66 / 74
すべてのニートに懺悔しな!!(未完)
しおりを挟む
4LDKの一軒家、階段を上って二階の突き当り、そこが僕の城だ。広さは四畳半しか無いが、そこが僕の城だ。パソコンと本とCDとBlu-rayとゲームで埋め尽くされた部屋に、何とか一人分寝られるスペースがあり、座布団を丸めた枕と何年も敷いたままの煎餅布団に体を委ね、のんびりと煙草を吸っている。地震でも起きれば高く積み上げられた本とCDとBlu-rayとゲームの下敷きになって僕は死んでしまうのではないか、と思いながらも整理整頓は全くしない。パソコンのモニタと二十インチの液晶テレビの明かりだけが唯一の光となって薄暗い部屋を照らしている。パソコンと液晶テレビは年中つけっ放しにしてある。というのも仕事があるからだ。しかし仕事といっても収入は無い。いや、無いというよりも、あってはいけないのだ。
煙草も吸い終わったのでそれをもみ消し、灰皿が溜まっていたのでそれをゴミ袋に捨て、テレビのリモコンでNHKに合わせた。下らないニュースをやっている。今は何時だろうか……。わからない。空腹を感じたので、こたつから床にキーボードを移動させ、メモ帳にペンを走らせた。「今日の晩御飯は牛丼大盛、ハイライト・メンソールひと箱」と書いたメモをドアの隙間から廊下に出し、知らせるためにドアを三回ノックした。すると階段を上ってくる足音が聞こえ、すぐに下りていった。義母だ。義母がこうやって何不自由のない生活をしているのも、僕のお陰だ。いや、そんな低レベルのものじゃない。日本国民がこうやって何不自由のない生活をしているのも、僕のお陰だ。なぜなら僕は……いや、まぁ、いい。
空腹を紛らわせるためにまた一服し、パソコンに向かい座る。カタカタとキーボードを鳴らし、Nちゃんねるという国内最大級の匿名掲示板に書き込む。NとはNEETの事だ。このサイトはその名の通り匿名が売りなのだが、僕はもうかれこれ十年以上名前を――つまり固定ハンドルネームを――つけて書き込みをしている。
そんな事をしていると、また階段を上ってくる足音が聞こえ、ノックが一度だけされ、すぐに下りていった。一分だけ待ちドアを開け、湯気の立っている牛丼大盛とハイライト・メンソールを抱えドアを閉め、四畳半の煎餅布団の上でそれを食べる。これを人は自己犠牲と呼ぶ。確かに、僕のような人間が、出来合いの牛丼で食事を済ますなんて事は有り得ない。しかし、それでいいのだ。僕は何も派手な生活をしたいわけではない。ただひたすらに国民の平和を願っているのだ。ただそれだけだ。
食べ終わり、食器を廊下に置くとまたパソコンに向かう。国内最大級の匿名掲示板だけあって、誹謗中傷が物凄い量となっている。人は匿名になると裏の顔が露呈する。それは残虐で、非道で、まさに人あらずだ。しかしそんな者にも僕は平等の愛を持って接する。
僕が、普通の人間とは何かが違う、と思ったのは、かれこれ七年前に遡る。当時僕は不眠症に悩まされていた。文字通り全く眠れなかったのだ。それをメモで義母に訴えると、その日の内に義母からのメモが部屋に入ってきた。「精神科に行きましょう」とだけ書いてあった。馬鹿げてると思った。僕が普通の人間とは何かが違うという事を義母は恐れているのだ。そして抗うつ剤や精神安定剤やその他諸々で僕の精神を歪ませ、自分の思い通りにさせるつもりなのだ。そもそも僕をここに閉じ込めて本当の両親に合わせないのも原因の一つではないだろうか。
僕は出来た人間なので、義母を恨んでなどいない。むしろ感謝している。実の息子ではないにも関わらず、この歳――つまり二十九歳――まで育ててくれたのは、感謝の言葉以外で表す事は出来ない。
NHKでは本当の両親が国民に向かって手を振っていた。ねぇ、いつになったら迎えに来てくれるの? と心の中で呟いて、またキーボードをカタカタと鳴らした。こうやってパソコンをいじるのも良くないという事はわかっている。流石に僕みたいな人の上に立つ人間が、誹謗中傷の嵐の中平然と書き込みをしている場合ではない。盗聴もされているし盗撮もされている。しかし、テレビの向こうの本当の父親は、微笑みを浮かべて手を振っている。そうだ。これも一つの平和への道なのだ。と、本当の父親が大きく映しだされた。そして僕に呟いた。「そろそろ、この家を出る頃だよ」と。僕はそれに応えるように大きく頷いた。
