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第7章
07-175 約定
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香野木恵一郎はギガスとの和平交渉が大詰めとなったことから、王冠湾に戻ってきた。
王冠湾の街並みは、初めて見るものだった。
「空から見ると、まだまだ空き地があるけど、地上からだと立派だね」
「香野木さんにそう言われると腹が立つ」
「井澤さん、本当にすまない。
何もしないで……」
「で、面倒を持って帰った……」
「そうなんだ。
今夜、話せる?」
「みんなを集めておくよ」
加賀谷真梨の視線は香野木に冷たかった。だが、花山真弓の視線は熱い。焼き殺されそうなほど。里崎杏がオドオドしている。
香野木には、面倒からはとりあえず逃げる、という悪癖があるが、花山に対しては、それを遺憾なく発揮していた。
結局、会議までに花山とはまともに会話しなかった。
「ギガスは複雑なんだ……」
香野木恵一郎も複雑な表情を見せている。
「ギガスは、ギガスによれば、だが、アフリカの大地溝帯の地下にいたらしい。地下で何十万年もの間、眠っていた。
何度か目覚め、一部は地上に残った。そしてヒトを捕らえ、使役した。地上に残ったギガスは、数万年前に滅んだ。
地下で眠るギガスだけが生き残った。
そこに、オークが帰還する。
オークの地球帰還だ。
ギガスとオークは、ともにヒト以前の知的生命体の家畜だった。その知的生命体だが、ヒトの系譜のどこかにあったらしい。
その知的生命体の文明は、2000年ほど続いたようだ。元の世界を基準にすると、60万年ほど前のことだった」
来栖早希が呟く。
「たぶん、ホモ・エレクトスね。ホモ・ハイデルベルゲンシスのような脳容量の大きな亜種がいたのだと思う。未発見のヒトね。
あるいは、ホモ・ゲオルギクスのような初期の原人から分岐したヒトとは系統が違う別属だった可能性もある。
どちらにしても、面白いね」
香野木恵一郎もその知的生命体が何なのか知りたかったが、推測する手がかりさえない。
「来栖先生の推測が当たっているか、それとも外れか、どちらにしてもギガスとオークを飼い慣らした動物がいた。
それは、ヒトではない。
これは確実。
ギガスはオークの攻撃を受け、時渡りによる逃走を図る。オークの“宇宙船”を破壊したが、同時に保有しているエネルギーの大半を使い切ってしまったらしい。
だから、逃げるしかなかった。
逃げなければ、オークの餌になるから……。
そして、最初の時渡りが行われる。
この時代から40万年前に転移した。このときのギガスが、トーカとなる。
トーカは文明を発展させなかったが、同時に失いもしなかった。だが、ゆっくりと後退していく。
故郷である大地溝帯はさらに裂けて海となり、季候のいい北アフリカに移住する。
そして、800年前、北アフリカに到達した人と出会うんだ。そして、食料に窮していたヒトを救う。
意外な展開だろ。
ギガスは、40万年の歳月をかけてトーカという別の生物になったんだ。
北アフリカでヒトとトーカは共存していた。300年前、別のヒトの集団が北アフリカに到達する。南から……。
それが、オークによって遺伝子改良された初期の黒羊だ。
ヒトの遺伝子改良は、ヒトが行ったんだ。オークは技術を利用しただけ。どうも、ヒトをインテリジェント・デザインできると考えた科学者集団がこの世界にやって来ていたらしい。
オークは、彼らを利用した。
そして、食用のヒト、労働用のヒト、戦闘用のヒトを創造した。遺伝子改良されたヒトは、その後、品種改良が続けられた。
その一方で、金羊や銀羊は遺伝子改良や品種改良がされていない。普通のヒトだ。彼らは技術を獲得・維持するために誘拐されてきた。
オークはチャド湖北岸を拠点にしていたが、獲物を求めて北上する。そして北アフリカに達し、トーカは追われて西ユーラシアに渡る。
そこで、別の時系列で時渡りをしていたギガスと出会う。
野蛮で凶暴なだけのギガスは、トーカと出会ったことで影響を受け、少しずつ変質していく。
ヒトとも激しく戦ったが、ヒト食いの封じ込めでは、一切の協議はないが共同で対処してもいる」
香野木は、言葉を切る。ラダ・ムーが複雑な表情をしている。
「ヒトの敵は明確だ。
ヒトを食うオークと、ヒトと生態系が完全に重複するセロ。
ヒト食いは、生物なのか、そうでないのか、それさえはっきりしない。
逃げるしかない。
だから、ヒトは西ユーラシアからアフリカに移住しようとしている。
移住するには、少なくとも北アフリカのオークと、ギニア湾北部のセロを叩かなければならない。
ヒトの方針はおおよそ決まった。
ローヌ・ソーヌ川流域と西地中海沿岸のヒトは、北アフリカに移住する。
ロワール川流域と周辺のヒトは、アトラス山脈の西側に移住する。
セネガル川よりも北、ヌアクショット川より南は空白地帯だが、移住者がいないわけではない。
一致団結はないからね。ヒトって言う動物には。
驚いたんだが、ノイリン以外にも日本人がいたんだ。
ティッシュモックという街で、統治は第2世代に移っているが、第1世代も多くが存命なんだ。
彼らの一部、日本人の直系たち、第2・第3世代が王冠湾への移住を希望している。もちろん、第2・第3世代の全員じゃない。
クロウという男のグループだ。
200人くらい。風貌は日本人だが、この世界の影響を強く受けている。
彼らを受け入れるか、否か」
