9 / 37
課外授業:気になる教師
4
しおりを挟む
***
いつもより足早に帰宅し、三木先生から借りた本をさんが冊をカバンに入れてから、自宅を出発した。その中に、写真が挟まってた『古事記』も入っている。
写真についてツッコミを入れるべきか考えてる最中に、ボロアパートに到着。呼び鈴を押そうと右手を伸ばした瞬間、音もなく突然扉が開いた。
「わっ……!!」
ビックリして声が出せずにいる私に、してやったりな顔をする三木先生。
「何て顔してるんだ、面白すぎるぞお前」
「いや、だって、いきなり扉が開いたら、ビックリするでしょうよ!」
「いやいや、お前のその顔の方がビックリもんだぞ。張ってて良かったー。早く中に入れ」
張ってて良かったって、わざわざ扉の前に張り付いていたの!?
予想がつかない三木先生の行動に困惑しつつお邪魔しますと挨拶して、この間と同じように中に入った。
「……あの、この間お借りした本、本棚に戻しておきますか?」
「おー、そうしてもらえると助かる。作者順に並んでるから、よろしくな」
笑いながら台所に立つと、ヤカンを火にかけた。
まずは下の段にあった、『古事記』を元あったように逆さまに差し込む。
――こうやって置いてあったんだから、何かあるのかもしれないな――
複雑な心境を抱えながら残りの本を戻そうと背表紙を見て、何とか作者を探した。一冊は自分の目の高さのところだったので、難なく戻せたのだけれど……
あと一冊が背伸びをして、入るか入らないかの微妙な位置にあった。自分で戻すと言ったんだから、絶対にやり遂げるもんね。
本棚に片手をつき、うんと背伸びをして、高い棚に本を持つ手を、めいっぱい伸ばした瞬間――
「あぶねーな、何やってんだ」
いつの間にか三木先生が背後にいて手に持っていた本を、ひょいっと奪う。そして入れたい位置にさくっと戻し、私の頭を撫でてくれた。
「戻してくれてありがとな、助かったよ」
そう言って何事もなかったように、台所に戻って行く。ありがとうを言わなきゃならないのは自分なのに、先に言われてしまった。
すっかりタイミングを失い、どうしていいか分からず、おずおずとテーブルの前に座るしかない。
目の前にはノートパソコンと、私の創作ノートが置いてあった。
ぼんやりしてると、鼻に香ってくる独特なコーヒーの匂い。
「この香りって、前に飲んだコーヒー?」
「ああ、飲むだろ? 砂糖は、この間の甘さで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
三木先生が淹れてくれた美味しいコーヒーがまた飲めると思ったら、元気よく答えてしまった。
数分後、自分の前に真っ白いマグカップに注がれたコーヒーが置かれる。美味しそうなその香りに思わず顔を寄せると、クスクス笑い出した。
「余程気に入ったんだな。待ってる最中も、早く寄越せって顔していたし」
「だって、コーヒーがこんなに美味しいって思わなかったから。さっそく戴きます……」
見つめられるのが何だか恥ずかしくなり、慌ててマグカップを手にして、コーヒーをすすった。鼻に抜けるバニラの香りと、ほんのり甘いコーヒーが落ち着かない気持ちを瞬く間に癒していく。
そんな私を見ながら三木先生も同じように、コーヒーを飲んだ。
「お前がノートに書いた小説、どうしてあれを書こうと思ったんだ? 普段の姿を見てるだけに、ちょっと驚いたぞ」
「あー、うん……」
唐突に聞かれ、返答に困ってしまう。
いつもより足早に帰宅し、三木先生から借りた本をさんが冊をカバンに入れてから、自宅を出発した。その中に、写真が挟まってた『古事記』も入っている。
写真についてツッコミを入れるべきか考えてる最中に、ボロアパートに到着。呼び鈴を押そうと右手を伸ばした瞬間、音もなく突然扉が開いた。
「わっ……!!」
ビックリして声が出せずにいる私に、してやったりな顔をする三木先生。
「何て顔してるんだ、面白すぎるぞお前」
「いや、だって、いきなり扉が開いたら、ビックリするでしょうよ!」
「いやいや、お前のその顔の方がビックリもんだぞ。張ってて良かったー。早く中に入れ」
張ってて良かったって、わざわざ扉の前に張り付いていたの!?
