聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

文字の大きさ
52 / 82

手合わせ(ロイ視点)

しおりを挟む
 屋敷の外に出て、俺とクロウは中庭にある広場に来た。二人とも手には稽古用の模造剣を持ち、少し離れた場所でリラとルルが並んでこちらを見ている。

「よし、それじゃいつでもいいぞ、かかってこい」

「よろしくお願いします」

 クロウは静かにお辞儀をして、剣を構えた。ほう、構えはなかなかにいいな。そう思った瞬間にクロウが走り出した。

 速い!目にも止まらぬ速さでクロウは目の前にたどり着き剣を振り下ろす。既すんでのところで剣を受け止めるが、予想に反して重い。騎士見習いにもなっていなかったであろうこの男が、なぜこんなにも強いのだろうか。

 キィイン!

 剣を跳ね返し反撃するがクロウも剣を受け止めするりと剣を滑らせて剣を打ち返してくる。本気を出しているわけではないが、気を抜けばこちらも危ういかもしれない、そう思えるほどの腕前だ。これは甘く見過ぎていたな。

 力を強めて剣を跳ね返す。

「!!」

 力の強さが変わったことがわかったのだろう、クロウが少し驚いた顔をするがすぐに真剣な面持ちになる。

 何度か剣を打ち合い、クロウの剣を受け止める力がだんだんと弱まってくるのがわかる。そろそろだな。

 キィィィン!

 受けた剣を跳ね返し、それによってクロウが怯んだ一瞬を見逃さなかった。クロウの懐に剣を向け寸止めをする。

「終わりだな」

 はぁ、はぁ、とクロウが息を切らせて項垂れる。

「ありがとう、ござい、ました……」

 一礼するが表情は悔しそうだ。

「ロイ、強いの!」

 リラが駆け寄ってきて俺の服にしがみついた。しかも満面の笑みで俺を見ている。その様子になんだか照れ臭くなってしまった。

「クロウもお疲れ様でした」

 ルルがクロウの元に来て声をかける。ルルは持っていた水筒からお茶を注いでクロウに差し出す。クロウは微笑んでそれを飲み、ホッと息をついた。ルルは俺にもお茶を差し出してくれたが、そんなに喉は乾いていないので遠慮した。

「ロイは本当に強いですね。手も足も出ませんでした」

 クロウが苦笑しながら俺に言う。

「いやいや、なかなかにいい腕をしていて驚いたよ。成人と共に白龍使いの騎士に任命されてすぐ聖女と会ったって言ってただろ、ってことは騎士見習いにはなっていないんだよな?それなのにその強さは一体どういうことだ?」

 騎士見習いで稽古もしていないはずなのになぜこんなにも強いのだろう。気になって仕方がない。

「ギールに、稽古をつけてもらっていたんです」

 息を整えてからクロウはそう言った。白龍が騎士に稽古?そんなことあるのか。ってか、白龍は剣の腕前も立つのか。白龍にできないことなんて何もないんじゃないか?そんな気がしてきた。

「そうなるとギールは相当強いんだな。なんだ、俺からクロウへ教えることなんて何もないんじゃないのか」

 ふーむと腕を組んでそう言うと、クロウはそんなことないです!と慌てて両手を振る。

「ロイには色々と聞きたいことが……」

 そう言ってルルの方を見ると、ルルは何かを察したのかクロウに微笑んだ。

「リラ、一緒にお菓子を作ってみない?簡単に作れるものがあるのよ。後でロイ達にあげましょう」

「お菓子!作ってみたい!」

 ルルの言葉にリラは目を輝かせる。ルルは俺にお辞儀をしてリラを連れて屋敷の中に入っていった。

「ルル達には聞かれちゃまずいことなのか?」

 クロウに尋ねると、クロウは真剣な面持ちになってこちらを見る。一体なんだろう、そんなに深刻なことなんだろうか。

「ロイとリラは歳が離れていますよね。しかもリラの見た目は実年齢よりも若い。それについてどう思われますか?」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

処理中です...