悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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三馬鹿。

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次の日、ビルケン・フレックス侯爵は城に呼び出されていた。
軍事総長の実務室に、三人の公爵を前にして立っている。
「昨日の事だが? 」
軍事総長が、侯爵に話し掛ける。
「ああ、騎士風のチンピラの事か。」
「チンピラでは、有りません。彼等は、名門の血筋の子息達です。」
「彼等の親が、神の助けを求めて来ました。」
侯爵の言葉に、宰相と聖教長が否定する。
「いや、いや。そんな大層な、者では有りません。」
侯爵は、戯けながら言った。
「名門の貴族が、騎士が、弱き民に暴力を振るう訳が無い。チンピラです。」
「今すぐ、釈放して貰おう。」
「承知しかねます。ネルソン商会から、被害届が出ております。」
侯爵は、後ろで腕を組んで言った。
「こちらは、貴族です。」
「民は、我らに従うものです。」
「其れでは、法の秩序が護れません。困るのは、王政ですが? 」
秩序が乱れると、言われれば。宰相と聖教長は、押し黙った。
「何とかならないか? 」
「では、被害料を払うと言う事で、被害届を取り下げさせましょう。」
侯爵は、直立不動で言う。
「釈放に関しては、罰金は貴族料金として 四倍は貰いましょうか。」
侯爵は しれっと、言った。
「なっ!! 」
「少し、図に乗って無いか。フレックス侯爵。」
軍事総長は、冷ややかに言う。侯爵も、負けずに冷ややかに、
「そう言えば、貴族風の餓鬼が四人 居りましたな。」
「口が、過ぎるぞ!! フレックス!! 」
軍事総長は、声を荒げた。
「侯爵の分際で、我らに逆らうのですか? 」
「図に乗るのも、大概にしなさい。神の罰が、下りますぞ。」
他の公爵も、声を荒げで侯爵を責め立てる。
「申し訳ございません。」
侯爵は、頭を下げた。爵位を、持ち出されれば頭を下げるしかなかった。
「いいえ、許せません。神の意を遂行する 我らを侮り過ぎています。」
「息子からは、何も聞いていませんが。酷い扱いを、したのでしょう。」
「殿下がいた事に、気付かなかったとは 言わせないぞ。」
「申し訳ございません。」
侯爵は唇を噛んだ、しかし頭を下げるしかなかった。

バターン!!
扉が開くと共に、一人の美丈夫が入ってきた。漆黒の髪を、揺らして遠慮する事無く入って来る。
「フレックス侯爵か? 」
驚いてる三公を無視して、侯爵に詰め寄る。
「はっ、そうですが? 」
「そうか、貴殿が フレックス侯爵か。」
バンバン と、肩を叩く。
「俺は、ランドール。セラム・ランドールだ。」
強面だが、人懐こい笑顔を見せる。
「昨日は、我が天使が世話になった。」
バンバン と、肩を叩く。
「セルビィ様。」
あの化け物の父親だと、侯爵は分かった。だが、余りにも醸し出す雰囲気が違う。此が、あの化け物の父親なのか? まるで、夏の太陽の様な明るさ 太陽の様な脳天気さ。
『マジか!? 』
侯爵は、心の中で叫んだ。

天使の名を聞くと、セラムは
「天使で、セルビィと分かるか。うちの子、天使だろ。」
嬉しいそうに、笑った。

「ランドール殿、断りも無く。失礼ですよ。」
「挨拶も、無いのですか。」
「誰も、留めなかったか。」
三公が、セラムを責める。
「おお、そうだ。入るぞ、三公殿。元気か? 」
「済みません、留められませんでした。」
軽く挨拶をする、セラムの横でボルトは 頭を下げた。
「警備の者は? 」
「邪魔だから、伸した。」
セラムは、親指を立てた。
「なっ!! 」
ボルト以外の者が、驚きの声を上げた。
「済みません。馬鹿な、者で。」
ボルトは、頭を下げた。
「フレックス侯爵、昨日の捕り物は凄かったらしいな。」
バンバン と、肩を叩く。
侯爵は、痛みで顔を歪めた。
「天使が、褒めていたぞ。」