予想がつかない三木先生の行動に困惑しつつお邪魔しますと挨拶して、この間と同じように中に入った。
「……あの、この間お借りした本、本棚に戻しておきますか?」
「おー、そうしてもらえると助かる。作者順に並んでるから、よろしくな」
笑いながら台所に立つと、ヤカンを火にかけた。
まずは下の段にあった、『古事記』を元あったように逆さまに差し込む。
――こうやって置いてあったんだから、何かあるのかもしれないな――
複雑な心境を抱えながら残りの本を戻そうと背表紙を見て、何とか作者を探した。一冊は自分の目の高さのところだったので、難なく戻せたのだけれど……
あと一冊が背伸びをして、入るか入らないかの微妙な位置にあった。自分で戻すと言ったんだから、絶対にやり遂げるもんね。
本棚に片手をつき、うんと背伸びをして、高い棚に本を持つ手を、めいっぱい伸ばした瞬間――
「あぶねーな、何やってんだ」
いつの間にか三木先生が背後にいて手に持っていた本を、ひょいっと奪う。そして入れたい位置にさくっと戻し、私の頭を撫でてくれた。
「戻してくれてありがとな、助かったよ」
そう言って何事もなかったように、台所に戻って行く。ありがとうを言わなきゃならないのは自分なのに、先に言われてしまった。
すっかりタイミングを失い、どうしていいか分からず、おずおずとテーブルの前に座るしかない。
目の前にはノートパソコンと、私の創作ノートが置いてあった。
ぼんやりしてると、鼻に香ってくる独特なコーヒーの匂い。
「この香りって、前に飲んだコーヒー?」
「ああ、飲むだろ? 砂糖は、この間の甘さで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
三木先生が淹れてくれた美味しいコーヒーがまた飲めると思ったら、元気よく答えてしまった。
数分後、自分の前に真っ白いマグカップに注がれたコーヒーが置かれる。美味しそうなその香りに思わず顔を寄せると、クスクス笑い出した。
「余程気に入ったんだな。待ってる最中も、早く寄越せって顔していたし」
「だって、コーヒーがこんなに美味しいって思わなかったから。さっそく戴きます……」
見つめられるのが何だか恥ずかしくなり、慌ててマグカップを手にして、コーヒーをすすった。鼻に抜けるバニラの香りと、ほんのり甘いコーヒーが落ち着かない気持ちを瞬く間に癒していく。
そんな私を見ながら三木先生も同じように、コーヒーを飲んだ。
「お前がノートに書いた小説、どうしてあれを書こうと思ったんだ? 普段の姿を見てるだけに、ちょっと驚いたぞ」
「あー、うん……」
唐突に聞かれ、返答に困ってしまう。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
Fly high 〜勘違いから始まる恋〜
吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。
ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。
奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。
なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。
王子様と過ごした90日間。
秋野 林檎
恋愛
男しか爵位を受け継げないために、侯爵令嬢のロザリーは、男と女の双子ということにして、一人二役をやってどうにか侯爵家を守っていた。18歳になり、騎士団に入隊しなければならなくなった時、憧れていた第二王子付きに任命されたが、だが第二王子は90日後・・隣国の王女と結婚する。
女として、密かに王子に恋をし…。男として、体を張って王子を守るロザリー。
そんなロザリーに王子は惹かれて行くが…
本篇、番外編(結婚までの7日間 Lucian & Rosalie)完結です。
お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛
ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。
社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。
玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。
そんな二人が恋に落ちる。
廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・
あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。
そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。
二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。
祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる