「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ

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4話

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 アリアンナが辺境の診療所で活躍するにつれて、その「奇跡の薬草師」としての評判は、村を越え、近隣の領地、そしてやがて王都の貴族社会にも静かに届き始めていた。

「魔力なしで、あの難病を治したそうだ」 「公爵家出身で、魔力がないゆえに離婚した令嬢が、辺境で真の才能を開花させたらしい」

 王都の貴族たちは当初、この噂を「落ちぶれた貴族の哀れな話」と嘲笑していたが、やがて彼女の治療を受けた貴族の使用人や、領民からの報告が無視できないほど多くなり、噂は「驚くべき真実」へと変わりつつあった。

 診療所では、レオンの独占的な行動がエスカレートしていた。

 レオンは、アリアンナの才能を誇りに思うと同時に、その評判が広がることに対して強い警戒心を抱いていた。評判は、王都の汚れた貴族や、元夫のエドガーの耳に届くことを意味していたからだ。

「アリア様、この新しい患者の問診は、私が担当します。貴女は少しお休みください」

 レオンは、アリアンナに近づく者、特に彼女の優しさに甘えようとする男性患者に対して、一際冷たい視線を向け、可能な限りアリアンナから遠ざけようとした。

 アリアンナは、レオンの過剰なまでの守護に苦笑した。

「レオン、無理しすぎですよ。あなたは私の助手であって、護衛騎士ではないのですから」

「いいえ、アリア様。私は貴女の全てを守る。貴女の才能も、安寧も、そして貴女の温かい心も、誰にも汚させない」

 レオンの青い瞳には、「貴女は私のものだ」という、独占的な情熱が深く宿っていた。彼は、隣国の王子としての権力と、男性としての愛の全てを懸けて、アリアンナを守り抜くと決意していた。

 一方、王都では。

 エドガー・ノイマン侯爵のもとにも、元妻アリアンナに関する信じがたい噂が届き始めていた。

「侯爵様、元侯爵夫人が辺境で驚異的な薬草師として活躍しているとか……魔力なしで難病を次々と治していると聞きました」

 エドガーは、鼻で笑った。

「馬鹿げた噂だ。あの無能な女に、そんな才能があるわけがない。慰謝料を持ち逃げして、せいぜい惨めに暮らしているのだろう」

 しかし、部下が持ってきた辺境の治療事例に関する詳細な報告書を読み進めるうちに、エドガーの顔は次第に驚愕の色に染まっていった。

(魔力なしで、これほどの治癒効果を……?あの女は、私が「無能」と蔑んだ裏で、途方もない才能を隠し持っていたのか?)

 エドガーの心に、冷たい後悔が忍び寄った。彼は、侯爵家の発展に役立つどころか至宝となるはずだった才能を、自分の傲慢さで自ら手放してしまったのだ。

「すぐに、その辺境の村へ密偵を送り込め。あの女の動向、そして隣にいる男の正体を洗い出せ。そして、私のもとに連れ戻す手立てを探せ……!」

 エドガーは、失った至宝を取り戻すため、そして自分の過ちを覆い隠すために、冷酷な決意を固めた。辺境の小さな診療所に、王都の汚れた影が、静かに忍び寄り始めていた。
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