3 / 60
第3話 あれが小麦なのか
しおりを挟む
いつものようにルイスが農作業に精を出していると、彼の農場に近づいてくる複数の人影があった。
「村長? 何の用だ? また生産量を増やしてほしいって話か?」
そのうちの一人はルイスもよく知る人物だ。
彼の生まれ育った村の村長で、いつも大量の作物を買い取ってくれている。
天職が【農民】だったせいで、戦士になることができなかったルイスを、再び村に迎え入れてくれた恩人でもあった。
それもあってルイスは村長に頭が上がらず、幾度となく生産増を要求されても素直に答えてきたのである。
畑を飛び越え、ルイスは彼らの近くに着地した。
「何か御用ですか?」
「っ!? 空から降ってきた!?」
ルイスの登場の仕方に、彼の知らない中年男性が驚く。
村長がその男性のことを紹介してくれた。
「この方は最近この地域の代官になられたミハイル殿じゃ。実はお前の農地を見たいとのことでな……」
「そうなんですね。初めまして、ミハイル様。俺はルイスといいます」
代官というものが何か分からなかったが、きっと偉い人なのだろうと判断して、ルイスは丁寧に自己紹介する。
「……? 私は村の農地全体を見せてもらいたいのであって、個人の畑を見たいわけではないのだが」
「いえ、うちの村で農業をしているのは俺だけですけど」
「は? ちょ、ちょっと待ちたまえ。こうした田舎の村で、農家は君だけだというのか?」
「そうですよ? 昔はもっとみんなでやってましたけど……あまり戦力にならないので、今では俺一人です」
「たった一人だと……?」
ミハイルが確かめるような目を村長に向けるが、村長は気まずそうに視線を逸らす。
「そ、それで、ここは何を育てているのだ? 異常に生い茂っているが……」
「この辺りはじゃがいもですね。掘ってみましょうか」
じゃがいもは土の中にできるので、ルイスは軽く土を動かして奥にあるじゃがいもを露出させた。
「今、手も触れていないのに土が勝手に動かなかったか!?」
「おっ、いい感じに育ってますね」
眼前で起こった異変に驚くミハイルを余所に、ルイスはじゃがいもを土の中から取り出す。
それはルイスの頭の三倍はあろうかという、巨大なじゃがいもだった。
「大き過ぎないか!?」
「最近はこれくらいのサイズがうちのスタンダードですね」
「ま、まさか、ここの野菜はどれもこんな感じなのか……?」
それからルイスはキャベツやニンジンなども掘って見せてあげた。
特にキャベツは直径一メートルを超える大きさで、ミハイルは「もはや植物系の魔物ではないか……」と呟いていた。
「他にも色んな野菜を栽培しています。あと小麦も。というか、小麦が圧倒的に多いです」
「小麦っ! ではやはり……っ!」
野菜はルイスの農場のメインではなかった。
実はその何倍もの量の小麦を、同時に生産しているのである。
ミハイルの希望を受けて、ルイスは彼を小麦畑に案内することにした。
「ではその場に座ってください。土ごと動かしますので」
「何を言って……なっ!?」
突然、彼らの足元の地面が蠢き出したかと思と、まるで魔法の絨毯のように、彼らを乗せたまま動いていく。
「一体どうなっているのだああああああああああああっ!?」
馬を超える速さで地面が移動すること、しばらく。
やがて一行の前方に小麦畑が見えてきた。
「あれが小麦なのか!?」
ミハイルが驚いたのも無理はない。
黄金色に輝く小麦の高さは、ゆうに五メートルを超えていたのだ。
「しかも大量の実がついている……というか、これをたった一人で収穫しているのか……? かなり広大だが……」
「小麦の収穫は結構、簡単ですよ。ちょうどこの辺りは収穫できそうなので、やってみましょうか」
そう言ってルイスは、胸の前で右腕を水平に構えた。
「はっ!」
彼が右腕を横に薙いだかと思った次の瞬間、前方の小麦たちが一瞬で刈り取られていく。
「……はい?」