誰も発言しない。判断する材料がないからだ。
「もっと重大な問題がある。
ヒトは、トーカとギガスに北アフリカに渡るための支援をすると約束した。
これが、ヒトとギガスとの講和条件だ。ヒトとトーカは、もともと争ってはいない。
だが、ヒトは、ギガスとトーカの区別ができない。
外見からではね。よく見れば違うけど……。
ヒト、精霊族、鬼神族、トーカ、ギガスは、北アフリカに移住する。
一部を除いて……。
そのためには、チュニジアが必要なんだが、ここがオークの拠点だ。ここをどうしても落とさなければならないんだが、精霊族と鬼神族を主力に攻めても攻めても落ちない。
オークも必死なんだ。
だが、落とさなければならない。
オークは、ジブラルタルの対岸、タンジェやセウタにも拠点を置いている。ここも落ちていない。
今後、タンジェとセウタを陥落し、東西からチュニジアを攻める作戦なんだが、それだけでチュニジアが手に入るとは思えない。
古い話だが、カルタゴの拠点だったのだから……。
で、ヒトはギガスとトーカに、北アフリカへ移住する支援、具体的には船を出すと約束した。
だが、そんな余裕はないと思う。
ヒトは約定を守れない。
その約定をまとめたのは、私なんだ……」
花山真弓が呆れる。
「守れない約束をするなんて、バカじゃないの!」
香野木恵一郎は、花山からバカと言われても言い返したりしない。自分でもそう思うから。
長宗元親が香野木を見る。
「香野木さんは、協定を結ぶために苦渋の判断をしたんだ。
だけど、ベルーガでは無理だ。ベルーガには設備の整った港がないと……」
土井将馬が長宗の言葉をつなぐ。
「だけど、特種船ならできる……」
香野木が戸惑う。
「特種船?」
加賀谷真梨が説明する。
「第二次世界大戦の頃に土佐造船で建造予定だった揚陸強襲船のこと。
ヘリコプター8機と水陸両用トラック22輌を運用できるから、引っ越しには便利でしょ」
香野木は驚いていた。
「そんなものがあるの」
奥宮要介が否定する。
「まだ、ないよ。
造れるというだけで……」
土井将馬が情報を示す。
「クフラック、カナリア諸島のことだけど、彼らも飛行機を作っている。固定翼機はOV-10ブロンコとスーパーツカノのほか数機種。回転翼機は中型で水陸両用のS-62シーガードと小型のエキュレイユ。
シーガードなら航続距離が長いから、揚陸強襲船に向いているよ」
畠野史子が反対する。
「でも、8機なんて買えない。
そんな、予算、どこにもないよ」
香野木には案があった。
「予算なんだが……。
トーカとギガスが西地中海を渡る支援をする場合、各街はそのための予算は全額出すと約束した。
その見積もりを出さなければならないんだが……」
長宗が憮然とした表情で香野木を見る。
「特種船は2隻必要だ。
移住は、次の乾期の始まりからその次の乾期の終わりまで、約18カ月もかかる予定だ。
船は故障するし、整備も必要。一時期は、輸送力の倍増だって必要になる。ベルーガを投入する必要もあるかもしれない。
2隻は必要だ」
香野木が慌てる。
「自前で、船を用意するのか?
これから建造にして間に合うのか?」
長宗には自信があった。
「起工から進水まで4カ月、竣工までさらに1カ月。操船訓練に2カ月。
半年で運用できるようになる。
だが……」
加賀谷真梨が保障する。
「水陸両用トラック44輌は必ず作る。
私が責任を持つ」
現時点において、残る問題はヘリコプターだ。どう考えても、ヘリコプターを買う予算なんてない。
それに、ヒト社会は2隻の揚陸強襲船にヘリコプターの搭載が必要だとは判断しないだろう。
土井将馬が躊躇う。
「いい提案ではないんだが……。
オートジャイロなら作れると思う。
先例を知らないが、ライカミングの水平対向6気筒を搭載する4人乗り。
オートジャイロは揚力を得にくい。ローターを大型にすればいいのだけど、翼端の気流が音速を超えたら、効率が激減する。
揚力に限界があるんだ。
速度も遅い。
荷物も積めない。
だが、遠くまで飛べるし、エンジンが故障してもオートローテーションで安全に着陸できる。
飛行甲板は150メートルもあるから、特別な装置なしで発着できる。
それに、私でも設計できそうだ」
全員が笑う。
その和やかな空気を壊すように長宗が唐突な提案をする。
「飛行甲板は、150メートルなくてもいいか?」
笹原大和が怪訝な風情で問う。
「例えば?」
「100メートル強……」
オートジャイロの操縦に関しては、笹原大和が一番詳しい。それと狙撃隊に加わって以降、彼から少年の面影が消え、たくましくなった。
「十分です。
離陸には最大80メートル、着陸は60メートルあれば十分です。
でも、何で?」
「そんなこと聞くかって。
臨時政権が長さ90メートル以上の船の建造を実質禁止しただろ。
で、そのときに船台上の未成船はどうなるのかが問題になった。臨時政府はあの通りだから、そんな細かいことは何も考えていなかった。
答えが出るまで何週間もかかったから、しびれを切らした船主がキャンセルしたんだ。
発注元の責任でもないから、キャンセル料は支払われなかった。船体はほとんど完成している。その船を使えば、竣工まで1カ月以上早くなる。
それに、王冠湾で2隻同時に150メートル級を建造することは不可能だ。1隻がやっと。ならば、もう1隻は外注したほうがいい」
里崎杏が微笑む。
「いい案ね」
加賀谷真梨が「賛成」と言い、土井将馬も同意する。3人のエンジニアが同じ意見なら、反対はない。
井澤貞之が長宗に顔を向ける。
「ドックで造るの?
