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第52話 うっ憤を晴らしてるんだろうな
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「くそがっ! 何でこのオレがっ、あんな野郎に二度も……っ!」
Bランク冒険者のボーマンは荒れていた。
二度に渡って、同じ男に苦汁を舐めさせられたのである。
プライドの高い彼にとって、これほどの屈辱はなかった。
「ボーマンさん、荒れてるっすね……」
「……また復讐する気かも」
「けど、件の男はギルドマスター権限で、新人ながらあっという間にBランクに昇格したような男だ。普通に挑んでも返り討ちに遭うだけだぞ。しかも、ギルマスやサブマスがやたら寵愛してるみたいだし、下手すりゃ俺たちの方が終わりだ」
「大将もそれが分かってるから、こうしてうっ憤を晴らしてるんだろうな」
ボーマン率いる冒険者パーティは現在、領都の北方に広がる〝魔境〟に来ていた。
『バルセール大樹海』と呼ばれる広大な森林地帯で、『バルセール西の森』とは桁違いの規模だ。
領内では最大、王国内でも最大級の魔境として知られている。
魔境というのは、魔力濃度が非常に濃い領域のことで、それゆえ危険な魔物が数多く棲息している。
なにせ魔力には、魔物をより凶悪化させたり、繁殖力を高めたりする性質があるのだ。
幸いこの魔境の魔物は、魔境の外に出ることは滅多にない。
というのも、彼らは魔力の濃い場所を好むため、わざわざ低濃度のところに行こうとはしないのである。
さらに、魔境の奥深い場所に行くほど凶悪な魔物が出現する反面、浅い場所は縄張り争いに負けた魔物が多い。
そのためボーマンたちのようなBランクやCランク冒険者で構成されたパーティであっても、十分探索することが可能だった。
「ぼ、ボーマンさんっ、あんまり深いところにはいかないでほしいっす!?」
「分かってるよ! おらぁっ!」
仲間の注意にイライラと返しながら、樹木の魔物、トレントを斧で叩き割る。
少し前まで愛用していたものは、ルイスのせいでもはや使い物にならなくなってしまったため、泣く泣く新しいものに買い替えた新品だ。
と、そのときだ。
索敵を得意とする仲間の一人が、何かを察知したのか、深刻な顔で叫んだ。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! ま、魔物がっ……魔物がこっちに……」
「はっ、オレがこの新しい斧で脳天を勝ち割ってやるぜ……っ! それでどの方向から何体だ?」
「き、北のっ……魔境の奥の方からっ……数はっ……わ、分からねぇっ!」
「ああ? 分からないって何だよ? てめぇ、ふざけてんのか?」
「いやっ……そ、そんなことはっ……そうじゃなくてっ……」
もはや顔色が真っ青になってしまった彼は、震える声で告げた。
「数が多すぎるんだっ……分かる範囲だけでも、十や二十どころじゃねぇっ……は、早く逃げねぇと……やべぇんだよっ!」
直後、一体の魔物が彼らのすぐ近くを駆け抜けていったかと思うと、それを皮切りに次々と魔物が通り過ぎていく。
「「「それを早く言ええええええええええええっ!!」」」
思わず絶叫しながら来た道を引き返すボーマンたち。
「ってか、この魔物どもはどこに行くつもりだっ?」
「俺たちのことは眼中にない感じだぞっ!?」
やがて樹海から飛び出した彼らは、とんでもない光景を目撃することとなる。
「なんて数の魔物だっ!?」
「樹海から次々と外に溢れ出してきてるぞっ!?」
彼らのいた場所だけではない。
東西に長く伸びる樹海のそこかしこから、魔物たちが続々と飛び出してきていたのである。
「た、立ち止まるなっ……後ろからどんどん来ている! 呑み込まれちまう……っ!」
「まだ死にたくねぇよおおおおっ!」
「ってか、この現象は、まさか……」
この魔物の激流に逆らわないよう懸命に走り続けながら、彼らは思い当たるこの異常現象の名を叫んだ。
「「「スタンピード!?」」」
魔物が起こす集団暴走。
それがスタンピードだが、こんな魔境で発生したのは聞いたこともない。
「しかもこのままこいつらが暴走し続けたら……南にあるのは……」
「「「領都がヤバい!!」」」
Bランク冒険者のボーマンは荒れていた。
二度に渡って、同じ男に苦汁を舐めさせられたのである。
プライドの高い彼にとって、これほどの屈辱はなかった。
「ボーマンさん、荒れてるっすね……」
「……また復讐する気かも」
「けど、件の男はギルドマスター権限で、新人ながらあっという間にBランクに昇格したような男だ。普通に挑んでも返り討ちに遭うだけだぞ。しかも、ギルマスやサブマスがやたら寵愛してるみたいだし、下手すりゃ俺たちの方が終わりだ」
「大将もそれが分かってるから、こうしてうっ憤を晴らしてるんだろうな」
ボーマン率いる冒険者パーティは現在、領都の北方に広がる〝魔境〟に来ていた。
『バルセール大樹海』と呼ばれる広大な森林地帯で、『バルセール西の森』とは桁違いの規模だ。
領内では最大、王国内でも最大級の魔境として知られている。
魔境というのは、魔力濃度が非常に濃い領域のことで、それゆえ危険な魔物が数多く棲息している。
なにせ魔力には、魔物をより凶悪化させたり、繁殖力を高めたりする性質があるのだ。
幸いこの魔境の魔物は、魔境の外に出ることは滅多にない。
というのも、彼らは魔力の濃い場所を好むため、わざわざ低濃度のところに行こうとはしないのである。
さらに、魔境の奥深い場所に行くほど凶悪な魔物が出現する反面、浅い場所は縄張り争いに負けた魔物が多い。
そのためボーマンたちのようなBランクやCランク冒険者で構成されたパーティであっても、十分探索することが可能だった。
「ぼ、ボーマンさんっ、あんまり深いところにはいかないでほしいっす!?」
「分かってるよ! おらぁっ!」
仲間の注意にイライラと返しながら、樹木の魔物、トレントを斧で叩き割る。
少し前まで愛用していたものは、ルイスのせいでもはや使い物にならなくなってしまったため、泣く泣く新しいものに買い替えた新品だ。
と、そのときだ。
索敵を得意とする仲間の一人が、何かを察知したのか、深刻な顔で叫んだ。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! ま、魔物がっ……魔物がこっちに……」
「はっ、オレがこの新しい斧で脳天を勝ち割ってやるぜ……っ! それでどの方向から何体だ?」
「き、北のっ……魔境の奥の方からっ……数はっ……わ、分からねぇっ!」
「ああ? 分からないって何だよ? てめぇ、ふざけてんのか?」
「いやっ……そ、そんなことはっ……そうじゃなくてっ……」
もはや顔色が真っ青になってしまった彼は、震える声で告げた。
「数が多すぎるんだっ……分かる範囲だけでも、十や二十どころじゃねぇっ……は、早く逃げねぇと……やべぇんだよっ!」
直後、一体の魔物が彼らのすぐ近くを駆け抜けていったかと思うと、それを皮切りに次々と魔物が通り過ぎていく。
「「「それを早く言ええええええええええええっ!!」」」
思わず絶叫しながら来た道を引き返すボーマンたち。
「ってか、この魔物どもはどこに行くつもりだっ?」
「俺たちのことは眼中にない感じだぞっ!?」
やがて樹海から飛び出した彼らは、とんでもない光景を目撃することとなる。
「なんて数の魔物だっ!?」
「樹海から次々と外に溢れ出してきてるぞっ!?」
彼らのいた場所だけではない。
東西に長く伸びる樹海のそこかしこから、魔物たちが続々と飛び出してきていたのである。
「た、立ち止まるなっ……後ろからどんどん来ている! 呑み込まれちまう……っ!」
「まだ死にたくねぇよおおおおっ!」
「ってか、この現象は、まさか……」
この魔物の激流に逆らわないよう懸命に走り続けながら、彼らは思い当たるこの異常現象の名を叫んだ。
「「「スタンピード!?」」」
魔物が起こす集団暴走。
それがスタンピードだが、こんな魔境で発生したのは聞いたこともない。
「しかもこのままこいつらが暴走し続けたら……南にあるのは……」
「「「領都がヤバい!!」」」
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