6 / 60
第6話 貴様の保身だろう
「冒険者ギルド……?」
聞き慣れない言葉にルイスは首を傾げた。
「ああ。冒険者に様々な仕事を斡旋しているギルドのことだ。まだ歴史は浅いが、近年、世界各地に増えていて、この国にも二十年ほど前に初めて作られ、今ではほとんどの主要な街に存在している」
ミハイルによれば、元々冒険者というのは、ダンジョンや魔境の探索などを行い、そこで手に入れた貴重なアイテムや素材などを売ることで生計を立てていた者たちのことで、どこかに雇われるわけでもなく、その大半はフリーの者たちだったそうだ。
だがやがて彼らをサポートするための組織ができた。
それが冒険者ギルドだ。
次第に探索業だけではなく、様々な仕事を請け負うようになり、現在では魔物の討伐や護衛、薬草や素材の採取などといった依頼も、所属する冒険者たちに斡旋していた。
「依頼をこなした分しか稼ぐことができない、完全成果主義。それが冒険者だ。しかしその分、自らの采配で働くことができる自由度が魅力で、それゆえ最近では騎士団を辞めて冒険者になる者もいるほどだ」
「……つまり、俺みたいな人間でも受け入れてくれる可能性があるってことですか?」
「その通り。そして実は私の知り合いが、領都の冒険者ギルドでサブギルドマスターをしている。彼に掛け合えば、まず間違いなく受け入れてくれるだろう」
と、そこで村長が血相を変えて割り込んできた。
「わ、儂は反対ですぞ! 【農民】のルイスが戦士になれるとは到底思えぬ! この村でこれまで通り、農業をしている方が当人のためですじゃ!」
「何を言っている? たった今、ワイバーンを瞬殺したところを見ていなかったのか?」
ミハイルが睨みつけるも、村長は退かなかった。
「あんなのはきっとまぐれでございましょう! いいか、ルイス! 変な気を起こすではないぞ! 戦士になれると期待して領都に行っても、どうせまた十二年前のように追い返されるのがオチじゃ!」
「けど、ミハイルさんが……」
「この方とは今日会ったばかりじゃろう! 儂は小さい頃からお前のことをよく知っておる! だから分かるのじゃ! 儂はお前が悲しむのを見たくない! いいか、お前のことを思って言っておるのじゃぞ!?」
村長は必死だった。
それもそのはず。
彼はルイスが作った農作物を独占販売することで、大儲けしていたのである。
ルイスの作る農作物は驚くほど品質がいい。
その上、値段が手ごろで、市場に出せば飛ぶように売れる。
そのため村長とイセリ村の村人たちは、自分たちで農業を行うことを一切やめ、その販売事業に集中することにしたのだ。
結果、村は大儲けし、立派な防壁が作られ、新しい家屋が次々と建っていった。
さらにこれに乗っかってきたのが、周辺の村々だ。
彼らも自ら畑を耕すより、イセリ村産の作物を転売する方が楽に儲かると知って、次々と農地を放棄していく。
当然、元締めであるイセリ村の儲けは、ますます増えていった。
味を占めた彼らは、ルイスに幾度となく生産の増量を要求。
真面目なルイスはそれに応え、どんどん農地を広げていった。
日持ちする小麦に至っては、今や領地中に流通するまでになっている。
ルイスが作る小麦ばかりが買われるので、領内の小麦農家は次々と廃業し、彼らもまた転売業に手を出すように。
そしてまたルイスが農地を広げ、流通網が拡大し……。
最近では、王都でもルイスの小麦を売ろうと計画していたところだった。
「……ということですじゃ、はい」
ミハイルに問い詰められた村長は、そうしたすべてを洗いざらい白状していた。
当初は頭に血が上って冷静さを失っていたが、相手がこの地の代官であり、逆らっても意味だと理解したようである。
「しかも彼には雀の涙ほどの金しか支払っていなかった、と。まったく、どの口が『お前のことを思って言っておる』だ? ただただ貴様の保身だろう」
「は、はぃ……」
自分より年下の代官の前で、ひたすら小さくなる村長だった。
聞き慣れない言葉にルイスは首を傾げた。
「ああ。冒険者に様々な仕事を斡旋しているギルドのことだ。まだ歴史は浅いが、近年、世界各地に増えていて、この国にも二十年ほど前に初めて作られ、今ではほとんどの主要な街に存在している」
ミハイルによれば、元々冒険者というのは、ダンジョンや魔境の探索などを行い、そこで手に入れた貴重なアイテムや素材などを売ることで生計を立てていた者たちのことで、どこかに雇われるわけでもなく、その大半はフリーの者たちだったそうだ。
だがやがて彼らをサポートするための組織ができた。
それが冒険者ギルドだ。
次第に探索業だけではなく、様々な仕事を請け負うようになり、現在では魔物の討伐や護衛、薬草や素材の採取などといった依頼も、所属する冒険者たちに斡旋していた。
「依頼をこなした分しか稼ぐことができない、完全成果主義。それが冒険者だ。しかしその分、自らの采配で働くことができる自由度が魅力で、それゆえ最近では騎士団を辞めて冒険者になる者もいるほどだ」
「……つまり、俺みたいな人間でも受け入れてくれる可能性があるってことですか?」
「その通り。そして実は私の知り合いが、領都の冒険者ギルドでサブギルドマスターをしている。彼に掛け合えば、まず間違いなく受け入れてくれるだろう」
と、そこで村長が血相を変えて割り込んできた。
「わ、儂は反対ですぞ! 【農民】のルイスが戦士になれるとは到底思えぬ! この村でこれまで通り、農業をしている方が当人のためですじゃ!」
「何を言っている? たった今、ワイバーンを瞬殺したところを見ていなかったのか?」
ミハイルが睨みつけるも、村長は退かなかった。
「あんなのはきっとまぐれでございましょう! いいか、ルイス! 変な気を起こすではないぞ! 戦士になれると期待して領都に行っても、どうせまた十二年前のように追い返されるのがオチじゃ!」
「けど、ミハイルさんが……」
「この方とは今日会ったばかりじゃろう! 儂は小さい頃からお前のことをよく知っておる! だから分かるのじゃ! 儂はお前が悲しむのを見たくない! いいか、お前のことを思って言っておるのじゃぞ!?」
村長は必死だった。
それもそのはず。
彼はルイスが作った農作物を独占販売することで、大儲けしていたのである。
ルイスの作る農作物は驚くほど品質がいい。
その上、値段が手ごろで、市場に出せば飛ぶように売れる。
そのため村長とイセリ村の村人たちは、自分たちで農業を行うことを一切やめ、その販売事業に集中することにしたのだ。
結果、村は大儲けし、立派な防壁が作られ、新しい家屋が次々と建っていった。
さらにこれに乗っかってきたのが、周辺の村々だ。
彼らも自ら畑を耕すより、イセリ村産の作物を転売する方が楽に儲かると知って、次々と農地を放棄していく。
当然、元締めであるイセリ村の儲けは、ますます増えていった。
味を占めた彼らは、ルイスに幾度となく生産の増量を要求。
真面目なルイスはそれに応え、どんどん農地を広げていった。
日持ちする小麦に至っては、今や領地中に流通するまでになっている。
ルイスが作る小麦ばかりが買われるので、領内の小麦農家は次々と廃業し、彼らもまた転売業に手を出すように。
そしてまたルイスが農地を広げ、流通網が拡大し……。
最近では、王都でもルイスの小麦を売ろうと計画していたところだった。
「……ということですじゃ、はい」
ミハイルに問い詰められた村長は、そうしたすべてを洗いざらい白状していた。
当初は頭に血が上って冷静さを失っていたが、相手がこの地の代官であり、逆らっても意味だと理解したようである。
「しかも彼には雀の涙ほどの金しか支払っていなかった、と。まったく、どの口が『お前のことを思って言っておる』だ? ただただ貴様の保身だろう」
「は、はぃ……」
自分より年下の代官の前で、ひたすら小さくなる村長だった。
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。