見えないライン

相沢蒼依

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課外授業:気になる教師

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 ――時代は明治時代中期くらいの設定――

 下町の和菓子問屋の若旦那、正治(せいじ)が主人公。

 ある日お店で失敗して父親に叱られた正治は、落ち込んだ気持ちを癒すべく、近くの海に赴いた。

 寄せては返す波に沈んだ気持ちを打ち明けながら、砂浜を歩いていると――

 目の前にキレイな女の人が、涙を流しながら佇んでいるのが目に留まる。

 長くて綺麗な黒髪を頭のてっぺんで結び、男のような格好をしていたけど、目鼻立ちのはっきりとした女の人だった。

 正治の存在に気づくと慌てて涙を拭い、いきなり胸倉を掴んでくる。
 
 そして――

『何、勝手に見てんだよ、金出しな!』

 いきなり凄んできた彼女の豹変に驚きつつ、ちゃんと財布を探す正治。しかし、懐にあるはずの財布が見当たらなかった。

 そのマヌケぶりに思わず笑う女は、ハナと名乗った。
 
 このあたり一帯の海賊をしていると言い放ち、年下の正治を面白おかしくからかった。なぜだか困り果てる正治の笑顔が、ハナの心を癒したから。

 ――失恋で癒えたキズが、ゆっくりと塞がっていったから――

 たびたび逢瀬を重ねるふたりに、ハナの許婚が絡んできたり、元恋人が現れて波乱万丈な出来事があったけど、ふたりは手を取り合い、何とか乗り越えていく。

 しかし正治の父が現れ、息子の将来を思うなら身を引いてくれと土下座され頼まれて、泣く泣く別れを告げたハナ。そんなハナの気持ちを知らず、ヤケになって夜の街に消えた正治。

 遊郭での豪遊やいろんなことで手持ちの金を使い果たし、ボロボロの状態で店に戻って来た。

 そんな正治に密かに片想いしていたお手伝いである桜が、今までの経緯を伝え、幸せになってほしいと頼みこむ。

 真実を知った正治は、家を捨てることを決意。父と決別し家を出て、ハナの元に向かった。

 ちょうど結納前日で遅くまで起きていたハナを正治は躊躇なく押し倒し、家を捨ててきたことを話す。

『俺と一緒に新しいところで、新しい未来を一緒に築いていこう! ハナさんじゃなきゃダメなんだ!」

 その言葉に胸を打たれ、ハナは駆け落ちを決意。正治と夜を共にし、明け方出発することにした。

 お互い手と手を取り合って、小船に乗り込んで出航したのだけど――突然竜巻に巻き込まれ、空高く舞い上がってしまう。その際に正治の背中に大きな枝が突き刺さるが、ハナを守るため必死に食い止めた。

 そしてどこかの陸地に投げ出され、気を失うふたり。

 夢の中で正治はハナに向かって、自分が死んだことを告げる。それは永遠の別れを意味し、そんなのは嫌だと泣き喚くハナに指切りしようと提案。

『あの世で交わした約束は、破ることが出来ないよ。きっと巡り逢えるから、それまで元気で。君はひとりじゃないんだからね』

 そう言って、ふたりは別れたのだった。

 ――数年後。

 ハナの元許婚、霧賀(きりが)が、ハナが勤める茶店に顔を出す。ハナの父親が病で亡くなったことを伝えるため、捜し歩いてたというのだ。

 店先で遊んでいた小さな男の子を見て正治の子どもだと直感した霧賀は、ハナに幸せなのかと問いかける。

 その問いかけには答えず一緒に、海の見える丘に連れて行かれる霧賀。その高台に、政治のお墓があった。

 すべてを悟った霧賀はハナを支えると告白するが、首を横に振って正治の子ども正臣(まさおみ)を、ぎゅっと抱きしめる。

『私はこのコがいれば、生きていけるから大丈夫。それに正治と約束しているから、誰とも付き合う気がないの』

 凛とした眼差しで言うハナを切なげに見てから頑張れよと声をかけて、その場をあとにした霧賀。

 ハナと正臣のふたりを包むように、海風が吹いていった――

 そんな話を、私はつらつらっと書いた。
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