、食品を扱うクリーンルームでの仕事のせいか、いちいち着替えて十分の休憩だと着替えて終わり、となってしまうからだろう。無職の間は猿のように煙草を吸っていたが、この仕事に就いてからは二日に一箱に減った。
 仕事のきつさもさることながら、一人暮らしのためすることが多すぎて、土日は溜め込んでおいた食器や洗濯物の整理に終われ、なかなかじっくりと休める時が無い。それに加えて昔からの不眠症のせいで仕事が終わると麦酒を六本七本開けてそのまま寝て、起きた頃には仕事の時間といった状態……。しかしそれを癒してくれる唯一の存在があった。隣の県に住んでいる彼女だ。家出するかたちで彼女の元へ行き、半ば無理やりに同棲したものの、仕事が長続きしないという僕の情けない性格で親に強制的に地元へ連れて帰らされ、かといって実家には僕が住むようなスペースは無いため、実家から歩いて十五分のところに部屋を借りさせられ――それも田舎では破格の家賃六万という賃貸アパート――まあ、紆余曲折ありながらも、彼女とはまだ続いていた。付き合ってもう四年になるだろうか。七歳年上で、少し性格にきついところがあるものの、マゾっ気のある僕には逆に好感が持てた。バツイチで二人の子持ちだが、その二人の子供のあまりの可愛らしさに、僕のほうが甘やかせている始末だった。
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