160 / 244
第6章
06-157 決死
しおりを挟む
この年の春は、雨が多かった。偵察機は離陸できず、杭州湾の情勢は確認できなかった。
春雨前線の停滞が続き、そのまま梅雨前線が各務原付近に居座った。
偵察は4カ月間できなかった。
最新の偵察は衝撃的な報告であった。
杭州湾の出口、東海大橋があったあたり、大陸と嵊泗列島小洋山との中間付近に巨大な輪が設置された。
輪は海底に固定され、下部4分の1ほどが海面下にある。
そして、筒の1本が消えていた。
すでに、時渡りしたものと推測された。さらに1本が試走状態にあり、もう1本も完成間近の様子だ。
予定外の積荷もあった。車輌甲板には十分な余裕があることから、自衛隊に引き渡し前の新造T-4練習機と、民間向けBK117ヘリコプターを持っていくことにした。
予定内のMD500と合わせて、固定翼機2機と回転翼機2機を運んでいく。
小型機はトレーラーで、埠頭まで運んだ。
C-1輸送機の積み込みは、名古屋では無理と判断された。
高知空港の使用を考えたが、高知臨時政権の協力は得られそうにない。
各務原政権から「高知新港第7埠頭2号岸壁に着陸できるか?」との問い合わせがあり、この600メートルほどのコンクリート路面に「着陸可能」との答えを土井将馬から得る。
短距離離着陸が可能なC-1ならば、600メートルの滑走路に着陸できる。しかし、本当に600メートルしかないのだ。幸いにも幅は140メートルほどある。
短くて狭いわけではないが……。
また、コンテナの多くは中身とともに各務原に移送してあり、その数は少ない。移動する場所もある。
オークの時渡り用筒が、すでに未来へと移動した形跡があることから、作戦の実行は急を要した。C-1の積み込みは4日後と決まった。
C-1が埠頭岸壁に着陸すると、高知臨時政権は各務原政権の高知事務所に会見を申し入れてきた。
旧高知市の政権は、今湊正一が臨時代表のまま月日を重ねていた。行政のスリム化を試みて、非政府組織に行政サービスの一部を移管したのだが、その多くが失敗していた。
ヒトの生存は、極めて厳しい状況にある。漠然とした死への不安から、現実を直視できないヒトが増えている。
不安を消したい思いから、オークやギガスを刺激したくない、という感情が生まれてくる。何もしなければ、オークやギガスは危害を加えない、と信じたいのだ。
そんな感情が、高知市に移住したヒトに蔓延しかかっていた。
各務原政権は、上海付近でオークに捕らわれているヒトの救出を考えているし、オークの時渡りを阻止できない以上、200万年後のヒトに警告を発する必要を十分に理解している。
もちろん、旧高知市のヒトにも、各務原政権の方針に賛同しているヒトが多くいる。
だが、一部は、オークやギガスと戦うくらいなら、各務原と矛を交えたほうがいいと考えている。
その延長で、上海への偵察は反対、200万年後への警告は不要、オークの虜囚となっているヒトの救出など言語道断、と主張している。
各務原では、彼らを“恭順派”と呼んでいた。
C-1が岸壁に着陸すると、下田川を越えようとする“恭順派”が現れる。臨時政権は職員を橋に派遣して“恭順派”の渡渉を阻止しようとするが、道路橋は多く、阻止できるものではない。
C-1の着陸1時間後にベルーガが接岸。ラフテレーンクレーンを降ろして、上甲板ヘリポートへの積み込みを始める。
すでに、このときには“恭順派”は埠頭に雪崩れ込んでおり、威嚇射撃で一度は後退させたものの、その後はにらみ合いとなった。
香野木恵一郎たちは時間をかけられなかった。C-1をラフテレーンクレーンで吊り上げ、ベルーガの上甲板ヘリポートに載せ、クレーンをベルーガに積むと同時に、離岸する。
この時点では、C-1を繋止できていなかった。
緊急の出港で、各種確認をする必要があることから、いったん宇佐湾に投錨、2時間後に抜錨して、杭州湾に向かった。
この世界では夜間航行ができない。灯光と電波の灯台はなく、GPSもない。海図はあるが、夜間だと陸に目標がない。小さな集落から大都市まで、一切が消えている。樹木はないし、岩や崖も消えている。
ランドマークが一切なくなってしまっている。
この日は7時間航行して鹿児島県の志布志湾に投錨する。
明払暁に抜錨し、16時間航行して、900キロ離れた杭州湾外の小島の湾に投錨する。
ここは、オークが海底に固定した“輪”の東40キロにあたる。
ベルーガの最大速力なら30分で到達できる。
海上の視程は悪い。薄茶色の塵が舞い、大気の透明度を落としている。
だが、レーダーはよく反応する。鳥の数は極端に少ないし、東アジアで飛行機を保有するのは高知と各務原の政権だけだ。
