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第6話
しおりを挟む解毒草のお陰でエヴァルト王子の容態はみるみる回復しているらしい。
と言うのも、私はあれからエヴァルト王子を見舞う事も部屋から出る事も出来ていないからだった――
エヴァルト王子が解毒草を飲んで眠った後、騒動に気付いてエヴァルト王子の部屋にやって来たお父様とお母様は、私のヨレヨレの濡れたドレス姿を見て驚き、事の顛末を近くの侍女から聞いたお母様は鬼の形相になった。そして、ツカツカと私の前にやって来ると、私の頬を平手打ちしたのだった。
「国王陛下、王妃陛下、娘が大変無礼な振る舞いを致しまして、申し訳ございません」
そう言って、お母様は国王と王妃に深々と頭を下げた。
国王は私のお陰でエヴァルト王子が助かったのだからと、お母様を諭してくれたが、お母様の怒りは収まらなかったようで、また私は自室からの外出禁止を言い渡されてしまった。
「はあ、エヴァルト王子が回復していってるって事は、レオン王子の闇落ちは回避出来てるって事で良いのよね?」
部屋から出られないから、王宮へ行く事も出来ないし、レオン王子の様子が気になる。
部屋の窓から王宮のある方を見つめて、私は大きくため息を吐いた。
「今回はお母様、かなり怒ってたしいつになったら外出禁止が解かれるか分からないわ」
それから、幾日か過ぎてお父様とお母様が大事な話があると私の部屋へやって来た。
「ルイーザ、エヴァルト王子はすっかり身体はよくなられたようだ。そこで、快気祝いの食事会に招待された。もちろん、ルイーザも一緒にと」
お父様の言葉に私は、満面の笑みで答えた。
「まあ!お元気になられたのね!良かったわ」
すると、すかさずお母様が口を挟む。
「ルイーザ、もうあのような失態を侵してはなりませんよ」
母のキツイ口調に、私は大人しく「はい」と答えた。
良かった!これでレオン王子に会えるわ!
◇
そして私は、無事外出禁止を解かれて、エヴァルト王子の快気祝いの食事会に参加していた。
食事会では、主に大人達が話していたので、私は静かに食事をしていた。
エヴァルト王子は、食欲もあるようですっかり元気そうであった。
ただ、レオン王子は、折角のエヴァルト王子の快気祝いの食事会なのに何処か悲しそうで、私とは目も合わせてくれなかった。
レオン王子、どうしたんだろう?
解毒草を一緒に取りに行って、互いに打ち解けたと思っていただけにその反応に困惑してしまう。
一通り食事を終えて、皆でテラスに移動し今度はお茶会をする事になったので、私は改めてエヴァルト王子に祝いの言葉を述べた。
「エヴァルト王子、ご回復おめでとうございます」
「ルイーザ嬢、君のお陰で本当に助かったよ。ありがとう」
エヴァルト王子は相変わらずの優しい笑顔で、顔色もよく、元気な姿であった。
ああ、エヴァルト王子が元気そうで本当に良かった。
と私が一安心した所で、テラスから続く庭に1人離れて出ていったレオン王子が心配になり、声をかけに行った。
「レオン王子、一緒にお茶を飲みませんか?」
するとレオン王子は、私の姿を見て視線を落とすと、不貞腐れたように言った。
「今日はお兄様とルイーザの仲を取り持つための食事会でしょう?僕がいたら邪魔じゃないか」
うん?それはどういう意味だ?
「今日はエヴァルト王子の快気祝いですよ?レオン王子が邪魔だなんて事あるわけないわ」
それとも、またカルメラ王妃に何か言われたのかしら?
「そうだけど!でもルイーザだってお兄様の方が良いんでしょ!?お兄様と婚約したいから、解毒草を取りに行ったんでしょう!?」
んんん?……わたし?
「えーと、私はエヴァルト王子と婚約したいから解毒草を取りに行ったわけではないわよ?」
「じゃあ、どうして?」
「どうしてって……」
それは、レオン王子の闇落ちを回避する為……ってのは言えないけど。
「それは、苦しんでいるエヴァルト王子を助けたいからよ?だって苦しんでいる人がいて、自分が助かる方法を知っていたら、なんとかしたいと思うでしょう?」
「あ……」
すると、みるみるレオンの顔が赤くなった。
「ぼ、僕……、ルイーザはてっきりお兄様の事が好きだと思って……、だから……僕のお嫁さんには、なってくれないなって……」
と、レオンは小さな声で気恥しそうに言った。
えーと……、確かゲームの中では、ルイーザとレオンって政略結婚で、特にお互いを思い合ってる感じはなかったよね?レオンが愛妻家だなんて事もファンブックに載ってなかったし……。
と思いながらもレオン王子を見れば、私と目が合って、またも恥ずかしそうに視線を逸らした。
この反応……。これは、もし私がエヴァルト王子の婚約者になったら、レオンの闇落ち、悪の帝王ルートもあり得るのかな……?
ルイーザの頭の中に再び、青年になったレオンが高笑いをしている映像が浮かんできた。ルイーザは、それを払い退けるように頭を振ると、レオンの両手を胸の前で握り、レオンをしっかりと見つめて言った。
「私は、レオン王子を支えたいです」
悪の帝王にならないように!
すると、レオン王子の顔がクシャリと可愛い笑顔に変わった。そして、私の手を握って、皆がいるテラスへと走っていくとテラスに入って開口一番こう言った。
「お父様、僕ルイーザと婚約したい!」
皆が目を丸くして私達を見ている中で、エヴァルト王子だけは、にこやかに私達の様子を見守っていた――
そして数日後、正式にレオン王子から私への婚約の申し入れがあり、私達は婚約したのだった――
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