お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞

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馴染みの質屋に着くと、既にフォーグが屋根に止まっていた。

俺は急いで裏に回り、裏口からお店に入った。その時

「たのもー」

と元気なリシュの声が聞こえた。

「思ったよりも元気そうだな」

と思わず笑っていたら

「なに当たり前のように裏口から入ってきて笑ってんだ、お前は」

と呆れた声がした。ここの店主で名をギルシュという。何を隠そう、彼は俺の、俺とリシュの叔父だ。俺は彼が叔父だと知ったのは偶然で、リシュは知らない。

彼は子供の頃、早々に伯爵家を見限り平民になり働き出したのだ。その頃の伯爵家はまだ裕福で、宝石類の目利きの出来た叔父は、この質屋で働き出し、数年前にお店を引き継ぎだ。

そして、どこでその事を知ったのか、父上がお忍びでここ来て叔父に伯爵家の専属になれと言っていたのだ。

叔父は専属になることは断ったが、取り引きすることは引き受けた。

店の奥から2人のやり取りを見ていた。
叔父はリシュから宝石を受け取ると、こちらへ来た。

「後で詳しく話せよ」

と言って金庫からお金を出した。俺は懐から袋を取り出すと

「これも一緒に入れてくれないだろうか」

「ったく。出て自分で渡せよな」

と口悪く言ったけど、俺から袋を受け取ると、その中に宝石のお金も入れた。俺はそれほど目利きと言うわけではないが、それでも通常よりは多い事はわかる。

「叔父上。ありがとうございます」

「ふん。お前のためじゃねーよ」

そう言って、また表に戻っていった。

「お兄様に会うことがあれば、ごめんなさいって謝っていて」

と言う言葉が聞こえた。

「いつか本人に直接言え」

という、素っ気ない言葉も聞こえた。

「行ってきます」

と言う元気な声が聞こえから俺は思わず、表に出てきてしまった。去っていくその後ろ姿を見て

「体に気をつけて、いってらしゃい」

と無意識に口にしていた。そして、二度と会えなくなる妹との過去を思い返していた。
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