大型の物体が飛べば、間違いなく探知できる。
フィリピン・リンガエン湾の米露原潜群は、東南アジア方面を略奪しつくし、現在はハワイ・オアフ島パールハーバーにいる。
ハワイ諸島の人工物は完全に消滅しているが、天然の良港であることに変わりはない。
湾港出口は、常に自衛隊海上部の潜水艦が見張っている。
高知市臨時政権と各務原政権の関係は、悪くない。相互に協力しているし、情報の共有もある。また、危機についての認識も一致している。
今湊正一臨時代表は、政権内部に“恭順派”が浸透することを恐れていて、政権選択選挙が実施できないでいる。
今湊臨時代表は内々、虜囚となっているヒトに被害を与えず、オークの施設破壊が可能かを自衛隊海上部のごく一部に見当させている。
ベルーガは、日没直前に杭州湾外東シナ海の徐公島に到着し、投錨する。
ベルーガを監視すると同時に護衛する、自衛隊海上部の潜水艦2隻が、直近にいることを香野木たちは知らない。
その夜、各務原から無線が入る。ジュネーブからの情報だ。
それを通信担当の井澤貞之が説明する。子供も含めて、全員が船橋にいる。
「ジュネーブは、4カ月ほど前、ごく短時間、200万年後への“ゲート”が開いた痕跡があると伝えてきた。
そのときは、雑音のようなものだと思ったらしい。オークが“ゲート”を開口するパワーは弱く、探知が難しいそうだ。
その“ゲート”なんだが、ヒトが開けた“ゲート”とは時間軸が違うらしい」
百瀬未咲が手を上げて質問する。彼女は来栖早希の助手を務めているが、その存在感は日々高まっている。彼女に刺激されて、井澤加奈子と有村沙織も責任ある仕事をしている。
「井澤さん、時間軸が違う、とは?
異次元に行っちゃうとか?
同じ200万年後じゃないとか?」
「未咲ちゃんの質問だけど、正直よくわからない。確かに物理は習ったけど、私は建築士なんで……。
異次元とか、パラレルワールドとかではなく、一貫した時間軸ではない、わけ。
つまり、ヒトが開けた“ゲート”は、1年と2カ月の間、連続していた。
こちらの1カ月は、200万年後も1カ月の経過となる……。
オークが開けた“ゲート”も開口し続ければ連続した時間軸なんだけど、彼らは断接しているんだ。
だから、時間軸が一定にならない。
こちらの1カ月は、200万年後も1カ月ではない。
開いた時間の基点が変わってしまえば、200万年後であっても、ヒトが開けた“ゲート”よりも未来であったり、過去であったり、するらしい。
でも、ジュネーブの説明では、プラスマイナス5年程度の差らしい。
どちらにしても、連続した時間軸じゃないが、5年程度ならヒトが生き残っていれば出会えるだろう。
ヒトが開けた“ゲート”が閉じてから7年以上経つ。最短移住2年目か、最長13年目かの違いだ。
それと、出口側の場所も変わってしまった。オーストラリアの東端付近から南アメリカをかすめるあたりの南半球だ。
海の上である可能性が高い」
高梨由衣が手を上げる。彼女は自分でもできることを学びたいと、モールス符号を習得した。井澤貞之をよく助けている。
「井澤さん、各務原の情報も伝えないと……」
「そうだったね。
オークが時渡りに使う“筒”には、ヒトが乗せられているらしい。
理由は不明だが……。
レジスタンスへの対処と、ヒトの技術が必要なのだと思う。
実際、増速用のブースターにジェットエンジンが使われている。
写真解析でわかったことなんだが、ブースターはツマンスキーR-13ターボジェットだ。
MiG21戦闘機のエンジンだよ。各務原の推測では、中国製の渦噴13が使われているのではないか、とのことだった」
笹原大和が手を上げる。保護されたときは彼は12歳だったが、現在は16歳。金平彩華と葉村正哉にプログラミングを習い、射撃管制装置(FCS)の開発で、重要な役割を担っている。
この開発チームの特徴は、嵩張っても寿命が長いシステムの開発を目指していることだった。汎用のパソコンマザーボードや電源から、CR2032ボタン電池まで、パーツを大量にストックしている。
CPUはX86/X64系、OSはDebian系Linuxを主要している。金平彩華は、カーネルの改良を行うことさえあった。
葉村正哉は通信系に強く、ネットワークプロトコルの修正にも手を着けている。
できないことは、ハードウエアの製造くらいだ。
「井澤さん、オークの捕虜になっているヒトは、中国人なんですか?」
「いいや、違うらしい。
ロシアかカザフから連れてこられた。ウラル山脈の南端あたりに、大消滅を免れた場所があったようだ」
誰もが黙る。
香野木たちは幸運だった。大消滅を生き延びても、オークやギガスに捕らえられてしまったヒトは多いのだ。
香野木たちは比較的落ち着いていた。この徐公島に何日停泊するか不明だし、焦っても仕方がないからだ。
手空きのものは、釣り糸を降ろして魚釣りに興じている。マダイ、キダイ、マアジなどが釣れる。
長宗が捌いて開きにし、天日で干して干物にする。日照は弱いが、ここは東シナ海のど真ん中。それなりの太陽の恵みがある。
不思議だが、花山真弓と加賀谷真梨は魚が怖いらしい。そもそもこの2人が包丁を持っているところを見たことがない。
母親に定型を求めることは愚とは思うが、それにしても……。
投錨4日後の朝、冷蔵庫が魚で満杯となり、今日から釣りが禁止される。
釣り禁止命令の直後、レーダーが低空を浮航する巨大な物体を探知する。
その物体は、オークの“輪”の西5キロで静止し、その後方にもう1隻が配置につく。
残存していた2隻が同時に時渡りする体勢だ。
船橋には自衛隊の潜水艦から入電。オークの時渡り船を潜水艦も探知したのだ。
ベルーガは、緊急体勢で抜錨。オークの“輪”の西側に向かって、全力航行を始める。
満潮時に重なり、潮の流れは杭州湾に向かっている。
船速は42ノットに達し、ベルーガは無風の東シナ海を疾走する。
そんな必要はないのだが、加賀谷真梨は機関室でディーゼルエンジンを監視している。
土井将馬は、C-1のコックピットで瞑目する。
吉良愛美と高梨由衣は、車輌デッキの後端にいた。
夏見一希と畠野綾乃は、すべてが取り払われた客室でワンコと抱き合って床に座る。ワンコは震えている。
里崎杏船長は、オークの“輪”の西側に回り込むため、自ら操舵する。
香野木は、何ができるわけではないが船橋にいた。
そして、報告ほどには“輪”が沈んでいないことに愕然とする。
彼が言葉を発する前に、里崎船長が毅然とした声を発する。
「最大船速!
この船の吃水は浅い!
絶対に“輪”を通り抜けられる」
ベルーガは、2隻のオークの時渡り船に挟まれた。先行する時渡り船が“輪”の中に入っていく。
時渡り船の最後部には、三角翼のようなものが3枚取り付けられている。120度間隔ではなく、2枚は水平で弱い下反角が付けられ、もう1枚は垂直尾翼のようだ。
空気中での機動のためだと思われる。明らかにヒトの技術だ。
一瞬だった。
船体の半分を“輪”に没入を始めたオークの時渡り船は、後端3分の1ほどの外壁が突然爆発し、切り離された。
切り離された3枚の三角翼付き後端部分は、ジェットエンジンを噴射させて、左旋回していく。
そして、オークの“輪”から逃れる。
香野木は、眼前の光景が信じられなかった。ベルーガの速度は、オークの時渡り船と大差なく、オークの時渡り船、ベルーガ、2隻目のオークの時渡り船の序列で航行していた。
吉良愛美と高梨由衣は、後方にいるオークの時渡り船が爆発する瞬間を見詰めていた。
前部3分の2が速度を失いつつ、フラフラと浮遊し、後部3分の1がジェットエンジンを噴射しながらロケットのように上昇を始める。
ベルーガがオークの“輪”に入る。
瞬間、進行の障害となる抵抗がなくなる。速度が維持され、薄い光のトンネルのような光景になる。
先行しているはずのオークの時渡り船が見えない。
吉良愛美と高梨由衣は、速度を失った2隻目の時渡り船がトンネル外に消えていく様子を呆然と見ていた。
時渡りのルートの中で速度を失うと、時空の間に落ち込み永遠に抜け出せないと聞いていたが、その様子を2人は目撃した。
ベルーガが明るい日差しの世界に出る直前、オークの“輪”の外周が炎に包まれる。
そして、“ゲート”が閉じた。
香野木たちは、200万年後に時渡りした確信がなかった。ただ、ここは杭州湾外ではない。全周が海だからだ。
それに、空が青い。透き通るような青と、白い雲。大災厄以前の空の色だ。
里崎船長は、衝撃的な説明を始める。
「時渡りに成功したのか、そうでないのか、まったくわかりません。
ですが、空の色が違います。
大災厄以前の空です。
成功したならば、現在時刻、現在位置、ともにわかりません。
事前の情報では、南半球の太平洋上とのことなので、北上します。
ヒトは北半球にいるはずですから……。
現在位置は、月距法で調べます。黄道近辺以外の天体と月との角度を計測すれば、現在位置とグリニッジ標準時がわかります。
それらは、パソコンが計算してくれます。
その後、ランドマークとなる島を探し、それを繰り返して島伝いに航海します」
井澤貞之が報告と懸念を伝える。
「無線は一切入っていない。
ハワイの悪党どもの電波も……。
もし、南半球なら、南に向かうべきでは?
大西洋に入ったほうがいいのでは?」
里崎船長が反論する。
「現在位置の特定が優先します。
それと、北半球に入れば、ヒトがいるなら無線を傍受できるでしょう。
ヒトがいるのは、ユーラシアの西側のどこかだということはわかっていますから、赤道付近まで行けば、何かがわかるかもしれません。
インド亜大陸かもしれないし、スカンジナビア半島かもしれないし、カスピ海の近くかもしれないわけで……」
井澤は、里崎船長の判断を良とした。
その夜、ベルーガの現在位置が特定された。
イースター島の南300キロ付近の洋上だ。
里崎船長は、この推定位置を確かめるため、イースター島に向かった。
ベルーガは元軍用輸送艦であり、その名残は随所にあった。船橋もそうで、商船というよりは軍艦の艦橋であった。
大人は最も豊富な陸上自衛隊の作業服を着ているが、里崎船長も同じだ。そのため、迷彩服を着た彼女は軍用艦の艦長のようだった。
誰にも焦る気持ちがあり、夜間にイースター島まではディーゼルエンジンを稼働させて進んだ。
月は満月、暗夜ではない。
6時間航行すると、月光下に島が見える。島を見たところで停船し、夜明けを待つ。
イースター島アフ・トンガリキの入り江らしい湾にベルーガを入れ投錨する。
香野木は、この島がイースター島だとは信じられなかった。
幼い子供たちは15体のモアイがないので「イースター島じゃない!」と騒いでいるが、大人たちは高木が少ないはずのこの島が熱帯雨林で覆われていることに感動と衝撃を受けていた。
島の外形から、イースター島であることはほぼ間違いないが、島自体が少し大きい。
隆起したのかもしれないが、他の可能性もある。
この島がイースター島、正式名パスクア島であることは、間違いない。しかし、200万年の歳月は島の環境を激変させたようだ。
それと、鳥以外の動物の気配がない。
10歳代の若者たちは当初、上陸しての探検を希望したが、その意気込みは急激に萎んだ。
理由はサメ。体長15メートル級の大型のサメがウヨウヨいる。ホオジロザメの一種なのだろうが、まるでメガロドンだ。
15メートル級のテンダーボートや上陸用舟艇では転覆させられてしまう。
香野木はこの光景に感動していたが、来栖はまったく興味を示さない。彼女はヒトの進化以外は、意外と淡泊。
サメの多さに辟易して、早めの移動を里崎が提案する。
場所は3500キロ北北東のガラパゴス諸島だ。推測通りにガラパゴス諸島があれば、完全に位置を掌握したことになる。
翌早朝、イースター島を抜錨。ガラパゴス諸島に向かう。ここからは、太陽光パネルで得た電力だけで進む。航海速力は18ノットに落ち、夜間は航行できなくなる。1日16時間航行するとして、ガラパゴス諸島までは7日かかる。
そして、航路上に島はない。
操船は里崎船長と長宗が担当する。2人は12時間勤務の激務で、2人のサポート体制も構築した。
しばらくして、昼間は18ノットで航行し、夜間は電池を使って3ノットで進む方法を考えつく。電力の節約から、船橋と客室の一部を除いて、電源が切られた。
電池は6時間の航行が可能で、不足する2時間はディーゼルエンジン4基のうち1基を稼働した。
4夜目にはディーゼルエンジン1基を4時間だけ経済運転で充電させると、夜間は6ノットで航海できることがわかる。以後は、この方式を使うことにした。
嵐との遭遇を心配したが、それはなかった。
幸運だった。
7日目の早朝、ガラパゴス諸島の島影を確認する。午前中にイサベラ島のウォルフ火山を目視した。島や岩礁の数が増えているようで、同島の入り江に投錨する。
船上から観察する限り、ヒトを含む哺乳類はいない。
そして、ゾウガメやイグアナも見ない。鳥は多いが、ペンギンはいない。
島の風景はガラパゴス諸島そのものだが、何かが違っている。大災厄と大消滅によって破壊された自然環境は、復活しなかった。
香野木は、推定全長12メートルの巨大な爬虫類を見下ろしている。有隣目(トカゲやヘビの仲間)ではなく、クルロタルシ類(ワニの仲間)らしい。
高速で泳ぎ、魚を補食している。四肢はヒレに進化し、推進力を得る尾の最後端は、サメの尾ヒレに似ている。
恐竜大好きの加賀谷哲平が「モササウルスだ!」と叫んだが、白亜紀の大型海棲トカゲを彷彿とする姿であることは間違いない。
香野木は、メガロドン並みの巨大サメやモササウルスに匹敵する大型海棲爬虫類に接して、「恐ろしい世界にやって来てしまった」と感じ、乾いた唇を舐めていた。
第6章完
春雨前線の停滞が続き、そのまま梅雨前線が各務原付近に居座った。
偵察は4カ月間できなかった。
最新の偵察は衝撃的な報告であった。
杭州湾の出口、東海大橋があったあたり、大陸と嵊泗列島小洋山との中間付近に巨大な輪が設置された。
輪は海底に固定され、下部4分の1ほどが海面下にある。
そして、筒の1本が消えていた。
すでに、時渡りしたものと推測された。さらに1本が試走状態にあり、もう1本も完成間近の様子だ。
予定外の積荷もあった。車輌甲板には十分な余裕があることから、自衛隊に引き渡し前の新造T-4練習機と、民間向けBK117ヘリコプターを持っていくことにした。
予定内のMD500と合わせて、固定翼機2機と回転翼機2機を運んでいく。
小型機はトレーラーで、埠頭まで運んだ。
C-1輸送機の積み込みは、名古屋では無理と判断された。
高知空港の使用を考えたが、高知臨時政権の協力は得られそうにない。
各務原政権から「高知新港第7埠頭2号岸壁に着陸できるか?」との問い合わせがあり、この600メートルほどのコンクリート路面に「着陸可能」との答えを土井将馬から得る。
短距離離着陸が可能なC-1ならば、600メートルの滑走路に着陸できる。しかし、本当に600メートルしかないのだ。幸いにも幅は140メートルほどある。
短くて狭いわけではないが……。
また、コンテナの多くは中身とともに各務原に移送してあり、その数は少ない。移動する場所もある。
オークの時渡り用筒が、すでに未来へと移動した形跡があることから、作戦の実行は急を要した。C-1の積み込みは4日後と決まった。
C-1が埠頭岸壁に着陸すると、高知臨時政権は各務原政権の高知事務所に会見を申し入れてきた。
旧高知市の政権は、今湊正一が臨時代表のまま月日を重ねていた。行政のスリム化を試みて、非政府組織に行政サービスの一部を移管したのだが、その多くが失敗していた。
ヒトの生存は、極めて厳しい状況にある。漠然とした死への不安から、現実を直視できないヒトが増えている。
不安を消したい思いから、オークやギガスを刺激したくない、という感情が生まれてくる。何もしなければ、オークやギガスは危害を加えない、と信じたいのだ。
そんな感情が、高知市に移住したヒトに蔓延しかかっていた。
各務原政権は、上海付近でオークに捕らわれているヒトの救出を考えているし、オークの時渡りを阻止できない以上、200万年後のヒトに警告を発する必要を十分に理解している。
もちろん、旧高知市のヒトにも、各務原政権の方針に賛同しているヒトが多くいる。
だが、一部は、オークやギガスと戦うくらいなら、各務原と矛を交えたほうがいいと考えている。
その延長で、上海への偵察は反対、200万年後への警告は不要、オークの虜囚となっているヒトの救出など言語道断、と主張している。
各務原では、彼らを“恭順派”と呼んでいた。
C-1が岸壁に着陸すると、下田川を越えようとする“恭順派”が現れる。臨時政権は職員を橋に派遣して“恭順派”の渡渉を阻止しようとするが、道路橋は多く、阻止できるものではない。
C-1の着陸1時間後にベルーガが接岸。ラフテレーンクレーンを降ろして、上甲板ヘリポートへの積み込みを始める。
すでに、このときには“恭順派”は埠頭に雪崩れ込んでおり、威嚇射撃で一度は後退させたものの、その後はにらみ合いとなった。
香野木恵一郎たちは時間をかけられなかった。C-1をラフテレーンクレーンで吊り上げ、ベルーガの上甲板ヘリポートに載せ、クレーンをベルーガに積むと同時に、離岸する。
この時点では、C-1を繋止できていなかった。
緊急の出港で、各種確認をする必要があることから、いったん宇佐湾に投錨、2時間後に抜錨して、杭州湾に向かった。
この世界では夜間航行ができない。灯光と電波の灯台はなく、GPSもない。海図はあるが、夜間だと陸に目標がない。小さな集落から大都市まで、一切が消えている。樹木はないし、岩や崖も消えている。
ランドマークが一切なくなってしまっている。
この日は7時間航行して鹿児島県の志布志湾に投錨する。
明払暁に抜錨し、16時間航行して、900キロ離れた杭州湾外の小島の湾に投錨する。
ここは、オークが海底に固定した“輪”の東40キロにあたる。
ベルーガの最大速力なら30分で到達できる。
海上の視程は悪い。薄茶色の塵が舞い、大気の透明度を落としている。
だが、レーダーはよく反応する。鳥の数は極端に少ないし、東アジアで飛行機を保有するのは高知と各務原の政権だけだ。
大型の物体が飛べば、間違いなく探知できる。
