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14.巫覡の磐座編
69凱風と水魚 ①
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巫覡の磐座は、出入り口以外は完全に閉ざされた岩石洞窟のように見えて、実はそうではない。
三階のせり出した部分はバルコニーのように外につながっているし、遠くからは見えにくいが、壁や天井に小さな隙間穴が空いている。おかげで風は通るし、一部の部屋は光源なしでも歩くことができるのだ。
ウィンディがのぞきこんでいるのは、地上二階の高さに空いた、スイカほどの大きさの穴だった。その高さまで外壁を登ったわけではなく、左前足にピンクのリボンを巻いた白猫の姿で、背中に携えた白鳥のような翼で空中に浮かんでいた。
穴からは、見上げれば三階に神判の間、見下ろせば地下一階に禊ノ淵が臨める。吹き抜けの大きな空間だけあって、壁や天井に空いた隙間穴の多くがそこに通じている。おかげでいくつもの光が中に差し込んでおり、数メートルも離れた地下一階もよく見通すことができた。
青く輝く地底湖、その反射光でほのかに青く照らされる岩壁。見ようによっては幻想的な光景かもしれない。
だが、ウィンディの表情は、普段からは考えられないほど硬く、厳しいものだった。
当然だ。彼女の娘はこれから、頭上に見える岬から飛び降りて、眼下に広がる湖に落ちるのだ。
ウィンディは磐座の入り口での別れ際のフーの様子を思い出した。
どんなに不安でも、誰にもすがることを許されない。どんなに怖気づいても、進むことしかできない。そんな残酷な儀式に臨む彼女は、恐怖に染まった悲愴な顔で、それでも気丈にウィンディに言い聞かせていた。
――私は大丈夫。ちゃんと戻ってくるから。だから、ここで待ってて。
勇気を振り絞るその声も、ウィンディの手を固く握るその手も、どうしようもなく震えていた。けれど、ウィンディただ息をつめて頷くしかなかった。
愛娘を抱きしめて、君臨者も見つけられないようなどこか遠くへ隠してしまえたら。そんな衝動を抑えるのに精いっぱいだった。
かくしてフーと別れたウィンディは――その後、張り付くようにこの穴から離れず、中をじっとのぞきこんでいた。
フーは上方左手奥に見える、禊ノ淵の上にせり出した岬から身を投げる。そうしたら、自分はすぐさま湖面付近から吹き上げる風を起こす。落ちてきたフーを湖のほとりに運ぶような気流を作り出す。そんな繊細な術の操作を、フーに気づかれないように行う。
精密と隠密の同時遂行。それが、風中家の作戦における、ウィンディの使命だ。
チャンスは一度きり。その運命の瞬間を待ち構える間、幾度となく頭の中でシミュレーションする。タイミング。強さ。角度。万が一にも失敗せぬよう、何回も、何十回も繰り返す。
ウィンディの全神経は、これから磐座内で起こる事象に向けられていた。もちうる集中力の全てを、今はまだ無人の大空間に注いでいた。
――だからこそ、気づかなかった。
ビシャッ。
ウィンディがのぞきこむ穴の両脇が濡れた。背後から水が飛んできたのだ――そう気づく間にも、彼女の体は急激に浮力を失った。
「……っ!?」
落下する白猫の背中で、穴の空いた翼がほどけて源子に返っていく。ウィンディは、墜落する前に着地の姿勢を取ろうと体をひねった。だが、それよりも早く、彼女の体はもこもことした何かにぽすんと受け止められた。
一瞬の混乱が過ぎ去った後、ウィンディは自分の体を包んでいる黒いものの正体をすぐに理解した。ダウンジャケットの袖だ。
同時、ウィンディのよく知る声が、上から降ってくる。
「つーかまえた」
「……バブル!?」
見上げたウィンディの目に、ニッと笑みを見せた幼馴染の顔が逆さに映る。
さっと頭から血の気が引くのを感じながら、ウィンディは思わず叫んでいた。
「待って!」
「待たない」
直後、加速による重圧がかかった。
