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第8部 晴れた空の下手を繋いで…
STAGE.3-FINAL 明日もきっと
しおりを挟む「イシュター様!」
「お前達か…」
「申し訳ありません、チグリス様を…」
「良い…話しは聞いた。我が子の為にラヴィトリは国を追放、ゴーシュは皇位剥奪…無茶をしたものだ」
ラヴィトリがイシュターに駆け寄り跪く、首を緩く振りラヴィトリを立たせた。
「ま、俺は皇帝やる気ないし。良かった良かった」
「じじい」
「チグリスも良い思い出と言った…今回は良い、償わせるべき相手が墓の下ならば私が引く…」
「イシュター様…」
ラヴィトリの肩を叩きゴーシュが笑う、時間はこの先いくらでもある。
「あ、先あの子達行っちゃった」
服を脱がせた瞬間走り出す魔人の子供達をグローリーが素早く掴まえ、抱えて浴場に向かった。
「走っちゃダメ…身体を洗ってから入ろう」
「はいーおとたん」
「あい!ぱぱー」
「…………」
グローリーは無機質な瞳でウォルゾガに下の子を渡し、身体を荒い始めた。
「きゃはは」
赤ん坊の服を脱がせバタバタするのをラピスが風魔法を3種類混ぜて運び桶に入れて身体を洗っていく、舵とトイで泡だらけにして洗ってやれば笑い声を上げて喜ぶ、ゴーレムやヒヨコにヒュールやクラークラック達も赤ん坊の喜ぶ姿を見て喜んでいた。
「カルンは本当に静かだな」
「………」
大河と率も舵達の手伝いをし、カルンの身体を洗ってやっているが静かに目を細めていた。
「湯浴みか…服を…」
「承知しました」
イシュターが両腕を少し広げナイデルが脱がせていく、服の構造が複雑で魔力を使い重ねている衣を1枚1枚脱がせる度に鉱物へと変わる。
「めんどーな服着ているなー、俺の服やるよ。着るの楽だぞ?少し大き目だろうけど、後飯食って寝るだけだし」
ナイデルとナイルも手伝い服を脱がせている様にジラが呆れ、収納から淡い水色のワイシャツとゆったりした紺色のパンツを渡され、イシュターが受け取った。
「そうだな、寝るなら簡単な服で良いな…」
「おーアンタみたいた奴なら何着ても様になるからいんじゃない?」
「イシュター様、詠斗殿達に教えて貰った風呂や石鹸やシャンプーはとても気持ち良いですよ」
「そうか」
「先に身体を洗いましょう、こちらへ」
ナイデルに案内され浴場へ進む、皆で入った風呂はとても心地良かった…。
「じゃ、飯の支度するからー」
大騒ぎの風呂が終わり《アタラクシア号》の大食堂で懐記やラウラスに、応援に来たバルタルとカイネと料理好きのウォルゾガとナイル、千華が厨房に入りカツカレーの準備を始めた。
「千眼さん、綴君に舵ーベビーカー作るから来てくれー」
「ああ…」
『はーい』
「ベビーカー…何台か作るか、増えるだろうしなー」
『………』
「全ての魔人の子供の父親って壮大だよね」
集まり舵がざっくりベビーカーの絵を描き崇幸と綴が細かい箇所をメモ書きして足していく、千眼はそれを見ながら鉱物を使い形成していく。
「シート部分はネスちゃん達に頼もうか、テトラちゃんにラインしよ」
「後はベルト部分は…」
「魔石…は無理か伸縮性がある…」
「なら車のシートベルトを使いましょうか、取り外ししても再生しますから」
「お、それはいいな!」
話しが進み、どんどん形が整っていった。
「現皇帝は聖君のようだな、瞳が良かった。ツァルニジェの子か…」
「そうですよ、ツァルは今はバウンドランドトーカーの嫁さんとあちらで暮らしています」
「あのぼんやりとした奴がか…千年は流石に長すぎるな」
「イシュター様…」
「いや、過ぎた事は良い。しばらくは異界人達と共に…気になる事もある」
「承知致しました、そのように致しましょう…」
ナイデルが頷く、ポツリポツリと互いの近況等をイシュターに報告していった。
「大河さん、広場で本売っていたのでどうぞーお土産です」
「そうか、ありがとう。ベルン」
「えへへ」
「おとーさん、人形買ってきたのー」
「お、なら動かせるようにするか?」
「うん!」
「《解き掛けの羅針盤》確かに攻略していますね、それに彼らが売っていた品も特殊な物が多いですね」
ラジカが魔人の子供達が広場で広げていた物を鑑定する、《解き掛けの羅針盤》は何処かを示し、文字が浮かんでいるがその羅針盤を解いた者にしかわからない記号を使っているようでラジカには読み取る事は出来ない、あの3人の内の誰かだろうがそれも今の所は分からない。
「この棒の様な物も鑑定したけど、不明としか出てこないね」
「それは《迷わずの案内》という旅人が迷わずに旅路の先に家に戻る為の魔法具です、帰るべき場所に帰る事が出来れば壊れてしまう特殊な物ですね。これを作れるのは妖精か魔人達でしょう、それにこちらのこの玉は《暴く路》ダンジョン等の罠を発見する魔法具です、これは我々には必要ない物ですが、冒険者達は何としても欲しい物でしょう。後この木の一見何の変哲もない木のコップは魔力を注ぐと」
