淡色に揺れる

かなめ

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後章

学園祭準備(バレりバラれり)

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彩里が教室に戻ると、待ち構えていたかのようにクラスメイトたちの視線が集中した。

「どこ行ってたの?」

「水沢と手なんか繋いじゃってさ。もしや??」

わっと湧く質問攻め。

彩里は肩をすくめて笑った。

「さあ、どうでしょう?ちょっと気晴らしに散歩してただけだよ」

いつもの調子で何気なくそう返すも、ひやかす声は止まらない。

「えー、絶対なんかあったでしょ!」

「告白したされたみたいな?」

「それとも、もっと先に進んでたりして~」

核心をついた推測もあれば、まったく的外れな妄想も飛び交う。
そのたびに、彩里はにやりと笑って「どうでしょうね~」と煙に巻いた。

――あの瞬間、静かに交わしたキス。

詩弦と初めて「求め合う」ように近づけたことが、胸の奥で何度も反芻されていた。
思い出すたびに、頬の内側がじんわり熱を帯びる。

そんな彩里の様子を、ひいなだけが静かに観察していた。

目が合う。

ひいなはにやりと笑い、小さく親指を立てる。

――バレてる。

彩里は一瞬むっとしたが、次の瞬間にはふっと笑って肩をすくめた。
その反応ひとつで、ひいなには「図星だった」と伝わってしまったに違いないだろう。

一方、同時刻白組の教室。
詩弦が教室に戻ると、すっかり目を覚ました蓮がぱちりと目を上げた。

「あ、詩弦先輩、おかえりなさい!」

眠たげな声に安堵しかけたが、その隣で白組の連中がいっせいにこちらを取り囲んだ。

「ちょっとちょっと、どこ行ってたの?」

「まさか彩里と二人きり?」

「恋のにおいがプンプンなんだが??」

口々に浴びせられる言葉。
詩弦はそっけなくそっぽを向いて答える。

「別に」

しかし、包囲網は広まるばかり。

「いやその反応絶対なんかあったじゃん!」

「告白とかじゃないの告白とか!」

「ねえねえ付き合った??」

「違うから」

詩弦は視線をそらしたまま静かに言った。

「もー恥ずかしがり屋なんだから~」

「応援するってのに~」
クラスメイト達は仕方なく引き下がり、苦笑交じりに文句を垂らす。

「うるさい、さっさと席戻れって」

「えーマジで気になる」

「ねーなんだったんだろうね~」

「キスとかしちゃったりして笑」

「っ!!」

クラスの誰かが冗談まじりに放った一言。

一瞬、頭が真っ白になる。
反射的に視線をそらした。
その間の取り方、その耳まで染まった顔。

詩弦の反応を見て、クラスメイト達は口元を手で押さえ息をのんだ。

「……わかりやす」

「……っ!」

いてもたってもいられなくなって、詩弦は机に突っ伏し腕に顔をうずめた。

それを合図に、教室が一斉に沸き立つ。
冷やかしや応援が飛び交う教室で、詩弦の耳が奥まで熱く、鼓動は収まらない。

そんな騒ぎの中、蓮だけは静かだった。
隣に座った彼女が、そっと詩弦の頭に手を置く。

ぽん、ぽん。

何も言わず、ただ優しく撫でるだけ。
その温もりが、ほんのちょっぴりだけ心を落ち着かせてくれた。
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