視界の中を、木々が流れていく。ここへ来るまでに抜けてきた森の木立だ。
さらに、ウィンディを抱えたまま全力疾走するバブルの腕越しに、徐々に遠ざかっていく磐座が見える。片時も目を離すわけにはいかないあの場所が、逃してはいけないたった一度の瞬間が、どんどん離れていく。
ダウンジャケットの袖に爪を立て、ウィンディは足をばたつかせた。
「バブル、やめて! 下ろして!」
「やだね」
「お願い、離して! 止まって!」
懇願しながら暴れるウィンディを、より一層強く抱きかかえながら、バブルは磐座から遠ざかる方向へ走り続ける。
小さな猫の力では、人間姿のバブルの腕を押しのけることはできない。爪を立てても、厚い上着の上からでは痛くもかゆくもないのだ。カリカリとナイロン生地をひっかく間にも、バブルは息を弾ませながら、どんどん遠くへと疾走していく。
ひとしきりもがいた後、ウィンディは半ば玉砕気味に、奥の手を炸裂させた。具体的には――バブルの腕の中で、人間姿へと変化した。
「うお!?」
さすがに同じ体格の成人女性を抱きかかえられるはずもなく、バブルはバランスを崩して前のめりに転倒した。途中で地面に落とされたウィンディともども、その場に転がる。
「ったた、何すんだよ、ったく……」
バブルの大儀そうな悪態を聞きながら、ウィンディはゆらりと立ち上がった。コートから髪まで土だらけだ。
彼女はバブルには応えず、ただ視線を巡らせて、磐座の方向を見定めると、そちらに足を踏み出そうとした。
けれど、未遂に終わった。まさにその方向に、先に持ち直した幼馴染が立ちはだかっていた。
土にまみれ、名家の当主の体裁もなくなったウィンディは、全く同じ風体となった相手に、短く言い放った。
「どいて」
バブルも短く返す。
「どいたらどうするんだ」
「磐座へ行かせて」
「行ったら何するんだ」
「……禊を見守るのよ。あの子が落ちたら、すぐに助けに行かないと」
「それだけか?」
バブルのツリ目がちな、まさに猫のような瞳が、ウィンディを鋭く見据える。
「フーが禊ノ淵に落ちるまで何もしないで見てるって、ここで誓えるか?」
急所を突き刺すような言葉が、手加減の一つもなく放たれた。巫覡の弱点を一番よく知る者による一撃だった。
ウィンディの顔がわずかに歪んだのを見て、バブルが皮肉げに口の端を吊り上げる。
「誓えないよなぁ、ここじゃなぁ」
聖森領域は、フィライン・エデンの一部でありながら、特別な区域だ。
君臨者がいる――と仮定されている――場所は、フィライン・エデンではない。また別の次元の空間にあるといわれている。君臨者はそこから、常にフィライン・エデンの民草を見下ろしているともいわれているが、猫の方からは君臨者の存在など知覚できないし、当然干渉もできない。
だが、干渉というには些末ながら、君臨者に声を届けられる唯一の場所がある。それが、聖森領域なのだ。だからこそ、二家は年替わりの頃にここへ挨拶に参じる。
すなわち、ここは君臨者が聞し召していることを前提とした場所。ゆえに、この地における願いは、君臨者への直々の奏上であり、そしてこの地における偽りは、君臨者への不貞に他ならないのだ。
こともあろうに、厳粛な儀式である禊についてたばかろうなど。まして、不正な謀略を隠そうなど。
「だから、あんたは口を閉ざすしかないよなぁ」
全て読み切ったような口ぶりで続けるバブル。その黒髪が、わずかに揺れだす。
風だ。ウィンディを中心として螺旋を描いて巻き上がり始めた風が、バブルへと手を伸ばし、その髪を緩やかに乱す。頬をひっかく。
「口を閉ざしたまま、力ずくで私を押しのけようとするよなぁ」
土ぼこりと落ち葉を巻き上げながら、徐々に風は膨れ上がる。ビュウビュウと音を立てる気流の中心で、ウィンディの双眸が堅い光を放っていた。バブルを一直線にとらえた眼光に満ちる、険しい覚悟の色が、彼女の答えだ。
「――いいよ」
バブルの口元に、はっきりと笑みが刻まれた。直後、ちょうどウィンディと鏡写しのように――ブワァッ、とその周囲に螺旋を描く大量の水が巻き上がった。ハリケーンが海水を吸い上げた時のような、水の竜巻。
荒れ狂う水流の中心で、水の家の当主は堂々と言い放った。
「相手してやる。あんたと喧嘩するなんて、初めてだ!」
三階のせり出した部分はバルコニーのように外につながっているし、遠くからは見えにくいが、壁や天井に小さな隙間穴が空いている。おかげで風は通るし、一部の部屋は光源なしでも歩くことができるのだ。
ウィンディがのぞきこんでいるのは、地上二階の高さに空いた、スイカほどの大きさの穴だった。その高さまで外壁を登ったわけではなく、左前足にピンクのリボンを巻いた白猫の姿で、背中に携えた白鳥のような翼で空中に浮かんでいた。
穴からは、見上げれば三階に神判の間、見下ろせば地下一階に禊ノ淵が臨める。吹き抜けの大きな空間だけあって、壁や天井に空いた隙間穴の多くがそこに通じている。おかげでいくつもの光が中に差し込んでおり、数メートルも離れた地下一階もよく見通すことができた。
青く輝く地底湖、その反射光でほのかに青く照らされる岩壁。見ようによっては幻想的な光景かもしれない。
だが、ウィンディの表情は、普段からは考えられないほど硬く、厳しいものだった。
当然だ。彼女の娘はこれから、頭上に見える岬から飛び降りて、眼下に広がる湖に落ちるのだ。
ウィンディは磐座の入り口での別れ際のフーの様子を思い出した。
どんなに不安でも、誰にもすがることを許されない。どんなに怖気づいても、進むことしかできない。そんな残酷な儀式に臨む彼女は、恐怖に染まった悲愴な顔で、それでも気丈にウィンディに言い聞かせていた。
――私は大丈夫。ちゃんと戻ってくるから。だから、ここで待ってて。
勇気を振り絞るその声も、ウィンディの手を固く握るその手も、どうしようもなく震えていた。けれど、ウィンディただ息をつめて頷くしかなかった。
愛娘を抱きしめて、君臨者も見つけられないようなどこか遠くへ隠してしまえたら。そんな衝動を抑えるのに精いっぱいだった。
かくしてフーと別れたウィンディは――その後、張り付くようにこの穴から離れず、中をじっとのぞきこんでいた。
フーは上方左手奥に見える、禊ノ淵の上にせり出した岬から身を投げる。そうしたら、自分はすぐさま湖面付近から吹き上げる風を起こす。落ちてきたフーを湖のほとりに運ぶような気流を作り出す。そんな繊細な術の操作を、フーに気づかれないように行う。
精密と隠密の同時遂行。それが、風中家の作戦における、ウィンディの使命だ。
チャンスは一度きり。その運命の瞬間を待ち構える間、幾度となく頭の中でシミュレーションする。タイミング。強さ。角度。万が一にも失敗せぬよう、何回も、何十回も繰り返す。
ウィンディの全神経は、これから磐座内で起こる事象に向けられていた。もちうる集中力の全てを、今はまだ無人の大空間に注いでいた。
――だからこそ、気づかなかった。
ビシャッ。
ウィンディがのぞきこむ穴の両脇が濡れた。背後から水が飛んできたのだ――そう気づく間にも、彼女の体は急激に浮力を失った。
「……っ!?」
落下する白猫の背中で、穴の空いた翼がほどけて源子に返っていく。ウィンディは、墜落する前に着地の姿勢を取ろうと体をひねった。だが、それよりも早く、彼女の体はもこもことした何かにぽすんと受け止められた。
一瞬の混乱が過ぎ去った後、ウィンディは自分の体を包んでいる黒いものの正体をすぐに理解した。ダウンジャケットの袖だ。
同時、ウィンディのよく知る声が、上から降ってくる。
「つーかまえた」
「……バブル!?」
見上げたウィンディの目に、ニッと笑みを見せた幼馴染の顔が逆さに映る。
さっと頭から血の気が引くのを感じながら、ウィンディは思わず叫んでいた。
「待って!」
「待たない」
直後、加速による重圧がかかった。
視界の中を、木々が流れていく。ここへ来るまでに抜けてきた森の木立だ。
さらに、ウィンディを抱えたまま全力疾走するバブルの腕越しに、徐々に遠ざかっていく磐座が見える。片時も目を離すわけにはいかないあの場所が、逃してはいけないたった一度の瞬間が、どんどん離れていく。
ダウンジャケットの袖に爪を立て、ウィンディは足をばたつかせた。
「バブル、やめて! 下ろして!」
「やだね」
「お願い、離して! 止まって!」
懇願しながら暴れるウィンディを、より一層強く抱きかかえながら、バブルは磐座から遠ざかる方向へ走り続ける。
小さな猫の力では、人間姿のバブルの腕を押しのけることはできない。爪を立てても、厚い上着の上からでは痛くもかゆくもないのだ。カリカリとナイロン生地をひっかく間にも、バブルは息を弾ませながら、どんどん遠くへと疾走していく。
ひとしきりもがいた後、ウィンディは半ば玉砕気味に、奥の手を炸裂させた。具体的には――バブルの腕の中で、人間姿へと変化した。
「うお!?」
さすがに同じ体格の成人女性を抱きかかえられるはずもなく、バブルはバランスを崩して前のめりに転倒した。途中で地面に落とされたウィンディともども、その場に転がる。
「ったた、何すんだよ、ったく……」
バブルの大儀そうな悪態を聞きながら、ウィンディはゆらりと立ち上がった。コートから髪まで土だらけだ。
彼女はバブルには応えず、ただ視線を巡らせて、磐座の方向を見定めると、そちらに足を踏み出そうとした。
けれど、未遂に終わった。まさにその方向に、先に持ち直した幼馴染が立ちはだかっていた。
土にまみれ、名家の当主の体裁もなくなったウィンディは、全く同じ風体となった相手に、短く言い放った。
「どいて」
バブルも短く返す。
「どいたらどうするんだ」
「磐座へ行かせて」
「行ったら何するんだ」
「……禊を見守るのよ。あの子が落ちたら、すぐに助けに行かないと」
「それだけか?」
バブルのツリ目がちな、まさに猫のような瞳が、ウィンディを鋭く見据える。
「フーが禊ノ淵に落ちるまで何もしないで見てるって、ここで誓えるか?」
急所を突き刺すような言葉が、手加減の一つもなく放たれた。巫覡の弱点を一番よく知る者による一撃だった。
ウィンディの顔がわずかに歪んだのを見て、バブルが皮肉げに口の端を吊り上げる。
「誓えないよなぁ、ここじゃなぁ」
聖森領域は、フィライン・エデンの一部でありながら、特別な区域だ。
君臨者がいる――と仮定されている――場所は、フィライン・エデンではない。また別の次元の空間にあるといわれている。君臨者はそこから、常にフィライン・エデンの民草を見下ろしているともいわれているが、猫の方からは君臨者の存在など知覚できないし、当然干渉もできない。
だが、干渉というには些末ながら、君臨者に声を届けられる唯一の場所がある。それが、聖森領域なのだ。だからこそ、二家は年替わりの頃にここへ挨拶に参じる。
すなわち、ここは君臨者が聞し召していることを前提とした場所。ゆえに、この地における願いは、君臨者への直々の奏上であり、そしてこの地における偽りは、君臨者への不貞に他ならないのだ。
こともあろうに、厳粛な儀式である禊についてたばかろうなど。まして、不正な謀略を隠そうなど。
「だから、あんたは口を閉ざすしかないよなぁ」
全て読み切ったような口ぶりで続けるバブル。その黒髪が、わずかに揺れだす。
風だ。ウィンディを中心として螺旋を描いて巻き上がり始めた風が、バブルへと手を伸ばし、その髪を緩やかに乱す。頬をひっかく。
「口を閉ざしたまま、力ずくで私を押しのけようとするよなぁ」
土ぼこりと落ち葉を巻き上げながら、徐々に風は膨れ上がる。ビュウビュウと音を立てる気流の中心で、ウィンディの双眸が堅い光を放っていた。バブルを一直線にとらえた眼光に満ちる、険しい覚悟の色が、彼女の答えだ。
「――いいよ」
バブルの口元に、はっきりと笑みが刻まれた。直後、ちょうどウィンディと鏡写しのように――ブワァッ、とその周囲に螺旋を描く大量の水が巻き上がった。ハリケーンが海水を吸い上げた時のような、水の竜巻。
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