婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~

腐ったバナナ

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14話

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 朝の光が王都に差し込み、石畳に反射して街全体を柔らかく照らしていた。しかし北部から漂う瘴気はまだ消えず、村や街の人々は怯えながら日常を送っていた。

 市場では人々が互いに顔色を窺いながら歩き、子供たちは母親の手をぎゅっと握っていた。

 王宮の大広間では、国王と王太子レオンハルト、側近たちが緊迫した空気の中、報告を受けていた。

「北部の村々にはまだ瘴気が残っている……このままでは民が危険にさらされる」

 国王の声は低く、重みを帯びていた。

 王太子レオンハルトは視線をエリスに向け、穏やかながら真剣な声で言った。

「君に頼らざるを得ない、エリス。君なら、民を守れるはずだ」

 エリスは深く息を吸い込み、周囲を見渡す。

「私にできることは全てやります。国民の皆さんを守るために、力を尽くします」

「君の力は民も私も信じている」

 王太子は優しく微笑み、エリスの肩にそっと手を置いた。その手の温もりに、エリスの胸は少し高鳴った。

 ◇

 エリスは神殿の祭壇の前に立ち、静かに祈りを捧げる。手を掲げると、掌から柔らかな光が溢れ出し、瘴気に触れるたびに白い煙のように浄化されていった。光は次第に強さを増し、王都の空に広がる。

 民たちは広場や道端からその光景を目にし、自然と声をあげる。

「聖女様……!」

「私たちを守ってくださる!」

 恐怖に怯えていた子供たちも、光に包まれながら笑顔を取り戻し、母親の手を離して走り回った。

 ある老人が涙を浮かべながら言った。

「こんな奇跡が……本当に、救われた……」

 エリスは静かに微笑み、手を下ろしながら答えた。

「私一人の力ではありません。皆さんの信じる心が、光を強くしました」

 ◇

 王宮に戻ったエリスを、王太子レオンハルトは迎えた。

「君の力は、ただ奇跡を起こすだけではなく、民の心まで救った。私は君を心から誇りに思う」

 エリスは少し顔を赤らめ、しかし毅然とした声で言った。

「まだ安心はできません。国全体を守るために、もっと力を磨かなくては」

「その意気だ。しかし無理はしないでくれ」

 王太子の目には深い信頼と心配が混じっていた。

 そのとき、城門の向こうから、アラン公爵家の使者が駆け込んできた。報告によると、アラン公爵家は社交界で非難され、民からも厳しい視線を浴びているという。

「……あの女がまた、民の支持を集めている……」

 アランは屋敷の奥で悔しさと孤独に顔を歪め、どうすることもできなかった。

 一方、広場では民や貴族たちが自然と集まり、エリスを称えた。拍手と歓声が湧き上がり、城内の騎士や側近たちも深く頭を下げる。

「国を救ったのは私ではなく、民の皆さんです。私の力は、その象徴にすぎません」

 エリスの穏やかな言葉に、王太子も国王も深く頷き、誇りと安堵を胸に抱いた。

 広場の空気は、恐怖から安心へと一変した。光の余韻に包まれた王都の人々は、聖女エリスの存在を改めて心に刻み、希望の象徴として崇めるのだった。
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