フィリピン・リンガエン湾の米露原潜群は、東南アジア方面を略奪しつくし、現在はハワイ・オアフ島パールハーバーにいる。
ハワイ諸島の人工物は完全に消滅しているが、天然の良港であることに変わりはない。
湾港出口は、常に自衛隊海上部の潜水艦が見張っている。
高知市臨時政権と各務原政権の関係は、悪くない。相互に協力しているし、情報の共有もある。また、危機についての認識も一致している。
今湊正一臨時代表は、政権内部に“恭順派”が浸透することを恐れていて、政権選択選挙が実施できないでいる。
今湊臨時代表は内々、虜囚となっているヒトに被害を与えず、オークの施設破壊が可能かを自衛隊海上部のごく一部に見当させている。
ベルーガは、日没直前に杭州湾外東シナ海の徐公島に到着し、投錨する。
ベルーガを監視すると同時に護衛する、自衛隊海上部の潜水艦2隻が、直近にいることを香野木たちは知らない。
その夜、各務原から無線が入る。ジュネーブからの情報だ。
それを通信担当の井澤貞之が説明する。子供も含めて、全員が船橋にいる。
「ジュネーブは、4カ月ほど前、ごく短時間、200万年後への“ゲート”が開いた痕跡があると伝えてきた。
そのときは、雑音のようなものだと思ったらしい。オークが“ゲート”を開口するパワーは弱く、探知が難しいそうだ。
その“ゲート”なんだが、ヒトが開けた“ゲート”とは時間軸が違うらしい」
百瀬未咲が手を上げて質問する。彼女は来栖早希の助手を務めているが、その存在感は日々高まっている。彼女に刺激されて、井澤加奈子と有村沙織も責任ある仕事をしている。
「井澤さん、時間軸が違う、とは?
異次元に行っちゃうとか?
同じ200万年後じゃないとか?」
「未咲ちゃんの質問だけど、正直よくわからない。確かに物理は習ったけど、私は建築士なんで……。
異次元とか、パラレルワールドとかではなく、一貫した時間軸ではない、わけ。
つまり、ヒトが開けた“ゲート”は、1年と2カ月の間、連続していた。
こちらの1カ月は、200万年後も1カ月の経過となる……。
オークが開けた“ゲート”も開口し続ければ連続した時間軸なんだけど、彼らは断接しているんだ。
だから、時間軸が一定にならない。
こちらの1カ月は、200万年後も1カ月ではない。
開いた時間の基点が変わってしまえば、200万年後であっても、ヒトが開けた“ゲート”よりも未来であったり、過去であったり、するらしい。
でも、ジュネーブの説明では、プラスマイナス5年程度の差らしい。
どちらにしても、連続した時間軸じゃないが、5年程度ならヒトが生き残っていれば出会えるだろう。
ヒトが開けた“ゲート”が閉じてから7年以上経つ。最短移住2年目か、最長13年目かの違いだ。
それと、出口側の場所も変わってしまった。オーストラリアの東端付近から南アメリカをかすめるあたりの南半球だ。
海の上である可能性が高い」
高梨由衣が手を上げる。彼女は自分でもできることを学びたいと、モールス符号を習得した。井澤貞之をよく助けている。
「井澤さん、各務原の情報も伝えないと……」
「そうだったね。
オークが時渡りに使う“筒”には、ヒトが乗せられているらしい。
理由は不明だが……。
レジスタンスへの対処と、ヒトの技術が必要なのだと思う。
実際、増速用のブースターにジェットエンジンが使われている。
写真解析でわかったことなんだが、ブースターはツマンスキーR-13ターボジェットだ。
MiG21戦闘機のエンジンだよ。各務原の推測では、中国製の渦噴13が使われているのではないか、とのことだった」
笹原大和が手を上げる。保護されたときは彼は12歳だったが、現在は16歳。金平彩華と葉村正哉にプログラミングを習い、射撃管制装置(FCS)の開発で、重要な役割を担っている。
この開発チームの特徴は、嵩張っても寿命が長いシステムの開発を目指していることだった。汎用のパソコンマザーボードや電源から、CR2032ボタン電池まで、パーツを大量にストックしている。
CPUはX86/X64系、OSはDebian系Linuxを主要している。金平彩華は、カーネルの改良を行うことさえあった。
葉村正哉は通信系に強く、ネットワークプロトコルの修正にも手を着けている。
できないことは、ハードウエアの製造くらいだ。
「井澤さん、オークの捕虜になっているヒトは、中国人なんですか?」
「いいや、違うらしい。
ロシアかカザフから連れてこられた。ウラル山脈の南端あたりに、大消滅を免れた場所があったようだ」
誰もが黙る。
香野木たちは幸運だった。大消滅を生き延びても、オークやギガスに捕らえられてしまったヒトは多いのだ。
