四季の姫巫女(完結)

襟川竜

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第四幕 愉比拿蛇

終話

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あれから一週間。今日、ようやく弥生ちゃんが目を覚ました。
天景の蘇生術は五時間もかかった。術は成功したのに、魂が抜けだしていた時間が長かったせいで意識は戻らなかったの。毎日お見舞いに行って、誠士郎さんから「もしかしたら目覚める事はないかもしれない」と言われた時は、すごく悲しくなった。
でもわたし、弥生ちゃんは負けないって信じてたよ。

お医者様の診察が終わって、ようやく面会の許可が出た。わたしと宿祢、いきなり押しかけたら迷惑かもしれないけど、それでも心配だったから。
部屋にはお布団の上に座る弥生ちゃんと誠士郎さんがいた。
「弥生ちゃん、気分はどう?」
「ちょっとだるいけど、何ともないわ」
「そっか…よかったぁ」
「ただ…」
そこで弥生ちゃんは一旦区切り、自分の手に視線を落とす。

「霊力が、無くなっちゃった」
「無く…なった?」
「うん。生き返った代償というか、反動というか…」
「それじゃあ、もう姫巫女には…」
「なれない、かな」
哀しそうな顔の弥生ちゃんは、けれどすぐに笑顔になった。
「なーんちゃって。『命』あっての『今』よ。死んだままだったら、こうして話なんてできないしね」
そういう弥生ちゃんは、本当に嬉しそう。
姫巫女になれなくなったのは、絶対にショックだと思う。それでも、今を喜んでくれているんだよね。
わたしもまた弥生ちゃんに会えてすごく嬉しいよ。一緒に姫巫女出来ないのは残念だけど、それでも、弥生ちゃんがいてくれるだけでいいの。
「今に霊力以外の力を身につけて姫巫女に復帰してやるわよ」
「うん、楽しみにしてるね」
「弥生殿、無理だけはなさらぬように」
「わかってるわよ」


部屋の外からいろんな音が聞こえてくる。
あの事件は、多くの爪痕を残した。それは物理的なものだったり、心にだったり、さまざま。
お姉さんと迦楼羅丸もそう。きっと二人とも生き残る方法とか、もっといい方法があったと思う。
でもわたしには、あれしか思いつかなかった。二人を引き離したくなくて、人として最低な事をした。
だからわたしは二人に誓う。
もう誰かを犠牲になんてしない。その誓いを有言実行にできる力をつける。
わたしは、みんなを守る姫巫女になる。


深き冬は過ぎ、やがて芽吹きの春が訪れる。
少女が踏み出した一歩は、どの道へと繋がるのだろうか――…。


― 終 ―
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