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第1部
第2話:ボクをカタチ作る③
しおりを挟む【side:ディア】
―――――――――
友人の悪魔、バルドロを見送った後、背中にトンと肘で打たれる衝撃を感じた。
振り返るとそこに主…アカツキが顔をこちらに向け見上げていた。顔が合うと主はにこりと微笑んだ。
「結構仲良さそうだったけど、もしかして彼女?」
からかうように言っているが語気に僅かに怒りを感じる。
どうやら少し気分を害してしまったらしい。タイミングの悪いところに出くわしてしまった。
「違いますよ。彼はああ見えて男性なので彼女には出来ません」
「えっ!?」
彼の性別を暴露すると主は大きく目を見開いて驚いていた。
確認しようと思ったのか、バルドロが去っていった方を向いたがもう姿は見えなくなっていた。
「…いや、この際性別とかどうでもいいや。それよりディア、浮気は許さないよ!!魔法の鎖で簀巻きにしてしまおうか?」
「公衆の面前で簀巻きにされるのは恥ずかしいのですが。まあ、アカツキに拘束されるのは嫌いではないので良しとしましょう」
「…前から思ってたけどディアって結構ドMだよね…多分一目惚れした女の子全員泣くと思う」
「貴方限定ですよ。他の者には死んでも嫌です」
やれやれ…と言いながらため息をつかれたが、どうやらまだ思うところがあるようで不機嫌そうに口をとがらせている。
主は何かを思いついたのか数秒の間の後、こちらの肩口に手を伸ばした。
温かい指の腹で首元を撫でられ、少しくすぐったい。
「ディアは冗談通じないし、いっそここに痕でもつけたら君に近づく女の子たちへの牽制になるかなぁ」
そう言われている間も肩口を撫でられていた。
手つきは優しいが力を入れて腕を掴まないと引き離せそうにない。
口元は笑っておられるが、目は笑っていない。ほんの少し、赤い瞳の奥に初めて出会ったときのような狂気を感じた。
狙ったものを逃さない、手中に収めて支配したいと獲物を見定めた瞳だ。私はこの瞳が昔から愛おして仕方がなかった。
背筋がぞわりとする感覚は、恐怖からなのか快感からくるものなのか分からない。
だがこの悍ましい独占欲と支配欲を向けられると、胸が高鳴って止まないのだ。
まだ数週間しか経っていないが、主は魂だけでなく性格など、身体と私たちをとりまく生活環境以外は昔のままだった。
再会してからこう嫉妬心を向けられたのは初めてだが、昔と変わらぬ様子に嬉しさが増す。
私は肩口に触れている主の手にそっと自分の手を添えた。
「良いですよ。満足するまでつけてください」
抑えたいのに自分の口角が上がっているのを感じた。
今の私はどんな表情をしているのだろう。主を萎縮させていないと良いのだが。
「…早く行こう」
私の反応に呆れられたのか満足されたのか分からないが、主は私の肩口から手を離した。その手で服の裾を引っ張られ、私も後ろをついていくような形で歩き出す。
おや、良いのだろうかと少しだけ拍子抜けした。
このままでは歩きにくいので隣に並ぶと服の裾をぱっと離された。歩きながら身体を曲げて主に耳打ちした。
「遠慮しなくて良いんですよ?」
「いい…どうせ服の下に沢山ついてるし」
ああ、確かに。服の上から自分の体に触れた。指で肌を軽く押さえたら僅かな痛みを感じた。
私が言うのもなんだが、一目惚れした女性全員泣くのは主の方だと思う。
その後はいつも通り、目的地の町のことやその場所で何をしたいかなど、他愛のない話をいろいろした。
本当は何かしら移動手段を確保したかったらしいが資金が足りないらしく、引き続き旅は徒歩で進める事に決まった。
再開する前までは、前世の主が物を売って稼いだ沢山の資金を切り崩しながら旅をしていたそうだが、それも底を尽きたようだ。この町に比較的長く滞在していた理由も短期のアルバイトをしてお金を稼いでいたからだ。
私は人間より体力はあるし主の決めた事に反論する気はない。
だが主の事は心配だ。私を見つけるまでにかなりの時間足を酷使して痛めているはずだ。
馬車移動出来るだけでもかなり負担は減らせるだろう。その為には資金が必要なのだが…
「この町には随分と長居したから頑張らないとね。今から『ウィルズヴィル』を出るから野宿も視野に入れて…う~ん、明日には着くと良いな。楽しみだね」
いろいろな町で観光しておられる主はいつも楽そうだ。この先もこの顔を見られるのなら私はなんでもしよう。
心地よい追い風は、まるで私たちを応援してるようだった。
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