「水が出るな、これは《渇かぬ杯》か?」
「ええ、しかも制限無しです。そしてこれが最もこの中で価値が高いと思われる、値段を付ける事が出来ない《偽り亡き眼》鑑定が出来る道具です」
ラジカが並んだ魔法具1つ1つを説明する、ジラが驚き千歳達は首を傾げる、転移、水魔法、鑑定の下位互換とも言えるアイテムにラジカやジラが此処まで驚いているのが不思議とも言える。
「そしてこの魔法具達を造った者はおそらく存在を知ってはいるが使った事も見た事もなく1からいえ、0から造ったんです。実際に存在する物より遥かに精度が高い、おそらくあの3人の子供達のうちの誰かか、全員が造ったのかもしれませんね」
「おっそろしいなー」
「ええ、特にこの《偽り亡き眼》は人の鑑定も行えるようですね」
「なるほどね、この何の変哲もない物が人が隠したい秘密を暴くという事だね」
ラジカが片眼鏡を持ち千歳もそれを見つめ、全て保護者であるグローリーに渡す事にした。
個々に時間を過ごしているとカレーが出来たと声がかかり、支度を手伝う。
「辛口、中辛、子供用に甘くしたやつートレイ持って並んで。唐揚げとカツもあるから、米とパンは手前で選んでナイルっち言ってースープは千ちゃん、サラダは千華っちから貰ってー」
『はーい』
「グリ達、ベルン達先に選んでくれ」
「グローリーのテーブルには俺が運ぶぞ、辛さとパンか米選んでくれ」
「米…辛口」
「おなじ」
「あいよ」
すっかり厨房に馴染んだウォルゾガがグローリーとイザラに辛さの確認し、カートで運んでくれた。
「子供らは甘口な、後パンと米両方にしたからな。後は果物な」
「うん…ありがとう」
「ありがとう」
「うん?」
「うー?」
「イザラ食べてて、食べさせる」
「俺はちびの方を食わせるわ」
「あ、子供用に椅子造ったから使ってくれ、それと前掛けな。ゴーレムとおりがみの子達が縫ってくれたから首に巻くといいな。俺も手伝う」
「お、すごいな!これは両手開いていいな」
「崇幸ありがとう」
「おー、持って帰るといい。和室用に足の低いのも用意したから」
「うん…」
崇幸から木(ツンドーラ)で造ったベルトで身体を固定させ、前にミニテーブル付きの椅子を貰い、子供達を座らせる。
きゃきゃはしゃいで動く子供達に崇幸が前掛けを付けてやり様子を見る事にした。
「カルンちゃんにはミルク粥とこの赤ちゃんにはミルクかなー」
カルンを崇幸から貰ったベビーチェアに乗せようとすると泣き始めるので舵が膝に乗せてミルク粥を口に運ぶ、すっかり抱き癖がついてしまったようだ。
ミルクをニトに抱えられて飲んだ赤ん坊がミルク粥を食べるカルンを見ていたので、あげて良いものかと思っていれば、大河がラインで神々から確認し問題ないとの事、ついでにカツと唐揚げカレーを催促され、仕方ないと懐記とラウラスと用意して備えた。
「すごい、食欲だね。ご飯美味しいよね」
「きゃきゃ」
「可愛いー」
ニトがミルク粥を口に運びカルンと同じ量を食べてけふと満足そうに喜んでいる、ニトとトイが顔を綻ばせた。
「おとたんおとたん」
「ぱぱーぱぱー」
「?」
「美味しいんだろう、アイスもあるから好き嫌いするなよ」
カレーを食べさせる毎に興奮気味にグローリーを呼ぶので、崇幸が笑いながら教えてやる。
「沢山食べて…」
慣れないながらグローリーが食べさせ、溢しながらも美味しそうに子供達が食べている。
「から…」
「はは、辛いかちょっと待ってな」
イザラが辛口のカレーに顔をしかめる、唐揚げとカツを食べてしまいミルクも飲んだが辛い物は辛い、崇幸が厨房からすりおろしてペーストにした物をイザラの皿に掛けて、良く混ぜて食べるように促す。
「辛いけど美味しい、ありがとう崇幸」
「おう、こうして甘さを調節するんだ」
「そっか」
「しかし、こんな料理初めて見たし食ったよ!すごいな」
「はは、だろ?」
ウォルゾガも初めて味わった料理に驚く、他のテーブルでは続々とおかわりの声が上がって沢山作ったカレーは瞬く間にカツとカレーと共に無くなった、勿論誰よりも食べたのはチグリスだった。
「あー、カレー食べた食べた」
「美味しかったー」
「明日はお祭りのベルン君達が行った広場に行きたいですね」
「行きましょう!」
各自カレーとアイスを楽しみそれぞれの帰路に着き《アタラクシア号》の大部屋に戻った詠斗達は、さっさと寝る支度を整え各々好きな場所で寝る事にした。
崇幸と千眼はグローリー達の所へ、舵はベルン達の所へ行き、チグリスは父親のイシュターに挨拶してさっさとベッドに入り込む。
「俺も寝る、おやすみ」
「僕もお先に」
珍しく大河や千歳も詠斗達と同じ時間に眠り、残ったのは千華、懐記、ジラ、イシュターだけだった。
イシュターは窓の先の暗い海を眺め、窓に映るチグリスの顔を見ていた。
明日もその次の日も我が子に会える、複雑だが子供に逢えたの嬉しい事だった…。
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