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第弐幕 宿祢
第二一話
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秋桜館に戻ってきた冬が発した一言目は、玄関で待っていた大好きな人の名を呼ぶ事だった。
「秋ちゃん!」
優しい笑みを浮かべて玄関先に立っていた秋を見つけ、霊力を使い果たしてふらふらしていた冬は、疲れを忘れて走り寄った。
「あ、泰時様も」
「ボクはついでか…」
今気が付いたとばかりの冬の言葉に、泰時は肩を落とす。
だがそんな動作も冬には見えていない。
「どうして秋ちゃんがここにいるの?」
「ことり様から冬が霊嘩山に行ったまま帰ってこないと報告があってね。心配だったから無理を言って泰時様についてきたんだ」
「まったく、お前は何をやっていたんだ。着物もボロボロだし…。それは血か?」
「あ、これは…」
「迦楼羅丸が付いていながら」
「わたしがドジを踏んでしまっただけで、迦楼羅丸様は悪くないんです」
慌てる冬の頭を、秋がそっと撫でた。
「何はともあれ、お疲れ様」
「秋ちゃん…」
頭を撫でられるのが心地よいのか、冬は目を細めてうっとりとしている。
それが気に食わないのか、泰時はふんと鼻を鳴らした。
「冬、さっさとことりのところに行くぞ。何があったのかちゃんと報告してもらうからな」
「は、はいっ」
さっさと背を向けて歩いていく泰時の後を、冬は慌てて追った。
その後を幽霊のお姉さんがついていく。
慌ただしい冬の背を、秋は見送る。
「随分と落ち着いているな」
そんな秋に迦楼羅丸が声をかけた。
「まさかとは思うが、視ていたのか?」
「彼、神鬼ですから」
「……」
にこりと笑って答えた秋に、迦楼羅丸はやれやれとため息をついた。
「よく視られたな。あらゆる気配が漂っていて大変だったろうに…」
「そのようですね。途中で繋がらなくなりました。まあ、何はともあれ、あの子に怪我がなくてよかったですよ」
冬が死にかけた事は、どうやら知らないらしい。
ならばわざわざ言うまいと、迦楼羅丸は口を閉じた。
「えっと…。拙者はどうしたら…」
「小娘にでもついていけ。俺は散歩でもしてくる」
「はぁ…」
「僕がご案内しますよ」
くるりと背を向けて歩き出した迦楼羅丸から秋へと視線を移し、宿祢はよろしく頼むと頭を下げた。
* * *
「冗談じゃないわ」
冬の報告を聞き終え、状況を理解したことりは、冬が事件を解決し、式神まで手に入れてきた事に苛立ちを隠せないでいた。
冬に労いの言葉をかけ風呂へと送り出し、泰時には後日正式に書面を送ると約束してお帰りいただいた。
一人残った執務室で、貧乏ゆすりが止まらない。
一介の女中が姫巫女になろうなどと、図々しいにも程がある。
身の程をわきまえさせるために送り出したというのに、決意を固くさせる結果となってしまった。
「目障りだわ…」
明日から始まる修行で、彼女には特別過酷なメニューを用意してある。
それを使って何としてでも姫巫女になる事を諦めさせたい。
「七草冬…。潜在能力だけで選ばれたような子に、私は負ける訳にはいかないのよ」
「秋ちゃん!」
優しい笑みを浮かべて玄関先に立っていた秋を見つけ、霊力を使い果たしてふらふらしていた冬は、疲れを忘れて走り寄った。
「あ、泰時様も」
「ボクはついでか…」
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だがそんな動作も冬には見えていない。
「どうして秋ちゃんがここにいるの?」
「ことり様から冬が霊嘩山に行ったまま帰ってこないと報告があってね。心配だったから無理を言って泰時様についてきたんだ」
「まったく、お前は何をやっていたんだ。着物もボロボロだし…。それは血か?」
「あ、これは…」
「迦楼羅丸が付いていながら」
「わたしがドジを踏んでしまっただけで、迦楼羅丸様は悪くないんです」
慌てる冬の頭を、秋がそっと撫でた。
「何はともあれ、お疲れ様」
「秋ちゃん…」
頭を撫でられるのが心地よいのか、冬は目を細めてうっとりとしている。
それが気に食わないのか、泰時はふんと鼻を鳴らした。
「冬、さっさとことりのところに行くぞ。何があったのかちゃんと報告してもらうからな」
「は、はいっ」
さっさと背を向けて歩いていく泰時の後を、冬は慌てて追った。
その後を幽霊のお姉さんがついていく。
慌ただしい冬の背を、秋は見送る。
「随分と落ち着いているな」
そんな秋に迦楼羅丸が声をかけた。
「まさかとは思うが、視ていたのか?」
「彼、神鬼ですから」
「……」
にこりと笑って答えた秋に、迦楼羅丸はやれやれとため息をついた。
「よく視られたな。あらゆる気配が漂っていて大変だったろうに…」
「そのようですね。途中で繋がらなくなりました。まあ、何はともあれ、あの子に怪我がなくてよかったですよ」
冬が死にかけた事は、どうやら知らないらしい。
ならばわざわざ言うまいと、迦楼羅丸は口を閉じた。
「えっと…。拙者はどうしたら…」
「小娘にでもついていけ。俺は散歩でもしてくる」
「はぁ…」
「僕がご案内しますよ」
くるりと背を向けて歩き出した迦楼羅丸から秋へと視線を移し、宿祢はよろしく頼むと頭を下げた。
* * *
「冗談じゃないわ」
冬の報告を聞き終え、状況を理解したことりは、冬が事件を解決し、式神まで手に入れてきた事に苛立ちを隠せないでいた。
冬に労いの言葉をかけ風呂へと送り出し、泰時には後日正式に書面を送ると約束してお帰りいただいた。
一人残った執務室で、貧乏ゆすりが止まらない。
一介の女中が姫巫女になろうなどと、図々しいにも程がある。
身の程をわきまえさせるために送り出したというのに、決意を固くさせる結果となってしまった。
「目障りだわ…」
明日から始まる修行で、彼女には特別過酷なメニューを用意してある。
それを使って何としてでも姫巫女になる事を諦めさせたい。
「七草冬…。潜在能力だけで選ばれたような子に、私は負ける訳にはいかないのよ」
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