香野木たちは比較的落ち着いていた。この徐公島に何日停泊するか不明だし、焦っても仕方がないからだ。
手空きのものは、釣り糸を降ろして魚釣りに興じている。マダイ、キダイ、マアジなどが釣れる。
長宗が捌いて開きにし、天日で干して干物にする。日照は弱いが、ここは東シナ海のど真ん中。それなりの太陽の恵みがある。
不思議だが、花山真弓と加賀谷真梨は魚が怖いらしい。そもそもこの2人が包丁を持っているところを見たことがない。
母親に定型を求めることは愚とは思うが、それにしても……。
投錨4日後の朝、冷蔵庫が魚で満杯となり、今日から釣りが禁止される。
釣り禁止命令の直後、レーダーが低空を浮航する巨大な物体を探知する。
その物体は、オークの“輪”の西5キロで静止し、その後方にもう1隻が配置につく。
残存していた2隻が同時に時渡りする体勢だ。
船橋には自衛隊の潜水艦から入電。オークの時渡り船を潜水艦も探知したのだ。
ベルーガは、緊急体勢で抜錨。オークの“輪”の西側に向かって、全力航行を始める。
満潮時に重なり、潮の流れは杭州湾に向かっている。
船速は42ノットに達し、ベルーガは無風の東シナ海を疾走する。
そんな必要はないのだが、加賀谷真梨は機関室でディーゼルエンジンを監視している。
土井将馬は、C-1のコックピットで瞑目する。
吉良愛美と高梨由衣は、車輌デッキの後端にいた。
夏見一希と畠野綾乃は、すべてが取り払われた客室でワンコと抱き合って床に座る。ワンコは震えている。
里崎杏船長は、オークの“輪”の西側に回り込むため、自ら操舵する。
香野木は、何ができるわけではないが船橋にいた。
そして、報告ほどには“輪”が沈んでいないことに愕然とする。
彼が言葉を発する前に、里崎船長が毅然とした声を発する。
「最大船速!
この船の吃水は浅い!
絶対に“輪”を通り抜けられる」
ベルーガは、2隻のオークの時渡り船に挟まれた。先行する時渡り船が“輪”の中に入っていく。
時渡り船の最後部には、三角翼のようなものが3枚取り付けられている。120度間隔ではなく、2枚は水平で弱い下反角が付けられ、もう1枚は垂直尾翼のようだ。
空気中での機動のためだと思われる。明らかにヒトの技術だ。
一瞬だった。
船体の半分を“輪”に没入を始めたオークの時渡り船は、後端3分の1ほどの外壁が突然爆発し、切り離された。
切り離された3枚の三角翼付き後端部分は、ジェットエンジンを噴射させて、左旋回していく。
そして、オークの“輪”から逃れる。
香野木は、眼前の光景が信じられなかった。ベルーガの速度は、オークの時渡り船と大差なく、オークの時渡り船、ベルーガ、2隻目のオークの時渡り船の序列で航行していた。
吉良愛美と高梨由衣は、後方にいるオークの時渡り船が爆発する瞬間を見詰めていた。
前部3分の2が速度を失いつつ、フラフラと浮遊し、後部3分の1がジェットエンジンを噴射しながらロケットのように上昇を始める。
ベルーガがオークの“輪”に入る。
瞬間、進行の障害となる抵抗がなくなる。速度が維持され、薄い光のトンネルのような光景になる。
先行しているはずのオークの時渡り船が見えない。
吉良愛美と高梨由衣は、速度を失った2隻目の時渡り船がトンネル外に消えていく様子を呆然と見ていた。
時渡りのルートの中で速度を失うと、時空の間に落ち込み永遠に抜け出せないと聞いていたが、その様子を2人は目撃した。
ベルーガが明るい日差しの世界に出る直前、オークの“輪”の外周が炎に包まれる。
そして、“ゲート”が閉じた。
香野木たちは、200万年後に時渡りした確信がなかった。ただ、ここは杭州湾外ではない。全周が海だからだ。
それに、空が青い。透き通るような青と、白い雲。大災厄以前の空の色だ。
里崎船長は、衝撃的な説明を始める。
「時渡りに成功したのか、そうでないのか、まったくわかりません。
ですが、空の色が違います。
大災厄以前の空です。
成功したならば、現在時刻、現在位置、ともにわかりません。
事前の情報では、南半球の太平洋上とのことなので、北上します。
ヒトは北半球にいるはずですから……。
現在位置は、月距法で調べます。黄道近辺以外の天体と月との角度を計測すれば、現在位置とグリニッジ標準時がわかります。
それらは、パソコンが計算してくれます。
その後、ランドマークとなる島を探し、それを繰り返して島伝いに航海します」
井澤貞之が報告と懸念を伝える。
「無線は一切入っていない。
ハワイの悪党どもの電波も……。
もし、南半球なら、南に向かうべきでは?
