フィライン・エデン Ⅲ

夜市彼乃

文字の大きさ
69 / 114
13.水鏡編

63スワンプマンの実証実験 ②

しおりを挟む
***

(くっ……追いつけん……!)
 木立に挟まれた一本道で、雷奈は必死に足を動かし、シズクを追いかけ続けていた。途中から猫力を解放して、猫の俊敏性を発動させていたというのに、一向にその尻尾をつかむことさえできない。
 それもやむなしだ。相手も猫のしなやかな走りを見せるうえ、時折、振り向きざまに水の弾丸や刃をしっぽで飛ばしてくるのだ。それを左右に回避しながらとあれば、余計な動きを余儀なくされるうえ、体力も削られる。
 走りながら雷術か星術でも見舞ってやろうかとも思ったが、どんどん遠ざかっていく小さな目標に、疾走で体をぶれさせながらうまく当てられる自信はなかった。
 暴虐を本能とするチエアリが、攻撃もしてこないまま逃げ続けている。雷奈を危険因子とみなしているわけではないだろう。実際、直接襲ってくるチエアリを雷奈一人で倒せたためしはない。
 雷奈は勘づいていた。シズクが襲ってこないのは、おそらく、自分たちが実験用のラットだからだ。せっかく実験フィールドを設えて、被験体のラットも準備したのに、そのラットを実験完了前に面白半分に殺すことはないだろう。
 源子で形作られたとはいえ、相手も猫だ。ネズミをもてあそんでもおかしくはない。
 進む先に、もう町が見えてきている。チエアリが姿を現したとなれば、住民たちはパニックに陥るだろう。
 そうなる前に止めなければならないのに――。
 その時だ。
「……」
 ふいにシズクは走りながら道の脇を振り返った。そして――そちらへ向けてしっぽを振りぬき、水の刃を飛ばした。
「……!?」
 雷奈はつい、シズクが振り向いた地点で足を止め、そちらを振り向いた。誰かいるのかと思ったが、誰もいない。何の変哲もない、奥まで続く小さな林だ。
 だが、視線を下に振って、はたと目を見開いた。林に入って五歩ほど進んだあたりの地面に、何かが落ちている。
 手のひらほどの面積の土を染める赤いしみ――血液だ。
(やっぱり、誰か……いたと……?)
 肩を上下させながら、呆然と木陰を見つめていた雷奈は、一本道の先へと視線を戻したが、もうシズクの姿は見えなくなっていた。よそ見をしている間に、左右どちらかの林へ身を隠してしまったのだろう。
 雷奈は、もう一度血だまりに目をやった。今、シズクが誰かを傷つけたのは確かだが、町の住民たちに積極的に直接危害を加えるつもりはないはずだ。もしその気なら、既に大きな被害が出ているだろう。飛壇全域が彼女の実験フィールドだとすれば、シズク自ら手をかけるつもりがないのも頷ける。
 雷奈は逡巡した。この血液の主は、もしかすると林の中で動けなくなっているかもしれない。助けに行きたいところだが、シズクもこの林の中にいる可能性もある。一人で闇雲に足を踏み入れるのは危険か。
 疲労で回らない頭で、悶々と考える。
 そんな雷奈の背後に――気配が急接近して、彼女はがばっと振り返った。

***

 噴水公園は広大な敷地をもつ。町中にあるような、ちょっとした遊具があるような公園とは違う、数としては少ない大規模な自然公園だ。
 そのため、公園内につながる道もいくつかあり、今彼女が走っているのは、その中で一番希兵隊本部から近い道だった。
 右手に持ったスマホを耳に押し付けながら、必死に足を動かす。何コール繰り返しても相手が出ないことに、悲鳴のような声を上げた。
「なんで出ないの、雷奈……!」
 息が上がるあまり、一度足を止めた。画面に表示されている発信先の名前を、もどかしく見つめる。
 開発部を代表して木雪が雷奈に渡した、チエアリ検出センサーの試作品。
 うまく作動するかは未知数だったが、作動したならば、通常のクロ類検出センサーと同様、総司令部に通達が行くように設計されていた。
 そのアラートが、鳴った。正常な動作だとすれば、雷奈のすぐそばにチエアリがいることを指す信号だ。
 だが、鏡像に襲われる可能性の高い飛壇中の市民たちの護衛のため、多くの隊員が出払っていた。少なくとも、チエアリに立ち向かえる要員は町から呼び戻してチームを編成しなければならない。
 さりとて、事は一刻を争う有事。それも、護衛を最優先すべき人間の窮地だ。そこで名乗り出たのが、彼女――時尼霞冴だったというわけだ。
 もちろん、司令官制服のスカートの左右には、一振りずつ刀を差している。普通に走るぶんには支障がない程度に刀の揺れを軽減してくれる頑丈なベルトは、ガオン戦の折にも活躍した特注品だ。
 そうはいっても、二刀を携えた霞冴でも、必ずしもチエアリをくだせるという保証はない。雷奈は早く見つけたいところだが、同時にチエアリと遭遇する可能性が高いというのは複雑な心境だ。
 両脇を林に挟まれた一本道。確か、左側の林を抜ければ、町から噴水公園に続く道に出る。
 反応があったのは噴水公園。だが、別の道を移動していて、入れ違いになっている可能性も――。
「……!」
 林のほうを見つめていた霞冴は、何かが現れる気配に振り向いた。その右手は、既に左の柄を握っている。
 背後にあったものを見て、ぎょっとした。
 あの大雨の日、霞冴はほとんど外には出ていなかった。総司令部室と自分の寝床の隊舎の間しか移動していない。その道中に、水たまりになるようなところはなかったはずだが――。
「……そっか、バケツにたまった雨漏りの水か」
 自分には全く無関係、とまでは思っていなかったものの、可能性は低いと踏んでいた霞冴は、試練を前にして歯噛みした。
 置き去りにされた骨董品のように寂しく鎮座していた姿見は、予想にたがわず、ピシピシと表面を割り始めた。亀裂が飽和すると同時、つんざくような音とともに破片を散乱させる。
 中から、プラチナブロンドの長い髪をした小柄な少女が生まれた。瞳は紺色。身にまとう装束は――。
「あー、それ私も着たかったやつだ」
 霞冴は皮肉を前にして口の端を吊り上げた。
 薄黄色をした着物袖の長羽織。襟は中国服風で、釈迦結びのボタンでみぞおちの上まで留められ、その下は大きく開いて下の紺袴を露わにしている。リュートと呼ばれるそれは、フィライン・エデンでは剣舞の際に着用する伝統衣装だ。霞冴も、もし今でも道場に名を置いていれば、師範代かそれに準ずる者として、これに袖を通して舞う経験もあっただろう。希兵隊の道を選んだ霞冴には、少なくとも退職まではその機会はない。
 悔しそうな霞冴に見せつけるように、誇らしげに笑んで、彼女は名乗った。
「雨を刻むと書いて刻雨ときあまかこ。それが私だよ、時尼霞冴」
 剣舞用の装束であるリュートは、帯や羽織が帯刀を前提としたつくりになっているのが、フィライン・エデンの他の民族衣装に比した大きな特徴だ。刻雨が名乗りながら、両腕を交差させてゆっくりと引き抜いたものが何であるかは語るまでもない。
 だが、鞘から現れた刀身を見て、霞冴はぴくりと眉を動かした。
 刻雨の手にある刀は、両方とも、真っ黒な姿をしていた。
 黒い日本刀というのは、まず存在しない。刃先はやや明るい光沢を放っているが、それさえも、夜闇に潜む殺意のような残忍さをまとっている。
 どこからこんなものを調達してきたのか。
 絶句する霞冴に、刻雨は薄く笑った。
「コウに仕立ててもらったんだ。だから柄はなかごに布をぐるぐる巻きにしただけでしょ」
 通常、柄は刀身から伸びたなかごという持ち手にあたる金属部分に、木製の柄木地とエイの皮――エイのいないフィライン・エデンでは水草由来――を重ね、柄糸を巻くことで完成する。職人が手間かけて、武器にも美術品にもなりうる一振りをこの世に送り出すのだ。
 コウが扱えるのは金属のみだ。柄木地や柄糸の技術はない。それを加味しても、霞冴から見れば、刻雨の二刀はとてつもなく粗削りで荒々しく見える。加えて、闇を吸い込んだかのような黒い刀身。チエアリの術で作られたコウが源子で作った刀だ、黒さの理由を詮索しても仕方なかろうが、とかくそれらが相まって禍々しいオーラをまとっていた。
 刻雨は午後の予定でも語るように、こともなげに言った。
「この二振りで、みんな斬るよ。そっちのルシルも、コウも、美雷さんも――もちろん、君も」
 姿勢がわずかに動く。足の開きが、手の内が、斬るための形になる。
 挑発的な態度、そして皆殺しの宣言と、有言実行の構え。
 同じトキアマカコだからこそ、すぐにわかった。基本的に温厚で、争いを好まない霞冴。そんな彼女の鏡像が持つ、本物との差異は――好戦的な攻撃性だ。
 霞冴は右手を柄に添えながら、念のため訊いておく。
「……抜かなきゃダメ?」
「死にたくなければね」
 刹那。
 黒い光が弧の形に閃いた。抜刀も初動もない。ただ、そこに残像が一閃現れただけ。本体も見えぬのに像と称するのも滑稽な話だ。
 本体が目視できる姿を見せたのは、キンと甲高い音とともにあらぬ方向へ弾かれた後だ。同時、刻雨の左手からもう一つの紫電が走るが、これも硬質な音とともに空を切る。
 一太刀目の水平斬りと二撃目の垂直斬り。それらを一瞬のうちに跳ねのけた霞冴の右の刀は、こちらもやはり抜刀の瞬間をうかがわせない。
 柄を握ったままの右手で鞘を後ろに引き、左手が柄を握る。鯉口が切られるとともに、もう一振りが目を覚ました。起き抜けに、牽制の一撃。刻雨は身を引いて距離を取った。
 霞冴はおもむろに両腕を下ろすと、焦りや緊張とは程遠い小さな嘆息を漏らした。手に余る。そう言いたげな冷めた目。
 冷ややかな視線を向けられた刻雨は、気を悪くした様子もなく、むしろ霞冴の抜刀に歓喜したようににっと笑うと、すぐさま距離を詰めた。
 刻雨の右手の刀が、再び稲妻に匹敵する速度で振り下ろされる。大義そうな表情と裏腹に冴え渡る白刃が、それを迎え撃って激突。と同時に、反対側から闇色の突きが霞冴を襲った。霞冴は切り結んだまま、手首の回転で自分の刀を黒刀の左側にくぐらせる。そのまま、しのぎを思い切り押しのけるように力を加えながら左に体をさばけば、剣先はむなしく虚空を通過するのみとなった。
 両刀を攻めに用いた刻雨に対し、霞冴はその防御を右手だけで務めた。必然的に空いている左手は、無防備な首への一振りに専念する。白光が真一文字に描かれた時には、そこにあった頭部は忽然と消えており、プラチナブロンドの細かい髪が少量、手品のスモークのようにふわっと飛び散った。
 下、と視線を振り下ろした時には、しゃがみ込んでかわした刻雨が、霞冴の足を払っていた。
「く……っ」
 霞冴が倒れる。入れ替わるように刻雨が立ち上がる。仰向けの霞冴の心臓目掛けて、黒刀が垂直に突き下ろされた。
 両刀を手にしたまま、辛くも転がって避ける霞冴を追って、二振りの刀が、交互に次々と地面に突き刺さっていく。霞冴は時折髪を犠牲にしながらも、ギリギリのところで串刺しを免れていく。
 最初に突き立った刀が三度目に降ろされようという時、ついに霞冴の左の刀が反撃に出た。転がった姿勢のままとはいえ、大きく振り抜かれた白刃は、刻雨を殺傷距離に収めていた。連撃記録四回を残して、刻雨は後退する。
 跳ね起きた霞冴が、今度は舞うようにとめどなく斬撃を繰り出す番だった。刻雨は体を回転させながら、どれもすんでのところでかわしていく。まるで、先程の霞冴をそのまま縦にして再現したかのようだ。四撃目で反撃に出るのも、意趣返しじみた模倣。
 だが、霞冴は退くことはせずに前に出て斬り結んだ。細かい金属音を立てて競り合う刀の前で、その奥の刻雨に問う。
「なんで襲ってくるの」
「当たり前でしょ」
 刻雨は不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「この世界に同じ人物は二人もいらない。二人存在してしまったなら、邪魔な一人は消えなきゃいけないの」
 霞冴は表情を変えず、黙って刻雨の言葉を流れ出るままにさせた。
「二人いるのに、椅子はたった一つしかない。そしたら争うしかないんだよ。限られた資源をめぐる競争的構図は、いつだって誰の心にだって対立や葛藤を生むんだ」
 土を踏む足音が、連続して二回。オリジナルと同じ瞬発力をもつ刻雨は、たった二歩で霞冴の後ろへ回った。振り返って斬るも防ぐももう遅い。
 だから霞冴は、右手の刀を一瞬で逆手に持ち替えると、最短距離の真後ろに突き込んだ。手ごたえはなく、その代わりに土を蹴って後退する音だけがあった。
 その隙に、霞冴はすばやく振り返った。ちょうど、霞冴による不意打ちを緊急回避した刻雨が、一拍遅れて再び向かってくるところだった。
 刻雨の左の剣先が突きを繰り出す。霞冴はそちらを右の刀で防ぎながら、ほぼ同時に右の胴を狙って飛んできた薙ぎ斬りを左で受け止める。
 膠着状態にもつれ込んだ――が、この時点で優劣は決していた。
 霞冴は両腕を開いた状態で、刻雨は交差させた状態でせめぎ合っている。力が入りやすいのは後者だ。
 次の手に移られる前に、霞冴は両刀をすばやく振り上げると、平行線を刻むように前方に振り下ろした。
 キイィンッ……。
 天までつんざくような、見事な音。交差した刻雨の刀が、同時攻撃をしのいだのだ。その斥力を味方に、霞冴はばっと離れて仕切り直しを図った。だが、刻雨はそうはさせまいと追ってくる。
 後方に飛びながら、本気の剣戟に身をほてらせながら――霞冴は既視感の海にたゆたっていた。
 こうしてたった一つの椅子を巡って剣を交えるのは、初めてではない。
 道場の試合稽古で、何度も鎬を削って目指した優勝の座。
 そして――希兵隊であの小さな剣士と奪い合った、護衛官の座。
 あの日も同じだった。霞冴は全力を賭して、銀色の後輩とぶつかった。刻雨と繰り広げているのは命のやり取りで、命がけでない護衛官選抜戦とは比べものにならない重みを背負っているように見えるかもしれない。だが、霞冴はあの時、間違いなく今と同じだけの覚悟と気概で彼に相対していた。だからこそ、敗北は死刑宣告に等しかった。
 あの時、プライドをかけた一騎打ちに敗れた霞冴は、絶望の淵にいたといってもよかった。自分には想いびとを守る資格などないのだと、あのカーキ色の少年のために剣を振るうことは許されないのだと、そんなはらわたがちぎれる痛みを抱えながら、真っ暗闇の未来を涙目で見ていた。
 きっと、その点では、最高司令官の更迭を命じられた時と同じだ。絶大な信頼とともに譲り受けたその玉座を奪われ、ただの時尼霞冴として地べたに座ることを命じられたあの時も、その先に希望の光を見いだせずにいた。
 未来を見通すことなどできない霞冴は、そんな暗中が永遠に続くと思っていた。
 けれど、そのたった数歩先に、道を照らしてくれる光があったことを、今の霞冴は知っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~

ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。 絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。 彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。 営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。 「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」 転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。 だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。 ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。 周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。 「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」 戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。 現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。 「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」 これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。

処理中です...