それとも船台?」
「今回は船台だ。
ラフクレーンに頑張ってもらおう」
「ならば、船台の準備を手伝うよ。
街作りは後回しだ」
ティッシュモックからの移住者は、自動的に受け入れが決まった。
人手不足だから……。
香野木恵一郎は、トーカとギガスの北アフリカ移住には100メートル級輸送船が延べで100隻必要だと、ヒト側に説明する。
輸送船は不足している。延べ100隻なんて、用意できない。そして、この“100隻”は香野木の試算ではなく、ヒトが共同で設立した移住委員会の黒魔族対策部会が出したもの。
だが、延べ100隻分のチャーター費用は負担すると決定している。その予算は、十分ではないが実際にある。
その費用で1隻は建造できるが、2隻は無理。搭載する水陸両用トラックも自腹になる。
その自腹を稼ぐ術がいる。
王冠湾のオートジャイロ用滑走路に2機のピッツスペシャルが強行着陸する。
4人の男女が、コックピットから出る。
4人は、サビーナ、セルゲイ、トクタル、アネリアと名乗った。リーダーはサビーナ、セルゲイは医師、トクタルとアネリアは正規パイロット。
4人の名からロシア系と推測するが……。
4人は対ギガス強硬派だ。ギガスと戦うため、200万年後にやって来た。
サビーナは、そう説明する。
「ギガスは、ヒトの敵だ。
我々は中央アジアで激しく戦った。
ギガスを殲滅するために」
サビーナたちは、大消滅後、中央アジアに進出してきたギガスと戦った。
対ギガス戦のごく初期の戦闘だ。
このギガスは、大地溝帯を発し、紅海を渡ってアラビア半島を横断、ペルシャ湾を越えて、イラン、ウズベキスタン、トルクメニスタンを通過して、カザフスタンに侵入。
ここで、サビーナの仲間と激突した。
なぜか。
彼らは、ギガスの強敵、ホモ・ネアンデルタールレンシスの末裔だからだ。3万年間にホモ・サピエンスと交配し、文化と技術を取り入れて、さらに強くなっていた。
そして、彼らはホモ・ネアンデルタールレンシスの血脈であることを誇りにしていた。
「我らは、ホモ・ネアンデルタールレンシス最後の4人だ。
我々は、ギガスとの戦いをやめない。
みなさんは、オークを追ってきたそうだが、我々とともに戦い続けないか!」
花山真弓は絶句していた。大消滅後、ギガスやオークと戦い家族を失ったヒトは多い。時代は違うが、ラダ・ムーもそうだ。
だが、花山真弓は、サビーナたちの思いが実体験に基づくものではなく、祖先の思いを表していると感じた。
それを批判することはできない。彼らはギガスと戦うために、生命がけで200万年後にやって来たのだ。
沈黙は、誰もが理解できない言語で破られた。サビーナが怪訝な顔をする。
「我々の言葉だ。
我々の本来の言葉だ。
きみたちがホモ・サピエンスと呼ぶ種族の言葉ではない。ホモ・ネアンデルタールレンシスの言葉だ」
4人が沈黙する。
「私は、純粋なホモ・ネアンデルタールレンシスだ」
セルゲイが反論する。
「そんな。
あり得ない」
来栖早希が微笑む。
「本当よ。
谷川岳の地下で何万年も眠っていたの。彼を発見して、私たちが覚醒させた。
そして、彼はここにいる」
ギガスとの講和に関して、ラダ・ムーがどう思っているのか、誰も知らない。来栖早希さえ知らない。
「戦わなくてすむならば、戦わないほうがいい。相手が誰であっても、何であっても。
振り返れば、何万年も戦ってきた。
これからオークと戦わなくてはならないし、セロという新たな敵もいる。
ならば、ギガスに戦う気がないのならば、戦いを避けるべきだ」
サビーナたちは一枚岩ではなかった。サビーナは主戦論だが、アネリアは戦いに疲れていた。セルゲイとトクタルは中立。
サビーナが主導しての強硬論だったが、アネリアは反対。セルゲイとトクタルは引きずられて。
ラダ・ムーが微笑む。
「まぁ、いい。
頭を冷やせ。いつでも戦えるが、戦いは好きなときにやめられない」
サビーナ自身、想定外の状況の変化に戸惑う。まさか“本物”のホモ・ネアンデルタールレンシスが現れるとは考えていなかった。
「たまたま、私がここにいて、よかったな。
腹を満たして、ゆっくりと眠れば、気持ちが変わるよ」
ラダ・ムーの言葉にサビーナは動揺していた。
バンジェル島は、4つの島からなるが“諸島”とは呼ばない。ヒトの歴史は古く、クマン以前の住居跡も見つかっている。ただ、ヒトのものかはわからない。
南島は、クマンの調査によればヒトの痕跡はないとされていた。
しかし、現在、次々と巨大構造物が見つかっている。マヤやアステカ、あるいはインカなどのメソアメリカ文明のように……。
ピラミッドはないが……。
奇妙な場所には奇妙な連中が集まる。
別の時系列からやって来たベルーガのヒトたち、個人や家族単位で移住を決行するヒト、リベリア半島の褐色の精霊族、西地中海沿岸にすむ小柄な精霊族、極めつけはネアンデルタール人。
西ユーラシアから西アフリカへの移住計画は、大事業だ。移住を拒むヒトがいるし、移住させたくないヒトもいる。
この移住計画は初期段階を終え、本格化の直前にあった。ノイリンの場合、北地区だけが移住率50パーセントに達している。コーカレイは70パーセント、クフラックは30パーセント。多くの街は10パーセント以下だ。
移住率は低いが、フルギア、ヴルマン、北方人は大規模な拠点を建設中だ。
移住先は当初、ヌアクショット川河口付近や、ベルデ岬が盛んに調査されたが、現在は200万年前のカサブランカ付近から西サハラ北部にかけての大西洋沿岸に集中している。
場所取りは、桜の季節の花見並みの熾烈さだ。距離にして1500キロ、広そうで広くはない。
鬼神族には亜種がいない。若干の違いがある“部族”のようなものはあるらしいが、ヒトでは見分けられない。
だが、精霊族は数種の亜種がいる。体色の違いや体格の大小程度だが、ヒトでも見分けられる。
母親のミューズと娘のララは、小柄な精霊族だが、2人と同族の集団が南島に移住することになり、特にミューズはヒトとの間に立ちたいと考えるようになっていた。
彼女自身、ドミヤート地区の有力者なのだが、あえてその立場を捨てても王冠湾地区への移住を思案している。
と、香野木恵一郎は信じていた。
だが、花山真弓の見立ては違う。
