四季の姫巫女(完結)

襟川竜

文字の大きさ
36 / 103
第弐幕 宿祢

第二十話

しおりを挟む
どれくらいの間霊力を注いでいたのかわからない。
気が付いたらもう夕方だった。
ずっと霊力を注ぎ続けていたらだんだんとくらくらしてきたけれど、そんな事言っていられない。
幽霊のお姉さんも迦楼羅丸様も、わたしを止めるような事はしなかった。
止められたところで、きっとわたしはやり続ける。
二人ともそれをわかっていたのかもしれない。
だから、フラフラになってもやって良かったって、今は心の底から思う。
「おはよう、宿祢」
現れた綺麗な空色の目に、また涙が溢れてきた。
「…針千本、飲まずに済みそうでござるな」
その笑顔は、わたしが見たいと思っていた温かい笑顔。
「うん。一緒に秋ちゃんのおはぎ、食べようね」
そっと伸びた手が、わたしの涙を拭う。
ゆっくりと体を起こす宿祢を支えて、視線を合わせた。
「なにか、礼をせねばならぬな」
「それじゃあ、わたしが姫巫女になれるように手伝ってよ。わたし一人じゃ何もできないって、身に染みたんだから」
「冬殿が拙者を必要としてくれるのならば」
『ねぇ冬。宿祢と式神契約したら?』
「式神契約?」
「それはいい考えだ」
「なんでござるか?」
聞き返したわたしの言葉に、迦楼羅丸様が賛同した。
式神契約がなんなのかわからない宿祢はきょとんとした顔で聞き返した。
「宿祢、お前は今までずっと落魂珠で命を繋いでいたそうだ。その繋ぎが失われた今、お前の存在は不安定なものになっている可能性がある」
「不安定…」
「今は小娘の霊力を注いで安定させているが、それが尽きればまた命の危険がある」
「つまり、今の拙者は、一時的に命を繋ぎとめている状態なのでござるな」
「そうだ。そして小娘と式神契約をすれば、常に霊力を分け与えられている状態だ。お前の存在は安定する。その対価として、お前は小娘の為に命を使え。こいつに渡した命だ、断る理由はないだろう」
「うむ。拙者に異論はない。冬殿はどうでござるか?」
「宿祢を助けられるなら…」
『常に霊力を分け与える為には、相当修行が必要よ。厳しいけれど、耐えられるかしら?』
「だ、大丈夫だよ!」
意地悪く言うお姉さんに言い返して、わたしは宿祢に手を差し出した。
「宿祢、わたしが立派な姫巫女になれるように、一緒に頑張ってほしいの。協力してくれる?」
「もちろんでござる。この命に代えても、冬殿をお守りするでござるよ」
「わたしも、宿祢をがっかりさせないように、命懸けで姫巫女になるよ」
握られた手を強く握り返す。
宿祢が助けたくれた命。
わたし、大事に使うよ。
夢を叶えてって宿祢が言ってくれた。
その宿祢が、無理やり死の淵から呼び戻したわたしに嫌な顔一つせずに協力すると言ってくれた。
だったらわたしは、本当に命を懸けて姫巫女になる。
その為に一生懸命頑張る。
どんなに厳しい修行でも、宿祢と一緒なら乗り越えられる気がするから。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

SAI
ファンタジー
魔法が当たり前に存在する世界で17歳の美少女ライファは最低ランクの魔力しか持っていない。夢で見たレシピを再現するため、魔女の家で暮らしながら料理を作る日々を過ごしていた。  低い魔力でありながら神からの贈り物とされるスキルを持つが故、国を揺るがす大きな渦に巻き込まれてゆく。 恋愛×料理×調合

処理中です...