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第6話 貴様の保身だろう
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「冒険者ギルド……?」
聞き慣れない言葉にルイスは首を傾げた。
「ああ。冒険者に様々な仕事を斡旋しているギルドのことだ。まだ歴史は浅いが、近年、世界各地に増えていて、この国にも二十年ほど前に初めて作られ、今ではほとんどの主要な街に存在している」
ミハイルによれば、元々冒険者というのは、ダンジョンや魔境の探索などを行い、そこで手に入れた貴重なアイテムや素材などを売ることで生計を立てていた者たちのことで、どこかに雇われるわけでもなく、その大半はフリーの者たちだったそうだ。
だがやがて彼らをサポートするための組織ができた。
それが冒険者ギルドだ。
次第に探索業だけではなく、様々な仕事を請け負うようになり、現在では魔物の討伐や護衛、薬草や素材の採取などといった依頼も、所属する冒険者たちに斡旋していた。
「依頼をこなした分しか稼ぐことができない、完全成果主義。それが冒険者だ。しかしその分、自らの采配で働くことができる自由度が魅力で、それゆえ最近では騎士団を辞めて冒険者になる者もいるほどだ」
「……つまり、俺みたいな人間でも受け入れてくれる可能性があるってことですか?」
「その通り。そして実は私の知り合いが、領都の冒険者ギルドでサブギルドマスターをしている。彼に掛け合えば、まず間違いなく受け入れてくれるだろう」
と、そこで村長が血相を変えて割り込んできた。
「わ、儂は反対ですぞ! 【農民】のルイスが戦士になれるとは到底思えぬ! この村でこれまで通り、農業をしている方が当人のためですじゃ!」
「何を言っている? たった今、ワイバーンを瞬殺したところを見ていなかったのか?」
ミハイルが睨みつけるも、村長は退かなかった。
「あんなのはきっとまぐれでございましょう! いいか、ルイス! 変な気を起こすではないぞ! 戦士になれると期待して領都に行っても、どうせまた十二年前のように追い返されるのがオチじゃ!」
「けど、ミハイルさんが……」
「この方とは今日会ったばかりじゃろう! 儂は小さい頃からお前のことをよく知っておる! だから分かるのじゃ! 儂はお前が悲しむのを見たくない! いいか、お前のことを思って言っておるのじゃぞ!?」
村長は必死だった。
それもそのはず。
彼はルイスが作った農作物を独占販売することで、大儲けしていたのである。
ルイスの作る農作物は驚くほど品質がいい。
その上、値段が手ごろで、市場に出せば飛ぶように売れる。
そのため村長とイセリ村の村人たちは、自分たちで農業を行うことを一切やめ、その販売事業に集中することにしたのだ。
結果、村は大儲けし、立派な防壁が作られ、新しい家屋が次々と建っていった。
さらにこれに乗っかってきたのが、周辺の村々だ。
彼らも自ら畑を耕すより、イセリ村産の作物を転売する方が楽に儲かると知って、次々と農地を放棄していく。
当然、元締めであるイセリ村の儲けは、ますます増えていった。
味を占めた彼らは、ルイスに幾度となく生産の増量を要求。
真面目なルイスはそれに応え、どんどん農地を広げていった。
日持ちする小麦に至っては、今や領地中に流通するまでになっている。
ルイスが作る小麦ばかりが買われるので、領内の小麦農家は次々と廃業し、彼らもまた転売業に手を出すように。
そしてまたルイスが農地を広げ、流通網が拡大し……。
最近では、王都でもルイスの小麦を売ろうと計画していたところだった。
「……ということですじゃ、はい」
ミハイルに問い詰められた村長は、そうしたすべてを洗いざらい白状していた。
当初は頭に血が上って冷静さを失っていたが、相手がこの地の代官であり、逆らっても意味だと理解したようである。
「しかも彼には雀の涙ほどの金しか支払っていなかった、と。まったく、どの口が『お前のことを思って言っておる』だ? ただただ貴様の保身だろう」
