5 / 60
第5話 普通に断られました
しおりを挟む
自分の何倍もの大きさがあるワイバーンを、そのまま放り投げてしまうルイス。
ワイバーンの巨体は何度も地面をバウンドしながら、百メートルほど先でようやく停止した。
「な、何という力だ!? 一体これのどこが『戦士に向かない』だ!?」
「はは、害獣駆除も農作業の一つですからね。さすがに他の天職の皆さんのように、強い魔物は倒せませんよ」
謙遜するルイスだったが、そもそもワイバーンは強い魔物だ。
「わ、ワイバーンは危険度Bに指定される魔物だぞ……熟練の戦士ですら、下手をすれば深手を負いかねないレベルの……それをいとも容易く……」
ミハイルが知る限り、こんな真似ができる戦士は、ほんの一握りしかいないはずだった。
「グルアッ……」
「ま、まだ生きているぞ!?」
「あっ、逃げていく……っ!」
ルイスにぶん投げられたワイバーンだったが、ボロボロながらもまだ死んでいなかったようだ。
もはや完全に戦意は喪失しているようで、辛うじて翼を広げると空へ逃げていった。
「「「助かった……」」」
と安堵の息を吐くミハイルたちだったが、
「逃がすとまた来る可能性もあるし、このまま仕留めますね」
「……仕留める? もうあんな高さだぞ? さすがに……」
そのとき周囲が急に暗くなった。
上空をあっという間に真っ黒い雲が覆い尽くしていく。
次の瞬間、空で目が眩むほどの光が弾けた。
ほぼ同時に凄まじい轟音。
「な、何だ!?」
「雷っ!?」
「ワイバーンが……っ!?」
全身から煙を上げながら、ワイバーンが地上へと落ちてくる。
地面に激突し、動かなくなった。
「今の雷は、まさか……い、いや、さすがに偶然だよな……あり得ないレベルの偶然だが、そのはず……うん……」
「あ、俺が呼びました」
「やっぱりか!? 君は一体何なんだ!?」
ミハイルは確信した。
これほどの男を、こんなところで終わらせるのはあまりにも惜しい、と。
「……ルイスと言ったな?」
神妙な面持ちでミハイルは切り出した。
「君は今すぐ、戦士になるべきだ」
「え?」
驚くルイスに、ミハイルは断言する。
「【農民】は『戦士に向かない』だなんて、とんでもない。明らかに君は強い。戦士としても確実に通用する。私が保証しよう」
「ほ、本当ですか……? ただ、俺は十二年前、騎士団の採用試験で門前払いされたんですが……。商会の護衛団でも義勇団でも、似たようなものでしたし……」
天職を与えられた者たちの進路の一つが、国や領地が保有している騎士団だ。
騎士団に所属できることは大きな誇りであり、また一生安泰ということもあって、人気の進路である。
ただし採用条件が非常に厳しく、それゆえ神々に選ばれた戦士であったとしても、騎士団に入ることができるとは限らない。
事前に数か月の試用期間が存在し、そこでの評価次第で正式採用を見送られることもあった。
また、商会の護衛団も人気が高い。
特に大規模な商会ともなると、戦士を破格の給与で雇ってくれるため、金目当ての者たちにとってこれ以上ない就職先である。
主に隊商の護衛がその仕事で、軍と比べて危険な任務を負わされることも少ないというのも、人気の理由の一つだろう。
そして軍や商会で不採用になった者たちが最後に行きつくのが、各地にある義勇団だ。
これは民間の軍事組織であり、主に街や村の周辺に出没した魔物や盗賊の討伐などを行っている。
義勇団員の大半は天職を持たない非戦士であり、戦士は大いに歓迎される。
ただしその多くは資金難に苦しんでおり、給与はあまり期待できない。
どんな人間であっても、戦士であるというだけで、まず義勇団から門前払いされることなどあり得ない。
「って、聞いていたんですけど……普通に断られました」
「なるほど……確かに【農民】と聞けば、だが心配することはない。そんな君でも、戦士として活躍できる場所があるのだ」
「え? そんなところがあるんですか……?」
「ある。それは――」
半信半疑のルイスに、ミハイルは確信をもって告げたのだった。
「――冒険者ギルドだ」
ワイバーンの巨体は何度も地面をバウンドしながら、百メートルほど先でようやく停止した。
「な、何という力だ!? 一体これのどこが『戦士に向かない』だ!?」
「はは、害獣駆除も農作業の一つですからね。さすがに他の天職の皆さんのように、強い魔物は倒せませんよ」
謙遜するルイスだったが、そもそもワイバーンは強い魔物だ。
「わ、ワイバーンは危険度Bに指定される魔物だぞ……熟練の戦士ですら、下手をすれば深手を負いかねないレベルの……それをいとも容易く……」
ミハイルが知る限り、こんな真似ができる戦士は、ほんの一握りしかいないはずだった。
「グルアッ……」
「ま、まだ生きているぞ!?」
「あっ、逃げていく……っ!」
ルイスにぶん投げられたワイバーンだったが、ボロボロながらもまだ死んでいなかったようだ。
もはや完全に戦意は喪失しているようで、辛うじて翼を広げると空へ逃げていった。
「「「助かった……」」」
と安堵の息を吐くミハイルたちだったが、
「逃がすとまた来る可能性もあるし、このまま仕留めますね」
「……仕留める? もうあんな高さだぞ? さすがに……」
そのとき周囲が急に暗くなった。
上空をあっという間に真っ黒い雲が覆い尽くしていく。
次の瞬間、空で目が眩むほどの光が弾けた。
ほぼ同時に凄まじい轟音。
「な、何だ!?」
「雷っ!?」
「ワイバーンが……っ!?」
全身から煙を上げながら、ワイバーンが地上へと落ちてくる。
地面に激突し、動かなくなった。
「今の雷は、まさか……い、いや、さすがに偶然だよな……あり得ないレベルの偶然だが、そのはず……うん……」
「あ、俺が呼びました」
「やっぱりか!? 君は一体何なんだ!?」
ミハイルは確信した。
これほどの男を、こんなところで終わらせるのはあまりにも惜しい、と。
「……ルイスと言ったな?」
神妙な面持ちでミハイルは切り出した。
「君は今すぐ、戦士になるべきだ」
「え?」
驚くルイスに、ミハイルは断言する。
「【農民】は『戦士に向かない』だなんて、とんでもない。明らかに君は強い。戦士としても確実に通用する。私が保証しよう」
「ほ、本当ですか……? ただ、俺は十二年前、騎士団の採用試験で門前払いされたんですが……。商会の護衛団でも義勇団でも、似たようなものでしたし……」
天職を与えられた者たちの進路の一つが、国や領地が保有している騎士団だ。
騎士団に所属できることは大きな誇りであり、また一生安泰ということもあって、人気の進路である。
ただし採用条件が非常に厳しく、それゆえ神々に選ばれた戦士であったとしても、騎士団に入ることができるとは限らない。
事前に数か月の試用期間が存在し、そこでの評価次第で正式採用を見送られることもあった。
また、商会の護衛団も人気が高い。
特に大規模な商会ともなると、戦士を破格の給与で雇ってくれるため、金目当ての者たちにとってこれ以上ない就職先である。
主に隊商の護衛がその仕事で、軍と比べて危険な任務を負わされることも少ないというのも、人気の理由の一つだろう。
そして軍や商会で不採用になった者たちが最後に行きつくのが、各地にある義勇団だ。
これは民間の軍事組織であり、主に街や村の周辺に出没した魔物や盗賊の討伐などを行っている。
義勇団員の大半は天職を持たない非戦士であり、戦士は大いに歓迎される。
ただしその多くは資金難に苦しんでおり、給与はあまり期待できない。
どんな人間であっても、戦士であるというだけで、まず義勇団から門前払いされることなどあり得ない。
「って、聞いていたんですけど……普通に断られました」
「なるほど……確かに【農民】と聞けば、だが心配することはない。そんな君でも、戦士として活躍できる場所があるのだ」
「え? そんなところがあるんですか……?」
「ある。それは――」
半信半疑のルイスに、ミハイルは確信をもって告げたのだった。
「――冒険者ギルドだ」
22
あなたにおすすめの小説
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる