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第4話 急にぽかぽかと暖かく
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ルイスが右腕を薙ぐと、前方の小麦が一斉に根元から刈り取られていった。
「い、今、何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですよ」
「真空波だと!?」
驚くミハイルを余所に、ルイスは平然とした顔で刈られた小麦を回収していく。
そして膨大な量の小麦を抱えて戻ってくると、
「とまぁ、こんな感じです。簡単ですよね?」
「どこがだ!? あと、平然と抱えているが、どう見てもそれ、一トン以上はあるだろう!?」
ちなみにルイスは収穫だけでなく、脱穀も一人で行っている。
それも本人曰く〝簡単なやり方〟があった。
「というか、そもそもまだ小麦の収穫の時期ではないはずだが……?」
「うちでは年中、収穫ができますよ。場所によって気候をズラしていますので」
「気候をズラしている???」
「はい。あっちの方は冬に夏がくるようにしていて、向こうの方は冬に秋がくるようにしているんです。ちなみに野菜の方でも同じことをしています」
そうすることで、季節ではないはずの野菜が収穫できるのだ。
「説明されても意味が分からぬのだが……?」
疑問符を浮かべているミハイル。
ルイスはどう説明したものかと少し悩んでから、
「ええと、もう少し詳しく言うと、温度などを調整している感じです。例えばこんな風に」
今はちょうど冬の終わり。
少しずつ春が近づいている季節だ。
ただこの辺りは山に近いせいか、まだまだ肌寒い日が多く、今も風がひんやりとしている。
「ん、何だ……? 急にぽかぽかと暖かく……いや、むしろ暑い……っ!?」
冷たかった空気が急激に温まっていき、ミハイルは思わず上着を脱いだ。
額にはじんわりと汗が浮かび出していく。
「この付近の温度を上げてみました」
「そんなこともできるのか!? 先ほどの真空波といい、もしや何かの魔法では……?」
「いえ、魔法ではないです。多分〝特技〟じゃないかなと」
「特技だと?」
特技。
それは天職を持つ者だけに発現する、特別な技能のことだ。
「俺はどうやら天気とか地面を操作することができるみたいなんです」
「ということは、君は天職持ち……? な、なぜこんなところで農業などやっているのだ?」
「戦士には向かない【農民】という天職だったので」
「【農民】だと……?」
一度も聞いたことのない天職に、ミハイルが眉根を寄せたときだった。
「あ、魔物ですね」
「なにっ?」
魔物の接近を察知するルイス。
これも【農民】の特技の一つなのだろう、たとえ目に見えない場所であったとしても、魔物が農地に近づいてきたことが分かってしまうのだ。
「グルアアアアアアアアアアアアッ!!」
空から響いてきた強烈な雄叫びで、ようやくルイス以外の者たちが魔物を発見する。
「「「ワイバーン!?」」」
翼を持つ巨大な蜥蜴の魔物に、彼らは思わず絶叫した。
「こ、こんな魔物に出くわすとは……っ!?」
「ミハイル様、お下がりくださいっ!」
護衛の兵士たちが慌てて腰から剣を抜きつつ前に出るが、それを持つ手がガクガクと震えていた。
ワイバーンは、亜竜の一種とされる凶悪な魔物である。
ドラゴンほどではないが硬い鱗を持ち、その鋭い牙や爪で岩すらも引き裂く力を持つ。
幾ら鍛錬を積んでいるとはいえ、天職を持たない並の兵士たちでは、相当な兵数と準備がなければワイバーンを討伐することなど不可能だ。
ましてや、ここにいる兵はたった二人。
武器も、空を支配する相手とやり合うには不向きな剣しかない。
絶望の表情を浮かべる周囲を余所に、ルイスが平然とワイバーンの方に歩いていく。
「っ、何をしている!? 危ないぞ!?」
「大丈夫ですよ? うちの畑の野菜に釣られて、魔物はしょっちゅう来るんで」
「え?」
次の瞬間、ワイバーンがこちらへ猛スピードで滑空してきた。
その後ろ脚の狂暴な爪が、地面でのんびり構えるルイスに迫る。
だがそれは空を切った。
ルイスがあっさりと爪を躱したのだ。
「よっと」
「~~ッ!?」
さらにルイスは、すれ違いざまにワイバーンの尾を片手で掴んだ。
ワイバーンがすぐ目の前で急停止し、ミハイルたちは思わずその場に尻餅をつきながら叫ぶ。
「「「片手で止めたあああああああああああああっ!?」」」
「せーのっ」
