悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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黒い翼の天使。

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ボルトは、昨夜の事を思い出す。

「父様。明日、城へ行って下さい。」
セルビィは父親が、屋敷に帰り着くなり飛び付いた。
セラムは、喜んで受け止めた。
「どうした? 天使よ。」
「今日、阿呆様達が考えた捕り物があったのです。」
きらきら した目で、父親を見る。
「ほう、殿下達が。」
「緻密な計画です、感動しました。素晴らしかったです。」
「あの、殿下達が? 」
セラムは、唸った。
「はい。珍しく、良い事を 成されました。」
「殿下達が、か? 」
セラムは、信じられなかった。だが、天使の言う事に嘘偽りは無い。
「そうか。」
「はい。良い事をした者は、褒めてあげなければ 成りません。」
「うん、確かに。」
セラムは、頷く。
「明日、褒めに行って 上げて下さい。」
セルビィは にっこり と、笑う。
「でも、学園には入れないので 三馬鹿様に伝えて下さい。」
「三馬鹿? 三公、親にか。」
「はい。きっと 三馬鹿様も、阿呆様の良き行いを 喜んでくれるでしょう。」
「分かった。どんな事が、あったのだ。」
セラムは、頷いた。
「はい、父様。」
二人は、ソファに座り。セルビィは、今日 有った事を話し出す。


「で、何が あった? 」
「ネルソン商会に、先走った阿呆様達が暴れて 騎士が憲兵に捕まった。」
ボルトは、セルビィの話を聞きながら 真相をナルトに確かめる。
「何が、良い事なんだ? 」
ボルトは、頭を捻る。
「セルビィに、取って良い事だよ。」
冷ややかな声で、ナルトは言った。
「ネルソン商会に、憲兵のフレックス侯爵。欲しかったんだと。」
冷めた笑顔を、ボルトに向ける。
「そうか、欲しかったのか。哀れだな、侯爵。」
「哀れだ、侯爵。」
二人は しみじみ と、思い頷いた。

「フレックス侯爵には、良くして貰いました。父様。」
嬉々とした、セルビィの声が部屋中に響き渡る。
「フレックス侯爵か。」
「はい。ビルケン・フレックス侯爵です。」
念入りに、父に覚え込ませる。
「フレックス侯爵か。」
「はい。セルビィが、有難う と言っていたと 伝えて下さい。父様。」
「よし、今すぐにでも。」
走り出そうとするセラムに、
「明日で、いいです。父様。」
セルビィは、優しく微笑んだ。

父に話は終えたと、セルビィはボルトとナルトの処へやって来た。
「ボルト様、話は聴きました。」
「ああ、ナルトの話とかなり違うが? 」
セルビィは、ボルトに優しく微笑んで。父親を、見る。
「父様には、あれで いいのです。」
ボルトとナルトは顔を キョトン と、した。
「父様は、大根です。」
「ああ、そうだな。」
「はぁ、大根? 」
ボルトには通じたが、ナルトには通じなかった。
「芝居だ。」
「おお、」
ナルトは、納得した。
「なので。」
セルビィは微笑んで、親指を立ててボルトの前に出した。
「後は、任せました。」
「「丸投げか!! 」」
二人は、一斉に声を上げた。
セルビィは にっこり と、微笑んだ。


「と、言う事が 昨日有りまして。」
ボルトは しみじみ と、思い出す。少し、顔が青ざめている。
「丸投げする処は、父親 そっくりで。」
侯爵は、目頭に手をあてて。
「其方、苦労しているのだな。」
「分かって、貰えますか。」
二人は ガッシリ と、握手を交わした。

「フレックス侯爵。我が息子セルビィは、天使の様に、」
起き上がろうとするセラムを、ボルトは踏み付けた。
「お前が、もう少し。親馬鹿で、無かったら。」
グリグリ と、足を背中にめり込ます。
侯爵は、唖然と二人を見る。だが、セラムは諦めない。
「我が天使は、天才な上に 転生者 」
ドカッ と、ボルトはセラムを蹴り上げ転がした。
セラムは コロコロと、床に転がる。
「く、苦労 しているのだな。」
ボルトは、侯爵に振り向く。
何とも言えない、優しい笑顔を見せる。
「貴方も、此から苦労する でしょう。」
其れは、予言の様で。
「えっ!? 」
何となく解っていた事を、今 肯定された様で 背筋に冷たい物が伝う。

「悪魔は、決して 逃がしませんよ。」
ボルトは、哀れみの瞳で侯爵を見る。

『逃がしませんよ。』その言葉は、『逃げられない。』の意味を示し。

侯爵は、セラムを転がし 去って行くボルト達を見詰める。

『一つ、貸しですよ。』
脳裏に、あの化け物の笑顔が 言葉が浮かぶ。

「俺、目を付けられたか。」

震える足を踏ん張り、フレックス侯爵はその場に立ち尽くす。
「あの化け物は、この国をどうする積もりなのか。」
侯爵は、考える。
「既に、殿下達は操られている。」
昨日の事は、自分が画策した事に成っている。きっと、あの化け物が 誘導したに違いない。
「殿下を傀儡として、この国を操る積もりか。」
あの化け物なら、出来そうだ。侯爵は、思う。
「姉のセルビア様を立てて、この国を乗っ取る積もりなのか。」
王妃と成ったセルビアは、この国で絶対的力を持つようになる。あの化け物が、姉を ただの飾りにする筈は無い。
侯爵は、笑った。
「どちらにせよ、この国には 良い事の様に思えるな。」

だが、足は動かず。
フレックス侯爵は、暫くはその場に金縛りにあった様に 立ち尽くしていた。



「こんな国は、いりません。無能な民と、狂信者など。」
セルビィは、夏の涼風に漆黒の髪を靡かせ振り向く。
「なんか、言ったか? 」
ナルトは、聞き返す。
「欲しいものは、姉様達の自由と有能な人材。」
「セルビィ? 」
セルビィは、ナルトに微笑んだ。
「いい、涼風ですね。」
爽やかな、涼風の様な微笑み。セルビィの髪飾りが きらり と、輝く。

ゆっくり と、確実に黒い翼が広がり この国を包み込んで行く。総てを包み込んだ時、この国は・・・
セルビィは、微笑む。

この天使は、黒い翼を持っている。
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