80 / 86
後章
学園祭準備(勘違い)
しおりを挟む
「うーん、これは詩弦と彩里に恋のにおいがするねぇ」
「するする、間違いない」
ざわざわと広がる憶測。誰もが面白がっているが、核心には届かない。
「でもさ、今こうして頭ぽんぽんしてるのは蓮ちゃんでしょ?」
「うわ~、てことは蓮ちゃんは詩弦を?」
「いやいや、詩弦が顔紅くしてんのは彩里にだから!」
「もしかして三角関係ってやつ?」
「でもさっき紅組のひいなちゃんが彩里にキスしてなかった??」
「うわそーじゃん、ってことはまさかの四各関係??」
「ぐちゃぐちゃすぎて笑う」
野次馬たちの囁きが熱を増していく、そんな中。
「ふーん、やっぱりそういう目で見られてるんですねぇ」
軽い調子の声が響き、教室のドアが開いた。
そこに立っていたのは、にやりと笑うひいなだった。
「おっと、噂をすればご本人登場ってか」
「おつかれさまです先輩方。いやー噂話、盛り上がってますね」
白組の生徒たちが思わず身を引く。その笑顔の裏にある“何か”を察したからだ。
ひいなはそのまま、蓮と詩弦の方へと歩み寄る。
「で、結局どっちなんですか詩弦先輩。腐れ縁の彩里先輩なのか、それとも――」
言いながら、自然に蓮の手を取る。
「私のかわいい先輩ですか?」
ひいなの挑発混じりの声音に、教室の空気が一気に凍りついた。
その一言に、蓮の頬がぱっと赤く染まった。
白組の生徒たちは「うわぁ!」と息をのむ。
そんな中、俯いていた詩弦がゆっくり顔を上げ、落ち着いた声で口を開いた。
「蓮にはもう、想いを伝えた。それでちゃんと振られた。だからこれからも今まで通り、先輩後輩として仲良くやっていくつもり」
一瞬、教室の空気が張り詰める。
野次馬たちは「えっ……?告白したの!?」「マジで!?」とざわめき立ち、ひいなは驚きを隠せずに目を瞬いた。
(じゃあもう、詩弦先輩は障害じゃないってことですね)
胸の奥でそう確信したひいなは、安堵と優越感が混じった笑みを浮かべ、そっと蓮の手を引き、自分の方へ寄せる。
だが、その瞬間。
「でもさぁ、ひいなちゃんさっき彩里とキスしてたくない?」
白組の一人が何気なく放った言葉が、教室を一気に凍らせた。
「え?」
蓮の目が大きく見開かれる。
そう、あの「見せつけ」として行われたキスを、この場にいた全員が見ていたのだ。
言い逃れの余地はない。
ひいなの指先がぴくりと震える。
笑顔は貼りついたままなのに、視線は泳ぎ、言葉が出てこない。
「ひいなちゃん……」
考えるより先に、蓮はひいなの手を振りほどいていた。
胸に広がるのは、戸惑いと、裏切られたような苦い痛み。
一瞬だけ、ひいなと蓮の視線がぶつかる。
でも、どちらも何も言えない。
「ごめん。ちょっとトイレ行ってくる」
短くそう告げて、蓮は足早に教室を出て行った。
残されたひいなは、手を宙に浮かせたまま硬直し、焦ったような表情で固まっていた。
「するする、間違いない」
ざわざわと広がる憶測。誰もが面白がっているが、核心には届かない。
「でもさ、今こうして頭ぽんぽんしてるのは蓮ちゃんでしょ?」
「うわ~、てことは蓮ちゃんは詩弦を?」
「いやいや、詩弦が顔紅くしてんのは彩里にだから!」
「もしかして三角関係ってやつ?」
「でもさっき紅組のひいなちゃんが彩里にキスしてなかった??」
「うわそーじゃん、ってことはまさかの四各関係??」
「ぐちゃぐちゃすぎて笑う」
野次馬たちの囁きが熱を増していく、そんな中。
「ふーん、やっぱりそういう目で見られてるんですねぇ」
軽い調子の声が響き、教室のドアが開いた。
そこに立っていたのは、にやりと笑うひいなだった。
「おっと、噂をすればご本人登場ってか」
「おつかれさまです先輩方。いやー噂話、盛り上がってますね」
白組の生徒たちが思わず身を引く。その笑顔の裏にある“何か”を察したからだ。
ひいなはそのまま、蓮と詩弦の方へと歩み寄る。
「で、結局どっちなんですか詩弦先輩。腐れ縁の彩里先輩なのか、それとも――」
言いながら、自然に蓮の手を取る。
「私のかわいい先輩ですか?」
ひいなの挑発混じりの声音に、教室の空気が一気に凍りついた。
その一言に、蓮の頬がぱっと赤く染まった。
白組の生徒たちは「うわぁ!」と息をのむ。
そんな中、俯いていた詩弦がゆっくり顔を上げ、落ち着いた声で口を開いた。
「蓮にはもう、想いを伝えた。それでちゃんと振られた。だからこれからも今まで通り、先輩後輩として仲良くやっていくつもり」
一瞬、教室の空気が張り詰める。
野次馬たちは「えっ……?告白したの!?」「マジで!?」とざわめき立ち、ひいなは驚きを隠せずに目を瞬いた。
(じゃあもう、詩弦先輩は障害じゃないってことですね)
胸の奥でそう確信したひいなは、安堵と優越感が混じった笑みを浮かべ、そっと蓮の手を引き、自分の方へ寄せる。
だが、その瞬間。
「でもさぁ、ひいなちゃんさっき彩里とキスしてたくない?」
白組の一人が何気なく放った言葉が、教室を一気に凍らせた。
「え?」
蓮の目が大きく見開かれる。
そう、あの「見せつけ」として行われたキスを、この場にいた全員が見ていたのだ。
言い逃れの余地はない。
ひいなの指先がぴくりと震える。
笑顔は貼りついたままなのに、視線は泳ぎ、言葉が出てこない。
「ひいなちゃん……」
考えるより先に、蓮はひいなの手を振りほどいていた。
胸に広がるのは、戸惑いと、裏切られたような苦い痛み。
一瞬だけ、ひいなと蓮の視線がぶつかる。
でも、どちらも何も言えない。
「ごめん。ちょっとトイレ行ってくる」
短くそう告げて、蓮は足早に教室を出て行った。
残されたひいなは、手を宙に浮かせたまま硬直し、焦ったような表情で固まっていた。
0
あなたにおすすめの小説
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる