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結婚式の当日、レルプス家には正門から大聖堂に至るまで、国中の貴族と平民が詰めかけ、朝から異様なまでのざわめきに包まれていた。
『新当主が実の兄を伴侶に迎える』
『しかも兄君はドレスを着るらしい』
そんな破天荒な噂は、保守的な貴族たちの間で「伝統の破壊だ」「レルプスの狂気も極まった」と、激しい物議を醸していた。
もちろんカイルとメアリのように心から祝福に訪れたものもいるが、それでも殆どの参列者たちの間にはどこか冷やかしや批判を含んだ、ピリピリとした緊張感が漂っていた。
しかし、大聖堂の重厚な扉がゆっくりと開かれ、光の中に二人の姿が現れた瞬間。
騒がしかった参列者たちは、まるで魔法にかけられたかのように一斉に言葉を失った。
そこにいたのは、漆黒の礼装に身を包み、鋭くも深い慈愛を宿した瞳で隣の者を見守るレオン。そして、その腕に手を添え、純白のドレスと繊細なレースを纏ったノエルだった。
ノエルのドレスは華美さを追求したものではなく、彼の持つ聖域のような清らかさを最大限に引き出す、中性的で高貴なデザイン。首元の索状痕を隠すように、白詰草の刺繍が施された高い襟が彼の喉を優しく包み、ベールの下で恥じらいながら微笑む姿は、もはや性別を超越した純粋な美そのものだった。
批判しようとしていた者も、嘲笑おうとしていた者も、祝福しに来た者すらも、そのあまりの神々しさに気圧され、ただ呆然と二人を見つめることしかできなかった。
「……綺麗だ」
誰かが零したその一言が、静まり返った大聖堂に溶けていった。
物議を醸していたはずの伝統も、血筋も、外聞も。目の前の二人が放つ、あまりにも一途であまりにも尊い愛の輝きの前では、すべてが瑣末な砂粒に過ぎないことを、その場にいた全員が魂で理解してしまった。
レオンは、跪かんばかりの熱量を含んだ瞳でノエルを見つめ、静かに歩みを進める。カイルとメアリは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠しもせず、花弁を撒き散らす。父ギルバートは、かつてないほど穏やかな顔で、自身の誇りである二人の息子を迎え入れた。
「兄様。……世界中が、貴方に跪いていますよ」
「レオン……。僕、君の隣にいられて、本当に幸せだよ」
二人が祭壇の前で誓いのキスを交わしたとき、かつてノエルを絶望の底に突き落とした『伝統』という名の呪いは、完全にこの世から消滅していた。
◆
儀式を終えた翌朝。
レルプス家の食堂には、これまでになく奇妙で、それでいてひたすら甘い空気が漂っていた。
「……あ、う……」
ノエルは朝食の席に着こうとした瞬間、ビクッと肩を揺らして動きを止めた。
顔は耳の先まで熟した林檎のように真っ赤で、椅子に腰を下ろす動作一つが、まるで薄氷を踏むかのように慎重。
ようやく座ったものの、もぞもぞとお尻の違和感を気にするように腰を動かし、居心地が悪そうに視線を泳がせていた。
そんなノエルの隣で、レオンはまさにこの世の春を体現したような、輝かんばかりの笑みを浮かべていた。
「兄様、無理をしてはいけません。ほら、このクッションは特注の最高級羽毛で作らせたものです。腰に当てましょうか? それとも、僕の膝の上の方が安定しますか?」
「れ、レオン! お父様の前で何を……っ。僕は大丈夫だから、そんなに構わないで……」
「何をおっしゃるのです。昨夜、あんなに何度も僕の名を呼んで、ぐったりするまで頑張ってくださったのですから。今日くらい、僕に全てを委ねてください」
「っ……! その、昨日のことは、言わないで……!」
ノエルは両手で顔を覆い、今にも椅子から滑り落ちそうなほど縮こまってしまう。 そんな二人のやり取りを、正面に座るギルバートは、コーヒーを飲みながら半ば呆れ、半ば感心したように眺めていた。
「……やれやれ、朝から当てられっぱなしだな。お前たちの前では砂糖すら苦く思えるわ。レオン、お前というやつは、当主の執務よりも熱心に伴侶を愛でるつもりか?」
「当たり前です父上。当主の座はそのための道具だと再三申し上げたはずですが」
レオンは甲斐甲斐しくノエルの皿にサラダを取り分け、あまつさえフォークを持って口元へ運ぶ。ノエルは自分で食べられると小声で抵抗しているが、レオンの幸せそうなオーラに押されっぱなしだった。
ギルバートは、そんな二人……特に、かつては青白く、死人のようだったノエルが、今は気恥ずかしさに頬を染めて生命力に満ちている姿を見て、満足げに目を細めた。
「ふん。……まあ、これだけ仲が良いのなら、わざわざ養子を探す手間も省けるかもしれんな」
「え?お父様、それはどういう……」
きょとんとするノエルをよそに、ギルバートは意地悪く口角を上げた。
「これほど熱心に励んでいるのなら、男同士であってもそのうち子が成せるのではないかとさえ思えてくる。……その調子なら、来年あたりには本当に孫の顔が見られるかもしれんな?」
「お、お父様……っ!」
ノエルはついに、真っ赤な顔のままテーブルに突っ伏する。一方のレオンはというと、一瞬だけ驚いた顔をしたもののすぐに不敵な、そして限りなく情熱的な笑みを浮かべた。
「―――なるほど。父上にしては、素晴らしいご提案です。兄様、聞きましたか? 奇跡を起こすまで、今夜からもまた、精一杯愛させていただきますね」
「うう、みんなのバカ……っ!!」
食堂に響くノエルの叫びと、レオンの幸せな笑い声。 レルプス家の朝は、以前のような冷たい沈黙ではなく、愛ゆえの騒がしさと、確かな幸福の予感に満ちあふれていた。
◆
その翌年。ノエルの高等部への進級と同時にレオンが更に飛び級を重ねて学院を卒業し、これでようやく本業に専念するかと思いきや、学生という枷を外し好き放題ノエルにべったりする口実だったことが判明した頃。
いつものように四人でランチを取っていると、カイルとメアリが声を上げた。
「ノエル、それにレオン様。……実は今日、二人に報告があって」
カイルが少し照れくさそうにメアリの手を取り、一歩前に踏み出した。
「俺たちも、学院を卒業したら結婚することにしたんだ。……二人を見ていて、俺たちもお互いを大切にしたいって、ようやく向き合えたんだよ」
「わあ! カイル、メアリ、おめでとう!」
ノエルが満面の笑みで祝福し、その愛らしさに思わず全員の頬が緩んだ。
「なるほど、おめでとう……しかし卒業後とは悠長な。今年でも良いだろう」
「あのねえ、レオン様。俺らみたいな中堅貴族はそっちみたいに勢いで動けないんで、今後のためにちゃんと勉強しておきたいんですよ」
レオンとカイルが軽口を叩き合っていると、ノエルが立ち上がってカイルとメアリに抱きついた。
「本当におめでとう。僕、二人が結ばれるのをずっと願っていたんだ。本当だよ」
メアリはノエルを抱き返すと、体を離してその手を両手でぎゅっと握り返した。
「ありがとう、ノエル。……私たちの式の時は、今度はノエルが一番の来賓として、レオン様と一緒に参列してね。約束よ?」
「もちろんだよ。……カイル、メアリ。僕を暗闇から救ってくれた二人の幸せを、今度は僕が全力でお祝いさせてほしい」
ノエルの温かい言葉に、メアリは「もう、泣かせないでよ」と笑いながら涙を拭った。
その様子を隣で見ていたレオンは、少しだけ誇らしげに、そして珍しく素直な敬意を込めてカイルの肩を叩いた。
「……カイル。兄様を支えてくれた君たちが家族になることは、僕にとっても喜びだ。式の費用も、新居も、全てレルプス家が最高のものを用意しよう。当然、僕と兄様で揃って参列させてもらう。……兄様をエスコートするのは僕だが、君たちの幸せな姿を兄様に見せてやってくれ」
「レオン様……。ふふ、相変わらずの独占欲で。でも、ありがとうございます」
カイルは苦笑しながらも、しっかりとレオンの視線を受け止めた。
かつては『傷ついた少年』と『彼を守るために牙を剥く弟』、そして『見守ることしかできなかった友人たち』だった四人。
今、彼らはそれぞれが愛を見つけ、等しく幸福の中に立っていた。
「楽しみだね、レオン。二人の結婚式には、僕が最高の花冠を編んで持っていくよ」
「ええ、兄様。……ですが、僕への愛も忘れないでくださいね?」
「もう、わかってるよ」
ノエルが小さく笑い、レオンの腕にそっと寄り添う。この世界にまた一つ、新しい祝福の種が蒔かれたのだった。
◆
そして、カイルとメアリの結婚式当日。
かつてノエルとレオンが永遠を誓ったあの大聖堂は、今度は親愛なる友を祝うために、色とりどりの花々と温かな祝福の声で満たされていた。
最前列の賓客席には、白詰草をあしらった正装に身を包んだノエルと、その隣で片時も離れず寄り添うレオンの姿。
式も終盤に差し掛かった頃、新郎新婦のたっての希望で、ノエルがゆっくりと檀上へ上がった。
「……カイル、メアリ。改めて、結婚おめでとう」
ノエルの声は、かつての弱々しさを微塵も感じさせない、澄み渡った鈴のような音色で響いた。
「僕が一番苦しかったとき、二人は僕を一人にしないでいてくれた。図書室で図鑑を広げてくれたこと、カフェテラスで笑いかけてくれたこと、こっそりみんなで街に出かけたこと……その一つ一つが、僕に外の世界の美しさを教えてくれました。今、僕がこうして笑っていられるのは、レオンが僕を見つけ、二人が僕の手を離さなかったからです。……二人の新しい門出を、心からお祝いします」
ノエルの言葉に、カイルとメアリ、そして参列者の多くが目頭を熱くする。 続いて、レオンがノエルの隣に立ち、新当主としての威厳と、家族としての情熱を込めて祝辞を述べた。
「カイル、メアリ。改めて二人の門出を祝おう。だが、その前に……当主として、そして一人の男として、伝えておかねばならないことがある。あの日、絶望の中にいた兄様に、図書室の片隅で世界を教えてくれたのは君たちだ。……あの嵐の夜、危険を冒してまで、兄様の危機を私に知らせに来た勇気を、私は一生忘れない」
ノエルが、隣でそっとレオンの腕に手を添え、優しく微笑む。レオンはノエルを更に強く抱き寄せ、カイルたちに微笑んだ。
「……そして何より、私がどれほど愛を叫んでも届かなかった兄様の心に『恋』という光を灯し、私の元へ走らせてくれたのは……他ならぬ、君たちの導きだった」
レオンは懐から、王の名が記された重厚な印章が押された書状を取り出した。
「本日をもって、カイル・ベルク、およびメアリ・ハインの両家を、伯爵位へと昇格させる。さらに、王都近郊の肥沃な三つの直轄領を割譲し、レルプス家が持つ全ての通商路における優先権を永久に付与する」
会場から、地鳴りのような驚きの声が上がった。それはカイルの言うところの『中堅貴族』から、一気に王国の中心を担う権力者へと駆け上がる、破格の、あまりにも法外な恩賞だった。
「れ、レオン様……! そんな、私たちはただ、大切な友人を守りたくて……!」
二人が震える声で固辞しようとしたが、レオンはそれを手で制し、口角をわずかに上げた。
「これは対価だ。今この時、兄様が見せてくれている至上の笑顔に対する、安すぎるほどの報酬だ。……君たちが富み、栄えることは、兄様を喜ばせることに直結する。ならば、私は惜しむつもりなど微塵もない。それに、この日まで学院で『中堅貴族だから今後のために勉強しておいた』んだろう?せいぜい知識を活かして励むといい」
「レオン……ありがとう。カイル、メアリ。これからもずっと、親友として隣にいてね」
ノエルの温かい言葉に、ついに二人は感極まって涙を零し、深く頭を下げた。
それは、利害関係で結ばれた貴族社会において、たった一つの純粋な愛が奇跡を起こし、歴史を塗り替えた瞬間だった。
◆
数年の月日が流れたある晴れた午後。カイルとメアリが、生まれたばかりの赤ん坊を連れて屋敷を訪れた。
「見てください、ノエル、レオン様。……僕たちの宝物です」
カイルが照れくさそうに抱きかかえていたのは、二人の面影を色濃く残した、天使のように愛らしい、ふわふわとした毛並みを持つキツネの女の子。ノエルはその小さく温かな指が自分の服をぎゅっと掴むのを感じた瞬間、胸の奥がじわりと熱くなった。
「……なんて、可愛いんだろう。命って、こんなに温かいんだね」
慈愛に満ちた表情で赤ん坊をあやすノエルの横顔。それを見つめていたレオンは、兄の瞳に宿る静かな望みを敏感に感じ取る。その夜、二人は寝室で静かに言葉を交わしていた。
「……兄様。もしよろしければ、僕たちも『家族』を迎えませんか。兄様が注いでくださるその愛を、その先へ受け継いでいく子を」
「レオン……。うん、僕も、君と一緒に誰かを育ててみたい。この家を、もっと笑い声でいっぱいにしたいな」
翌朝。二人の決意が朝食の席でギルバートに伝えられた、その瞬間。
「―――よし、来たあああああッ!!」
静寂を守っていた食堂に、現役時代からは想像もつかないギルバートの絶叫が響き渡る。彼は持っていたフォークを放り出し、立ち上がって拳を突き上げた。
「待っていたぞ!この時をどれほど待ちわびたか!執事!執事はどこだ!今すぐ国中の孤児院から優秀で心優しい子の資料を集めろ!いや、私が直接視察に行く!部屋はどうする?東棟を丸ごと子供部屋に改装させよう。玩具は?家庭教師は?ああ、馬も必要だな、レルプスの子なら乗馬は嗜みだ!」
「お、お父様……落ち着いて。まだ決めたばかりだよ」
呆気に取られるノエルをよそに、ギルバートの暴走は止まらない。
「落ち着いていられるか! 私が父親として失敗した分、今度は祖父としてこれ以上ないほどの愛を注ぐのだ! レオン、予算は無制限だと思って差し支えないな!?」
「……ええ、まあ、ほどほどになら。……やれやれ、兄様。父上は僕たちの時以上に、過保護なおじい様になりそうですよ」
レオンは苦笑しながら、ノエルの肩を抱き寄せる。ノエルもまた、かつて自分を厳しく律していた父が、今では孫の誕生を夢見て子供のように大はしゃぎしている姿を見て、おかしそうに、そして幸せそうに笑い声をあげた。
かつて冷たい沈黙に支配されていたレルプス家。今、そこには過去の傷を癒すための新しい命を迎える熱狂と、溢れんばかりの希望が満ちていた。
◆
翌日、眩しい朝の光を浴びながら、ノエルとレオンは王都の端にある清潔でこぢんまりとした孤児院を訪れた。
院長が二人の高貴な身なりに恐縮しながら案内を始めようとしたその時、ノエルの足がふと止まった。
賑やかに駆け回る子供たちから少し離れた、庭の隅。
そこには、大きな切り株の陰で、地面に這いつくばるようにして何かをじっと見つめている、小さな男の子がいた。
その子は大きく丸いネズミの耳を揺らめかせ、細い尻尾が緊張したようにピンと伸びていた。
「あの子は……?」
ノエルが静かに近づくと、男の子は二人の気配に気づき、ハッと肩を震わせる。しかし、逃げ出す代わりに自分の手元を必死に隠すようにして丸まった。
「……見ちゃ、ダメ。すぐ、壊れちゃうから」
蚊の鳴くような声。ノエルがそっと覗き込むと、そこには折れた小枝と色褪せた葉っぱを蜘蛛の糸のような細い蔓で丁寧に繋ぎ合わせた、いびつな花冠があった。
「……これ、君が作ったの?」
ノエルの問いかけに、ネズミの男の子はおずおずと頷いた。
「……うん。お花、もう咲いてないから……落ち葉で、作った。誰かに……あげたかったけど、僕、ネズミだから、みんな汚れちゃうって、言うんだ」
その言葉を聞いた瞬間、ノエルの胸の奥が、ぎゅっと締め付けられた。
かつて庭園で独り、誰にも届かない愛を形にしようとしていた自分。
周囲から虐げられ、それでも誰かを想うことをやめられなかったあの頃の自分と、この子はあまりにも似ていた。
「……汚れてなんていないよ。とっても、素敵な冠だね」
ノエルは膝をつき、服に泥がつくことも気にせず男の子と同じ目線になった。
「ねぇ、レオン。見て。この子、僕と同じものを作ってる」
ノエルが振り返ると、レオンは最初こそ冷ややかな、値踏みするような視線を向けていた。
しかし、その子が作った落ち葉の冠を見た瞬間、瞳がかすかに揺れた。
「……ほう。兄様と同じ、殊勝な趣味を持っているようですね」
レオンはそう言うと、少年の前に歩み寄り、その小さな、土に汚れた小さな手を手のひらで優しく包み込んだ。
「名前は?」
「……テオ」
レオンの声に怯えつつも、小さな声でしっかりと答える姿にレオンが目を細めた。
「ふむ。……テオ、その冠は、誰かにあげたかったのだろう?」
「……う、うん」
「ならば、今ここで私に寄越しなさい。……その代わり、お前にはもっと広い庭と、枯れることのない花を与えてやろう」
少年は驚いて、大きな黒い瞳を瞬かせる。ノエルは優しく微笑み、少年の頬を撫でた。
「僕たちと一緒に来る?……おじい様が、美味しいケーキを用意して待っているんだよ」
少年は、まだ信じられないといった様子で二人を見つめていたが、やがて、ノエルが差し出した手を小さな指でぎゅっと握りしめた。
「……そういうわけで、私を『父上』、兄様を『お父様』と呼び分けなさい。いいですね?」
「……うん。わかり、ました。ちちうえ、おとうさま」
ノエルとレオンの間に挟まれておどおどと歩く小さなネズミの男の子が、屋敷の正面玄関に足を踏み入れたその瞬間。
「戻ったか!!」
地響きのような足音と共に、いつもは泰然自若としているギルバートが、ネクタイを少し曲げたまま大慌てでロビーへ駆けつけてきた。
「父上、みっともないですよ」
「黙れぃ!私の孫……いや、新しい家族を連れて帰ると言ったのはお前たちだぞ!」
ギルバートの鋭い視線がレオンの影に隠れて震える小さなネズミの少年に注がれる。身を縮める少年を撫でながら、レオンが静かに、しかし誇らしげに告げた。
「父上。この子はテオ。孤児院の隅で兄様と同じように落ち葉で花冠を作っていた、心優しいネズミの子です」
ギルバートは、少年の小さな頭を、大きな掌でわしわしと優しく撫で回した。
「うむ、うむ!いいか、テオ。今日からお前はこのレルプスの庭の主だ、ノエルと共に好きなだけ花を愛でると良い!その耳も我らウサギと違ってまんまるで、実に可愛いではないか。機敏に動けそうで、将来が楽しみだぞ!……ほら、テオ。儂のことを『おじいちゃん』と呼んでくれるか?」
「……お、おじい、ちゃん……?」
テオが震える声でそう呼ぶと、ギルバートの顔は、かつてないほどにデレデレとした、締まりのないおじいちゃん全開の笑顔に溶けた。
「うむ! 良い響きだ! さあ、冷めないうちに特大のケーキを食べよう。お前が食べきれん分は、そこの不愛想な父に食べさせてやればいい!」
ギルバートがテオを抱きかかえ、意気揚々と歩いていく。予想をはるかに超えるデレデレぶりに二人が顔を見合わせ、そして笑った。
窓の外、夕焼けに染まるレルプス邸の庭園には、かつての静寂ではなく、これから始まる賑やかな日々を予感させる、温かな風が吹き抜けていた。
◆
かつて孤児院の隅で小さな落ち葉を編んでいたテオは、周囲から注がれる愛を一身に受け、立派な少年に成長していった。
当時その身を包んでいた服は薄汚れていたが、今では真新しい学院の制服に変わり、その頭には幼い頃より少し凛々しくなったネズミの耳が誇らしげに立っていた。
「テオ、忘れ物はない?予備のハンカチは持った?お腹が空いたら持たせたクッキーを食べていいからね」
「ありがとうございます、お父様。何度も確認しましたから大丈夫ですよ」
学院の校門前で、ノエルが甲斐甲斐しくテオの襟元を直し、テオが恥ずかしそうに答える。その隣でレオンが腕組みをしながら、どこか寂しげな、それでいて誇らしげな複雑な表情で息子を見守っていた。
「兄様、あまり過保護にしてはいけません。今日からテオはレルプスの名を背負って学ぶ身なのですから。……いいかいテオ、もし意地悪な奴がいたら、迷わず私に報告しなさい。その日のうちにその家門の予算を凍結して……」
「父上。そちらのほうがよっぽど過保護かと思いますが……」
テオが呆れつつ返事をすると、ノエルが苦笑する。そこへ、軽快な足音とともに三人の影が駆け寄ってきた。
「ノエル、レオン様! お待たせしました!」
「テオ君、おはよっ!今日からよろしくね!」
カイルとメアリ、そしてその隣でぴょんぴょんと跳ねているのは、カイルにそっくりな茶色い毛並みと、メアリの気風の良さを受け継いだ、ふわふわなキツネの女の子・リリ。
「リリちゃん、おはよう! 今日から一緒だね」
テオがリリの手を取ると、リリは得意げに大きな尻尾を振った。
「うん! あたしがテオ君を守ってあげるからね。パパがテオ君はちょっとおっとりしてるからしっかりしてあげなさいって言ってたもん!」
そのやりとりに両親たちが顔を見合わせて笑い合う中、いよいよ学院の門が開く鐘の音が響いた。
「さあ、行っておいで、二人とも。友達をたくさん作って、楽しい思い出もいっぱい作ってきてね」
ノエルが二人の背中を優しく押すと、テオとリリは、手をつないで学院の大きな門をくぐっていった。
その背中を、レオンはノエルの肩を抱き寄せながら静かに見守っている。かつて、孤独と恐怖の中で逃げるように潜り抜けたこの門を、今、自分たちの子供が希望に満ちた足取りで進んでいくのをじっと見ていた。
「……兄様。僕たちの選んだ道は、間違っていませんでしたね」
「うん。……あの子たちの未来には、もう悲しい花冠は必要ないね」
ノエルはレオンの手を握り返し、春の光に包まれた子供たちの背中を見つめ続ける。空はどこまでも高く、庭園に咲く白詰草は、新しい世代の物語を祝うように、穏やかな風に揺れていた。
……とはいえ、やはり完全な平和を得るのは難しいもの。学院の広大な回廊に、場違いな嘲笑が響いた。
「おい、見ろよ。あれが『レルプスの拾い子』か? ネズミの孤児なんて、どこのドブから拾ってきたんだか」
「当主も当主だ。兄弟で睦み合うなんて前代未聞の不潔さだな。そのうえ、血の繋がりもないドブネズミを家族面させるとは……おい、隣のキツネも同類か?獣臭くて敵わん」
かつてこの学院で何が起きたかを知らない無知な放蕩貴族の子たちが二人を取り囲む。リリが怒りで顔を真っ赤にしながら毛を逆立たせ、牙を剥いて鋭い爪を立てようとしたその時だった。
「リリちゃん、いいんだ。僕が話すよ」
テオが一歩前に出た瞬間、周囲で様子を見守っていた子息たちは一斉に血の気が引き、壁際へと後ずさる。幸運にも彼らは両親から口酸っぱく教えられていた。……その少年の背後に、どれほど巨大で容赦のない愛が控えているのかを。
「僕たちに対する認識に、いくらか誤りがあるようですね。良い機会ですし、この場で訂正させていただきます」
テオはレオン譲りの冷徹な眼差しで、嘲笑う上級生の瞳を正面から射抜き、口を開いた。
「まず第一に。僕の両親の結婚を『不潔』と称されましたが、それは王国憲法第3条、および聖教会の認める『魂の結合』への公然たる侮辱です。貴家は王家よりも高い法をお持ちなのですか?また、この愛の形を歪みと称するなら、政略結婚による愛を欠いた家庭で育ったあなたがた自身はどう説明するのですか?」
淡々とした、けれど理路整然とした語り口。それはまさに、かつて数々の家門を論理で圧殺してきたレオンそのものだった。
「次に、僕の出自について。僕は確かに孤児でしたし、引き取られなければいずれ野垂れ死んでいたでしょう。……しかし、今の僕はレルプス家第十四代当主であるレオン・レルプスが認めた嫡男です。僕を侮辱することは、レルプス家全戦力への宣戦布告と見なされますが、その覚悟でおっしゃっているのですか?」
「な、何を生意気な……!」
「最後に。僕のことはどう言っても構いませんが、僕の大切な友人であるリリを侮辱したこと。これだけは、僕の個人的な感情として許せません」
テオの纏う空気が一変する。ノエル譲りの聖域のような静謐さと、レオンを思わせる狂気、ギルバートから受け継いだ威圧感が混ざり合い、圧倒的なプレッシャーとなって上級生たちを押し潰した。
「今すぐ、膝を付いて彼女に謝罪を。……さもなければ、お父様の庭園に咲く『白詰草』を、父上が直々に、あなたの家の庭に植えに行かなければならなくなります」
テオの唇に、レオンそっくりの『美しいが底知れない微笑』が浮かぶと、上級生たちは腰を抜かし謝罪の言葉も満足に言えないまま逃げ出していった。
「……ごめんね、リリちゃん。怖い思いをさせちゃった」
そう言って、ノエル譲りの優しい手つきで彼女の髪に触れたテオ。しかし、リリはすぐには答えられなかった。
さっきまでのテオは、自分が知っている一緒に泥遊びをしていた優しい幼馴染とは似ても似つかない。気高く、恐ろしく、そして誰よりも頼もしい『男』だった。
「……テオくん……」
リリはほんのり赤面しながらふわふわの尻尾を揺らす。『守ってあげなきゃ』と思っていた相手への感情が、尊敬、そして名付けようのない熱い微熱へと、一気に塗り替えられた瞬間だった。
遠くの校舎の陰でその様子を見守っていたレオンは「さすがは僕の息子だ」と満足げにうなずき、ノエルは「テオ、もうお嫁さんが決まっちゃったね」とふんわり微笑む。しかし、そんな二人と裏腹に、カイルとメアリは頭を抱えていた。
「……メアリ。俺たちの娘が、レルプスの男に本格的に惚れちまった。これは、俺たちがかつてレオンに振り回された何倍もの苦労が、テオからリリに、そして俺たちに降りかかってくる予兆だぞ」
「……いいじゃない、カイル。レルプスの男に愛されるのがどれだけ幸せで、どれだけ大変か、私たちはよく知ってるでしょ? せめて、リリがテオくんの『渇き』に耐えられるように、今から根性を叩き直しておきましょう」
そんな幸せな諦観とともに、また新しく、熱烈で一途な恋の蕾が花開く。それは、これから始まるレルプス家の黄金時代の幕開けの印でもあった。
『新当主が実の兄を伴侶に迎える』
『しかも兄君はドレスを着るらしい』
そんな破天荒な噂は、保守的な貴族たちの間で「伝統の破壊だ」「レルプスの狂気も極まった」と、激しい物議を醸していた。
もちろんカイルとメアリのように心から祝福に訪れたものもいるが、それでも殆どの参列者たちの間にはどこか冷やかしや批判を含んだ、ピリピリとした緊張感が漂っていた。
しかし、大聖堂の重厚な扉がゆっくりと開かれ、光の中に二人の姿が現れた瞬間。
騒がしかった参列者たちは、まるで魔法にかけられたかのように一斉に言葉を失った。
そこにいたのは、漆黒の礼装に身を包み、鋭くも深い慈愛を宿した瞳で隣の者を見守るレオン。そして、その腕に手を添え、純白のドレスと繊細なレースを纏ったノエルだった。
ノエルのドレスは華美さを追求したものではなく、彼の持つ聖域のような清らかさを最大限に引き出す、中性的で高貴なデザイン。首元の索状痕を隠すように、白詰草の刺繍が施された高い襟が彼の喉を優しく包み、ベールの下で恥じらいながら微笑む姿は、もはや性別を超越した純粋な美そのものだった。
批判しようとしていた者も、嘲笑おうとしていた者も、祝福しに来た者すらも、そのあまりの神々しさに気圧され、ただ呆然と二人を見つめることしかできなかった。
「……綺麗だ」
誰かが零したその一言が、静まり返った大聖堂に溶けていった。
物議を醸していたはずの伝統も、血筋も、外聞も。目の前の二人が放つ、あまりにも一途であまりにも尊い愛の輝きの前では、すべてが瑣末な砂粒に過ぎないことを、その場にいた全員が魂で理解してしまった。
レオンは、跪かんばかりの熱量を含んだ瞳でノエルを見つめ、静かに歩みを進める。カイルとメアリは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠しもせず、花弁を撒き散らす。父ギルバートは、かつてないほど穏やかな顔で、自身の誇りである二人の息子を迎え入れた。
「兄様。……世界中が、貴方に跪いていますよ」
「レオン……。僕、君の隣にいられて、本当に幸せだよ」
二人が祭壇の前で誓いのキスを交わしたとき、かつてノエルを絶望の底に突き落とした『伝統』という名の呪いは、完全にこの世から消滅していた。
◆
儀式を終えた翌朝。
レルプス家の食堂には、これまでになく奇妙で、それでいてひたすら甘い空気が漂っていた。
「……あ、う……」
ノエルは朝食の席に着こうとした瞬間、ビクッと肩を揺らして動きを止めた。
顔は耳の先まで熟した林檎のように真っ赤で、椅子に腰を下ろす動作一つが、まるで薄氷を踏むかのように慎重。
ようやく座ったものの、もぞもぞとお尻の違和感を気にするように腰を動かし、居心地が悪そうに視線を泳がせていた。
そんなノエルの隣で、レオンはまさにこの世の春を体現したような、輝かんばかりの笑みを浮かべていた。
「兄様、無理をしてはいけません。ほら、このクッションは特注の最高級羽毛で作らせたものです。腰に当てましょうか? それとも、僕の膝の上の方が安定しますか?」
「れ、レオン! お父様の前で何を……っ。僕は大丈夫だから、そんなに構わないで……」
「何をおっしゃるのです。昨夜、あんなに何度も僕の名を呼んで、ぐったりするまで頑張ってくださったのですから。今日くらい、僕に全てを委ねてください」
「っ……! その、昨日のことは、言わないで……!」
ノエルは両手で顔を覆い、今にも椅子から滑り落ちそうなほど縮こまってしまう。 そんな二人のやり取りを、正面に座るギルバートは、コーヒーを飲みながら半ば呆れ、半ば感心したように眺めていた。
「……やれやれ、朝から当てられっぱなしだな。お前たちの前では砂糖すら苦く思えるわ。レオン、お前というやつは、当主の執務よりも熱心に伴侶を愛でるつもりか?」
「当たり前です父上。当主の座はそのための道具だと再三申し上げたはずですが」
レオンは甲斐甲斐しくノエルの皿にサラダを取り分け、あまつさえフォークを持って口元へ運ぶ。ノエルは自分で食べられると小声で抵抗しているが、レオンの幸せそうなオーラに押されっぱなしだった。
ギルバートは、そんな二人……特に、かつては青白く、死人のようだったノエルが、今は気恥ずかしさに頬を染めて生命力に満ちている姿を見て、満足げに目を細めた。
「ふん。……まあ、これだけ仲が良いのなら、わざわざ養子を探す手間も省けるかもしれんな」
「え?お父様、それはどういう……」
きょとんとするノエルをよそに、ギルバートは意地悪く口角を上げた。
「これほど熱心に励んでいるのなら、男同士であってもそのうち子が成せるのではないかとさえ思えてくる。……その調子なら、来年あたりには本当に孫の顔が見られるかもしれんな?」
「お、お父様……っ!」
ノエルはついに、真っ赤な顔のままテーブルに突っ伏する。一方のレオンはというと、一瞬だけ驚いた顔をしたもののすぐに不敵な、そして限りなく情熱的な笑みを浮かべた。
「―――なるほど。父上にしては、素晴らしいご提案です。兄様、聞きましたか? 奇跡を起こすまで、今夜からもまた、精一杯愛させていただきますね」
「うう、みんなのバカ……っ!!」
食堂に響くノエルの叫びと、レオンの幸せな笑い声。 レルプス家の朝は、以前のような冷たい沈黙ではなく、愛ゆえの騒がしさと、確かな幸福の予感に満ちあふれていた。
◆
その翌年。ノエルの高等部への進級と同時にレオンが更に飛び級を重ねて学院を卒業し、これでようやく本業に専念するかと思いきや、学生という枷を外し好き放題ノエルにべったりする口実だったことが判明した頃。
いつものように四人でランチを取っていると、カイルとメアリが声を上げた。
「ノエル、それにレオン様。……実は今日、二人に報告があって」
カイルが少し照れくさそうにメアリの手を取り、一歩前に踏み出した。
「俺たちも、学院を卒業したら結婚することにしたんだ。……二人を見ていて、俺たちもお互いを大切にしたいって、ようやく向き合えたんだよ」
「わあ! カイル、メアリ、おめでとう!」
ノエルが満面の笑みで祝福し、その愛らしさに思わず全員の頬が緩んだ。
「なるほど、おめでとう……しかし卒業後とは悠長な。今年でも良いだろう」
「あのねえ、レオン様。俺らみたいな中堅貴族はそっちみたいに勢いで動けないんで、今後のためにちゃんと勉強しておきたいんですよ」
レオンとカイルが軽口を叩き合っていると、ノエルが立ち上がってカイルとメアリに抱きついた。
「本当におめでとう。僕、二人が結ばれるのをずっと願っていたんだ。本当だよ」
メアリはノエルを抱き返すと、体を離してその手を両手でぎゅっと握り返した。
「ありがとう、ノエル。……私たちの式の時は、今度はノエルが一番の来賓として、レオン様と一緒に参列してね。約束よ?」
「もちろんだよ。……カイル、メアリ。僕を暗闇から救ってくれた二人の幸せを、今度は僕が全力でお祝いさせてほしい」
ノエルの温かい言葉に、メアリは「もう、泣かせないでよ」と笑いながら涙を拭った。
その様子を隣で見ていたレオンは、少しだけ誇らしげに、そして珍しく素直な敬意を込めてカイルの肩を叩いた。
「……カイル。兄様を支えてくれた君たちが家族になることは、僕にとっても喜びだ。式の費用も、新居も、全てレルプス家が最高のものを用意しよう。当然、僕と兄様で揃って参列させてもらう。……兄様をエスコートするのは僕だが、君たちの幸せな姿を兄様に見せてやってくれ」
「レオン様……。ふふ、相変わらずの独占欲で。でも、ありがとうございます」
カイルは苦笑しながらも、しっかりとレオンの視線を受け止めた。
かつては『傷ついた少年』と『彼を守るために牙を剥く弟』、そして『見守ることしかできなかった友人たち』だった四人。
今、彼らはそれぞれが愛を見つけ、等しく幸福の中に立っていた。
「楽しみだね、レオン。二人の結婚式には、僕が最高の花冠を編んで持っていくよ」
「ええ、兄様。……ですが、僕への愛も忘れないでくださいね?」
「もう、わかってるよ」
ノエルが小さく笑い、レオンの腕にそっと寄り添う。この世界にまた一つ、新しい祝福の種が蒔かれたのだった。
◆
そして、カイルとメアリの結婚式当日。
かつてノエルとレオンが永遠を誓ったあの大聖堂は、今度は親愛なる友を祝うために、色とりどりの花々と温かな祝福の声で満たされていた。
最前列の賓客席には、白詰草をあしらった正装に身を包んだノエルと、その隣で片時も離れず寄り添うレオンの姿。
式も終盤に差し掛かった頃、新郎新婦のたっての希望で、ノエルがゆっくりと檀上へ上がった。
「……カイル、メアリ。改めて、結婚おめでとう」
ノエルの声は、かつての弱々しさを微塵も感じさせない、澄み渡った鈴のような音色で響いた。
「僕が一番苦しかったとき、二人は僕を一人にしないでいてくれた。図書室で図鑑を広げてくれたこと、カフェテラスで笑いかけてくれたこと、こっそりみんなで街に出かけたこと……その一つ一つが、僕に外の世界の美しさを教えてくれました。今、僕がこうして笑っていられるのは、レオンが僕を見つけ、二人が僕の手を離さなかったからです。……二人の新しい門出を、心からお祝いします」
ノエルの言葉に、カイルとメアリ、そして参列者の多くが目頭を熱くする。 続いて、レオンがノエルの隣に立ち、新当主としての威厳と、家族としての情熱を込めて祝辞を述べた。
「カイル、メアリ。改めて二人の門出を祝おう。だが、その前に……当主として、そして一人の男として、伝えておかねばならないことがある。あの日、絶望の中にいた兄様に、図書室の片隅で世界を教えてくれたのは君たちだ。……あの嵐の夜、危険を冒してまで、兄様の危機を私に知らせに来た勇気を、私は一生忘れない」
ノエルが、隣でそっとレオンの腕に手を添え、優しく微笑む。レオンはノエルを更に強く抱き寄せ、カイルたちに微笑んだ。
「……そして何より、私がどれほど愛を叫んでも届かなかった兄様の心に『恋』という光を灯し、私の元へ走らせてくれたのは……他ならぬ、君たちの導きだった」
レオンは懐から、王の名が記された重厚な印章が押された書状を取り出した。
「本日をもって、カイル・ベルク、およびメアリ・ハインの両家を、伯爵位へと昇格させる。さらに、王都近郊の肥沃な三つの直轄領を割譲し、レルプス家が持つ全ての通商路における優先権を永久に付与する」
会場から、地鳴りのような驚きの声が上がった。それはカイルの言うところの『中堅貴族』から、一気に王国の中心を担う権力者へと駆け上がる、破格の、あまりにも法外な恩賞だった。
「れ、レオン様……! そんな、私たちはただ、大切な友人を守りたくて……!」
二人が震える声で固辞しようとしたが、レオンはそれを手で制し、口角をわずかに上げた。
「これは対価だ。今この時、兄様が見せてくれている至上の笑顔に対する、安すぎるほどの報酬だ。……君たちが富み、栄えることは、兄様を喜ばせることに直結する。ならば、私は惜しむつもりなど微塵もない。それに、この日まで学院で『中堅貴族だから今後のために勉強しておいた』んだろう?せいぜい知識を活かして励むといい」
「レオン……ありがとう。カイル、メアリ。これからもずっと、親友として隣にいてね」
ノエルの温かい言葉に、ついに二人は感極まって涙を零し、深く頭を下げた。
それは、利害関係で結ばれた貴族社会において、たった一つの純粋な愛が奇跡を起こし、歴史を塗り替えた瞬間だった。
◆
数年の月日が流れたある晴れた午後。カイルとメアリが、生まれたばかりの赤ん坊を連れて屋敷を訪れた。
「見てください、ノエル、レオン様。……僕たちの宝物です」
カイルが照れくさそうに抱きかかえていたのは、二人の面影を色濃く残した、天使のように愛らしい、ふわふわとした毛並みを持つキツネの女の子。ノエルはその小さく温かな指が自分の服をぎゅっと掴むのを感じた瞬間、胸の奥がじわりと熱くなった。
「……なんて、可愛いんだろう。命って、こんなに温かいんだね」
慈愛に満ちた表情で赤ん坊をあやすノエルの横顔。それを見つめていたレオンは、兄の瞳に宿る静かな望みを敏感に感じ取る。その夜、二人は寝室で静かに言葉を交わしていた。
「……兄様。もしよろしければ、僕たちも『家族』を迎えませんか。兄様が注いでくださるその愛を、その先へ受け継いでいく子を」
「レオン……。うん、僕も、君と一緒に誰かを育ててみたい。この家を、もっと笑い声でいっぱいにしたいな」
翌朝。二人の決意が朝食の席でギルバートに伝えられた、その瞬間。
「―――よし、来たあああああッ!!」
静寂を守っていた食堂に、現役時代からは想像もつかないギルバートの絶叫が響き渡る。彼は持っていたフォークを放り出し、立ち上がって拳を突き上げた。
「待っていたぞ!この時をどれほど待ちわびたか!執事!執事はどこだ!今すぐ国中の孤児院から優秀で心優しい子の資料を集めろ!いや、私が直接視察に行く!部屋はどうする?東棟を丸ごと子供部屋に改装させよう。玩具は?家庭教師は?ああ、馬も必要だな、レルプスの子なら乗馬は嗜みだ!」
「お、お父様……落ち着いて。まだ決めたばかりだよ」
呆気に取られるノエルをよそに、ギルバートの暴走は止まらない。
「落ち着いていられるか! 私が父親として失敗した分、今度は祖父としてこれ以上ないほどの愛を注ぐのだ! レオン、予算は無制限だと思って差し支えないな!?」
「……ええ、まあ、ほどほどになら。……やれやれ、兄様。父上は僕たちの時以上に、過保護なおじい様になりそうですよ」
レオンは苦笑しながら、ノエルの肩を抱き寄せる。ノエルもまた、かつて自分を厳しく律していた父が、今では孫の誕生を夢見て子供のように大はしゃぎしている姿を見て、おかしそうに、そして幸せそうに笑い声をあげた。
かつて冷たい沈黙に支配されていたレルプス家。今、そこには過去の傷を癒すための新しい命を迎える熱狂と、溢れんばかりの希望が満ちていた。
◆
翌日、眩しい朝の光を浴びながら、ノエルとレオンは王都の端にある清潔でこぢんまりとした孤児院を訪れた。
院長が二人の高貴な身なりに恐縮しながら案内を始めようとしたその時、ノエルの足がふと止まった。
賑やかに駆け回る子供たちから少し離れた、庭の隅。
そこには、大きな切り株の陰で、地面に這いつくばるようにして何かをじっと見つめている、小さな男の子がいた。
その子は大きく丸いネズミの耳を揺らめかせ、細い尻尾が緊張したようにピンと伸びていた。
「あの子は……?」
ノエルが静かに近づくと、男の子は二人の気配に気づき、ハッと肩を震わせる。しかし、逃げ出す代わりに自分の手元を必死に隠すようにして丸まった。
「……見ちゃ、ダメ。すぐ、壊れちゃうから」
蚊の鳴くような声。ノエルがそっと覗き込むと、そこには折れた小枝と色褪せた葉っぱを蜘蛛の糸のような細い蔓で丁寧に繋ぎ合わせた、いびつな花冠があった。
「……これ、君が作ったの?」
ノエルの問いかけに、ネズミの男の子はおずおずと頷いた。
「……うん。お花、もう咲いてないから……落ち葉で、作った。誰かに……あげたかったけど、僕、ネズミだから、みんな汚れちゃうって、言うんだ」
その言葉を聞いた瞬間、ノエルの胸の奥が、ぎゅっと締め付けられた。
かつて庭園で独り、誰にも届かない愛を形にしようとしていた自分。
周囲から虐げられ、それでも誰かを想うことをやめられなかったあの頃の自分と、この子はあまりにも似ていた。
「……汚れてなんていないよ。とっても、素敵な冠だね」
ノエルは膝をつき、服に泥がつくことも気にせず男の子と同じ目線になった。
「ねぇ、レオン。見て。この子、僕と同じものを作ってる」
ノエルが振り返ると、レオンは最初こそ冷ややかな、値踏みするような視線を向けていた。
しかし、その子が作った落ち葉の冠を見た瞬間、瞳がかすかに揺れた。
「……ほう。兄様と同じ、殊勝な趣味を持っているようですね」
レオンはそう言うと、少年の前に歩み寄り、その小さな、土に汚れた小さな手を手のひらで優しく包み込んだ。
「名前は?」
「……テオ」
レオンの声に怯えつつも、小さな声でしっかりと答える姿にレオンが目を細めた。
「ふむ。……テオ、その冠は、誰かにあげたかったのだろう?」
「……う、うん」
「ならば、今ここで私に寄越しなさい。……その代わり、お前にはもっと広い庭と、枯れることのない花を与えてやろう」
少年は驚いて、大きな黒い瞳を瞬かせる。ノエルは優しく微笑み、少年の頬を撫でた。
「僕たちと一緒に来る?……おじい様が、美味しいケーキを用意して待っているんだよ」
少年は、まだ信じられないといった様子で二人を見つめていたが、やがて、ノエルが差し出した手を小さな指でぎゅっと握りしめた。
「……そういうわけで、私を『父上』、兄様を『お父様』と呼び分けなさい。いいですね?」
「……うん。わかり、ました。ちちうえ、おとうさま」
ノエルとレオンの間に挟まれておどおどと歩く小さなネズミの男の子が、屋敷の正面玄関に足を踏み入れたその瞬間。
「戻ったか!!」
地響きのような足音と共に、いつもは泰然自若としているギルバートが、ネクタイを少し曲げたまま大慌てでロビーへ駆けつけてきた。
「父上、みっともないですよ」
「黙れぃ!私の孫……いや、新しい家族を連れて帰ると言ったのはお前たちだぞ!」
ギルバートの鋭い視線がレオンの影に隠れて震える小さなネズミの少年に注がれる。身を縮める少年を撫でながら、レオンが静かに、しかし誇らしげに告げた。
「父上。この子はテオ。孤児院の隅で兄様と同じように落ち葉で花冠を作っていた、心優しいネズミの子です」
ギルバートは、少年の小さな頭を、大きな掌でわしわしと優しく撫で回した。
「うむ、うむ!いいか、テオ。今日からお前はこのレルプスの庭の主だ、ノエルと共に好きなだけ花を愛でると良い!その耳も我らウサギと違ってまんまるで、実に可愛いではないか。機敏に動けそうで、将来が楽しみだぞ!……ほら、テオ。儂のことを『おじいちゃん』と呼んでくれるか?」
「……お、おじい、ちゃん……?」
テオが震える声でそう呼ぶと、ギルバートの顔は、かつてないほどにデレデレとした、締まりのないおじいちゃん全開の笑顔に溶けた。
「うむ! 良い響きだ! さあ、冷めないうちに特大のケーキを食べよう。お前が食べきれん分は、そこの不愛想な父に食べさせてやればいい!」
ギルバートがテオを抱きかかえ、意気揚々と歩いていく。予想をはるかに超えるデレデレぶりに二人が顔を見合わせ、そして笑った。
窓の外、夕焼けに染まるレルプス邸の庭園には、かつての静寂ではなく、これから始まる賑やかな日々を予感させる、温かな風が吹き抜けていた。
◆
かつて孤児院の隅で小さな落ち葉を編んでいたテオは、周囲から注がれる愛を一身に受け、立派な少年に成長していった。
当時その身を包んでいた服は薄汚れていたが、今では真新しい学院の制服に変わり、その頭には幼い頃より少し凛々しくなったネズミの耳が誇らしげに立っていた。
「テオ、忘れ物はない?予備のハンカチは持った?お腹が空いたら持たせたクッキーを食べていいからね」
「ありがとうございます、お父様。何度も確認しましたから大丈夫ですよ」
学院の校門前で、ノエルが甲斐甲斐しくテオの襟元を直し、テオが恥ずかしそうに答える。その隣でレオンが腕組みをしながら、どこか寂しげな、それでいて誇らしげな複雑な表情で息子を見守っていた。
「兄様、あまり過保護にしてはいけません。今日からテオはレルプスの名を背負って学ぶ身なのですから。……いいかいテオ、もし意地悪な奴がいたら、迷わず私に報告しなさい。その日のうちにその家門の予算を凍結して……」
「父上。そちらのほうがよっぽど過保護かと思いますが……」
テオが呆れつつ返事をすると、ノエルが苦笑する。そこへ、軽快な足音とともに三人の影が駆け寄ってきた。
「ノエル、レオン様! お待たせしました!」
「テオ君、おはよっ!今日からよろしくね!」
カイルとメアリ、そしてその隣でぴょんぴょんと跳ねているのは、カイルにそっくりな茶色い毛並みと、メアリの気風の良さを受け継いだ、ふわふわなキツネの女の子・リリ。
「リリちゃん、おはよう! 今日から一緒だね」
テオがリリの手を取ると、リリは得意げに大きな尻尾を振った。
「うん! あたしがテオ君を守ってあげるからね。パパがテオ君はちょっとおっとりしてるからしっかりしてあげなさいって言ってたもん!」
そのやりとりに両親たちが顔を見合わせて笑い合う中、いよいよ学院の門が開く鐘の音が響いた。
「さあ、行っておいで、二人とも。友達をたくさん作って、楽しい思い出もいっぱい作ってきてね」
ノエルが二人の背中を優しく押すと、テオとリリは、手をつないで学院の大きな門をくぐっていった。
その背中を、レオンはノエルの肩を抱き寄せながら静かに見守っている。かつて、孤独と恐怖の中で逃げるように潜り抜けたこの門を、今、自分たちの子供が希望に満ちた足取りで進んでいくのをじっと見ていた。
「……兄様。僕たちの選んだ道は、間違っていませんでしたね」
「うん。……あの子たちの未来には、もう悲しい花冠は必要ないね」
ノエルはレオンの手を握り返し、春の光に包まれた子供たちの背中を見つめ続ける。空はどこまでも高く、庭園に咲く白詰草は、新しい世代の物語を祝うように、穏やかな風に揺れていた。
……とはいえ、やはり完全な平和を得るのは難しいもの。学院の広大な回廊に、場違いな嘲笑が響いた。
「おい、見ろよ。あれが『レルプスの拾い子』か? ネズミの孤児なんて、どこのドブから拾ってきたんだか」
「当主も当主だ。兄弟で睦み合うなんて前代未聞の不潔さだな。そのうえ、血の繋がりもないドブネズミを家族面させるとは……おい、隣のキツネも同類か?獣臭くて敵わん」
かつてこの学院で何が起きたかを知らない無知な放蕩貴族の子たちが二人を取り囲む。リリが怒りで顔を真っ赤にしながら毛を逆立たせ、牙を剥いて鋭い爪を立てようとしたその時だった。
「リリちゃん、いいんだ。僕が話すよ」
テオが一歩前に出た瞬間、周囲で様子を見守っていた子息たちは一斉に血の気が引き、壁際へと後ずさる。幸運にも彼らは両親から口酸っぱく教えられていた。……その少年の背後に、どれほど巨大で容赦のない愛が控えているのかを。
「僕たちに対する認識に、いくらか誤りがあるようですね。良い機会ですし、この場で訂正させていただきます」
テオはレオン譲りの冷徹な眼差しで、嘲笑う上級生の瞳を正面から射抜き、口を開いた。
「まず第一に。僕の両親の結婚を『不潔』と称されましたが、それは王国憲法第3条、および聖教会の認める『魂の結合』への公然たる侮辱です。貴家は王家よりも高い法をお持ちなのですか?また、この愛の形を歪みと称するなら、政略結婚による愛を欠いた家庭で育ったあなたがた自身はどう説明するのですか?」
淡々とした、けれど理路整然とした語り口。それはまさに、かつて数々の家門を論理で圧殺してきたレオンそのものだった。
「次に、僕の出自について。僕は確かに孤児でしたし、引き取られなければいずれ野垂れ死んでいたでしょう。……しかし、今の僕はレルプス家第十四代当主であるレオン・レルプスが認めた嫡男です。僕を侮辱することは、レルプス家全戦力への宣戦布告と見なされますが、その覚悟でおっしゃっているのですか?」
「な、何を生意気な……!」
「最後に。僕のことはどう言っても構いませんが、僕の大切な友人であるリリを侮辱したこと。これだけは、僕の個人的な感情として許せません」
テオの纏う空気が一変する。ノエル譲りの聖域のような静謐さと、レオンを思わせる狂気、ギルバートから受け継いだ威圧感が混ざり合い、圧倒的なプレッシャーとなって上級生たちを押し潰した。
「今すぐ、膝を付いて彼女に謝罪を。……さもなければ、お父様の庭園に咲く『白詰草』を、父上が直々に、あなたの家の庭に植えに行かなければならなくなります」
テオの唇に、レオンそっくりの『美しいが底知れない微笑』が浮かぶと、上級生たちは腰を抜かし謝罪の言葉も満足に言えないまま逃げ出していった。
「……ごめんね、リリちゃん。怖い思いをさせちゃった」
そう言って、ノエル譲りの優しい手つきで彼女の髪に触れたテオ。しかし、リリはすぐには答えられなかった。
さっきまでのテオは、自分が知っている一緒に泥遊びをしていた優しい幼馴染とは似ても似つかない。気高く、恐ろしく、そして誰よりも頼もしい『男』だった。
「……テオくん……」
リリはほんのり赤面しながらふわふわの尻尾を揺らす。『守ってあげなきゃ』と思っていた相手への感情が、尊敬、そして名付けようのない熱い微熱へと、一気に塗り替えられた瞬間だった。
遠くの校舎の陰でその様子を見守っていたレオンは「さすがは僕の息子だ」と満足げにうなずき、ノエルは「テオ、もうお嫁さんが決まっちゃったね」とふんわり微笑む。しかし、そんな二人と裏腹に、カイルとメアリは頭を抱えていた。
「……メアリ。俺たちの娘が、レルプスの男に本格的に惚れちまった。これは、俺たちがかつてレオンに振り回された何倍もの苦労が、テオからリリに、そして俺たちに降りかかってくる予兆だぞ」
「……いいじゃない、カイル。レルプスの男に愛されるのがどれだけ幸せで、どれだけ大変か、私たちはよく知ってるでしょ? せめて、リリがテオくんの『渇き』に耐えられるように、今から根性を叩き直しておきましょう」
そんな幸せな諦観とともに、また新しく、熱烈で一途な恋の蕾が花開く。それは、これから始まるレルプス家の黄金時代の幕開けの印でもあった。
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