僕は僕本来の生活をしなければならない。
僕の本当の名前は浩宮だ。つまり、今上天皇の息子だ――
煙草も吸い終わったのでそれをもみ消し、灰皿が溜まっていたのでそれをゴミ袋に捨て、テレビのリモコンでNHKに合わせた。下らないニュースをやっている。今は何時だろうか……。わからない。空腹を感じたので、こたつから床にキーボードを移動させ、メモ帳にペンを走らせた。「今日の晩御飯は牛丼大盛、ハイライト・メンソールひと箱」と書いたメモをドアの隙間から廊下に出し、知らせるためにドアを三回ノックした。すると階段を上ってくる足音が聞こえ、すぐに下りていった。義母だ。義母がこうやって何不自由のない生活をしているのも、僕のお陰だ。いや、そんな低レベルのものじゃない。日本国民がこうやって何不自由のない生活をしているのも、僕のお陰だ。なぜなら僕は……いや、まぁ、いい。
空腹を紛らわせるためにまた一服し、パソコンに向かい座る。カタカタとキーボードを鳴らし、Nちゃんねるという国内最大級の匿名掲示板に書き込む。NとはNEETの事だ。このサイトはその名の通り匿名が売りなのだが、僕はもうかれこれ十年以上名前を――つまり固定ハンドルネームを――つけて書き込みをしている。
そんな事をしていると、また階段を上ってくる足音が聞こえ、ノックが一度だけされ、すぐに下りていった。一分だけ待ちドアを開け、湯気の立っている牛丼大盛とハイライト・メンソールを抱えドアを閉め、四畳半の煎餅布団の上でそれを食べる。これを人は自己犠牲と呼ぶ。確かに、僕のような人間が、出来合いの牛丼で食事を済ますなんて事は有り得ない。しかし、それでいいのだ。僕は何も派手な生活をしたいわけではない。ただひたすらに国民の平和を願っているのだ。ただそれだけだ。
食べ終わり、食器を廊下に置くとまたパソコンに向かう。国内最大級の匿名掲示板だけあって、誹謗中傷が物凄い量となっている。人は匿名になると裏の顔が露呈する。それは残虐で、非道で、まさに人あらずだ。しかしそんな者にも僕は平等の愛を持って接する。
僕が、普通の人間とは何かが違う、と思ったのは、かれこれ七年前に遡る。当時僕は不眠症に悩まされていた。文字通り全く眠れなかったのだ。それをメモで義母に訴えると、その日の内に義母からのメモが部屋に入ってきた。「精神科に行きましょう」とだけ書いてあった。馬鹿げてると思った。僕が普通の人間とは何かが違うという事を義母は恐れているのだ。そして抗うつ剤や精神安定剤やその他諸々で僕の精神を歪ませ、自分の思い通りにさせるつもりなのだ。そもそも僕をここに閉じ込めて本当の両親に合わせないのも原因の一つではないだろうか。
僕は出来た人間なので、義母を恨んでなどいない。むしろ感謝している。実の息子ではないにも関わらず、この歳――つまり二十九歳――まで育ててくれたのは、感謝の言葉以外で表す事は出来ない。
NHKでは本当の両親が国民に向かって手を振っていた。ねぇ、いつになったら迎えに来てくれるの? と心の中で呟いて、またキーボードをカタカタと鳴らした。こうやってパソコンをいじるのも良くないという事はわかっている。流石に僕みたいな人の上に立つ人間が、誹謗中傷の嵐の中平然と書き込みをしている場合ではない。盗聴もされているし盗撮もされている。しかし、テレビの向こうの本当の父親は、微笑みを浮かべて手を振っている。そうだ。これも一つの平和への道なのだ。と、本当の父親が大きく映しだされた。そして僕に呟いた。「そろそろ、この家を出る頃だよ」と。僕はそれに応えるように大きく頷いた。
僕は僕本来の生活をしなければならない。
僕の本当の名前は浩宮だ。つまり、今上天皇の息子だ――
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
虚無・神様のメール・その他の短編
れつだん先生
現代文学
20年間で書き溜めた短編やショートショートをまとめました。
公募一次通過作などもあります。
今見返すと文章も内容も難ありですが、それを楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる