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13話
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王都の空は、いつもより暗く重かった。北部の村々から瘴気が押し寄せ、民の悲鳴が届くという報告が連日王城に届いていた。
王都の広間には国王、王太子レオンハルト、側近たちが集まり、深刻な面持ちで資料を読み比べていた。
「これはただの異常気象ではありません。魔物の群れが村を襲っています」
側近の一人が声を震わせながら報告する。
国王は深く息をつき、ゆっくりと口を開いた。
「聖女の力を借りるしかない……エリスを呼ぶのだ」
「父上、今から呼びましょう」
王太子レオンハルトは即座に返事をし、執務官に指示を飛ばす。
◇
神殿では、エリスが朝の祈りを終えたところだった。庭の大理石に反射する光が、彼女の肩をそっと照らす。
「今日も、民を守らなければ……」
声に出してはっきりと自分に言い聞かせる。恐怖よりも、使命感が胸を満たしていた。
そのとき、大神官セラフィムが静かに近づいた。
「エリス、北部の村々に瘴気が迫っている。準備はできているか?」
エリスは一度深く息を吸う。
「はい。私にできることなら、必ず守ります」
セラフィムは頷き、低い声で告げた。
「慎重に、しかし迷わず行動せよ。民を守ること、それこそが聖女の務めだ」
その言葉に、エリスの心はさらに引き締まった。
◇
午後、エリスは王太子と共に北部へ向かった。街道沿いの村々は、瘴気で灰色に霞み、家々は倒壊の危険にさらされていた。民たちは怯え、手に持てるものを抱えて道の端に避難していた。
「エリス様……どうか助けてください!」
小さな少年が泣きながら手を握る。
エリスは膝をつき、優しく微笑む。
「大丈夫、私はあなたたちを守ります」
心の中で祈りを集中させると、手のひらから柔らかな光が広がり、瘴気を吸い上げるように消し去った。小さな魔物も光に触れ、跪くように消えた。村人たちは目を見開き、声を震わせながら感嘆の声をあげる。
「聖女様……!」
エリスは少し照れながらも静かにうなずく。
「皆さんの命を守れることが、私の力です」
村の長老が涙を拭きながら近づき、礼を述べる。
「この村を救ってくださり、本当にありがとうございます……」
「私一人ではなく、皆さんの勇気と信じる心があったからです」
エリスは穏やかな微笑みを返し、村人たちの心に安心を届けた。
◇
夕刻、王都に戻る道すがら、王太子レオンハルトがふと口を開いた。
「君の力は、ただ驚くべきだけではない。民を守ろうとするその心が、何より大切だ」
エリスは頷き、少し恥ずかしそうに目を伏せる。
「ありがとうございます……でも、まだ安心はできません。北部だけでなく、他の地域も危険にさらされています」
王太子は軽く肩を叩いた。
「君なら大丈夫だ。民も私も信頼している」
◇
その頃、遠くアラン公爵家の屋敷では、アランが窓から月光に照らされた王都の方向を見つめていた。
「……あの女が……また人々に称賛されて……」
拳を握りしめ、悔恨と孤独に苛まれる顔が青白く浮かび上がる。孤立した公爵家内で、かつての優位はすでに遠い記憶となっていた。
王都の広間には国王、王太子レオンハルト、側近たちが集まり、深刻な面持ちで資料を読み比べていた。
「これはただの異常気象ではありません。魔物の群れが村を襲っています」
側近の一人が声を震わせながら報告する。
国王は深く息をつき、ゆっくりと口を開いた。
「聖女の力を借りるしかない……エリスを呼ぶのだ」
「父上、今から呼びましょう」
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◇
神殿では、エリスが朝の祈りを終えたところだった。庭の大理石に反射する光が、彼女の肩をそっと照らす。
「今日も、民を守らなければ……」
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セラフィムは頷き、低い声で告げた。
「慎重に、しかし迷わず行動せよ。民を守ること、それこそが聖女の務めだ」
その言葉に、エリスの心はさらに引き締まった。
◇
午後、エリスは王太子と共に北部へ向かった。街道沿いの村々は、瘴気で灰色に霞み、家々は倒壊の危険にさらされていた。民たちは怯え、手に持てるものを抱えて道の端に避難していた。
「エリス様……どうか助けてください!」
小さな少年が泣きながら手を握る。
エリスは膝をつき、優しく微笑む。
「大丈夫、私はあなたたちを守ります」
心の中で祈りを集中させると、手のひらから柔らかな光が広がり、瘴気を吸い上げるように消し去った。小さな魔物も光に触れ、跪くように消えた。村人たちは目を見開き、声を震わせながら感嘆の声をあげる。
「聖女様……!」
エリスは少し照れながらも静かにうなずく。
「皆さんの命を守れることが、私の力です」
村の長老が涙を拭きながら近づき、礼を述べる。
「この村を救ってくださり、本当にありがとうございます……」
「私一人ではなく、皆さんの勇気と信じる心があったからです」
エリスは穏やかな微笑みを返し、村人たちの心に安心を届けた。
◇
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「ありがとうございます……でも、まだ安心はできません。北部だけでなく、他の地域も危険にさらされています」
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「君なら大丈夫だ。民も私も信頼している」
◇
その頃、遠くアラン公爵家の屋敷では、アランが窓から月光に照らされた王都の方向を見つめていた。
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拳を握りしめ、悔恨と孤独に苛まれる顔が青白く浮かび上がる。孤立した公爵家内で、かつての優位はすでに遠い記憶となっていた。
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