悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
62 / 128

雪降る、空。

しおりを挟む
冬休みも終わり 一月も半ば、空から白い雪が本格的に降り始めた 寒い日。

「セルビィ。そちらの娘は? 」
セルビアは、扇子で口元を隠して 微笑んだ。内心は複雑だ。
二人の世界に入っていたフローネは、邪魔してくる女に目を向ける。
(何かしら? この女。私のセルビィ様を名前で呼んで 図々しい。)
「セルビィさま。この方、こわいですぅ~。」
セルビィの後に、震えながら隠れる。舌っ足らずな語尾を延ばす言い方、必要以上に胸を背中に押し付けるフローネ。
令嬢達は、イラッとした。

「怖く無いです。僕の姉様です。」
「セルビィさまのぉ~、お姉さまですかぁ~。」
(何だ、姉弟か。そう言えば、そっくり。)

セルビィは、姉に女性を紹介する。
「姉様達。ビッ、フローネ・リジナル男爵令嬢です。」
「フローネ、ですぅ~。宜しくお願いします~。お姉さま。」
セルビィの体の横から顔を出して挨拶をする、体を密着したまま。
令嬢達は、イラッとした。

「ちょっと、貴方。セルビィに、必要以上 触れないで。いえ、触らないで。」
「そうですわ、はしたないですわ。」
セルビアが、我慢できずに声を上げた。アイリーンが、同意する。
「セルビィ君、こっちへ来なさい。」
「ええ、もう行きましょう。」
リリアナが呼び掛けると、テレジアが促す。
「酷いですぅ~、私は セルビィさまと 仲よくなりたいだけなのに~。」
シクシクと、セルビィに背に抱き付いて泣き出す。
令嬢達は、イラッとした。

「セルビィ、行きましょう。」
セルビアは、弟に手を差し伸べた。セルビィは、少し困った顔をして。
「ごめんなさい、姉様。」
フローネの方に振り向き、肩に手を置いた。
「泣いている彼女を、置いては行けません。」
セルビィは、姉から目を反らした。令嬢達は、驚愕した。
あの、姉様大好きセルビィが、セルビアの言葉を否定した事に。

「嘘だろう。」
近くで見ていたナルトは、少しよろけて壁に手を付いた。それ程、驚愕であった。

「姉様。僕は、彼女を教室まで 送って行きます。」
セルビアは、泣きそうな顔をした。セルビィは、姉を見ないように背を向ける。
「行きましょう、フローネ様。」
優しく声を、掛ける。
「はい。セルビィさまぁ。」
涙を拭きながら、頷く。セルビィに肩を抱かれながら、その場を離れる。そして、呆然と見送る令嬢達に振り向き、不敵な笑みを見せた。

令嬢達は、イラッとした。

「セルビィが、セルビィが。」
「何ですの、あの娘? 」
「わざとらしい、嘘泣きですわ。」
「何、あの顔!? 『勝った』見たいな顔をして、むかっく!! 」
呆然と佇むセルビアと、悔しさに体を震わす令嬢達がいた。

壁に頭を貼り付け、呆然とするナルト。
「大丈夫なのか? 」
セルビアよりビッチを選んだセルビィに、ナルトは不安を募らせる。
もう、後には戻れない処まで来ている。その旗頭が、今 腑抜けになってしまった。
「くそぅ!! 」
ナルトは壁を、叩いた。
「ちゃんと、性教育をしていれば。」
自分に、怒りを覚える。
(意味なく、ただ『犯っている』あの本を見る前に。)
自分の所為で、計画が頓挫する。頓挫するだけなら良いが、此所まで来たらバレる場合もある。そうなれば、どれ程の怪我人が 死人が出るかも知れない。ナルトは自分の不甲斐なさを、壁にぶつける。仲間が止めに入るまで、ナルトは壁を叩き続けていた。


セルビィは、フローネを見ていた。自分より背の低い女性、男達の中では自分は背が低い。こうやって、人を見下ろすことは不思議であった。

※見下す事は、多々有るが。

「フローネ・リジナル男爵令嬢。」
セルビィは、微笑みながら 優しく声を掛ける。
その美しさに、フローネは ポッと頰を染める。
「貴方は、僕の理想の女性です。」
「えっ、そんな。」
フローネは、頰に手を置いて恥ずかしむ。
「惚れ惚れする程 向上心が高く、積極的です。」
セルビィは、フローネの手を取った。優しく包み込む。
「まさに、理想の女性です。」
フローネは外見ではなく、行動を褒められるのは初めてであった。今までと違う称賛に、心をときめかす。
「貴方の様な女性を、探してました。」
強く手を握り、引き込む。
「此は、運命です。」
「運命? 」
セルビィは彼女を見詰める、フローネはドキドキした。
いつも自分が言っている事を、人に言われるのは初めてで。
「また、会ってくれますか? 」
手の甲に、優しく口付けをしながら 見詰める。
「は、はい~ぃ。」
フローネは、頭の中が真っ赤になって返事をした。顔も真っ赤だ。フローネの返事に、セルビィは満面の微笑みを称えた。
「名残惜しいですが、此所で。フローネ様。」
「は、はい~ぃ。」
フローネは、美しいセルビィの笑顔に ただ頷くだけだった。去り行くセルビィを、乙女の様に見詰めていた。

雪の降る中、セルビィは足取りが軽かった。
「まずは、一人。」
理想の女性を、準備出来て嬉しかった。
「後、三人 欲しいです。」
セルビィは、可愛らしく首を傾げる。
しかし、先程の姉の哀しそうな顔を思い出して 足が止まった。
「ごめんなさい、姉様。」
(後、三人揃ったら。)
そうしたら総てを話そうとセルビィは、思っていた。
今までの計画の、総てを。
そして、姉様達に安心してもらって 協力をして貰おうと。
「ごめんなさい、姉様達。」
怒りに震える令嬢達を、思い出す。
「後、もう少し。もう少し、したら。」
白い雪の降る中。セルビィは、空に顔を向ける。
「姉様達は、自由です。」
セルビィは、目を閉じて冷たい雪を 頰に感じた。
「自由になったら、姉様達は 何をしますか? 」
セルビィは、雪降る空に問い掛けた。






しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

処理中です...