農民レベル99 天候と大地を操り世界最強

九頭七尾

文字の大きさ
2 / 60

第2話 これが畑です

しおりを挟む
「一体どういうことだ? この数年で、小麦の生産量が大幅に増大しているぞ……?」

 ミハイル=レーミアンは新任の代官だった。

 アルトレウ侯爵家が治める広大な領内でも、かなり辺境に位置するこの地域。
 それゆえ名目上は代官への昇格ということになっているが、正直、栄転とは言い難い。

 むしろ左遷と呼んでもいいくらいだろう。
 そうなってしまったのも、有能な上に正義感の強いミハエルのことを良く思わない者たちが、領内に多くいたせいだった。

 それでも真面目なミハイルは、代官としての役割をまっとうしようと、前任者の残した資料などを確認しながら、まずは地域の現状把握に努めていたのだ。

 そこで真っ先に調べたのが、ここ数年における、この地域での小麦の収穫量。
 というのも、彼がこの地に来てから目にした農地がどれもこれも荒れ果てており、作物などロクに収穫できそうにない様相だったからだ。

 きっと厳しい飢饉で、餓死者が大量に出ているに違いないと覚悟していたのだ。

「その割に、住民たちが餓えている様子がないのも変だと思っていたが……むしろ収穫量が増えているとはな」

 さらに詳しく資料を見ていくと、小麦の収穫量が増大を始めたのは、ちょうど十二年ほど前からであることが分かった。

「この時期を境に、急激な収穫量の増大が始まっている。それ以前は、ごくごく平均的な、いや、むしろあまり芳しくない収穫量だったが……その頃と比べると今は三倍にもなっている……。だが人口は当時とほとんど変わらないし、何か革新的な農地改革があったとの記録もない……」

 考えれば考えるほど、謎は深まるばかりである。

 その謎を確かめるべく、彼は自ら調査に赴くことにした。
 部下に任せずに直接現場を見にいくというのが、彼のスタイルなのだ。

 調べていくうちに、色々とおかしなことが分かってきた。
 この地域で流通している小麦の生産者のもとへ赴いてみても、そこにあるのはもう何年も放置されたような荒れた畑だけだったのだ。

 それも一か所や二か所ではない。
 そこで生産者を問い詰めたところ、どうやら彼らは別のところから小麦を仕入れ、それを転売しているだけだという。

 彼らが白状した仕入先。
 驚くべきことに、それはすべて、ある一つの村だった。

「イセリ村……資料によれば、住民百人にも満たない小さな村のはずだが……」

 無論こうなったら、そのイセリ村とやらに足を運ぶしかない。
 ミハイルはすぐさまその村に向かった。

 道中、やけに街道が整備されていることに疑問を抱きつつ、やがて目的のイセリ村が見えてきた。

「随分と立派な村だな……?」

 とても小さな村とは思えない、高い防壁で囲まれ、分厚い門で護られている。
 建ち並ぶ家屋も、こんな田舎の村には似つかわしくない造りをしていて、どれもこれも新しかった。

 中でも村長の屋敷は豪華なものだった。
 地方の下級貴族の屋敷に匹敵するかもしれない。

「なに? うちの村の畑を見たいじゃと? お主、一体何者じゃ? 余所者になぜ……え? 代官様!? し、失礼しましたっ! ですが、うちの村の畑など、見たところで何も面白いことなどありませぬが……」

 ミハイルが素性を明かすと、村長は少し焦ったような反応を見せた。
 何か疚しいことでもあるのかもしれない。

「今すぐ見せてもらおう。案内してくれ」
「は、はい……」

 有無を言わさぬ態度で命じると、村長は観念したように頷いた。
 そうして連れていかれた先は……。

「何だ、ここは? 森ではないか?」
「い、いえ、森ではありません……これが畑です」
「畑? いやいや、こんな生い茂った畑があるわけ……」

 とそこで、彼はあることに気づく。
 目の前の葉っぱが、じゃがいもの葉とそっくりであることに。

「向こうに見えるのはキャベツと似ているし、あっちはニンジンに……ま、まさか、これらは全部、巨大な野菜なのか……っ!?」

 ミハイルが驚愕していると、空から何かが降ってくる。

「村長? 何か御用ですか?」

 それは農具を担いだ青年だった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...