「「「片手でぶん投げたあああああああああああっ!?」」」
「い、今、何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですよ」
「真空波だと!?」
驚くミハイルを余所に、ルイスは平然とした顔で刈られた小麦を回収していく。
そして膨大な量の小麦を抱えて戻ってくると、
「とまぁ、こんな感じです。簡単ですよね?」
「どこがだ!? あと、平然と抱えているが、どう見てもそれ、一トン以上はあるだろう!?」
ちなみにルイスは収穫だけでなく、脱穀も一人で行っている。
それも本人曰く〝簡単なやり方〟があった。
「というか、そもそもまだ小麦の収穫の時期ではないはずだが……?」
「うちでは年中、収穫ができますよ。場所によって気候をズラしていますので」
「気候をズラしている???」
「はい。あっちの方は冬に夏がくるようにしていて、向こうの方は冬に秋がくるようにしているんです。ちなみに野菜の方でも同じことをしています」
そうすることで、季節ではないはずの野菜が収穫できるのだ。
「説明されても意味が分からぬのだが……?」
疑問符を浮かべているミハイル。
ルイスはどう説明したものかと少し悩んでから、
「ええと、もう少し詳しく言うと、温度などを調整している感じです。例えばこんな風に」
今はちょうど冬の終わり。
少しずつ春が近づいている季節だ。
ただこの辺りは山に近いせいか、まだまだ肌寒い日が多く、今も風がひんやりとしている。
「ん、何だ……? 急にぽかぽかと暖かく……いや、むしろ暑い……っ!?」
冷たかった空気が急激に温まっていき、ミハイルは思わず上着を脱いだ。
額にはじんわりと汗が浮かび出していく。
「この付近の温度を上げてみました」
「そんなこともできるのか!? 先ほどの真空波といい、もしや何かの魔法では……?」
「いえ、魔法ではないです。多分〝特技〟じゃないかなと」
「特技だと?」
特技。
それは天職を持つ者だけに発現する、特別な技能のことだ。
「俺はどうやら天気とか地面を操作することができるみたいなんです」
「ということは、君は天職持ち……? な、なぜこんなところで農業などやっているのだ?」
「戦士には向かない【農民】という天職だったので」
「【農民】だと……?」
一度も聞いたことのない天職に、ミハイルが眉根を寄せたときだった。
「あ、魔物ですね」
「なにっ?」
魔物の接近を察知するルイス。
これも【農民】の特技の一つなのだろう、たとえ目に見えない場所であったとしても、魔物が農地に近づいてきたことが分かってしまうのだ。
「グルアアアアアアアアアアアアッ!!」
空から響いてきた強烈な雄叫びで、ようやくルイス以外の者たちが魔物を発見する。
「「「ワイバーン!?」」」
翼を持つ巨大な蜥蜴の魔物に、彼らは思わず絶叫した。
「こ、こんな魔物に出くわすとは……っ!?」
「ミハイル様、お下がりくださいっ!」
護衛の兵士たちが慌てて腰から剣を抜きつつ前に出るが、それを持つ手がガクガクと震えていた。
ワイバーンは、亜竜の一種とされる凶悪な魔物である。
ドラゴンほどではないが硬い鱗を持ち、その鋭い牙や爪で岩すらも引き裂く力を持つ。
幾ら鍛錬を積んでいるとはいえ、天職を持たない並の兵士たちでは、相当な兵数と準備がなければワイバーンを討伐することなど不可能だ。
ましてや、ここにいる兵はたった二人。
武器も、空を支配する相手とやり合うには不向きな剣しかない。
絶望の表情を浮かべる周囲を余所に、ルイスが平然とワイバーンの方に歩いていく。
「っ、何をしている!? 危ないぞ!?」
「大丈夫ですよ? うちの畑の野菜に釣られて、魔物はしょっちゅう来るんで」
「え?」
次の瞬間、ワイバーンがこちらへ猛スピードで滑空してきた。
その後ろ脚の狂暴な爪が、地面でのんびり構えるルイスに迫る。
だがそれは空を切った。
ルイスがあっさりと爪を躱したのだ。
「よっと」
「~~ッ!?」
さらにルイスは、すれ違いざまにワイバーンの尾を片手で掴んだ。
ワイバーンがすぐ目の前で急停止し、ミハイルたちは思わずその場に尻餅をつきながら叫ぶ。
「「「片手で止めたあああああああああああああっ!?」」」
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「「「片手でぶん投げたあああああああああああっ!?」」」
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