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UNO
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雨の音が屋根をやさしく叩いていた。
週末の午後、ふたりとも珍しく外出予定はゼロ。部屋着のまま過ごしていると、時間がふわふわと溶けていく。
「ねえ、しおりん、ひさびさにアレやらない?」
クッションを抱えながら、ソファの上でゴロゴロしていたかおりんが顔を上げた。
「アレって?」
「UNOだよ、UNO!」
「懐かしい……でも、家にあったっけ?」
「あるある!中学生のころ使ってたやつ、ちゃんと残ってた!」
言いながら、かおりんはTVボードの下から色あせた赤い箱を取り出した。中には少し角のすれたカードたち。だけど、その色と感触には、なぜか安心感があった。
「……いいよ。やろっか」
「よーし、今日こそ“あがりドロー4”決めるぞ!」
「それ、禁止ルールじゃなかったっけ?」
「細かいこと気にしな~い!」
そう言って、かおりんは早速シャッフルを始めた。手元の動きが妙に慣れている。いや、妙に“自信ありげ”だ。
「最近やってた?」
「うん、たまに友達と。でも、家族相手のほうが燃える!」
*
ゲーム開始。最初の数ターンは、軽く流す感じで数字カードの応酬が続く。会話もしながら、笑いながら、淡々と出していく。
「ほい、黄色の7」
「黄色ね、じゃあ……ドロー2!」
「えっ!ちょ、早くない!?もう攻撃カード!?」
「油断大敵ですぞ?」
かおりんがにやりと笑う。その顔が、ちょっとだけ悪い顔になっていた。
「……今日は本気なんだね?」
「もちろん」
わたしは2枚引きながら、ちょっとだけ思った。
――この空気、嫌いじゃない。
*
ゲームはじわじわと加熱していく。
かおりんの手札が5枚、4枚、3枚と減っていくにつれ、わたしのほうは妙に“増え続けている”。
「もしかして、しおりん……運悪くない?」
「ちがう、これは……心理戦だから」
「ふふ、言い訳はあがってからにしようね~」
「よし、逆襲開始。リバース」
「え、方向変えちゃう?……じゃあ、ドロー2!」
「うわぁ、またかよ!」
この時点でわたしはすでに9枚。かおりんは3枚。あからさまな戦力差に、わたしは思わず苦笑いした。
「ねえ、なんでそんなに攻撃力高いの」
「女の武器ってやつ?」
「UNOでその言い方どうなの」
*
そんなやりとりが続いて、2回目の対戦が終わる頃には、ふたりとも完全に“本気モード”に突入していた。
「……じゃあさ、3戦目はちょっと……勝負つけようか?」
かおりんが、なにか思いついたようにわたしを見る。
「勝負って……何の?」
「負けたほうが、勝ったほうの言うことひとつ聞く」
「おおっと、急にそういうやつ来た?」
「ありでしょ?」
ちょっと悪戯っぽい笑み。でも、その背後には、明らかに“勝つ気しかない”空気が漂っていた。
「……面白い。受けて立ちましょう」
「じゃあ、手加減なしで!」
*
最終戦、3回目のUNO。
ふたりの空気は、まるで別人のように張り詰めていた。
部屋の明かりはほんのりオレンジ色。静かな雨音の中、カードのパチンという音だけがリズムを刻む。
「青の5」
「青か……ドロー2」
「またそれ!?」
「これで手札差が開いたね、ふふっ」
「くっ……じゃあ、リバース」
「リバースで返して……スキップ」
「わあっ!連携プレイしてるの!?」
「1人連携、得意なんです♪」
悔しそうな顔をしながらも、わたしは黙ってカードを出す。
互いの手札が減っていく。5枚、4枚、3枚……。
息が詰まるような静けさの中で、わたしが「2枚目のワイルドカード」を引いた時、運命が変わった。