「村長? 何の用だ? また生産量を増やしてほしいって話か?」
そのうちの一人はルイスもよく知る人物だ。
彼の生まれ育った村の村長で、いつも大量の作物を買い取ってくれている。
天職が【農民】だったせいで、戦士になることができなかったルイスを、再び村に迎え入れてくれた恩人でもあった。
それもあってルイスは村長に頭が上がらず、幾度となく生産増を要求されても素直に答えてきたのである。
畑を飛び越え、ルイスは彼らの近くに着地した。
「何か御用ですか?」
「っ!? 空から降ってきた!?」
ルイスの登場の仕方に、彼の知らない中年男性が驚く。
村長がその男性のことを紹介してくれた。
「この方は最近この地域の代官になられたミハイル殿じゃ。実はお前の農地を見たいとのことでな……」
「そうなんですね。初めまして、ミハイル様。俺はルイスといいます」
代官というものが何か分からなかったが、きっと偉い人なのだろうと判断して、ルイスは丁寧に自己紹介する。
「……? 私は村の農地全体を見せてもらいたいのであって、個人の畑を見たいわけではないのだが」
「いえ、うちの村で農業をしているのは俺だけですけど」
「は? ちょ、ちょっと待ちたまえ。こうした田舎の村で、農家は君だけだというのか?」
「そうですよ? 昔はもっとみんなでやってましたけど……あまり戦力にならないので、今では俺一人です」
「たった一人だと……?」
ミハイルが確かめるような目を村長に向けるが、村長は気まずそうに視線を逸らす。
「そ、それで、ここは何を育てているのだ? 異常に生い茂っているが……」
「この辺りはじゃがいもですね。掘ってみましょうか」
じゃがいもは土の中にできるので、ルイスは軽く土を動かして奥にあるじゃがいもを露出させた。
「今、手も触れていないのに土が勝手に動かなかったか!?」
「おっ、いい感じに育ってますね」
眼前で起こった異変に驚くミハイルを余所に、ルイスはじゃがいもを土の中から取り出す。
それはルイスの頭の三倍はあろうかという、巨大なじゃがいもだった。
「大き過ぎないか!?」
「最近はこれくらいのサイズがうちのスタンダードですね」
「ま、まさか、ここの野菜はどれもこんな感じなのか……?」
それからルイスはキャベツやニンジンなども掘って見せてあげた。
特にキャベツは直径一メートルを超える大きさで、ミハイルは「もはや植物系の魔物ではないか……」と呟いていた。
「他にも色んな野菜を栽培しています。あと小麦も。というか、小麦が圧倒的に多いです」
「小麦っ! ではやはり……っ!」
野菜はルイスの農場のメインではなかった。
実はその何倍もの量の小麦を、同時に生産しているのである。
ミハイルの希望を受けて、ルイスは彼を小麦畑に案内することにした。
「ではその場に座ってください。土ごと動かしますので」
「何を言って……なっ!?」
突然、彼らの足元の地面が蠢き出したかと思と、まるで魔法の絨毯のように、彼らを乗せたまま動いていく。
「一体どうなっているのだああああああああああああっ!?」
馬を超える速さで地面が移動すること、しばらく。
やがて一行の前方に小麦畑が見えてきた。
「あれが小麦なのか!?」
ミハイルが驚いたのも無理はない。
黄金色に輝く小麦の高さは、ゆうに五メートルを超えていたのだ。
「しかも大量の実がついている……というか、これをたった一人で収穫しているのか……? かなり広大だが……」
「小麦の収穫は結構、簡単ですよ。ちょうどこの辺りは収穫できそうなので、やってみましょうか」
そう言ってルイスは、胸の前で右腕を水平に構えた。
「はっ!」
彼が右腕を横に薙いだかと思った次の瞬間、前方の小麦たちが一瞬で刈り取られていく。
「……はい?」
21
あなたにおすすめの小説
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる