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第5話
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ルイーザとレオンは、再びムブルに乗ってカルヴァ王国の王宮へと戻ってきた。
エヴァルト王子の部屋の前で、レオンは少し躊躇した後、扉をノックした。
扉を開けた侍女が驚いた顔をした後、汚らしいものを見るように目を細めた。
確かにドラゴンの背に乗って散々風に煽られて、雪山でたくさん転んだので、私達はクタクタの濡れた姿ではあった。
だからって侍女が王子に対してそんな顔をするなんて……。
ルイーザが不満顔で侍女を見ていると、レオンが言った。
「通して。お兄様に解毒草を渡したいんだ」
すると、侍女は平坦な声で答えた。
「エヴァルト王子のお部屋にレオン王子をお通しする事は出来ません」
「じゃあ、せめて、この解毒草をお兄様に飲ませてあげて」
と言って、レオンは侍女に持っていた解毒草を渡そうとするから、私はその手を掴んで止めた。
「待って、レオン王子。ちゃんと直接、レオン王子が持って行きましょう」
そう言って私がレオン王子の腕を掴んだまま侍女の横を通り過ぎようとするから、侍女が慌てて言った。
「お待ち下さい!こちらのお部屋にお二人をお通しする事は出来ませんわ!」
侍女はレオン王子の反対の手を掴んで止めてきた。私はそれを見て怒りが湧き上がってくる。
「貴方、彼が誰だか分かってそんな無礼な事をしているの?彼はこの国の第2王子よ!侍女の貴方が気軽に触れて良い方ではないのよ!」
ルイーザの毅然とした物言いに、侍女はハッとしてレオンの手を離した。しかし、納得いかないように不満顔になる。
「しかし、エヴァルト王子のお部屋にレオン王子をお通ししないように仰ったのは、カルメラ王妃様です。ですから、ここをお通しするわけには……。その草でしたら、私からお渡しさせて頂きます」
「悪いけど私、レオン王子に対してこのような無礼な振る舞いをする侍女の事を信用出来ませんわ。この解毒草は、レオン王子が苦労して取ってきた貴重なものよ。そんな大事な物を貴方に託す事はできません。エヴァルト王子のお部屋に入らせないという件も、どうして弟であるレオン王子がお兄様のお見舞いも許されないのか直接、カルメラ王妃様と話させて頂きますわ」
ルイーザの勢いに侍女は圧倒されているようだったので、ルイーザはレオンの手を引いて、そのまま部屋の奥へと進んでいく。
「ルイーザ、凄いね。怒られるの怖くないの?」
とレオンが驚いたように聞いてきた。
「だって、お母様の方が数倍怖いもの。あれぐらい平気よ。それに、あの侍女に渡してもエヴァルト王子にちゃんと飲ませてくれない気がしたから、無理矢理、突破しちゃったわ」
私がそう言って悪戯っぽく笑うと、レオン王子も釣られて年相応の幼い笑顔を見せた。だが次の瞬間、私達の笑顔は凍りついた――
「何事ですか!?騒がしい!」
そう言って私達の前に現れたのは、カルメラ王妃だった。
カルメラ王妃の厳しい視線はまずレオン王子向けられた。
「レオン、どうして貴方がこの部屋にいるの?貴方の入室は許可していないわよ!」
カルメラ王妃の態度に、レオン王子は恐恐と解毒草を見せた。
「カルメラ王妃様、申し訳ございません。しかし、僕はこの解毒草を渡したくて……」
「解毒草?そんなもの聞いた事ないわ。そんな怪しい物をエヴァルトの口に入れようっていうの!?」
「い、いえ、僕はそんなつもりでは……」
「ああ、ごめんなさいね。貴方を責めているんじゃないのよ?貴方の母親がちゃんと教育もしないで、男にかまけていたのが悪いの。フッ。でも、同じ血を引いてるから教えた所で身にならないかしら?フフフッ」
カルメラ王妃は蔑むようにレオン王子を見て笑っているのを、国王は後ろで助ける事もなく無表情で見ていた。
ルイーザが周りを見渡せば、カルメラ王妃の言葉に一緒になってクスクスと笑うような従者ばかりで、奥のベッドで苦しそうに呻いているエヴァルト王子だけが、何かを訴えたそうに王妃の方を見ているようだった。
ああ、私……、今、本当にちゃんと覚悟が決まった。絶対、レオンを悪の帝王なんかにしない!こんな大人達の悪意に負けてほしくない!
「カルメラ王妃、発言する事をお許し下さい」
ルイーザは一歩前に出ると、ヨレヨレで濡れたドレスでカルメラ王妃にカーテシーをした。
「あら、貴方はセリビア公爵令嬢のルイーザ嬢ね。貴方までそんな格好で、どうしたの?そんな姿の貴方をみたら、セリビア公爵夫人がなんて言うかしら?」
「ええ、母が見たら、発狂してしまうでしょう。しかし、今はそんな事よりももっと重要な事があります。それは、この解毒草をエヴァルト王子に食べて頂く事です」
「まあ!公爵令嬢の貴方まで、そんな事を言っているの?あまり変な事を言いますと由緒正しい家柄に傷が付きますわよ」
カルメラ王妃は私の事を蔑むように見た。
「この解毒草の事は私がレオン王子に教えてさしあげました。レオン王子はそれを私と山に取りに行ってくれたのです」
「山?この辺りの山に解毒草なんてものがあるの?」
カルメラ王妃は近くにいた侍女に訪ねた。
訪ねられた侍女は首を傾げて「聞いたことがありません」と答えたので、私はすかさず言葉を挟んだ。
「そちらの侍女が知らないのも当然ですわ。この解毒草について私が知っていたのは、勉強の為に読んだ古い書物で見たからです。一介の侍女が知り得るようなものではありません。カルメラ王妃、私は由緒正しい公爵家の令嬢でございます。そんな私の言う事が信用なりませんか?」
私はカルメラ王妃から目を逸らす事なくジッと見つめると、カルメラ王妃は返す言葉を失くしたように口を噤んだ。
そして私はレオン王子が持っている解毒草の葉を一枚千切ると自分の口の中に入れた。
驚いて目を丸くしたカルメラ王妃を見ながら、私は解毒草の葉を噛んで飲み込んだ。
「この葉を食べたからといって、更に状況が悪くなる事はありません。一度試させて下さい」
「な……」
カルメラ王妃が、私の行動に戸惑った様子でいるとリヴァイト国王がレオンに言った。
「レオン、その解毒草。こちらに持って来なさい」
国王に言われて、レオンはすぐに国王の所へと解毒草を持って行く。リヴァイト国王はレオンから解毒草を受け取ると医師にそれを渡した。
「お待ち下さい!リヴァイト国王様!」
カルメラ王妃は、リヴァイト国王を止めようと声を出したが、リヴァイト国王はその先を聞く前に言った。
「ルイーザ嬢の言う通り、食べたからといってこれ以上悪くなるわけではないのなら、試してみるべきだろう」
そして医師に目配せして頷くと、医師は解毒草を小さく千切って水と一緒にエヴァルト王子の口入れた。
エヴァルト王子はなんとかそれを飲み込んだ。
皆が固唾を飲んでエヴァルト王子の様子を見守っていた。
すると、苦しそうにしていたエヴァルト王子の呼吸が段々と安定してくる。そして、エヴァルト王子はそのまま静かにベッドに横たわった。
「呼吸が安定して、よく眠っておられます。この葉がエヴァルト王子の体内の毒に効いている証拠です!」
医師のその言葉は静かな部屋によく響いた――
エヴァルト王子の部屋の前で、レオンは少し躊躇した後、扉をノックした。
扉を開けた侍女が驚いた顔をした後、汚らしいものを見るように目を細めた。
確かにドラゴンの背に乗って散々風に煽られて、雪山でたくさん転んだので、私達はクタクタの濡れた姿ではあった。
だからって侍女が王子に対してそんな顔をするなんて……。
ルイーザが不満顔で侍女を見ていると、レオンが言った。
「通して。お兄様に解毒草を渡したいんだ」
すると、侍女は平坦な声で答えた。
「エヴァルト王子のお部屋にレオン王子をお通しする事は出来ません」
「じゃあ、せめて、この解毒草をお兄様に飲ませてあげて」
と言って、レオンは侍女に持っていた解毒草を渡そうとするから、私はその手を掴んで止めた。
「待って、レオン王子。ちゃんと直接、レオン王子が持って行きましょう」
そう言って私がレオン王子の腕を掴んだまま侍女の横を通り過ぎようとするから、侍女が慌てて言った。
「お待ち下さい!こちらのお部屋にお二人をお通しする事は出来ませんわ!」
侍女はレオン王子の反対の手を掴んで止めてきた。私はそれを見て怒りが湧き上がってくる。
「貴方、彼が誰だか分かってそんな無礼な事をしているの?彼はこの国の第2王子よ!侍女の貴方が気軽に触れて良い方ではないのよ!」
ルイーザの毅然とした物言いに、侍女はハッとしてレオンの手を離した。しかし、納得いかないように不満顔になる。
「しかし、エヴァルト王子のお部屋にレオン王子をお通ししないように仰ったのは、カルメラ王妃様です。ですから、ここをお通しするわけには……。その草でしたら、私からお渡しさせて頂きます」
「悪いけど私、レオン王子に対してこのような無礼な振る舞いをする侍女の事を信用出来ませんわ。この解毒草は、レオン王子が苦労して取ってきた貴重なものよ。そんな大事な物を貴方に託す事はできません。エヴァルト王子のお部屋に入らせないという件も、どうして弟であるレオン王子がお兄様のお見舞いも許されないのか直接、カルメラ王妃様と話させて頂きますわ」
ルイーザの勢いに侍女は圧倒されているようだったので、ルイーザはレオンの手を引いて、そのまま部屋の奥へと進んでいく。
「ルイーザ、凄いね。怒られるの怖くないの?」
とレオンが驚いたように聞いてきた。
「だって、お母様の方が数倍怖いもの。あれぐらい平気よ。それに、あの侍女に渡してもエヴァルト王子にちゃんと飲ませてくれない気がしたから、無理矢理、突破しちゃったわ」
私がそう言って悪戯っぽく笑うと、レオン王子も釣られて年相応の幼い笑顔を見せた。だが次の瞬間、私達の笑顔は凍りついた――
「何事ですか!?騒がしい!」
そう言って私達の前に現れたのは、カルメラ王妃だった。
カルメラ王妃の厳しい視線はまずレオン王子向けられた。
「レオン、どうして貴方がこの部屋にいるの?貴方の入室は許可していないわよ!」
カルメラ王妃の態度に、レオン王子は恐恐と解毒草を見せた。
「カルメラ王妃様、申し訳ございません。しかし、僕はこの解毒草を渡したくて……」
「解毒草?そんなもの聞いた事ないわ。そんな怪しい物をエヴァルトの口に入れようっていうの!?」
「い、いえ、僕はそんなつもりでは……」
「ああ、ごめんなさいね。貴方を責めているんじゃないのよ?貴方の母親がちゃんと教育もしないで、男にかまけていたのが悪いの。フッ。でも、同じ血を引いてるから教えた所で身にならないかしら?フフフッ」
カルメラ王妃は蔑むようにレオン王子を見て笑っているのを、国王は後ろで助ける事もなく無表情で見ていた。
ルイーザが周りを見渡せば、カルメラ王妃の言葉に一緒になってクスクスと笑うような従者ばかりで、奥のベッドで苦しそうに呻いているエヴァルト王子だけが、何かを訴えたそうに王妃の方を見ているようだった。
ああ、私……、今、本当にちゃんと覚悟が決まった。絶対、レオンを悪の帝王なんかにしない!こんな大人達の悪意に負けてほしくない!
「カルメラ王妃、発言する事をお許し下さい」
ルイーザは一歩前に出ると、ヨレヨレで濡れたドレスでカルメラ王妃にカーテシーをした。
「あら、貴方はセリビア公爵令嬢のルイーザ嬢ね。貴方までそんな格好で、どうしたの?そんな姿の貴方をみたら、セリビア公爵夫人がなんて言うかしら?」
「ええ、母が見たら、発狂してしまうでしょう。しかし、今はそんな事よりももっと重要な事があります。それは、この解毒草をエヴァルト王子に食べて頂く事です」
「まあ!公爵令嬢の貴方まで、そんな事を言っているの?あまり変な事を言いますと由緒正しい家柄に傷が付きますわよ」
カルメラ王妃は私の事を蔑むように見た。
「この解毒草の事は私がレオン王子に教えてさしあげました。レオン王子はそれを私と山に取りに行ってくれたのです」
「山?この辺りの山に解毒草なんてものがあるの?」
カルメラ王妃は近くにいた侍女に訪ねた。
訪ねられた侍女は首を傾げて「聞いたことがありません」と答えたので、私はすかさず言葉を挟んだ。
「そちらの侍女が知らないのも当然ですわ。この解毒草について私が知っていたのは、勉強の為に読んだ古い書物で見たからです。一介の侍女が知り得るようなものではありません。カルメラ王妃、私は由緒正しい公爵家の令嬢でございます。そんな私の言う事が信用なりませんか?」
私はカルメラ王妃から目を逸らす事なくジッと見つめると、カルメラ王妃は返す言葉を失くしたように口を噤んだ。
そして私はレオン王子が持っている解毒草の葉を一枚千切ると自分の口の中に入れた。
驚いて目を丸くしたカルメラ王妃を見ながら、私は解毒草の葉を噛んで飲み込んだ。
「この葉を食べたからといって、更に状況が悪くなる事はありません。一度試させて下さい」
「な……」
カルメラ王妃が、私の行動に戸惑った様子でいるとリヴァイト国王がレオンに言った。
「レオン、その解毒草。こちらに持って来なさい」
国王に言われて、レオンはすぐに国王の所へと解毒草を持って行く。リヴァイト国王はレオンから解毒草を受け取ると医師にそれを渡した。
「お待ち下さい!リヴァイト国王様!」
カルメラ王妃は、リヴァイト国王を止めようと声を出したが、リヴァイト国王はその先を聞く前に言った。
「ルイーザ嬢の言う通り、食べたからといってこれ以上悪くなるわけではないのなら、試してみるべきだろう」
そして医師に目配せして頷くと、医師は解毒草を小さく千切って水と一緒にエヴァルト王子の口入れた。
エヴァルト王子はなんとかそれを飲み込んだ。
皆が固唾を飲んでエヴァルト王子の様子を見守っていた。
すると、苦しそうにしていたエヴァルト王子の呼吸が段々と安定してくる。そして、エヴァルト王子はそのまま静かにベッドに横たわった。
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