「……ワイルド、赤に変更」
「うわ、そこ赤か~……んー……じゃあ、スキップ!」
「そっちも持ってるの!?」
「ふふっ。UNOって、運だけじゃ勝てないんだよ?」
「あーもう、負けられない!」
*
その後、二転三転。リバース、スキップ、ワイルドが飛び交う心理戦。
カードの出し方ひとつ、息を吐くタイミングひとつにまで駆け引きが宿る。
わたしの手札はついに「1枚」。
UNO宣言と同時にかおりんが叫ぶ。
「はい、ドロー4!」
「っ……まじかぁぁ……!」
思わず床に崩れ落ちる。かおりんのニヤリ顔が、めちゃくちゃ腹立たしい。なのに、ちょっと可愛い。
「しおりん、はい引いて~4枚!」
「ううっ……くっそぉ……!」
結局、最後はかおりんの手札が0になって、完敗。
勝ち誇った妹が、ゆっくりと指を一本立てて言った。
「じゃあ、言うこと聞いてもらうね?」
「……ど、どうぞ……」
「じゃあ……膝枕、して」
「……は?」
「いま、疲れてるから~。しおりんの太ももに、頭置いて、5分くらい目つぶってたい」
「それって、ご褒美側じゃないの?わたしが損してない?」
「でも恥ずかしいでしょ?」
「……まあ、ちょっとだけ……」
でも、それを言われると断れないのが姉バカの性(さが)で。
「……じゃあ、そこに寝なさいよ」
「わーいっ」
かおりんは素早くゴロンと転がって、わたしの膝に頭を乗せた。
「……あれ?思ったよりいいかも」
「なんか……変なこと考えてない?」
「ちょっとだけね」
「やめなさい」
わたしの太ももに頬をすり寄せて、にやにやしているかおりんを見ながら、わたしはふと笑ってしまった。
そして思わず……かおりんの頬に……チュッ……と
「あっ……」
「しまった思わず……」
かおりんの耳が赤い……
「しおりんなら……いいかな……」
雨の音はまだ続いている。
だけど、部屋の中はずっと明るく、あたたかかった。
週末の午後、ふたりとも珍しく外出予定はゼロ。部屋着のまま過ごしていると、時間がふわふわと溶けていく。
「ねえ、しおりん、ひさびさにアレやらない?」
クッションを抱えながら、ソファの上でゴロゴロしていたかおりんが顔を上げた。
「アレって?」
「UNOだよ、UNO!」
「懐かしい……でも、家にあったっけ?」
「あるある!中学生のころ使ってたやつ、ちゃんと残ってた!」
言いながら、かおりんはTVボードの下から色あせた赤い箱を取り出した。中には少し角のすれたカードたち。だけど、その色と感触には、なぜか安心感があった。
「……いいよ。やろっか」
「よーし、今日こそ“あがりドロー4”決めるぞ!」
「それ、禁止ルールじゃなかったっけ?」
「細かいこと気にしな~い!」
そう言って、かおりんは早速シャッフルを始めた。手元の動きが妙に慣れている。いや、妙に“自信ありげ”だ。
「最近やってた?」
「うん、たまに友達と。でも、家族相手のほうが燃える!」
*
ゲーム開始。最初の数ターンは、軽く流す感じで数字カードの応酬が続く。会話もしながら、笑いながら、淡々と出していく。
「ほい、黄色の7」
「黄色ね、じゃあ……ドロー2!」
「えっ!ちょ、早くない!?もう攻撃カード!?」
「油断大敵ですぞ?」
かおりんがにやりと笑う。その顔が、ちょっとだけ悪い顔になっていた。
「……今日は本気なんだね?」
「もちろん」
わたしは2枚引きながら、ちょっとだけ思った。
――この空気、嫌いじゃない。
*
ゲームはじわじわと加熱していく。
かおりんの手札が5枚、4枚、3枚と減っていくにつれ、わたしのほうは妙に“増え続けている”。
「もしかして、しおりん……運悪くない?」
「ちがう、これは……心理戦だから」