大西洋に入ったほうがいいのでは?」
里崎船長が反論する。
「現在位置の特定が優先します。
それと、北半球に入れば、ヒトがいるなら無線を傍受できるでしょう。
ヒトがいるのは、ユーラシアの西側のどこかだということはわかっていますから、赤道付近まで行けば、何かがわかるかもしれません。
インド亜大陸かもしれないし、スカンジナビア半島かもしれないし、カスピ海の近くかもしれないわけで……」
井澤は、里崎船長の判断を良とした。
その夜、ベルーガの現在位置が特定された。
イースター島の南300キロ付近の洋上だ。
里崎船長は、この推定位置を確かめるため、イースター島に向かった。
ベルーガは元軍用輸送艦であり、その名残は随所にあった。船橋もそうで、商船というよりは軍艦の艦橋であった。
大人は最も豊富な陸上自衛隊の作業服を着ているが、里崎船長も同じだ。そのため、迷彩服を着た彼女は軍用艦の艦長のようだった。
誰にも焦る気持ちがあり、夜間にイースター島まではディーゼルエンジンを稼働させて進んだ。
月は満月、暗夜ではない。
6時間航行すると、月光下に島が見える。島を見たところで停船し、夜明けを待つ。
イースター島アフ・トンガリキの入り江らしい湾にベルーガを入れ投錨する。
香野木は、この島がイースター島だとは信じられなかった。
幼い子供たちは15体のモアイがないので「イースター島じゃない!」と騒いでいるが、大人たちは高木が少ないはずのこの島が熱帯雨林で覆われていることに感動と衝撃を受けていた。
島の外形から、イースター島であることはほぼ間違いないが、島自体が少し大きい。
隆起したのかもしれないが、他の可能性もある。
この島がイースター島、正式名パスクア島であることは、間違いない。しかし、200万年の歳月は島の環境を激変させたようだ。
それと、鳥以外の動物の気配がない。
10歳代の若者たちは当初、上陸しての探検を希望したが、その意気込みは急激に萎んだ。
理由はサメ。体長15メートル級の大型のサメがウヨウヨいる。ホオジロザメの一種なのだろうが、まるでメガロドンだ。
15メートル級のテンダーボートや上陸用舟艇では転覆させられてしまう。
香野木はこの光景に感動していたが、来栖はまったく興味を示さない。彼女はヒトの進化以外は、意外と淡泊。
サメの多さに辟易して、早めの移動を里崎が提案する。
場所は3500キロ北北東のガラパゴス諸島だ。推測通りにガラパゴス諸島があれば、完全に位置を掌握したことになる。
翌早朝、イースター島を抜錨。ガラパゴス諸島に向かう。ここからは、太陽光パネルで得た電力だけで進む。航海速力は18ノットに落ち、夜間は航行できなくなる。1日16時間航行するとして、ガラパゴス諸島までは7日かかる。
そして、航路上に島はない。
操船は里崎船長と長宗が担当する。2人は12時間勤務の激務で、2人のサポート体制も構築した。
しばらくして、昼間は18ノットで航行し、夜間は電池を使って3ノットで進む方法を考えつく。電力の節約から、船橋と客室の一部を除いて、電源が切られた。
電池は6時間の航行が可能で、不足する2時間はディーゼルエンジン4基のうち1基を稼働した。
4夜目にはディーゼルエンジン1基を4時間だけ経済運転で充電させると、夜間は6ノットで航海できることがわかる。以後は、この方式を使うことにした。
嵐との遭遇を心配したが、それはなかった。
幸運だった。
7日目の早朝、ガラパゴス諸島の島影を確認する。午前中にイサベラ島のウォルフ火山を目視した。島や岩礁の数が増えているようで、同島の入り江に投錨する。
船上から観察する限り、ヒトを含む哺乳類はいない。
そして、ゾウガメやイグアナも見ない。鳥は多いが、ペンギンはいない。
島の風景はガラパゴス諸島そのものだが、何かが違っている。大災厄と大消滅によって破壊された自然環境は、復活しなかった。
香野木は、推定全長12メートルの巨大な爬虫類を見下ろしている。有隣目(トカゲやヘビの仲間)ではなく、クルロタルシ類(ワニの仲間)らしい。
高速で泳ぎ、魚を補食している。四肢はヒレに進化し、推進力を得る尾の最後端は、サメの尾ヒレに似ている。
恐竜大好きの加賀谷哲平が「モササウルスだ!」と叫んだが、白亜紀の大型海棲トカゲを彷彿とする姿であることは間違いない。
香野木は、メガロドン並みの巨大サメやモササウルスに匹敵する大型海棲爬虫類に接して、「恐ろしい世界にやって来てしまった」と感じ、乾いた唇を舐めていた。
第6章完
22
あなたにおすすめの小説
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
異世界で農業を -異世界編-
半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。
そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる