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13.水鏡編
65雨祓いのプロシージャ ⑦
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そばで作戦を聞いていたユメもうなずく。時を同じくして、カートリッジの電力が底をついた。
ワイヤーを切断、装転しながら木雪に手渡す。腕のケガをかばいつつも、木雪は消火器型テーザーガンをしかと受け取ると、後ろへ下がった。
シズクは何とか四つ足で立っているが、頭を垂れて息を整えている。その隙に、と氷架璃と芽華実が刀印を構えた。
「差せ、光砲!」
「翔けろ、瞬葉!」
光の球と鋭い葉の群れが、挟み撃ちでシズクに襲い掛かる。威力はたかが知れているとはいえ、ダメージを負った相手の動きをさらに鈍らせるには十分だろう。
だが、なんたることか。絶好の機をついたにもかかわらず、シズクの周囲に巻き起こった大量の水が、紙一重で両方ともを弾き飛ばした。光は輝きを失って消え去り、葉は勢いをなくしてただの落ち葉と化す。
そのまま、水はシズクの体を包み込み、球体となって宙に浮いた。攻め手に不純物の混入と電撃の二段階を要する、あの水球要塞だ。
攻略法は会得済み。だが、ならば楽勝かといえば、チエアリもそこまで不用心ではない。氷架璃と芽華実が追撃を加えるより前に、水球の表面から弾丸のような水滴で機銃掃射を仕掛けてきた。
「し、結界術っ!」
ユメが慌てて両手を突き出し、氷架璃と芽華実、そしてその後ろの木雪をも覆うバリアを構成した。その表面に、ガツガツガツッ! と危うげな音を立てて水の弾が着弾する。
やはり術には慣れていない様子のユメは、必死の形相で結界を保つのに全神経を注いでいる。チエアリの攻撃力に鑑みれば、結界が崩れた時には四人とも蜂の巣になっていてもおかしくない。
ユメの後ろで震え上がる二人に、スコールが打ちつけるような着弾の音に紛れて声がかかる。
「氷架璃さん、芽華実さん」
この絶体絶命の状況でも、木雪は冷静沈着を崩さない。
「どうすんだよ、私らの攻撃効かない形態になっちゃったぞ」
「問題ありません」
氷架璃の泣き言にも、淡々と答える。
「シズクはこの後、必ず水球を解きます。その隙に、どうか」
「そんなのなんでわかるんだよ」
「私がそう仕向けるからです」
彼女らよりも年上で格上の少女の断言。
そこにぞくりとしたものを感じながら、氷架璃と芽華実は前に向き直った。
木雪の言葉が本当ならば、水球を解いた一瞬の機を逃すわけにはいかない。
注意深く構える二人の耳に、木雪のなめらかな詠唱が届く。
「花金鳳花の衣、優曇波羅華の歳華、華ありと廻れ、刃鳴り歯成り」
短歌を詠むかのような雅な声で、木雪はそこまで唱えた。
途端、結界の外の世界に、水の弾丸以外のものが一気にあふれかえった。
赤く、細長いそれは、花びらだ。
草術・英舞遊。
ただ、すでに猫術の詠唱のリズムをつかんでいる氷架璃と芽華実にもわかることに、詠唱は途中で切られていた。本来、鋭い刃物となって敵に襲い掛かる可憐な軍勢だ。詠唱が途中までであったからだろう、花びらは鋭利さも速度ももたず、ただ周囲に無数に舞うのみだった。
メルのものとも、女神のものとも違う色形の花弁。シズクの水球の中にも入り込んでいくそれが何の花びらかは、にわかには判別し難い。
まるで不吉なスノードームのように、水球の中に降り注いだ多量の赤い花がたゆたう。これはユメの言葉を借りるなら「不純物」なのだろうが、シズクがその侵入を許容した理由は何となく察しがつく。ユメは結界を張るのに手一杯で、雷奈は仲間たちの真後ろから動けない。つまり、雷術を飛ばせる者がいない以上、たとえ電流に弱い状態に陥っても何ら怖くはないのである。
そのため、シズクが水球を解く由などない。
――はずだった。
「……!」
突如、何かに気づいたようにシズクが目を見開いた。
そして、身にまとっていた水を離散させた。同時、赤い花びらも一緒に散らばっていく。
木雪の予言は現実のものとなった。
驚嘆は後だ。ユメが息を継ぐように結界を解いたのが合図。再びまみえる、光の砲弾と葉の散弾の共演。
一幕目ではすかさず反応したシズクだが、水球の解除さえ咄嗟だった今、再度しのぎ切るのは難しかったらしい。まず高速で飛来した光の球をもろに受け、反対側から畳みかける無数の刃に体側をえぐられた。
手ごたえあり。そう確信した氷架璃と芽華実は、共に道を空けるように左右に分かれた。分かれながら、今起こった事象についての答えを求めて後ろを振り返った。
「リコリス・ラジアータ」
凛とした声が告げる。チエアリの行動を予測した――否、操作した少女は、モーセのごとく空いた道の先に立っていた。そばには、結界を解くと同時に下がった、彼女の親友の姿。その小さな手には、自らが名付けた発明武器が握られている。
「和名・彼岸花。それが私の英舞遊です。特に球根に多いと言われていますが、全草に毒をもつのが特徴です。もちろん、花の部分にも」
ワイヤーが飛んだ。先端の電極が、シズクまで一直線に空いた道を真っ直ぐに突き進み、避けそこねた黒い体に着弾する。
「彼岸花の毒は水溶性……つまり花をさらした水は毒となる。溶解力の強い超純水ならなおさらです。本来喫食しなければ毒性はありませんが、溶液から逃れたということは、あのまま体を浸しているのを恐れたということ。触れるだけで効くとは、つくづくチエアリの生態は謎ですね」
ユメの手が動いた。シズクの体に、再び電流が走る。
だが、何度か受けているうちに耐性がついたらしく、体を痙攣させながらも二人を睨みつける余裕ができていた。あまつさえ、振り上げた尾に水を集め始める。
それを見た木雪は、ふっと目を細めた。
「やはりカートリッジの電力では足りないようですね。でも」
ふつん。
ワイヤーが切れて落ちた。
出し抜けに攻撃を中止され、シズクは意表をつかれて、電撃から解放されたにも関わらず動きを止めた。
ワイヤーは、ピンをねじった木雪によって意図的に切断されていた。
垂れ下がった二本のワイヤー。その切断口に近い、絶縁体に覆われた部分を、木雪はそっとつまみ上げる。先端の電極はシズクに刺したまま、彼女はゆっくりと数歩下がった。
そして、手にしたそれを、後ろでずっと回復を待っていた少女に手渡した。
「このお方ならどうでしょう」
シズクの顔がこわばった。次いで、慌てて体に刺さったままの電極を払おうと前足を浮かせた。
だが、それよりも早かった。
詠唱はいらなかった。雷奈の両手から、術の形をとる前の高圧電流が発せられた。その高エネルギーは、木雪から受け取って両手に握った電導ワイヤーに伝わる。幸いにも、ワイヤーはカートリッジの何倍もの電圧にも耐えながら、電撃をその先へと運んだ。
そして、終着点で炸裂する。
「ッアアアアアア!」
シズクは絶叫した。激しく体を痙攣させ、徐々に黒い霧を発していく。こうなっては、もはや電極を払い落とす余力もない。
痛々しい断末魔の叫びが雷奈の耳をつんざく。それでも、彼女が電撃を緩めることはない。
ふと、彼女の頭を一つの可能性がよぎった。
――雷菜なら、このチエアリさえも見逃すのかもしれない。
次々に仲間を葬られても、最終的には自分自身が敵意を向けられても、最後まで彼女は誰かの命を奪うことはしなかった。
それが優しいということで、それが真の強さの形で、本来望ましい生きざまなのかもしれない。
そのことを腹の底に落としたうえで――やはり、手心を加えるという選択肢はなかった。
たとえ源子から生まれたとしても、チエアリもまた一つの命だ。鏡像たちがそうであったように。
だから、雷奈が今やっているのは、誰かの命を奪おうとする行為に他ならない。
けれど、それでも許せなかった。仲間たちを傷つけ、身勝手に悲しい戦いを起こした彼女を、これ以上永らえさせるわけにはいかなかった。
自分の、仲間の、命を、尊厳を、守るためには――綺麗ごとを捨てなければならない時がある。
それが、このままならない世界の形。清濁併せ飲まなければ生きていけない、苦い世界の姿だ。
(ごめんね、雷菜)
だから、彼女が「朏雷菜」の生き方を選ぶことはない。
これからも、「三日月雷奈」として生きていく。
細ることなくほとばしる電流。激しい白光の中で、黒い影は徐々に溶けていく。
最後の影の欠片までをも、まばゆい閃光がかき消して――。
そして、雨は止んだ。
ワイヤーを切断、装転しながら木雪に手渡す。腕のケガをかばいつつも、木雪は消火器型テーザーガンをしかと受け取ると、後ろへ下がった。
シズクは何とか四つ足で立っているが、頭を垂れて息を整えている。その隙に、と氷架璃と芽華実が刀印を構えた。
「差せ、光砲!」
「翔けろ、瞬葉!」
光の球と鋭い葉の群れが、挟み撃ちでシズクに襲い掛かる。威力はたかが知れているとはいえ、ダメージを負った相手の動きをさらに鈍らせるには十分だろう。
だが、なんたることか。絶好の機をついたにもかかわらず、シズクの周囲に巻き起こった大量の水が、紙一重で両方ともを弾き飛ばした。光は輝きを失って消え去り、葉は勢いをなくしてただの落ち葉と化す。
そのまま、水はシズクの体を包み込み、球体となって宙に浮いた。攻め手に不純物の混入と電撃の二段階を要する、あの水球要塞だ。
攻略法は会得済み。だが、ならば楽勝かといえば、チエアリもそこまで不用心ではない。氷架璃と芽華実が追撃を加えるより前に、水球の表面から弾丸のような水滴で機銃掃射を仕掛けてきた。
「し、結界術っ!」
ユメが慌てて両手を突き出し、氷架璃と芽華実、そしてその後ろの木雪をも覆うバリアを構成した。その表面に、ガツガツガツッ! と危うげな音を立てて水の弾が着弾する。
やはり術には慣れていない様子のユメは、必死の形相で結界を保つのに全神経を注いでいる。チエアリの攻撃力に鑑みれば、結界が崩れた時には四人とも蜂の巣になっていてもおかしくない。
ユメの後ろで震え上がる二人に、スコールが打ちつけるような着弾の音に紛れて声がかかる。
「氷架璃さん、芽華実さん」
この絶体絶命の状況でも、木雪は冷静沈着を崩さない。
「どうすんだよ、私らの攻撃効かない形態になっちゃったぞ」
「問題ありません」
氷架璃の泣き言にも、淡々と答える。
「シズクはこの後、必ず水球を解きます。その隙に、どうか」
「そんなのなんでわかるんだよ」
「私がそう仕向けるからです」
彼女らよりも年上で格上の少女の断言。
そこにぞくりとしたものを感じながら、氷架璃と芽華実は前に向き直った。
木雪の言葉が本当ならば、水球を解いた一瞬の機を逃すわけにはいかない。
注意深く構える二人の耳に、木雪のなめらかな詠唱が届く。
「花金鳳花の衣、優曇波羅華の歳華、華ありと廻れ、刃鳴り歯成り」
短歌を詠むかのような雅な声で、木雪はそこまで唱えた。
途端、結界の外の世界に、水の弾丸以外のものが一気にあふれかえった。
赤く、細長いそれは、花びらだ。
草術・英舞遊。
ただ、すでに猫術の詠唱のリズムをつかんでいる氷架璃と芽華実にもわかることに、詠唱は途中で切られていた。本来、鋭い刃物となって敵に襲い掛かる可憐な軍勢だ。詠唱が途中までであったからだろう、花びらは鋭利さも速度ももたず、ただ周囲に無数に舞うのみだった。
メルのものとも、女神のものとも違う色形の花弁。シズクの水球の中にも入り込んでいくそれが何の花びらかは、にわかには判別し難い。
まるで不吉なスノードームのように、水球の中に降り注いだ多量の赤い花がたゆたう。これはユメの言葉を借りるなら「不純物」なのだろうが、シズクがその侵入を許容した理由は何となく察しがつく。ユメは結界を張るのに手一杯で、雷奈は仲間たちの真後ろから動けない。つまり、雷術を飛ばせる者がいない以上、たとえ電流に弱い状態に陥っても何ら怖くはないのである。
そのため、シズクが水球を解く由などない。
――はずだった。
「……!」
突如、何かに気づいたようにシズクが目を見開いた。
そして、身にまとっていた水を離散させた。同時、赤い花びらも一緒に散らばっていく。
木雪の予言は現実のものとなった。
驚嘆は後だ。ユメが息を継ぐように結界を解いたのが合図。再びまみえる、光の砲弾と葉の散弾の共演。
一幕目ではすかさず反応したシズクだが、水球の解除さえ咄嗟だった今、再度しのぎ切るのは難しかったらしい。まず高速で飛来した光の球をもろに受け、反対側から畳みかける無数の刃に体側をえぐられた。
手ごたえあり。そう確信した氷架璃と芽華実は、共に道を空けるように左右に分かれた。分かれながら、今起こった事象についての答えを求めて後ろを振り返った。
「リコリス・ラジアータ」
凛とした声が告げる。チエアリの行動を予測した――否、操作した少女は、モーセのごとく空いた道の先に立っていた。そばには、結界を解くと同時に下がった、彼女の親友の姿。その小さな手には、自らが名付けた発明武器が握られている。
「和名・彼岸花。それが私の英舞遊です。特に球根に多いと言われていますが、全草に毒をもつのが特徴です。もちろん、花の部分にも」
ワイヤーが飛んだ。先端の電極が、シズクまで一直線に空いた道を真っ直ぐに突き進み、避けそこねた黒い体に着弾する。
「彼岸花の毒は水溶性……つまり花をさらした水は毒となる。溶解力の強い超純水ならなおさらです。本来喫食しなければ毒性はありませんが、溶液から逃れたということは、あのまま体を浸しているのを恐れたということ。触れるだけで効くとは、つくづくチエアリの生態は謎ですね」
ユメの手が動いた。シズクの体に、再び電流が走る。
だが、何度か受けているうちに耐性がついたらしく、体を痙攣させながらも二人を睨みつける余裕ができていた。あまつさえ、振り上げた尾に水を集め始める。
それを見た木雪は、ふっと目を細めた。
「やはりカートリッジの電力では足りないようですね。でも」
ふつん。
ワイヤーが切れて落ちた。
出し抜けに攻撃を中止され、シズクは意表をつかれて、電撃から解放されたにも関わらず動きを止めた。
ワイヤーは、ピンをねじった木雪によって意図的に切断されていた。
垂れ下がった二本のワイヤー。その切断口に近い、絶縁体に覆われた部分を、木雪はそっとつまみ上げる。先端の電極はシズクに刺したまま、彼女はゆっくりと数歩下がった。
そして、手にしたそれを、後ろでずっと回復を待っていた少女に手渡した。
「このお方ならどうでしょう」
シズクの顔がこわばった。次いで、慌てて体に刺さったままの電極を払おうと前足を浮かせた。
だが、それよりも早かった。
詠唱はいらなかった。雷奈の両手から、術の形をとる前の高圧電流が発せられた。その高エネルギーは、木雪から受け取って両手に握った電導ワイヤーに伝わる。幸いにも、ワイヤーはカートリッジの何倍もの電圧にも耐えながら、電撃をその先へと運んだ。
そして、終着点で炸裂する。
「ッアアアアアア!」
シズクは絶叫した。激しく体を痙攣させ、徐々に黒い霧を発していく。こうなっては、もはや電極を払い落とす余力もない。
痛々しい断末魔の叫びが雷奈の耳をつんざく。それでも、彼女が電撃を緩めることはない。
ふと、彼女の頭を一つの可能性がよぎった。
――雷菜なら、このチエアリさえも見逃すのかもしれない。
次々に仲間を葬られても、最終的には自分自身が敵意を向けられても、最後まで彼女は誰かの命を奪うことはしなかった。
それが優しいということで、それが真の強さの形で、本来望ましい生きざまなのかもしれない。
そのことを腹の底に落としたうえで――やはり、手心を加えるという選択肢はなかった。
たとえ源子から生まれたとしても、チエアリもまた一つの命だ。鏡像たちがそうであったように。
だから、雷奈が今やっているのは、誰かの命を奪おうとする行為に他ならない。
けれど、それでも許せなかった。仲間たちを傷つけ、身勝手に悲しい戦いを起こした彼女を、これ以上永らえさせるわけにはいかなかった。
自分の、仲間の、命を、尊厳を、守るためには――綺麗ごとを捨てなければならない時がある。
それが、このままならない世界の形。清濁併せ飲まなければ生きていけない、苦い世界の姿だ。
(ごめんね、雷菜)
だから、彼女が「朏雷菜」の生き方を選ぶことはない。
これからも、「三日月雷奈」として生きていく。
細ることなくほとばしる電流。激しい白光の中で、黒い影は徐々に溶けていく。
最後の影の欠片までをも、まばゆい閃光がかき消して――。
そして、雨は止んだ。
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