「ふふ、言い訳はあがってからにしようね~」
「よし、逆襲開始。リバース」
「え、方向変えちゃう?……じゃあ、ドロー2!」
「うわぁ、またかよ!」
この時点でわたしはすでに9枚。かおりんは3枚。あからさまな戦力差に、わたしは思わず苦笑いした。
「ねえ、なんでそんなに攻撃力高いの」
「女の武器ってやつ?」
「UNOでその言い方どうなの」
*
そんなやりとりが続いて、2回目の対戦が終わる頃には、ふたりとも完全に“本気モード”に突入していた。
「……じゃあさ、3戦目はちょっと……勝負つけようか?」
かおりんが、なにか思いついたようにわたしを見る。
「勝負って……何の?」
「負けたほうが、勝ったほうの言うことひとつ聞く」
「おおっと、急にそういうやつ来た?」
「ありでしょ?」
ちょっと悪戯っぽい笑み。でも、その背後には、明らかに“勝つ気しかない”空気が漂っていた。
「……面白い。受けて立ちましょう」
「じゃあ、手加減なしで!」
*
最終戦、3回目のUNO。
ふたりの空気は、まるで別人のように張り詰めていた。
部屋の明かりはほんのりオレンジ色。静かな雨音の中、カードのパチンという音だけがリズムを刻む。
「青の5」
「青か……ドロー2」
「またそれ!?」
「これで手札差が開いたね、ふふっ」
「くっ……じゃあ、リバース」
「リバースで返して……スキップ」
「わあっ!連携プレイしてるの!?」
「1人連携、得意なんです♪」
悔しそうな顔をしながらも、わたしは黙ってカードを出す。
互いの手札が減っていく。5枚、4枚、3枚……。
息が詰まるような静けさの中で、わたしが「2枚目のワイルドカード」を引いた時、運命が変わった。
「……ワイルド、赤に変更」
「うわ、そこ赤か~……んー……じゃあ、スキップ!」
「そっちも持ってるの!?」
「ふふっ。UNOって、運だけじゃ勝てないんだよ?」
「あーもう、負けられない!」
*
その後、二転三転。リバース、スキップ、ワイルドが飛び交う心理戦。
カードの出し方ひとつ、息を吐くタイミングひとつにまで駆け引きが宿る。
わたしの手札はついに「1枚」。
UNO宣言と同時にかおりんが叫ぶ。
「はい、ドロー4!」
「っ……まじかぁぁ……!」
思わず床に崩れ落ちる。かおりんのニヤリ顔が、めちゃくちゃ腹立たしい。なのに、ちょっと可愛い。
「しおりん、はい引いて~4枚!」
「ううっ……くっそぉ……!」
結局、最後はかおりんの手札が0になって、完敗。
勝ち誇った妹が、ゆっくりと指を一本立てて言った。
「じゃあ、言うこと聞いてもらうね?」
「……ど、どうぞ……」
「じゃあ……膝枕、して」
「……は?」
「いま、疲れてるから~。しおりんの太ももに、頭置いて、5分くらい目つぶってたい」
「それって、ご褒美側じゃないの?わたしが損してない?」
「でも恥ずかしいでしょ?」
「……まあ、ちょっとだけ……」
でも、それを言われると断れないのが姉バカの性(さが)で。
「……じゃあ、そこに寝なさいよ」
「わーいっ」
かおりんは素早くゴロンと転がって、わたしの膝に頭を乗せた。
「……あれ?思ったよりいいかも」
「なんか……変なこと考えてない?」
「ちょっとだけね」
「やめなさい」
わたしの太ももに頬をすり寄せて、にやにやしているかおりんを見ながら、わたしはふと笑ってしまった。
そして思わず……かおりんの頬に……チュッ……と
「あっ……」
「しまった思わず……」
かおりんの耳が赤い……
「しおりんなら……いいかな……」
雨の音はまだ続いている。
だけど、部屋の中はずっと明るく、あたたかかった。
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