「は、はぃ……」
自分より年下の代官の前で、ひたすら小さくなる村長だった。
聞き慣れない言葉にルイスは首を傾げた。
「ああ。冒険者に様々な仕事を斡旋しているギルドのことだ。まだ歴史は浅いが、近年、世界各地に増えていて、この国にも二十年ほど前に初めて作られ、今ではほとんどの主要な街に存在している」
ミハイルによれば、元々冒険者というのは、ダンジョンや魔境の探索などを行い、そこで手に入れた貴重なアイテムや素材などを売ることで生計を立てていた者たちのことで、どこかに雇われるわけでもなく、その大半はフリーの者たちだったそうだ。
だがやがて彼らをサポートするための組織ができた。
それが冒険者ギルドだ。
次第に探索業だけではなく、様々な仕事を請け負うようになり、現在では魔物の討伐や護衛、薬草や素材の採取などといった依頼も、所属する冒険者たちに斡旋していた。
「依頼をこなした分しか稼ぐことができない、完全成果主義。それが冒険者だ。しかしその分、自らの采配で働くことができる自由度が魅力で、それゆえ最近では騎士団を辞めて冒険者になる者もいるほどだ」
「……つまり、俺みたいな人間でも受け入れてくれる可能性があるってことですか?」
「その通り。そして実は私の知り合いが、領都の冒険者ギルドでサブギルドマスターをしている。彼に掛け合えば、まず間違いなく受け入れてくれるだろう」
と、そこで村長が血相を変えて割り込んできた。
「わ、儂は反対ですぞ! 【農民】のルイスが戦士になれるとは到底思えぬ! この村でこれまで通り、農業をしている方が当人のためですじゃ!」
「何を言っている? たった今、ワイバーンを瞬殺したところを見ていなかったのか?」
ミハイルが睨みつけるも、村長は退かなかった。
「あんなのはきっとまぐれでございましょう! いいか、ルイス! 変な気を起こすではないぞ! 戦士になれると期待して領都に行っても、どうせまた十二年前のように追い返されるのがオチじゃ!」
「けど、ミハイルさんが……」
「この方とは今日会ったばかりじゃろう! 儂は小さい頃からお前のことをよく知っておる! だから分かるのじゃ! 儂はお前が悲しむのを見たくない! いいか、お前のことを思って言っておるのじゃぞ!?」
村長は必死だった。
それもそのはず。
彼はルイスが作った農作物を独占販売することで、大儲けしていたのである。
ルイスの作る農作物は驚くほど品質がいい。
その上、値段が手ごろで、市場に出せば飛ぶように売れる。
そのため村長とイセリ村の村人たちは、自分たちで農業を行うことを一切やめ、その販売事業に集中することにしたのだ。
結果、村は大儲けし、立派な防壁が作られ、新しい家屋が次々と建っていった。
さらにこれに乗っかってきたのが、周辺の村々だ。
彼らも自ら畑を耕すより、イセリ村産の作物を転売する方が楽に儲かると知って、次々と農地を放棄していく。
当然、元締めであるイセリ村の儲けは、ますます増えていった。
味を占めた彼らは、ルイスに幾度となく生産の増量を要求。
真面目なルイスはそれに応え、どんどん農地を広げていった。
日持ちする小麦に至っては、今や領地中に流通するまでになっている。
ルイスが作る小麦ばかりが買われるので、領内の小麦農家は次々と廃業し、彼らもまた転売業に手を出すように。
そしてまたルイスが農地を広げ、流通網が拡大し……。
最近では、王都でもルイスの小麦を売ろうと計画していたところだった。
「……ということですじゃ、はい」
ミハイルに問い詰められた村長は、そうしたすべてを洗いざらい白状していた。
当初は頭に血が上って冷静さを失っていたが、相手がこの地の代官であり、逆らっても意味だと理解したようである。
「しかも彼には雀の涙ほどの金しか支払っていなかった、と。まったく、どの口が『お前のことを思って言っておる』だ? ただただ貴様の保身だろう」
「は、はぃ……」
自分より年下の代官の前で、ひたすら小さくなる村長だった。
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