「ミューズさんって、きれいでしょ。
井澤さんがもうアタックしたのよ!」
母親の色恋は置いておいて、では、なぜ娘のララまで王冠湾への移住を考えているのかがわからない。
「ララさんは、加奈子ちゃんが好きなの」
香野木は、少し慌てた。その様子に花山が笑う。
「もしかして、長宗さんと加賀谷さんのことも知らないの?」
香野木は、キョトンとするしかない。
これ以上聞きたくない。厄介ごとはごめんだ。両手で余るほどの難題を抱えているのに。
それが、香野木の気持ちだった。
住宅の建設は、井澤貞之が策定した都市計画に基づいて進められている。
その都市計画には、2000メートル級滑走路もある。当初は後回しの予定だったが、C-1輸送機とT-4練習機のために建設が始まる。
そして、土井将馬の小さな航空機製造会社も開業した。
ドミヤート地区から王冠湾地区へとC-1とT-4を移動させることは、細心の注意を払わなければならない。
重要な機材であるから、ドミヤート地区にも思惑がある。些細な行き違いで心証を悪くしたくない。
ドミヤート地区の代表は剣聖デュランダルで、井澤貞之とは昵懇の間柄。長宗元親とも気が合う。
王冠湾を来訪したデュランダルの用件は、仕事の話だった。
場所は船台の傍ら。
「150メートル級か。
この船が進水したら、100メートル級の建造を初めてもらえないか?」
「唐突だな。
デュランダル、何があった?」
「船が足りない。
確実に。
東方フルギアは、人口がわからない。連中は多くの部族に別れているし、部族の長は自分の部族の頭数を知らない。
100以上の数は“たくさん”と表現する長までいる。
当初の予定をはるかに超える人口だったんだ。西ユーラシアは……。
アルプス北麓のギガスのことも気になるが、それ以上に東方フルギアと中央平原だ。
東方フルギアとはコミュニケーションがあるが、中央平原とはない。
アルプス南麓のギガスとトーカは、ローヌ川に沿って南下するから、中央平原は関係ないのだが……。
だが、見捨てることもできない。
ヒト食いに食われてしまえ、とは突き放せない。
で、船が足りない。
クフラックは川船以外造ったことがないし、北方人の木造船と合わせても、どう考えても船が足りない。
ドミヤートが頑張っても、やはり足りない。暫定政府はあてにできない。
この船台に載っている150メートル級が進水したら、100メートル級を起工して欲しいんだ。
金は何とかする。
1隻でも多く造ってくれ」
こういった話は、香野木には答えようがなかった。
「起工から進水まで3カ月。竣工までさらに1カ月。
資材さえ用意してくれるなら、何隻でも造る。船台を増やしてもいい」
長宗の言葉にデュランダルが微笑む。
「ありがたい。
多くの生命を助けられる」
奥宮要介は、急な来客に戸惑っていた。
しかも、現物を持ち込んできた。北島から船に積んで運んできたのだ。
彼はそれを王冠湾の簡易岸壁で見ている。
「あなたは、どんな砲でも直せると聞いた。
これを直して欲しい。
我々の命綱なんだ」
「これは……、ZSU-57-2ですね。
連装の57ミリ高射機関砲搭載……」
「砲が壊れてしまった。
どうしても修理できないんだ。
あんたなら、直せると聞いた。
この砲がないと、手長族の飛行船を追い払えない。
頼む。直してくれ。
手付けとして、金貨1キロを持ってきた。修理後、さらに1キロ払う」
西アフリカに移住すれば、必然的にセロとの接触が増える。奥宮が預かった旧ソ連製大口径機関砲は、砲の故障よりも車体の状態のほうが悪い。自走砲ではなく、牽引砲として使われていたようだ。
トーションバースプリング2本が折れており、転輪が2個外れている。エンジンは始動するが、所定の出力は出ていない。発電用動力として使われていた。
加賀谷真理は、いろいろな国のいろいろな時代の装軌式装甲兵員輸送車を修理している。
アメリカ製M113、イギリス製FV432トロージャン、FV103スパルタン、ストーマー、ロシア製BMP-1、BMP-2、ドイツ製ラングHS.30、マルダー、フランス製AMX-10Pなど。
どの車輌もトーションバースプリングが折れている。何回修理しても折れてしまう。
そのうち、他の車輌への部品供給元となる。サスペンションが外され、トランスミッションが外され、エンジンが外され、いつしか車体だけになる。
だが、もったいなくて捨てられない。
なぜなら、再び入手することは不可能だからだ。だから、不動車なのに、西ユーラシアから西アフリカまでわざわざ運んでくる。
加賀谷真理の仕事場は、テント倉庫と青空の下。そこに奥宮要介がドーザーショベルで牽引するソ連製の57ミリ連装対空自走機関砲を持ち込む。
「戦車はダメ」
「重すぎるからでしょ」
「そうよ!」
「機関砲の修理で持ち込まれたんですよ。
だけど、車体も直さないと……」
「うちのダスターよりもかわいいかも」
「57ミリですから、強力ですよ」
「エンジンは?」
「12気筒液冷ディーゼル」
「そんなエンジン、ないよ」
「オリジナルが残ってます」
「これを直したら、戦車を持ち込まれない?」
「戦車は、あったとしても軽戦車です」
「奥宮さん、用意しているのは直列4気筒と6気筒ディーゼルだけ。
車体重量は最大でも15トンまで。
それ以外は断っているの」
「これって、儲かるんですか?」
「かなりね。
水陸両用トラックよりも……。
で、その大砲2本付きはいくらで請け負ったの」
「金貨1キロが手付け、完了時に金貨1キロ」
「ね、儲かるのよ」
「じゃぁ、私も仲間に加えてください」
来栖早希はラダ・ムーとともに、ドミヤート地区にある能美真希の自宅を訪れていた。斉木五郎を交えて4人で夕食を楽しんでいるのだが、2人の間にはぎこちない空気が流れている。
来栖早希は戸惑っていた。15歳以上年上のはずの姉は、時渡りをした際の時間軸の違いから年齢差が縮小している。
それだけではない。
父親の言いなりだった姉が、主体的に行動している。来栖早希は、能美真希が姉と同一人物には思えなかった。
だからなのか、姉とよりは姉のパートナーとのほうが自然に会話できた。
「早希さんは、セロはヒトからはかなり遠い生き物だと考えているんですね」
「そうです。
斉木先生。
マカクかバブーンが一番近いでしょう」
「祖先がニホンザルやマントヒヒだとしても、たった200万年でヒトみたいになりますか?」
「通常ではあり得ません。
ですが、大消滅によって、生物種の90パーセント以上、個体数なら95パーセント以上が滅びました。
恐竜絶滅の際の大量絶滅以上です。ペルム紀末のP-T境界をもしのぐ規模だったはず。
完全に破壊された生態系の中で、生き残った生物が爆発的な進化を遂げたことは間違いないでしょう」
「人為的な影響は?」
「人為的?」
「ヒトが進化を促した……」
「遺伝子操作?」
「可能性は否定できないと思うんです。
来栖先生。
ヒトがしたのか、ヒト以外がしたのか、それはわかりませんが……」
「斉木先生。
根拠はあるのですか?」
「ないのですが、この世界の不自然さを見れば、そんな気さえしてくるのです」
斉木五郎の憶測に来栖早希は黙り込んだ。
その間隙を突くように、能美真希が誘う。
「早希ちゃん、ドミヤートの病院で働いてみない?」
「お姉ちゃん、私、臨床医じゃないの。臨床は経験がまったくないの」
ラダ・ムーが「血を見たら、怯えて逃げ出すんだ」と笑う。
能生真希が微笑む。
「へぇ~、そうなんだ」
姉は妹のことをよく知らない。年齢が離れていたことが原因だ。一緒に住んでいたのは、早希が4歳くらいまでだった。
何度か会ってはいるが、よく知っているか、と問われても首肯はできない。
「王冠湾で、大砲の修理でも手伝っているから……」
「大砲?」
「一応、元自衛官なので……」
「自衛官?」
「元陸上自衛隊3佐」
200万年前、疎遠であった姉妹は、200万年後、少しずつ互いを知り始めていた。
別れ際、姉が「また会いましょう」と言うと、妹は「家は近くだから」と答えた。2人は再会を約した。
王冠湾の街並みは、初めて見るものだった。
「空から見ると、まだまだ空き地があるけど、地上からだと立派だね」
「香野木さんにそう言われると腹が立つ」
「井澤さん、本当にすまない。
何もしないで……」
「で、面倒を持って帰った……」
「そうなんだ。
今夜、話せる?」
「みんなを集めておくよ」
加賀谷真梨の視線は香野木に冷たかった。だが、花山真弓の視線は熱い。焼き殺されそうなほど。里崎杏がオドオドしている。
香野木には、面倒からはとりあえず逃げる、という悪癖があるが、花山に対しては、それを遺憾なく発揮していた。
結局、会議までに花山とはまともに会話しなかった。
「ギガスは複雑なんだ……」
香野木恵一郎も複雑な表情を見せている。
「ギガスは、ギガスによれば、だが、アフリカの大地溝帯の地下にいたらしい。地下で何十万年もの間、眠っていた。
何度か目覚め、一部は地上に残った。そしてヒトを捕らえ、使役した。地上に残ったギガスは、数万年前に滅んだ。
地下で眠るギガスだけが生き残った。
そこに、オークが帰還する。
オークの地球帰還だ。
ギガスとオークは、ともにヒト以前の知的生命体の家畜だった。その知的生命体だが、ヒトの系譜のどこかにあったらしい。
その知的生命体の文明は、2000年ほど続いたようだ。元の世界を基準にすると、60万年ほど前のことだった」
来栖早希が呟く。
「たぶん、ホモ・エレクトスね。ホモ・ハイデルベルゲンシスのような脳容量の大きな亜種がいたのだと思う。未発見のヒトね。
あるいは、ホモ・ゲオルギクスのような初期の原人から分岐したヒトとは系統が違う別属だった可能性もある。
どちらにしても、面白いね」
香野木恵一郎もその知的生命体が何なのか知りたかったが、推測する手がかりさえない。
「来栖先生の推測が当たっているか、それとも外れか、どちらにしてもギガスとオークを飼い慣らした動物がいた。
それは、ヒトではない。
これは確実。
ギガスはオークの攻撃を受け、時渡りによる逃走を図る。オークの“宇宙船”を破壊したが、同時に保有しているエネルギーの大半を使い切ってしまったらしい。
だから、逃げるしかなかった。
逃げなければ、オークの餌になるから……。
そして、最初の時渡りが行われる。
この時代から40万年前に転移した。このときのギガスが、トーカとなる。
トーカは文明を発展させなかったが、同時に失いもしなかった。だが、ゆっくりと後退していく。
故郷である大地溝帯はさらに裂けて海となり、季候のいい北アフリカに移住する。
そして、800年前、北アフリカに到達した人と出会うんだ。そして、食料に窮していたヒトを救う。
意外な展開だろ。
ギガスは、40万年の歳月をかけてトーカという別の生物になったんだ。
北アフリカでヒトとトーカは共存していた。300年前、別のヒトの集団が北アフリカに到達する。南から……。
それが、オークによって遺伝子改良された初期の黒羊だ。
ヒトの遺伝子改良は、ヒトが行ったんだ。オークは技術を利用しただけ。どうも、ヒトをインテリジェント・デザインできると考えた科学者集団がこの世界にやって来ていたらしい。
オークは、彼らを利用した。
そして、食用のヒト、労働用のヒト、戦闘用のヒトを創造した。遺伝子改良されたヒトは、その後、品種改良が続けられた。
その一方で、金羊や銀羊は遺伝子改良や品種改良がされていない。普通のヒトだ。彼らは技術を獲得・維持するために誘拐されてきた。
オークはチャド湖北岸を拠点にしていたが、獲物を求めて北上する。そして北アフリカに達し、トーカは追われて西ユーラシアに渡る。
そこで、別の時系列で時渡りをしていたギガスと出会う。
野蛮で凶暴なだけのギガスは、トーカと出会ったことで影響を受け、少しずつ変質していく。
ヒトとも激しく戦ったが、ヒト食いの封じ込めでは、一切の協議はないが共同で対処してもいる」
香野木は、言葉を切る。ラダ・ムーが複雑な表情をしている。
「ヒトの敵は明確だ。
ヒトを食うオークと、ヒトと生態系が完全に重複するセロ。
ヒト食いは、生物なのか、そうでないのか、それさえはっきりしない。
逃げるしかない。
だから、ヒトは西ユーラシアからアフリカに移住しようとしている。
移住するには、少なくとも北アフリカのオークと、ギニア湾北部のセロを叩かなければならない。
ヒトの方針はおおよそ決まった。
ローヌ・ソーヌ川流域と西地中海沿岸のヒトは、北アフリカに移住する。
ロワール川流域と周辺のヒトは、アトラス山脈の西側に移住する。
セネガル川よりも北、ヌアクショット川より南は空白地帯だが、移住者がいないわけではない。
一致団結はないからね。ヒトって言う動物には。
驚いたんだが、ノイリン以外にも日本人がいたんだ。
ティッシュモックという街で、統治は第2世代に移っているが、第1世代も多くが存命なんだ。
彼らの一部、日本人の直系たち、第2・第3世代が王冠湾への移住を希望している。もちろん、第2・第3世代の全員じゃない。
クロウという男のグループだ。
200人くらい。風貌は日本人だが、この世界の影響を強く受けている。
彼らを受け入れるか、否か」
誰も発言しない。判断する材料がないからだ。
「もっと重大な問題がある。
ヒトは、トーカとギガスに北アフリカに渡るための支援をすると約束した。
これが、ヒトとギガスとの講和条件だ。ヒトとトーカは、もともと争ってはいない。
だが、ヒトは、ギガスとトーカの区別ができない。
外見からではね。よく見れば違うけど……。
ヒト、精霊族、鬼神族、トーカ、ギガスは、北アフリカに移住する。
一部を除いて……。
そのためには、チュニジアが必要なんだが、ここがオークの拠点だ。ここをどうしても落とさなければならないんだが、精霊族と鬼神族を主力に攻めても攻めても落ちない。
オークも必死なんだ。
だが、落とさなければならない。
オークは、ジブラルタルの対岸、タンジェやセウタにも拠点を置いている。ここも落ちていない。
今後、タンジェとセウタを陥落し、東西からチュニジアを攻める作戦なんだが、それだけでチュニジアが手に入るとは思えない。
古い話だが、カルタゴの拠点だったのだから……。
で、ヒトはギガスとトーカに、北アフリカへ移住する支援、具体的には船を出すと約束した。
だが、そんな余裕はないと思う。
ヒトは約定を守れない。
その約定をまとめたのは、私なんだ……」
花山真弓が呆れる。
「守れない約束をするなんて、バカじゃないの!」
香野木恵一郎は、花山からバカと言われても言い返したりしない。自分でもそう思うから。
長宗元親が香野木を見る。
「香野木さんは、協定を結ぶために苦渋の判断をしたんだ。
だけど、ベルーガでは無理だ。ベルーガには設備の整った港がないと……」
土井将馬が長宗の言葉をつなぐ。
「だけど、特種船ならできる……」
香野木が戸惑う。
「特種船?」
加賀谷真梨が説明する。
「第二次世界大戦の頃に土佐造船で建造予定だった揚陸強襲船のこと。
ヘリコプター8機と水陸両用トラック22輌を運用できるから、引っ越しには便利でしょ」
香野木は驚いていた。
「そんなものがあるの」
奥宮要介が否定する。
「まだ、ないよ。
造れるというだけで……」
土井将馬が情報を示す。
「クフラック、カナリア諸島のことだけど、彼らも飛行機を作っている。固定翼機はOV-10ブロンコとスーパーツカノのほか数機種。回転翼機は中型で水陸両用のS-62シーガードと小型のエキュレイユ。
シーガードなら航続距離が長いから、揚陸強襲船に向いているよ」
畠野史子が反対する。
「でも、8機なんて買えない。
そんな、予算、どこにもないよ」
香野木には案があった。
「予算なんだが……。
トーカとギガスが西地中海を渡る支援をする場合、各街はそのための予算は全額出すと約束した。
その見積もりを出さなければならないんだが……」
長宗が憮然とした表情で香野木を見る。
「特種船は2隻必要だ。
移住は、次の乾期の始まりからその次の乾期の終わりまで、約18カ月もかかる予定だ。
船は故障するし、整備も必要。一時期は、輸送力の倍増だって必要になる。ベルーガを投入する必要もあるかもしれない。
2隻は必要だ」
香野木が慌てる。
「自前で、船を用意するのか?
これから建造にして間に合うのか?」
長宗には自信があった。
「起工から進水まで4カ月、竣工までさらに1カ月。操船訓練に2カ月。
半年で運用できるようになる。
だが……」
加賀谷真梨が保障する。
「水陸両用トラック44輌は必ず作る。
私が責任を持つ」
現時点において、残る問題はヘリコプターだ。どう考えても、ヘリコプターを買う予算なんてない。
それに、ヒト社会は2隻の揚陸強襲船にヘリコプターの搭載が必要だとは判断しないだろう。
土井将馬が躊躇う。
「いい提案ではないんだが……。
オートジャイロなら作れると思う。
先例を知らないが、ライカミングの水平対向6気筒を搭載する4人乗り。
オートジャイロは揚力を得にくい。ローターを大型にすればいいのだけど、翼端の気流が音速を超えたら、効率が激減する。
揚力に限界があるんだ。
速度も遅い。
荷物も積めない。
だが、遠くまで飛べるし、エンジンが故障してもオートローテーションで安全に着陸できる。
飛行甲板は150メートルもあるから、特別な装置なしで発着できる。
それに、私でも設計できそうだ」
全員が笑う。
その和やかな空気を壊すように長宗が唐突な提案をする。
「飛行甲板は、150メートルなくてもいいか?」
笹原大和が怪訝な風情で問う。
「例えば?」
「100メートル強……」
オートジャイロの操縦に関しては、笹原大和が一番詳しい。それと狙撃隊に加わって以降、彼から少年の面影が消え、たくましくなった。
「十分です。
離陸には最大80メートル、着陸は60メートルあれば十分です。
でも、何で?」
「そんなこと聞くかって。
臨時政権が長さ90メートル以上の船の建造を実質禁止しただろ。
で、そのときに船台上の未成船はどうなるのかが問題になった。臨時政府はあの通りだから、そんな細かいことは何も考えていなかった。
答えが出るまで何週間もかかったから、しびれを切らした船主がキャンセルしたんだ。
発注元の責任でもないから、キャンセル料は支払われなかった。船体はほとんど完成している。その船を使えば、竣工まで1カ月以上早くなる。
それに、王冠湾で2隻同時に150メートル級を建造することは不可能だ。1隻がやっと。ならば、もう1隻は外注したほうがいい」
里崎杏が微笑む。
「いい案ね」
加賀谷真梨が「賛成」と言い、土井将馬も同意する。3人のエンジニアが同じ意見なら、反対はない。
井澤貞之が長宗に顔を向ける。
「ドックで造るの?
それとも船台?」
「今回は船台だ。
ラフクレーンに頑張ってもらおう」
「ならば、船台の準備を手伝うよ。
街作りは後回しだ」
ティッシュモックからの移住者は、自動的に受け入れが決まった。
人手不足だから……。
香野木恵一郎は、トーカとギガスの北アフリカ移住には100メートル級輸送船が延べで100隻必要だと、ヒト側に説明する。
輸送船は不足している。延べ100隻なんて、用意できない。そして、この“100隻”は香野木の試算ではなく、ヒトが共同で設立した移住委員会の黒魔族対策部会が出したもの。
だが、延べ100隻分のチャーター費用は負担すると決定している。その予算は、十分ではないが実際にある。
その費用で1隻は建造できるが、2隻は無理。搭載する水陸両用トラックも自腹になる。
その自腹を稼ぐ術がいる。
王冠湾のオートジャイロ用滑走路に2機のピッツスペシャルが強行着陸する。
4人の男女が、コックピットから出る。
4人は、サビーナ、セルゲイ、トクタル、アネリアと名乗った。リーダーはサビーナ、セルゲイは医師、トクタルとアネリアは正規パイロット。
4人の名からロシア系と推測するが……。
4人は対ギガス強硬派だ。ギガスと戦うため、200万年後にやって来た。
サビーナは、そう説明する。
「ギガスは、ヒトの敵だ。
我々は中央アジアで激しく戦った。
ギガスを殲滅するために」
サビーナたちは、大消滅後、中央アジアに進出してきたギガスと戦った。
対ギガス戦のごく初期の戦闘だ。
このギガスは、大地溝帯を発し、紅海を渡ってアラビア半島を横断、ペルシャ湾を越えて、イラン、ウズベキスタン、トルクメニスタンを通過して、カザフスタンに侵入。
ここで、サビーナの仲間と激突した。
なぜか。
彼らは、ギガスの強敵、ホモ・ネアンデルタールレンシスの末裔だからだ。3万年間にホモ・サピエンスと交配し、文化と技術を取り入れて、さらに強くなっていた。
そして、彼らはホモ・ネアンデルタールレンシスの血脈であることを誇りにしていた。
「我らは、ホモ・ネアンデルタールレンシス最後の4人だ。
我々は、ギガスとの戦いをやめない。
みなさんは、オークを追ってきたそうだが、我々とともに戦い続けないか!」
花山真弓は絶句していた。大消滅後、ギガスやオークと戦い家族を失ったヒトは多い。時代は違うが、ラダ・ムーもそうだ。
だが、花山真弓は、サビーナたちの思いが実体験に基づくものではなく、祖先の思いを表していると感じた。
それを批判することはできない。彼らはギガスと戦うために、生命がけで200万年後にやって来たのだ。
沈黙は、誰もが理解できない言語で破られた。サビーナが怪訝な顔をする。
「我々の言葉だ。
我々の本来の言葉だ。
きみたちがホモ・サピエンスと呼ぶ種族の言葉ではない。ホモ・ネアンデルタールレンシスの言葉だ」
4人が沈黙する。
「私は、純粋なホモ・ネアンデルタールレンシスだ」
セルゲイが反論する。
「そんな。
あり得ない」
来栖早希が微笑む。
「本当よ。
谷川岳の地下で何万年も眠っていたの。彼を発見して、私たちが覚醒させた。
そして、彼はここにいる」
ギガスとの講和に関して、ラダ・ムーがどう思っているのか、誰も知らない。来栖早希さえ知らない。
「戦わなくてすむならば、戦わないほうがいい。相手が誰であっても、何であっても。
振り返れば、何万年も戦ってきた。
これからオークと戦わなくてはならないし、セロという新たな敵もいる。
ならば、ギガスに戦う気がないのならば、戦いを避けるべきだ」
サビーナたちは一枚岩ではなかった。サビーナは主戦論だが、アネリアは戦いに疲れていた。セルゲイとトクタルは中立。
サビーナが主導しての強硬論だったが、アネリアは反対。セルゲイとトクタルは引きずられて。
ラダ・ムーが微笑む。
「まぁ、いい。
頭を冷やせ。いつでも戦えるが、戦いは好きなときにやめられない」
サビーナ自身、想定外の状況の変化に戸惑う。まさか“本物”のホモ・ネアンデルタールレンシスが現れるとは考えていなかった。
「たまたま、私がここにいて、よかったな。
腹を満たして、ゆっくりと眠れば、気持ちが変わるよ」
ラダ・ムーの言葉にサビーナは動揺していた。
バンジェル島は、4つの島からなるが“諸島”とは呼ばない。ヒトの歴史は古く、クマン以前の住居跡も見つかっている。ただ、ヒトのものかはわからない。
南島は、クマンの調査によればヒトの痕跡はないとされていた。
しかし、現在、次々と巨大構造物が見つかっている。マヤやアステカ、あるいはインカなどのメソアメリカ文明のように……。
ピラミッドはないが……。
奇妙な場所には奇妙な連中が集まる。
別の時系列からやって来たベルーガのヒトたち、個人や家族単位で移住を決行するヒト、リベリア半島の褐色の精霊族、西地中海沿岸にすむ小柄な精霊族、極めつけはネアンデルタール人。
西ユーラシアから西アフリカへの移住計画は、大事業だ。移住を拒むヒトがいるし、移住させたくないヒトもいる。
この移住計画は初期段階を終え、本格化の直前にあった。ノイリンの場合、北地区だけが移住率50パーセントに達している。コーカレイは70パーセント、クフラックは30パーセント。多くの街は10パーセント以下だ。
移住率は低いが、フルギア、ヴルマン、北方人は大規模な拠点を建設中だ。
移住先は当初、ヌアクショット川河口付近や、ベルデ岬が盛んに調査されたが、現在は200万年前のカサブランカ付近から西サハラ北部にかけての大西洋沿岸に集中している。
場所取りは、桜の季節の花見並みの熾烈さだ。距離にして1500キロ、広そうで広くはない。
鬼神族には亜種がいない。若干の違いがある“部族”のようなものはあるらしいが、ヒトでは見分けられない。
だが、精霊族は数種の亜種がいる。体色の違いや体格の大小程度だが、ヒトでも見分けられる。
母親のミューズと娘のララは、小柄な精霊族だが、2人と同族の集団が南島に移住することになり、特にミューズはヒトとの間に立ちたいと考えるようになっていた。
彼女自身、ドミヤート地区の有力者なのだが、あえてその立場を捨てても王冠湾地区への移住を思案している。
と、香野木恵一郎は信じていた。
だが、花山真弓の見立ては違う。
「ミューズさんって、きれいでしょ。
井澤さんがもうアタックしたのよ!」
母親の色恋は置いておいて、では、なぜ娘のララまで王冠湾への移住を考えているのかがわからない。
「ララさんは、加奈子ちゃんが好きなの」
香野木は、少し慌てた。その様子に花山が笑う。
「もしかして、長宗さんと加賀谷さんのことも知らないの?」
香野木は、キョトンとするしかない。
これ以上聞きたくない。厄介ごとはごめんだ。両手で余るほどの難題を抱えているのに。
それが、香野木の気持ちだった。
住宅の建設は、井澤貞之が策定した都市計画に基づいて進められている。
その都市計画には、2000メートル級滑走路もある。当初は後回しの予定だったが、C-1輸送機とT-4練習機のために建設が始まる。
そして、土井将馬の小さな航空機製造会社も開業した。
ドミヤート地区から王冠湾地区へとC-1とT-4を移動させることは、細心の注意を払わなければならない。
重要な機材であるから、ドミヤート地区にも思惑がある。些細な行き違いで心証を悪くしたくない。
ドミヤート地区の代表は剣聖デュランダルで、井澤貞之とは昵懇の間柄。長宗元親とも気が合う。
王冠湾を来訪したデュランダルの用件は、仕事の話だった。
場所は船台の傍ら。
「150メートル級か。
この船が進水したら、100メートル級の建造を初めてもらえないか?」
「唐突だな。
デュランダル、何があった?」
「船が足りない。
確実に。
東方フルギアは、人口がわからない。連中は多くの部族に別れているし、部族の長は自分の部族の頭数を知らない。
100以上の数は“たくさん”と表現する長までいる。
当初の予定をはるかに超える人口だったんだ。西ユーラシアは……。
アルプス北麓のギガスのことも気になるが、それ以上に東方フルギアと中央平原だ。
東方フルギアとはコミュニケーションがあるが、中央平原とはない。
アルプス南麓のギガスとトーカは、ローヌ川に沿って南下するから、中央平原は関係ないのだが……。
だが、見捨てることもできない。
ヒト食いに食われてしまえ、とは突き放せない。
で、船が足りない。
クフラックは川船以外造ったことがないし、北方人の木造船と合わせても、どう考えても船が足りない。
ドミヤートが頑張っても、やはり足りない。暫定政府はあてにできない。
この船台に載っている150メートル級が進水したら、100メートル級を起工して欲しいんだ。
金は何とかする。
1隻でも多く造ってくれ」
こういった話は、香野木には答えようがなかった。
「起工から進水まで3カ月。竣工までさらに1カ月。
資材さえ用意してくれるなら、何隻でも造る。船台を増やしてもいい」
長宗の言葉にデュランダルが微笑む。
「ありがたい。
多くの生命を助けられる」
奥宮要介は、急な来客に戸惑っていた。
しかも、現物を持ち込んできた。北島から船に積んで運んできたのだ。
彼はそれを王冠湾の簡易岸壁で見ている。
「あなたは、どんな砲でも直せると聞いた。
これを直して欲しい。
我々の命綱なんだ」
「これは……、ZSU-57-2ですね。
連装の57ミリ高射機関砲搭載……」
「砲が壊れてしまった。
どうしても修理できないんだ。
あんたなら、直せると聞いた。
この砲がないと、手長族の飛行船を追い払えない。
頼む。直してくれ。
手付けとして、金貨1キロを持ってきた。修理後、さらに1キロ払う」
西アフリカに移住すれば、必然的にセロとの接触が増える。奥宮が預かった旧ソ連製大口径機関砲は、砲の故障よりも車体の状態のほうが悪い。自走砲ではなく、牽引砲として使われていたようだ。
トーションバースプリング2本が折れており、転輪が2個外れている。エンジンは始動するが、所定の出力は出ていない。発電用動力として使われていた。
加賀谷真理は、いろいろな国のいろいろな時代の装軌式装甲兵員輸送車を修理している。
アメリカ製M113、イギリス製FV432トロージャン、FV103スパルタン、ストーマー、ロシア製BMP-1、BMP-2、ドイツ製ラングHS.30、マルダー、フランス製AMX-10Pなど。
どの車輌もトーションバースプリングが折れている。何回修理しても折れてしまう。
そのうち、他の車輌への部品供給元となる。サスペンションが外され、トランスミッションが外され、エンジンが外され、いつしか車体だけになる。
だが、もったいなくて捨てられない。
なぜなら、再び入手することは不可能だからだ。だから、不動車なのに、西ユーラシアから西アフリカまでわざわざ運んでくる。
加賀谷真理の仕事場は、テント倉庫と青空の下。そこに奥宮要介がドーザーショベルで牽引するソ連製の57ミリ連装対空自走機関砲を持ち込む。
「戦車はダメ」
「重すぎるからでしょ」
「そうよ!」
「機関砲の修理で持ち込まれたんですよ。
だけど、車体も直さないと……」
「うちのダスターよりもかわいいかも」
「57ミリですから、強力ですよ」
「エンジンは?」
「12気筒液冷ディーゼル」
「そんなエンジン、ないよ」
「オリジナルが残ってます」
「これを直したら、戦車を持ち込まれない?」
「戦車は、あったとしても軽戦車です」
「奥宮さん、用意しているのは直列4気筒と6気筒ディーゼルだけ。
車体重量は最大でも15トンまで。
それ以外は断っているの」
「これって、儲かるんですか?」
「かなりね。
水陸両用トラックよりも……。
で、その大砲2本付きはいくらで請け負ったの」
「金貨1キロが手付け、完了時に金貨1キロ」
「ね、儲かるのよ」
「じゃぁ、私も仲間に加えてください」
来栖早希はラダ・ムーとともに、ドミヤート地区にある能美真希の自宅を訪れていた。斉木五郎を交えて4人で夕食を楽しんでいるのだが、2人の間にはぎこちない空気が流れている。
来栖早希は戸惑っていた。15歳以上年上のはずの姉は、時渡りをした際の時間軸の違いから年齢差が縮小している。
それだけではない。
父親の言いなりだった姉が、主体的に行動している。来栖早希は、能美真希が姉と同一人物には思えなかった。
だからなのか、姉とよりは姉のパートナーとのほうが自然に会話できた。
「早希さんは、セロはヒトからはかなり遠い生き物だと考えているんですね」
「そうです。
斉木先生。
マカクかバブーンが一番近いでしょう」
「祖先がニホンザルやマントヒヒだとしても、たった200万年でヒトみたいになりますか?」
「通常ではあり得ません。
ですが、大消滅によって、生物種の90パーセント以上、個体数なら95パーセント以上が滅びました。
恐竜絶滅の際の大量絶滅以上です。ペルム紀末のP-T境界をもしのぐ規模だったはず。
完全に破壊された生態系の中で、生き残った生物が爆発的な進化を遂げたことは間違いないでしょう」
「人為的な影響は?」
「人為的?」
「ヒトが進化を促した……」
「遺伝子操作?」
「可能性は否定できないと思うんです。
来栖先生。
ヒトがしたのか、ヒト以外がしたのか、それはわかりませんが……」
「斉木先生。
根拠はあるのですか?」
「ないのですが、この世界の不自然さを見れば、そんな気さえしてくるのです」
斉木五郎の憶測に来栖早希は黙り込んだ。
その間隙を突くように、能美真希が誘う。
「早希ちゃん、ドミヤートの病院で働いてみない?」
「お姉ちゃん、私、臨床医じゃないの。臨床は経験がまったくないの」
ラダ・ムーが「血を見たら、怯えて逃げ出すんだ」と笑う。
能生真希が微笑む。
「へぇ~、そうなんだ」
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