「ランドール殿!! 」
軍事総長が叫んだ。セラムは、机に手を付き詰め寄った。
「殿下達の悪役も、素晴らしかったらしいな。天使が、褒めていた。名役者だと。」
「!? 」
其処に居る四人は、何の事だか分からなかった。
「昨日の捕り物は、殿下達の発案だとか。」
ボルトは、すかさず補足する。
「殿下達が、緩んだ騎士を選び出し引き締める為に 一芝居打ったと、聞いています。」
「おう、天使が 感動していた。」
四人は、目を見張った。
「殿下から、聞いておられませんか? 緻密な計画で、セルビィ様は感動しておりましたが。」
「殿下が? 」
殿下の 息子達の計画と聞いて、三公は黙った。
セルビィと名前が出て来て、侯爵は冷や汗を流す。
「我が天使は、殿下達を褒めちぎっていたぞ。流石だとな。」
「ああ、権力に負ない法の執行者の憲兵。『豪の者も、護る』と、見せて貰ったと。」
「ありがたい 事だ。」
セラムは、軍事総長の腕を笑いながら叩いた。
「此は、殿下達が考えた事だと。不敬には、あたらないと 仰っていらしたようです。」
「殿下も、貴殿等の子息も 器の大きい男だな。」
バンバン と、軍事総長の腕を笑いながら叩く。
「流石は、三公殿の御子息です。」
セラムとボルトは、三公の息子を褒める。息子を褒められて、三人は嫌な思いをする筈は無く。
「まあ、私の息子ですから。」
「神の意を遂行する、素晴らしい子に育っています。」
「そうか、騎士の緩みか。確かに、奴等 緩んでいたな。」
三人は、鼻高々に微笑んだ。
「フレックス侯爵殿、殿下は権力に負けず職務遂行する事を 褒めていらしたそうです。」
「殿下が。」
ボルトは、侯爵に話を振った。侯爵は、目を閉じた。
「殿下達が、その様な考えで一芝居を打っていたなど。浅はかな、私には気が付かなかった。」
侯爵は目を開き、三公を見る。
「殿下は、私の不敬を お許しになると? 」
「ええ、寛大な心の持ち主だと セルビィ様は感動しておりました。」
ボルトは、応えた。
「ありがたい。この国の将来は、安泰ですね 公爵様。」
殿下が、許すとなるとこれ以上言う事が出来ず 三公は押し黙った。
「もう良い、下がれ。」
軍事総長は、セラムに叩かれた腕を擦りながら侯爵に言った。
「騎士達の釈放だけは、するように。」
「はっ、失礼致します。」
侯爵は、頭を下げて扉に向かう。
「セラム様、我々も失礼致しましょう。」
ボルトは、セラムに言う。
「いや、此から天使の素晴らしさをな。」
セラムは ギラギラ と、目をさせて三公を見る。
「共に、我が子の素晴らしさを話し合わないか? 」
宰相と聖教長の処に詰め寄り、二人の腕を挟む様に笑いながら叩く。
「いや、結構。」
痛みに耐えながら、二人は断った。セラムは、軍事総長を見る。
「俺は、忙しい。」
「其処を、何とか。」
セラムは、天使自慢がしたくて うずうず していた。
「セラム様、公爵様達は忙しいのです。諦めては下さい。」
ボルトは、セラムを諭す。諦めきれず、セラムは三公を見る。彼等は、顔を反らした。
「そうだ、フレックス侯爵に話しては? 」
「おお、フレックス侯爵か。では、急いで追い掛けよう。」
セラムは入って来た時と同じく、大きな音を立てて扉を開き走って侯爵を追い掛けて行った。後に残されたボルトは、
「お騒がせ、致しました。」
頭を下げ、静かに扉を閉じて帰って行った。

肩で風切り、歩いているフレックス侯爵に近付いてくる足音が。振り向くと、
「フレックス侯爵、我が天使の素晴らしさを。」
「ちがうだろ!! ボケ!! 」
ボルトは、回し蹴りをセラムの背中に食らわした。
セラムは廊下を、顔面からスライングした。
侯爵の足元をセラムは、滑って行く。目が彼を、追う。
「気にしなくていいですよ、フレックス殿。」
声の方に、振り向く。
「ボルトです、よろしく。」
「ああ。」
侯爵は、転がるセラムを見る。
「セルビィからの伝言で、これも 貸しだそうです。」
侯爵は、足から崩れそうになったが踏ん張った。
「化け物からか。」
「悪魔からです。」
二人は、ため息を付いた。
「一芝居打ったのか。」
「はは、」
ボルトは、笑った。侯爵の目線に。
「其れは、芝居は 出来ませんから。」
ボルトは、侯爵に引き攣った笑みを向ける。
「昨日、帰ると 」
ボルトは、昨夜の事を思い出す。
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